病棟看護師の年収は?年収アップできる病棟やきついといわれる理由6つ
「病棟の看護師の年収は高いの?」「年収アップが期待できる病棟ってどこ?」
看護師の職場といえば病棟をイメージする方が多く、実際に看護師の方の半数以上が病院で勤務しています。
ただし、病棟で勤務したことがない看護師の方にとって、病棟看護師の年収や実態などわからないことも多いでしょう。
この記事では、病棟看護師の年収や年収アップが期待できる病棟などを紹介します。病棟看護師の年収事情に悩んでいるあなたの手助けとなれれば幸いです。
病棟看護師の年収は?
厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、看護師の平均年収は508万1,700円であるため、病棟看護師も同等の年収であると推測できます。
病棟看護師の年収は、公的機関から発表されていないものの、看護師の54.4%が病棟で働いており、全看護師の年収と病棟看護師の年収はそれほどの差はないといえるためです。
厚生労働省「看護職員就業状況等実態調査結果」によると、看護師の就業場所は次のとおりです。
就業場所 | 割合 |
病院(病棟) | 54.4% |
病院(外来・その他) | 14.7% |
診療所(有床・無床) | 8.9% |
保健所または市町村 | 6.4% |
介護保健施設など | 3.8% |
参考:看護職員就業状況等実態調査結果|厚生労働省(上位5位までを抜粋)
病棟看護師の年収は、勤務先や夜勤回数、手当などによって異なるため、あくまでも目安としてください。
病棟看護師の年収の比較【配属先】
次に、病棟看護師の方の年収を配属先ごとに比較してみます。
- 精神科の病棟
- 小児科の病棟
- 手術室
- 外来
- 集中治療室
- 救命救急室
それぞれの病棟の年収事情を詳しくみていきましょう。
精神科の病棟
一般的に、精神科の病棟は特殊勤務手当がつくところがあるため、看護師の方の年収は高くなる傾向です。
特殊勤務手当とは、集中力や体力を必要とする心身の負担が大きい業務をおこなっている看護師に加算される手当のことです。「危険手当」「特殊業務手当」と呼ばれることもあります。
一方で、精神科の病棟は手術や救急搬送の件数が少なかったり、残業がなく時間外手当がもらえなかったりするため、ほかの診療科と比べて年収が少ないケースもあります。
小児科の病棟
小児科看護師の方の年収は、ほかの病棟と大差はないといえます。
ほかの病棟と同じように、小児科の病棟もシフト制の勤務であり、夜勤手当が見込めるからです。
小児科看護師の方は乳幼児や小児患者さまの健康を守ったり、治療をサポートしたりするため知識やスキルが必要です。さらには、子どもの成長段階に応じたケアや家族へのサポートも求められます。
手術室
一般的に、手術室に配属される看護師の方は年収が高い傾向があります。手術室では、時間外手当や危険手当などさまざまな手当がつきやすいからです。
具体的には、手術室の看護師の方は10時間を超える手術や夜間の緊急手術に対応することもあります。
ただし、病院によっては夜勤の体制はなくオンコール体制としており、夜勤手当が支給されないケースがあるため、手術室看護師の方の年収が低くなる恐れがあります。
手術室看護師について、さらに詳しく知りたい方は下記の記事を参考にしてください。
関連記事:手術室看護師に向いている人とは?オペナースの仕事内容や向いていない人の特徴も解説
外来
一般病棟に比べて、外来で働く看護師の方は年収が低い傾向があります。
基本的に、外来は平日の8:00~17:00まで、日中のみの稼働であり夜勤手当や休日出勤手当などが支給されないためです。
ワークライフバランスを保ちやすいという利点があるものの、外来の看護師に転職する場合は年収がダウンする可能性があることを知っておきましょう。
集中治療室
集中治療室で働く看護師の方は、年収が高くなりやすいです。
集中治療室は重症患者を対象としており、看護師の方には高度なスキルと専門知識が求められ、これが年収に反映されるためです。
集中治療室の看護師の年収について、詳しく知りたい方は下記の記事を参考にしてください。
関連記事:ICU看護師の年収は約520万円!病棟より高い理由3つや向いている人を解説
救命救急室
救命救急室で働く看護師の方は、特殊勤務手当や時間外勤務手当などの手当がつくため、高い年収を得られる可能性があります。
また、救急機能がある病院は規模が大きく、そもそもの基本給やボーナスが高かったり、診療報酬が多かったりするため看護師の方の給料に反映されやすいです。
関連記事:救急看護師に向いている人の9つの特徴!年収やきついと言われる理由
病棟看護師の年収の比較【勤務先】
次に、病棟看護師の年収をほかの勤務先と比べます。
- 訪問看護ステーション
- クリニック
- 介護施設
それぞれの勤務先の年収を詳しく紹介します。
訪問看護ステーション
病棟看護師と比較して、訪問看護師の年収は低くなるケースがあります。
その理由として、訪問看護では夜勤手当がもらえなかったり、小規模の事業所のところが多く経営が安定していなかったりするためです。
さらに、利用者さまごとにケアする時間が決められており、時間外勤務手当が発生しにくいことも訪問看護師の年収に影響を与えている可能性があります。
一方で、多くの事業所ではオンコール手当があり、大規模で経営が安定している事業所や、訪問件数ごとに歩合制としているところもあるため、「年収は、病棟看護師よりも訪問看護師の方が上がった」という声も聞かれます。
転職活動を行う際には、条件などをよく確認してみましょう。
関連記事:訪問看護師の給料は高い?手取りや給料を上げる4つの方法を徹底解説
クリニック
クリニックの看護師の年収は、夜勤手当や時間外勤務手当などの手当が支給されない恐れがあるため低い傾向です。
ただし、クリニックの診療科の特性や地域の医療ニーズによって、看護師の年収に変動がみられます。
たとえば、皮膚科や美容外科などのクリニックでは自由診療のところが多く、独自に報酬を決めることができる分、看護師の年収が高くなりやすいです。
関連記事:クリニック看護師の平均年収・給料の相場は?病院勤務とどう違う?
介護施設
通常、介護施設の看護師の方は病院に比べると、年収が低めの傾向があります。
なぜなら、看護師の夜勤配置が義務付けられていないところや医療ニーズの低い施設があるためです。
介護施設では日勤が中心で、夜勤や休日出勤が少ないところもあるため、勤務形態が安定しており、生活リズムを維持しやすいという利点があります。
病棟看護師で年収アップしやすい配属先
病棟看護師の方で年収アップしやすい配属先は次のとおりです。
- 精神科の病棟
- 集中治療室
- 救命救急室
- 手術室
同じ病院で働き続けながら、高い収入を得たい方はこれらの病棟への異動希望を出すとよいでしょう。
ただし、年収ばかりに意識を向けると、業務内容が自身のスキルと合わなかったり人間関係に悩んだりする恐れがあるため注意してくださいね。
病棟看護師が年収アップを目指す方法
ここでは、病棟看護師の方が年収アップする方法を解説します。
- 手当が厚い病棟に異動希望を出す
- 夜勤の回数を増やす
- 病棟で必要なスキルを身につける
- 管理職を目指す
- 転職する
それぞれの方法を詳しくみていきましょう
手当が厚い病棟に異動希望を出す
病棟看護師が年収アップを目指す方法のひとつに、手当が厚い病棟に異動することが挙げられます。
とくに、救急病棟や集中治療室など夜勤や緊急入院が多い部署では、基本給に加え夜勤手当や危険手当が支給されるため、年収が増える可能性があります。
ただし、異動を検討する際は手当だけでなく、自身の働き方や体力面を考慮し、無理のない範囲で選ぶことが重要です。
さらに、手当の多い病棟はスタッフが不足しがちであるため、病棟内が忙しかったり休みが少なかったりする恐れがあります。
自身のキャリアと収入の両立を考える際、こうした手厚い手当がある病棟への異動は有効な選択肢となります。
夜勤の回数を増やす
夜勤の回数を増やすことで、病棟看護師の方は年収アップを実現できます。
病棟勤務では、夜勤手当が基本給に加算されるため、夜勤の回数が多ければ多いほど収入が増加します。日本看護協会「2023年病院看護実態調査報告書」が公表している調査による夜勤手当は次のとおりです。
勤務形態 | 夜勤手当額 |
2交代制 | 1万1,368円 |
3交代制(深夜勤) | 5,199円 |
3交代制(準夜勤) | 4,234円 |
病院によって異なりますが、1回の夜勤で1万円以上の手当がつくことも少なくありません。
夜勤の回数を増やすことで、短期間で収入を増やせる一方で、体力的・精神的な負担が大きくなるため、無理のない範囲で働くことが重要です。また、夜勤の多い生活は体調管理が難しいため、健康維持のための工夫も不可欠です。
病棟で必要なスキルを身につける
専門性の高いスキルを持つ看護師は、病院からの評価が高まり、年収アップや昇進のチャンスが広がります。
たとえば、救急対応や集中治療、人工呼吸器の管理など特定の技術や知識が求められる病棟では、看護師の専門性が年収に反映されることがあります。
管理職を目指す
病棟看護師が年収をアップさせるための有効な方法は、管理職を目指すことです。
一般的には、看護師の職位が上がるにつれて年収も増加する傾向があります。
たとえば、看護師長や看護部長といった役職は、経営に近いポジションに立つため、責任が増す一方で、年収が大幅に向上することが期待できます。
しかし、管理職になるためのハードルは高いといえます。実際に、管理職と非管理職の割合は次の通りです。
役職 | 割合 |
非管理職 | 73% |
中間管理職 | 22.8% |
管理職 | 4.2% |
参考:2021 年 看護職員実態調査|日本看護協会(非管理職:一般の保健師、助産師、看護師、准看護師など。中間管理職:看護師長、副看護師長、主任など。管理職:看護部長、副看護部長、訪問看護ステーション所長など)
自身のキャリアプランを見直したうえで目指していくことが大切です。
転職する
病棟看護師が年収アップを目指すひとつの方法は、転職です。
看護師としての経験やスキルを活かしつつ、より良い条件の職場を探すことで、年収の向上が期待できます。厚生労働省「看護師等(看護職員)の確保を巡る状況」によると、2022年の看護師・准看護師の有効求人倍率は2.20倍で、ほかの職業は1.19倍です。
つまり、転職市場は看護師の方の需要が高いため選択肢が豊富にあるといえます。
病棟看護師がきついといわれる6つの理由
ここでは、病棟看護師が「きつい」といわれる理由を解説します。
- 人間関係がきつい
- 身体的な介護が多く体力的にきつい
- 指導がきつい
- 仕事事内容が合っていない
- 医療ミスへの不安が強い
- 希望の配属先とは異なる診療科で働いている
病棟看護師に転職すると、収入アップが実現できる可能性がある一方で、さまざまな理由により「きつい」と感じるかもしれません。それぞれの理由を理解しておくことで、後悔のない転職を実現できるでしょう。
1.人間関係がきつい
病棟では看護師や医師、看護助手などさまざまな職種のスタッフと連携しながら働くため、円滑に業務を進めるためには良好な人間関係が不可欠です。
しかし、夜勤や残業が続く過酷な環境では疲労やストレスがたまりやすく、些細なことでトラブルが生じることも少なくありません。また、看護師の上下関係や派閥が存在する職場では、意見が衝突したり摩擦が生じたりしてストレス要因になります。
こうした人間関係のトラブルは、病棟看護師の方のメンタルに大きな影響を及ぼし、最終的には職場の離職につながることがあります。
退職理由 | 割合 |
出産・育児のため | 22.1% |
その他 | 19.7% |
結婚のため | 17.7% |
他施設への興味 | 15.1% |
人間関係がよくないから | 12.8% |
参考:看護職員就業状況等実態調査結果|厚生労働省(複数回答。上位5つまでを記載)
人間関係が理由で病棟勤務を離れ、別の職場を選ぶ方もいるため、面接で採用担当者に質問したり、口コミの情報を確認したりすることが大事です。
2.身体的な介護が多く体力的にきつい
病棟看護師の業務には、患者さまの体位変換や移乗、入浴や排泄の介助など重労働が含まれています。
寝たきりの患者さまやリハビリ中の患者さまが多い病棟では、身体的な介護の頻度が高く、体力を使う場面が増えます。これに加えて、夜勤や残業が続くと疲れやストレスが溜まり、体調を崩す看護師も少なくありません。
このような身体的な負担が大きい環境で働くことに「きつい」と感じる方もいます。
3.指導がきつい
病棟勤務では、経験豊富な看護師の方からの指導が厳しくなりがちです。
病棟では緊急性が高い業務も多く、ミスが許されない状況のなかで働くため、指導も厳格になる傾向があります。
新人や中途採用の看護師は、業務に慣れるまでの間、先輩看護師から細かく指導を受けます。
しかし、厳しい指導はプレッシャーとなり、精神的な負担を感じることもあります。
また、指導者の個性やコミュニケーションスタイルが原因で、パワーハラスメントと感じることもあり、ストレスの要因となる場合もあります。
4.仕事内容が合っていない
病棟看護師の業務は、次のように多岐にわたります。
- 患者さまの全身管理
- 医療機器の取り扱い
- 急変時の対応
- 身体介助
これらの業務が自分に合わないと感じる方にとって、心身ともに大きな負担を抱えることになります。
とくに、急性期医療が求められる病棟では、スピーディーで正確な対応が常に求められ、業務に適応できないと感じる方にとっては大きなストレス源となるでしょう。
5.医療ミスへの不安が強い
病棟看護師のなかには、常に医療ミスへのプレッシャーを感じながら働いている方もいます。
「薬の投与を間違えたらどうしよう」「患者さまの状態の悪化に気づけなかったらどうしよう」など、精神的な負担が大きくなりやすいです。
この強い不安感は、日々の業務におけるストレスを増大させ、仕事のモチベーションを低下させる要因となります。
6.希望の配属先とは異なる診療科で働いている
病棟看護師は、特定の診療科に強い興味を持って職場に入る場合、実際の配属先が希望と異なり期待外れに感じることがあります。
たとえば、外科希望にもかかわらず内科に配属された場合は求められるスキルや知識が異なったり、実践したケアができなかったりしてストレスを感じるかもしれません。
また、患者さまの疾患や治療方針が異なるため、専門的な知識が不足し、業務に対する不安が増すことがあります。
このような状況は、看護師としての自信を失い、モチベーションの低下にもつながります。
まとめ
病棟看護師は、看護師全体の54.4%を占めており、看護師の平均年収の508万1,700円と大きな差はないといえます。
精神科や集中治療室、救命救急室、手術室などでは特殊勤務手当が支給されるため高い年収が期待できます。一方で、外来やクリニック、介護施設では年収が低めになる傾向があるため注意が必要です。
年収アップを目指すためには、手当が厚い病棟への異動や夜勤回数の増加、必要なスキルの習得が効果的です。自身の適性と環境に合った働き方を選びましょう。
参考文献・サイト
「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。