在宅看護専門看護師とは?役割や資格取得までの流れ、大学院を選ぶコツを解説

「訪問看護師としてもう一段階専門性を高めたい」「在宅看護専門看護師って、訪問看護師と何が違うの?」
そんな疑問を抱えていませんか。在宅看護専門看護師は、在宅で療養する方とご家族に対して、高度な看護を実践する専門看護師です。療養者へのケアだけでなく、介入が難しい事例への相談対応や看護師への教育などにも携わります。
この記事では、在宅看護専門看護師の役割や仕事内容、資格取得までの流れ、大学院の選び方を解説します。訪問看護師や在宅ケア認定看護師との違い、資格取得後の働き方についても紹介するため、在宅看護分野でのキャリアを考えている方は参考にしてください。
在宅看護専門看護師とは
在宅看護専門看護師とは、在宅看護分野で高度な看護実践能力を持つと日本看護協会に認定された専門看護師(CNS:Certified Nurse Specialist)です。2012年12月に認定が開始されました。
在宅療養者と家族の生活を支える専門看護師
日本看護協会は、在宅看護専門看護師を「在宅で療養する対象者及びその家族が、個々の生活の場で日常生活を送りながら在宅療養を続けることを支援する」と位置づけています。また、在宅看護の仕組みづくりや、医療・介護などのサービスをつなぐ役割も担います。
在宅では、治療やケアだけでなく本人の生活やご家族の介護力、住環境なども踏まえて看護を考える視点が欠かせません。こうした複雑な課題がある中で、本人・ご家族の意思決定を支え、多職種や地域のサービスをつなぎながら、在宅療養を支える仕組みづくりにも関わります。
在宅看護専門看護師の人数と展望
日本看護協会によると、在宅看護専門看護師の登録者数は2025年12月時点で153人です。専門看護師総数3,644人の約4.2%と、専門看護師のなかでも人数の少ない分野と言えます。
登録者数は、関東甲信越69人、近畿39人など地域差もあるため、取得後にどのような役割を担いたいのか、専門性を発揮できる職場があるのかまで見据えることが大切です。
国の方針として在宅医療を進める中で、在宅看護専門看護師の需要はますます高まると考えられます。
在宅看護専門看護師が働く場所
在宅看護専門看護師は、訪問看護ステーションを中心に、病院や大学・学校など、さまざまな場所で活動しています。
日本看護協会の2025年12月時点の統計では、所属先は訪問看護ステーションが43.1%、病院が26.1%、大学・学校が10.5%となっています。
在宅看護専門看護師の6つの役割と仕事内容
専門看護師には、日本看護協会が定める6つの役割があり、在宅看護の現場では、次のような形で現れます。
| 役割 | 在宅看護専門看護師の仕事内容 |
| 実践 | 医療依存度が高い方や複雑な課題を抱える方に対し、ご家族・環境まで踏まえて看護を実践する |
| 相談 | 困難事例について訪問看護師や多職種から相談を受け、アセスメントやケアの方向性を一緒に検討する |
| 調整 | 医師、訪問看護師、ケアマネジャーなどをつなぎ、本人・ご家族の希望に沿った支援体制を整える |
| 倫理調整 | 療養場所や治療、看取りなど本人・ご家族・医療者の意向を整理する |
| 教育 | 事例検討などを通じて、訪問看護師の実践力を高める |
| 研究 | 現場の課題を研究につなげ、事業所や地域の看護の質向上に生かす |
たとえば、退院後の生活を見据えて多職種と支援体制を整えたり、ACP(人生会議)を通じて本人の希望を確認したりするなど、療養者・ご家族の意思を尊重して支援します。
また、訪問看護師やケアマネジャーなどの地域関係職種と連携して、在宅看取りの場面で症状の変化を捉えてアセスメントし、必要な情報を整理して医師に伝えたり、院内外で在宅看護に関する研修を実施したりする場合もあります。
関連記事: 専門看護師とは?専門分野14個の種類や認定看護師との違いを解説!
在宅看護専門看護師と在宅ケア認定看護師・訪問看護師との違い
在宅に関わる看護職には、在宅看護専門看護師のほかに在宅ケア認定看護師や訪問看護師がいます。それぞれの違いを見ていきましょう。
在宅看護専門看護師と在宅ケア認定看護師の違い
どちらも日本看護協会が認定する資格ですが、教育課程と担う役割が異なります。
| 在宅看護専門看護師 | 在宅ケア認定看護師 | |
| 教育期間 | 大学院修士課程 | B課程認定看護師教育課程 |
| おもな役割 | 実践・相談・調整・倫理調整・教育・研究 | 実践・指導・相談 |
| 向いている人 | 専門性を深め、教育・研究・地域連携にも広げたい | 現場での実践力を高め、指導・相談にも関わりたい |
| キャリア | 臨床・教育・研究・地域連携など | 臨床・指導・相談など |
「現場での実践力を高めたい」なら在宅ケア認定看護師、「専門性をより深く追究し、教育・研究・地域の仕組みづくりまで関わりたい」なら在宅看護専門看護師が選択肢になります。
関連記事:在宅ケア認定看護師になるには?資格取得の流れと必要な費用、メリットを解説
在宅看護専門看護師と訪問看護師の違い
訪問看護師と在宅看護専門看護師は、どちらも在宅療養者の生活を支える看護職ですが、専門性を発揮する範囲が異なります。
訪問看護師は、担当する利用者さま・ご家族への訪問看護を中心に、療養生活を支援します。一方、在宅看護専門看護師は、利用者さまへのケアに加えて、本人・ご家族の意思決定を支えながら、多職種との調整やスタッフへの教育にも関わり、利用者さまへの支援を事業所や地域の看護の質向上につなげる役割も担う点が特徴です。
そのため、訪問看護師として現場で経験を積んだうえで、「ケアを提供するだけでなく、看護師を支えたり、地域の在宅看護をより良くしたりしたい」と考える人にとって、在宅看護専門看護師はキャリアの選択肢の1つになります。
在宅看護専門看護師になるには
資格取得までの流れは次の4ステップです。
- 看護師として必要な実務研修を積む
- 大学院で在宅看護専門看護師の教育課程を修了する
- 日本看護協会の認定審査に合格して登録する
- 5年ごとに認定を更新する
看護師資格を取得し、大学院での学びを経て認定審査に合格するまで、数年単位の準備期間を見込んでおきましょう。
1.看護師として必要な実務研修を積む
看護師免許取得後、通算5年以上の実務研修が必要です。そのうち3年以上は、専門看護分野(在宅看護)であることが求められます。
訪問看護ステーションでの勤務はもちろん、病院の退院支援・地域連携部門や在宅医療に関わる経験も活かせる可能性があります。実務研修として認められる範囲は、日本看護協会のホームページで確認しましょう。
2.大学院で在宅看護専門看護師の教育課程を修了する
看護系大学院の修士課程で、在宅看護専門看護師教育課程を修了し、所定の単位(総計38単位)を修得します。
在宅看護学に関する専門的な知識を学ぶほか、実習や研究を通して在宅看護の専門性を深めます。大学院では、講義だけでなく実習や研究にも取り組むため、仕事と両立する場合は授業・実習の時間を調べて事前に看護師長や人事課に相談しておくと安心です。
3.日本看護協会の認定審査に合格して登録する
必要な単位を修得したら、日本看護協会に申請し、専門看護師認定審査を受けます。審査は書類審査と筆記試験(マークシート方式・四肢択一、100分)です。
2026年に実施される第36回専門看護師認定審査では、筆記試験が10月7日に予定されています。審査要件は変更されることがあるため、受験を検討する際は日本看護協会の最新情報を確認しましょう。
4.5年ごとに認定を更新する
専門看護師の認定期間は5年です。資格を継続するには、5年ごとに認定更新審査を受ける必要があります。
2025年度から制度が変更され、看護実践時間2,000時間以上の要件や実践報告書の提出は不要となりました。2028年度からは、筆頭者として学術集会等での発表または論文掲載を2回以上行うことなどが求められます。
なお、2025~2027年度に認定有効期間を迎える方には特例措置が適用される点に注意が必要です。
更新の要件は変更される可能性もあるため、更新時期が近づいたら日本看護協会の公式情報を確認しておくとスムーズに手続きできます。
在宅看護専門看護師の大学院を選ぶコツ
大学院選びは、資格取得後のキャリアにも影響します。「在宅看護専門看護師教育課程があるか」だけでなく、通学のしやすさや実習の時期、指導教員の専門領域なども確認して、自分に合った大学院を選びましょう。
在宅看護の教育課程のある大学院を探す
在宅看護専門看護師の教育課程がある大学院かを確認しましょう。
2026年8月時点で、38単位の在宅看護専門看護師教育課程を開講する 教育機関は、2026年度時点で全国に20あります。
設置校は年度によって変わるため、日本看護協会や日本看護系大学協議会が公表する最新の教育機関一覧で確認しましょう。あわせて、募集要項・入試科目・修了要件もチェックしておくと安心です。
また、日本看護協会は専門看護師教育課程以外の修士課程を修了した方(コース外修了者)を対象に、教育要件を事前に確認する「受験資格審査」を実施しています。認定された専門看護師教育課程と同等以上の科目・単位(38単位以上)を取得していると認められれば、認定審査を受験できるという仕組みです。
働きながら通える大学院か確認する
大学院を選ぶ際は、自宅や職場からの通学時間・交通手段も確認しておきましょう。
授業時間や実習期間、通学頻度は大学院によって異なります。また、オンライン授業に対応しているかどうかも確認しておきたいポイントです。
大学院によっては長期履修制度を設け、2年ではなく3〜4年かけて計画的に学べる場合もあります。仕事との両立を考えるなら、こうした制度の有無は重要な判断材料になります。
大学院の学費や支援制度を確認する
大学院にかかる費用は、入学金や授業料だけではありません。実習費や教材費、通学にかかる交通費、自宅から通えない大学院を選ぶ場合は、住居費も必要になります。
また、大学院に通うために勤務時間を減らした場合は、収入が減少する可能性もあります。
進学前に、大学院の学費や通学・実習にかかる費用、進学による収入減少まで含めて、必要な費用を見積もっておくことが大切です。そのうえで、奨学金や教育訓練給付金、勤務先の進学支援制度など、利用できる制度がないか確認しておきましょう。
大学院で学べる内容を比較する
大学院選びでは、「何を学ぶことができるのか」にも注目しましょう。
在宅看護学だけでなく、地域包括ケアや在宅ケアシステムの構築、家族支援など、大学院によって力を入れている領域は異なります。たとえば、訪問看護の質向上を研究したいのか、在宅看取りや意思決定支援を深めたいのかによって、適した環境は変わります。
自分の研究テーマと指導教員の専門性が合っているかを確認することが重要です。
在宅看護専門看護師を目指すメリット
資格取得を目指すことで、次のようなメリットが期待できます。
複雑な在宅療養ケースに専門性を発揮できる
資格取得によって、在宅での看取りや重症者へのケアなど複雑な事例に対応するための専門的な知識・判断力を身につけられることも魅力です。
実際の活動例として、2026年の研究では、在宅看取りを積極的におこなう医師から、在宅看護専門看護師について、観察・アセスメント能力が高く、治療方針の提案もできると評価されていました。また、難しいケースを在宅看護専門看護師が所属する訪問看護事業所に依頼するケースも報告されています。
教育・相談・地域連携で役割が広がる
在宅看護専門看護師の資格を取得すると、訪問看護の実践を続けながら、教育や人材育成、地域連携、研究など、自分の専門性を生かせる領域を広げられます。
また、管理者として訪問看護ステーションの運営に携わったり、大学や教育機関で後進の育成に関わったりするなど、資格取得後のキャリアにはさまざまな選択肢があります。
管理者・スペシャリストとしてキャリアを描きやすくなる
在宅看護専門看護師は、臨床実践だけでなく、管理や教育、研究など自分の専門性に応じたキャリアを描くことができることがメリットです。
実際に、日本看護協会が紹介する在宅看護専門看護師の二宮さんは、訪問看護の業務をしながら、認知症初期集中支援チームの立ち上げ・運営に携わっています。さらに、活動データをまとめて発表したり、近隣自治体との情報交換をきっかけに4市合同のチーム会議につなげたりするなど、地域の仕組みづくりにも関わっています。
実際の役割や待遇は勤務先によって異なりますが、 経験をもとに、教育・研究・地域連携などへ専門性を広げ、役割を担う選択肢を広げることが可能です。
在宅看護専門看護師に向いている人
在宅看護専門看護師は、次のような方に向いています。
- 利用者さまへの看護をさらに深めたい人
- 複雑な事例について専門的に考えられる力を身につけたい人
- 自分の経験を後輩や看護師の成長に生かしたい人
- 地域の在宅看護にも関心がある人
- 将来的に教育・研究・管理などにも活動の幅を広げたい人
すべてに当てはまる必要はありません。「訪問看護の経験をさらに深めたい」という思いがあり、そのために大学院で学ぶことに価値を感じられるかが、進学を考えるうえで重要です。
在宅看護専門看護師に関するよくある質問
在宅看護専門看護師についてよくある質問にQ&A形式で回答します。
Q1.在宅看護専門看護師になるには何年かかりますか?
看護師免許取得後の経験を積み、大学院修士課程で所定の教育課程を修了したうえで認定審査に合格する必要があります。
大学院は標準2年程度ですが、長期履修制度を利用する場合は修了まで3〜4年かかることもあります。
Q2.働きながら在宅看護専門看護師を目指せますか?
大学院によっては、長期履修制度を活用することで、働きながら進学できる場合があります。
ただし、実習期間はまとまった時間が必要になるため、勤務先の理解と勤務調整が欠かせません。進学を考え始めた段階で、早めに看護師長や人事課へ相談しておきましょう。
Q3.在宅看護専門看護師の求人はどこで探せますか?
訪問看護専門の求人サイトや、病院の看護部の採用ページなどで探せます。
在宅看護専門看護師を募集する求人は多くありませんが、資格を活かせる環境かどうかは、専門看護師の在籍状況や教育・相談体制、地域連携に関する役割の有無などから判断できます。

Q4.在宅看護専門看護師の給与はどのくらいですか?
日本看護協会の2022年度調査によると、在宅看護専門看護師の給与は月額平均42万2,921円です。
ただし、この数値は回答者24人分の集計であり、勤務先の規模や地域、職位によって幅があります。資格を取得したからといって給与が一律に上乗せされるわけではないため、求人ごとに資格手当の有無を確認することをおすすめします。
Q5.在宅看護専門看護師は訪問看護ステーションで働けますか?
はい、働けます。
在宅看護分野は、訪問看護ステーションでの活動と親和性の高い分野です。複雑な事例への対応、訪問看護師への相談・教育、地域の多職種との連携など、専門性を発揮できる場面があります。
在宅看護の専門性を高めたいなら在宅看護専門看護師を目指そう
在宅看護専門看護師は、在宅療養者とご家族の生活を支える高度な看護実践能力に加え、在宅看護の質向上に取り組む専門看護師です。
資格取得には、看護師としての実務研修に加えて、大学院で専門看護師教育課程を修了し、認定審査に合格する必要があります。そのため、資格取得を考える際は、「専門看護師になること」だけを目標にするのではなく、これまでの訪問看護の経験を今後どのように発展させたいのかを考えることが大切です。
「複雑な事例への対応力を高めたい」「在宅看護の専門性を深めたい」「将来的に教育・研究などにも活動の幅を広げたい」という方は、在宅看護専門看護師をキャリアの選択肢として検討してみるとよいでしょう。訪問看護専門の求人サイト「ナスキャリ(NsPace Career)」も活用してみてください。
<参考サイト・文献>
分野別所属先種別登録者数一覧(2025年12月)|公益社団法人日本看護協会
都道府県別登録者数【全体版】【分野別】(日本地図版)2025年12月現在|公益社団法人日本看護協会
分野別・所属施設別登録者数(2025年12月)|公益社団法人日本看護協会
片倉ら,訪問看護事業所における在宅看護専門看護師の能力―在宅看取りを積極的に実施する医師の認識にもとづく質的研究―, 日本高度実践看護学会誌 Vol. 13 2026.
2026年度専門看護師教育機関・課程一覧(110大学大学院330教育課程)|公益社団法人日本看護協会
「2022年度専門看護師・認定看護師に対する評価・処遇に関する調査」報告書|公益社団法人日本看護協会
| 監修:飛鳥馬 沙耶(あすま さや)/訪問看護ステーション 管理者 HCU・高度急性期病棟にて約6年間、循環器・心臓外科・脳外科領域を中心とした急性期看護に従事。2023年より訪問看護ステーションの管理者として、在宅医療の現場に携わる。専門領域は、訪問看護・在宅医療、急性期看護。 |
ナスキャリナビ 編集部 「ナスキャリナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「ナスキャリ」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。
