家族支援専門看護師とは?役割と資格取得の方法、活躍できる場所を解説

「家族支援専門看護師にはどうすればなれるの?」「不安や悩みを抱えるご家族に専門的に支援したい」
このように疑問を感じる看護師は少なくありません。家族支援専門看護師は、患者さまの回復を促進するためにご家族を支援する専門看護師です。患者さまとご家族をひとつの単位として捉え、家族全体の力を引き出すように支えます。
この記事を読むと、家族支援専門看護師の役割や資格取得までの道のり、活躍できる場所が整理できます。ほかの専門看護師や認定看護師との違いも分かり、自分に合ったキャリアを考えられるようになるでしょう。
家族支援専門看護師とは
家族支援専門看護師とは、家族支援分野で高度な看護実践能力を持つと日本看護協会に認定された専門看護師(CNS:Certified Nurse Specialist)です。2008年4月に分野が特定され、同年11月に認定が開始されました。
患者さまの回復を促進するために家族を支援する
日本看護協会は、家族支援分野の特徴を「患者の回復を促進するために家族を支援する。患者を含む家族本来のセルフケア機能を高め、主体的に問題解決できるよう身体的、精神的、社会的に支援し、水準の高い看護を提供する」としています。
ポイントは、ご家族の悩みを聞くだけの役割ではないことです。もともと持っている力に目を向け、その力を引き出しながら、ご家族自身が課題を解決できるよう支援します。患者さまとご家族を切り離さず、ひとつの単位として捉えることが、この分野の特徴です。
家族支援専門看護師の人数
日本看護協会の統計によると、家族支援分野の登録者数は2025年12月現在で102人です。
専門看護師の総数3,644人のうち、およそ2.8%にあたります。
家族支援専門看護師が働く場所
家族支援専門看護師は、病院の病棟や外来、退院支援・地域連携部門、訪問看護など患者さまとご家族に関わるさまざまな場で活動しています。
登録者数は病院が最も多く67人、次いで学校・大学15人、訪問看護ステーション11人と続きます(2025年12月時点)。
実際に、日本看護協会のホームページで紹介されている関根光枝さんは、急性期病院の相談支援部門で退院支援や医療・療養相談に携わった後、訪問看護ステーションへ異動しています。家族支援専門看護師は、小児から高齢者まで、年齢や疾患を問わず専門性を発揮できると言えるでしょう。
家族支援専門看護師の6つの役割と仕事内容
日本看護協会が定める専門看護師の6つの役割が、家族支援分野では以下のように現れます。
| 役割 | 家族支援専門看護師の仕事内容 |
| 実践 | セルフケア機能をアセスメントし、ご家族が課題を解決できるよう支援する |
| 相談 | ご家族への対応に迷う看護師からの相談に応じ、関わり方を一緒に検討する |
| 調整 | 医師・ケアマネジャー・訪問看護師との間で、ご家族の意向を共有する |
| 倫理調整 | 治療方針や療養場所について家族内で意見が分かれる場面を助ける |
| 教育 | 家族看護の視点について、院内研修やカンファレンスでスタッフに伝える |
| 研究 | ご家族への支援の実践を振り返り、看護の質向上につなげる |
実際に、家族支援専門看護師は、介護力不足から転院が妥当と考えていた患者さまについて、ご家族が希望する自宅退院に向けて多職種で連携し、自宅退院につなげた事例があります。
また、延命治療を望まない患者さまの気管切開への同意をめぐって家族内で意見が分かれたケースでは、医療者・家族が患者さまの意向と現状を踏まえて話し合う場を設けました。
家族支援専門看護師になるには
家族支援専門看護師の資格取得までの流れは次の4ステップです。
- 看護師として必要な実務研修を積む
- 大学院で家族支援専門看護師の教育課程を修了する
- 日本看護協会の認定審査に合格して登録する
- 5年ごとに認定を更新する
看護師資格を取得し、大学院での学びを経て認定審査に合格するまで、数年単位の準備期間を見込んでおきましょう。
1.看護師として必要な実務研修を積む
家族支援専門看護師になるには、看護師の資格取得後の実務研修が通算5年以上あり、そのうち3年以上は家族看護分野での経験が必要です。
家族支援専門看護師を目指す場合は、患者さまだけでなくご家族への支援に関わる経験を積むことになります。実務研修として認められる範囲は、日本看護協会の公式情報で確認しましょう。
2.大学院で家族支援専門看護師の教育課程を修了する
看護系大学院の修士課程を修了し、日本看護系大学協議会が定める総計38単位 を修得します。
修士課程の標準的な修学期間は2年ですが、大学院によっては長期履修制度を設け、働きながら3〜4年かけて学べる場合もあります。
また、日本看護協会は専門看護師教育課程以外の修士課程を修了した方(コース外修了者)を対象に、教育要件を事前に確認する「受験資格審査」を実施しています。認定された専門看護師教育課程と同等以上の科目・単位(38単位以上)を取得していると認められれば、認定審査を受験できるという仕組みです。
3.日本看護協会の認定審査に合格して登録する
必要な単位を修得したら、日本看護協会に申請し、専門看護師認定審査を受けます。審査は書類審査と筆記試験(マークシート方式・四肢択一、100分)です。
2026年に実施される第36回専門看護師認定審査では、筆記試験が10月7日に予定されています。審査料と合格後の認定料はいずれも5万1,700円(税込)です。
4.5年ごとに認定を更新する
専門看護師の認定期間は5年です。資格を継続するには、5年ごとに認定更新審査を受ける必要があります。
2025年度から制度が変更され、看護実践時間2,000時間以上の要件や実践報告書の提出は不要となりました。2028年度からは、筆頭者として学術集会等での発表または論文掲載を2回以上行うことなどが求められます。
なお、2025~2027年度に認定有効期間を迎える方には特例措置が適用される点に注意が必要です。
更新の要件は変更される可能性もあるため、更新時期が近づいたら日本看護協会の公式情報を確認しておくとスムーズです。
関連記事:専門看護師とは?専門分野14個の種類や認定看護師との違いを解説!
家族支援専門看護師の大学院を選ぶポイント
大学院は通えるかだけでなく、働きながら修了できるか、どの領域を専門的に学べるかという視点で選ぶことが大切です。
家族支援の教育課程がある大学院を探す
2026年度に家族支援専門看護師の教育課程を設置している大学院は、以下の5校です。
| 教育機関 | 都道府県 |
| 東海大学大学院 | 神奈川県 |
| 愛知県立大学大学院 | 愛知県 |
| 大阪公立大学大学院 | 大阪府 |
| 神戸大学大学院 | 兵庫県 |
| 高知県立大学大学院 | 高知県 |
関東以西に偏っており、北海道・東北や九州には設置がありません。設置校は年度によって変わるため、日本看護協会の最新の教育機関一覧で確認しましょう。
働きながら通える大学院か確認する
家族支援の課程がある大学院は少なく、地域も限られています。そのため、以下の条件を確認しましょう。
- 長期履修制度があるか
- 平日の昼間以外に開講される授業があるか
- オンラインで受講できる授業があるか
- 実習はいつ、どのくらいの期間おこなうのか
通学できる範囲に大学院がない場合は、転居や休職も視野に入れた検討が必要であるため、出願前に看護師長や人事課に確認しておくと安心です。
学費や奨学金・支援制度を確認する
大学院への進学では、入学料や授業料だけでなく、通学費、教材費、実習にかかる費用、場合によっては住居費も必要になります。休職や勤務時間短縮によって収入が減少する場合もあります。
大学院の奨学金や日本看護協会の奨学金、勤務先の資格取得支援制度などが利用できるかも確認しておくと、費用面を心配しなくて済みます。
大学院で学べる内容を比較する
大学院は、身につけたい家族支援とカリキュラムが合っているかを確認して選びましょう。大学院によって授業内容や実習先、研究環境が異なるためです。比較するときは、次の点を確認します。
- 家族看護学・家族支援の授業内容
- 実習先や実習内容
- 希望する領域の研究
- 指導を受けたい教員の存在
実際に、大学院で家族看護の理論や家族アセスメントを学び、実習を通じてアセスメントする力を身につけたり、がん患者の告知におけるご家族へのケアをテーマに研究にも取り組んだりする事例もあります。
家族支援専門看護師とほかの専門看護師・認定看護師との違い
家族支援専門看護師は、対象範囲や役割がほかの資格と異なります。代表的な違いを見ていきましょう。
家族支援専門看護師と在宅看護専門看護師の違い
「ご家族に焦点を当てるか」「在宅での療養生活に焦点を当てるか」に違いがあります。
在宅看護専門看護師は、在宅で療養する患者さまとご家族が、住み慣れた生活の場で療養を続けられるよう支援します。対して、家族支援専門看護師は、療養場所を問わず、患者さまを含むご家族がケアの対象です。
そのため、在宅療養中のご家族を支援する場面では、両者の専門性が重なることも少なくありません。在宅看護専門看護師については、下記の記事でも詳しく解説しているため、確認してみてください。
関連記事:在宅看護専門看護師とは?役割や資格取得までの流れ、大学院を選ぶコツを解説
家族支援専門看護師と老人看護専門看護師の違い
「ご家族に焦点を当てるか」「高齢者に焦点を当てるか」に違いがあります。
老人看護専門看護師は、認知症や嚥下障害など健康問題を持つ高齢者のQOL向上を目指します。一方、家族支援専門看護師は患者さまの年齢を限定せず、患者さまとご家族を支えます。
高齢者へのケアを深めたいなら老人看護、患者さまと家族全体への支援を専門的に学びたいなら家族支援が向いていると言えるでしょう。
関連記事:老人看護専門看護師とは?仕事内容やなる方法、認知症看護認定看護師との違いを解説
家族支援専門看護師と認定看護師の違い
代表的な違いを以下の表にまとめました。
| 項目 | 家族支援専門看護師 | 認定看護師 |
| 資格の種類 | 専門看護師 | 認定看護師 |
| 教育課程 | 大学院修士課程 | A課程あるいはB課程認定看護師教育課程(A課程修了者の認定審査は2029年度まで) |
| 役割 | 実践・相談・調整・倫理調整・教育・研究 | 実践・指導・相談 |
| 特徴 | ご家族をひとつの単位として支援する | 特定分野の熟練した看護実践をおこなう |
| 向いている人 | 家族支援・意思決定支援・多職種連携などを担いたい人 | 特定分野の実践力を高めたい人 |
専門看護師は、複雑な事例への実践に加えて、相談・調整・倫理調整・教育・研究まで含めて組織の看護の質向上に関わります。なお、認定看護師には「家族支援」に相当する分野はありません。ご家族への支援を専門的に学びたい場合は、専門看護師が選択肢になります。
家族支援専門看護師を目指すメリット
家族支援専門看護師を目指すメリットは、ご家族への支援に専門性を発揮できることです。
大学院では家族看護学の理論や家族アセスメントを学び、これまで経験や感覚に頼っていたご家族への関わりを、根拠をもって考えられるようになります。
また、延命処置を選択したり、退院後の施設を検討したりするなど家族間で意見が分かれる複雑な課題への支援にも専門性を活かせます。さらに、看護師への教育・相談や研究にも携われるため、家族支援を軸に活動の幅を広げられる点もメリットです。
家族支援専門看護師に向いている人
家族支援専門看護師は、患者さまだけでなくご家族も含めて支援したい人に向いています。次のような考え方を持つ看護師は、家族支援の専門性を活かしやすいでしょう。
- 患者さまとご家族の双方の思いを大切にしたい人
- 家族間で意見が分かれる場面の調整に関心がある人
- 退院支援や在宅療養における家族支援を深めたい人
- 看護師への相談・教育や多職種連携にも携わりたい人
「ご家族への関わり方をもっと深く学びたい」「家族支援を自分の専門性にしたい」と感じている人は、家族支援専門看護師をキャリアの選択肢として検討すると良いでしょう。
家族支援専門看護師を目指す前に確認したいこと
家族支援専門看護師を目指すなら、大学院に進学できるかだけでなく、資格取得後の働き方まで考えておくことが大切です。進学を決める前に、次の点を確認しておきましょう。
大学院進学と仕事を両立できるか
大学院の通学日数や授業時間、実習期間を確認しましょう。家族支援の課程は全国5校のみのため、通学の可否は早い段階で確認が必要です。
夜勤や勤務日数を調整できるか、職場に相談しておくことも大切です。
資格取得後に専門性を発揮できる職場か
家族支援専門看護師として、どのような役割を担えるか確認しましょう。
家族支援に関する相談・教育・多職種連携の機会があるかどうかも、就職・転職先を選ぶ際の重要な判断材料です。
専門看護師としての役割は、配置・職場の体制・実践機会によって異なるため、事前に希望する就職先へ確認しましょう。
どの領域で家族支援を実践したいか
急性期・慢性期・がん・小児など、自分が関心のある領域を整理しておきましょう。
病院だけでなく、退院支援や訪問看護など、地域での実践も選択肢に入れて検討することをおすすめします。
家族支援専門看護師に関するよくある質問
家族支援専門看護師について、よく聞かれる質問にお答えします。
Q1.家族支援専門看護師の大学院はどこにありますか?
2026年度時点では、全国で5課程のみです。選択肢が限られているため、進学を検討する際は、日本看護協会が公表する最新の教育機関一覧を確認しましょう。

Q2.家族支援専門看護師の給与はどのくらいですか?
日本看護協会の2022年度調査によると、家族支援専門看護師の給与総月額の平均は42万4,541円です。
ただし、この数値は回答者19人分の集計であり、勤務先の規模や地域、職位によって幅があります。資格手当の有無や金額も施設によって異なるため、求人ごとに確認することをおすすめします。
関連記事:専門看護師の給料は約549万円?資格手当や認定看護師との給料の違いを解説
Q3.働きながら家族支援専門看護師を目指せますか?
大学院によっては、長期履修制度を活用することで、働きながら進学できる場合があります。
ただし、通学圏内にあるかどうかが分かれ目になります。夜勤の調整や休職制度の有無も職場によって異なるため、早めに相談しておきましょう。
Q4.家族支援専門看護師は訪問看護で活かせますか?
はい、活かせます。自宅療養では、ご家族が介護の担い手になることが多く、ご家族への支援が療養生活の継続を左右します。介護負担のアセスメントや、ご家族間の意向の調整など、家族支援の専門性を発揮できる場面が多くあります。
ご家族を含めた看護を深めたいなら家族支援専門看護師を検討しよう
家族支援専門看護師は、患者さまとご家族をひとつのまとまりとして捉え、家族が抱える課題の解決や意思決定を支援する専門看護師です。
ご家族への関わりに難しさを感じている方や、家族支援を自分の専門性として深めたい方にとって、キャリアの選択肢の1つになります。
資格取得には大学院への進学など、時間や費用の確保が必要です。どのような家族支援を実践したいのか、資格取得後にどのように専門性を活かしたいのかを考えたうえで、進学やキャリアを検討しましょう。
家族支援専門看護師として働ける職場や、資格取得後のキャリアを考えている方は、訪問看護専門の求人サイト「ナスキャリ(NsPace Career)」も活用してみてください。
<参考サイト・文献>
分野別所属先種別登録者数一覧(2025年12月)|公益社団法人日本看護協会
分野別・所属施設別登録者数(2025年12月)|日本看護協会
「2022年度専門看護師・認定看護師に対する評価・処遇に関する調査」報告書|公益社団法人日本看護協会
| 監修:飛鳥馬 沙耶(あすま さや)/訪問看護ステーション 管理者 HCU・高度急性期病棟にて約6年間、循環器・心臓外科・脳外科領域を中心とした急性期看護に従事。2023年より訪問看護ステーションの管理者として、在宅医療の現場に携わる。専門領域は、訪問看護・在宅医療、急性期看護。 |
ナスキャリナビ 編集部 「ナスキャリナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「ナスキャリ」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。
