ICU看護師の年収は約520万円!病棟より高い理由3つや向いている人を解説

公開日:2024/05/16 更新日:2024/05/22
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「ICU看護師は年収がどうして高いの?」「ICU看護師って年収は高いけど私でもなれるの?」

このような疑問を持っている看護師の方はいませんか?

ICU(intensive care unit)看護師は重症の患者さまをケアするため、幅広い専門知識や正確な判断力が求められます。

本記事ではICU看護師の年収や病棟よりも高いといわれる理由、向いている人の特徴などを紹介します。ICU看護師に興味があるものの、年収や向いている人の特徴がわからず、一歩踏み出す勇気を持てない方の悩みを解決するきっかけになれると幸いです。

ICUの看護師の年収は約520万円

厚生労働省のデータによると、病院の規模や年齢によっても異なりますが、看護師の年収は500 万円前後です。

ICU看護師の給料は、ほかの病棟の看護師と比較して高い傾向です。

ただし、正看護師やパートの看護師、病院の規模、勤務地などさまざまな条件によりICU看護師の年収は異なります。

次の項でICUの看護師に給料が、ほかの看護師よりも高いのか詳しく解説します。

ICUの看護師の給料が病棟よりも高い3つの理由

ICUの看護師の給料が、病棟よりも高い理由を以下の3つにわけて解説します。

  • 特殊勤務手当が支給されるため
  • 夜勤手当が多いため
  • 新卒の看護師が配属されにくいため

それぞれの理由について詳しくみていきましょう。

特殊勤務手当が支給されるため

一般的にICUでは特殊勤務手当(危険手当)が支給されます。これは、身体的・精神的負担が大きい仕事や特殊な仕事などをする労働者に支給される手当てです。

ICUでは、生命の危機にある患者さまの看護にあたるため、24時間ずっと緊迫した環境で仕事をします。

また、感染症や医療事故のリスクも高いためこのような手当が支給されます。

そのため、一般病棟とICU看護師で基本給は変わらないものの、特殊勤務手当の相場である月1〜2万円の分、ICU看護師の方は給与が高くなる傾向です。

ただし、病院や施設によって特殊勤務手当の金額は異なるため確認してみてくださいね。

夜勤手当が多いため

一般的に、病棟と比べICUは夜勤回数が多い傾向があります。

一般病棟では、夜間の看護師の数は日勤帯と比べ減ります。

しかし、ICUでは24時間を通して、患者さま2人に対して少なくとも看護師1名以上を常に配置するように義務づけられているため、日勤も夜勤も看護師の数は変わりません。

ある調査によると、ICU・CCUでの夜勤回数の「月9回以上」の割合が44.2%とされています。

夜勤回数が多いほど、夜勤手当の支給額が増えます。とはいえ、体調を崩すリスクもあるため、夜勤の回数や休みの確保の仕方をはじめ休暇の取得方法や残業時間、研修などはあらかじめ確認することがおすすめです。

新卒の看護師が配属されにくいため

一般的に新卒看護師は、集中治療室に配属されにくいため、給料がほかの病棟と比べると高くなる傾向です。

ICUに新卒の看護師が配属されにくい理由は以下のとおりです。

  • 患者さまの状態が重篤であるため
  • 幅広い知識が必要なため
  • 正確なアセスメント力が求められるため
  • ストレスが高い、かつ高度な業務が多いため
  • 多職種との連携が必要なため

病院によっては「 ICUの配属条件は看護師経験3年以上」と提示されている場合もあるので、確認してみてくださいね。

ICUの看護師になるためには

病院によっては経験年数の条件がある場合があり、あらかじめ確認することをおすすめします。

また、ICU看護師になるために特別な資格はいりませんが、重症の患者さまが多く、急変対応の頻度は一般病棟に比べ上がります。そのため、BLSやACLSの資格を取得しておくことがおすすめです。

それに加えて、小児の患者さまが入室するICUではPALS(小児二次救命処置)も持っていると役立ちます。そのほかにも、呼吸療法認定士の資格を持っていると良いでしょう。

というのも、集中治療室では人工呼吸器を使用する患者さまが多く、呼吸に関する知識が求められるためです。これらは、必須ではありませんがICUで働くうえで役立ちます。

またICUでみる対象患者さまの疾患についても幅広い領域の知識が必要です。ICUの代表的な対象疾患をみてみましょう。

  • 急性冠動脈症候群(急性心筋梗塞・急性心不全など)
  • 急性呼吸不全(重症肺炎など)
  • 循環器手術後
  • 敗血症
  • 糖尿病昏睡
  • 脳卒中急性期(脳梗塞・脳出血など)
  • 消化器・婦人科・呼吸器など各種領域の手術後で全身管理が必要な場合

これら以外にも、急変や重症化により24時間の厳密な管理が必要となる患者さまが入室します。

ICU看護師はさまざまな領域の患者さまの急性期の管理が必要であり、領域を超えた知識が必要です。

入室する対象疾患は病院によって異なるため、どのような患者さまが多いのか確認してみるとよいでしょう。

ICUの看護師の仕事内容

ここでは、ICUの看護師の主な仕事内容を解説します。

  • 術前・術後の患者さんのケア
  • 24時間体制のモニタリング
  • 人工呼吸器や補助循環装置などの医療機器の管理
  • 医師がおこなう処置の介助
  • ご家族の精神的なサポート

それぞれ5つのポイントを押さえておいてください。

術前・術後の患者さんのケア

術前・術後の患者さまのケアはICU看護師の重要な仕事です。では、どのようなことをするのか具体的にみてみましょう。

仕事内容
術前・術前訪問(ICU入室後のスケジュール、カテーテルやドレーンなどの挿入物、リハビリの進め方などを説明するため) ・術前の全身状態の観察(状態が急変したときにはICUから手術室へ移動することもある。また、術後の観察に役立つ)
術後・術後合併症の有無の観察 ・全身管理(点滴、酸素療法、モニター管理など) ・術後の疼痛管理 ・早期離床のためのリハビリ開始

手術前の不安を軽減するのもICU看護師の大切な役割です。

また術後は「異常の早期発見」「回復に向けたリハビリテーション」「術後せん妄のケア」などをおこないます。

周手術期を通し、患者さまの身体的・精神的ケアをするのがICU看護師の重要な業務内容です。

24時間体制のモニタリング

ICU入室患者さまは、全身状態が不安定のため24時間体制のモニタリングが必要です。実際に、どのようなモニタリングをしているか具体的にみてみましょう。

名称目的
心電図モニター心拍数と不整脈、波形の変化の観察
SpO2モニター酸素飽和度の観察
呼吸数呼吸の回数やパターンの観察
血圧モニタリング・血圧の継続的な観察 ・動脈カテーテル(Aライン)を挿入し観血的に観察
中心静脈圧(CVP)・脱水傾向の有無や心不全兆候の観察 ・輸液管理や利尿剤投与などの指標
脳圧(ICP)頭蓋内圧の観察
スワンガンツカテーテル心機能の評価と管理
尿量腎機能や体内の水分バランスの管理

ICUに転職する前にICUでよく使うモニタリングの種類や基準値をあらかじめ知っておくことをおすすめします。

人工呼吸器や補助循環装置などの医療機器の管理

人工呼吸器や補助循環装置などの医療機器の管理は、ICU看護師の重要な仕事です。医師や臨床工学士が頻繁に状態の観察に来ますが、異常の早期発見には看護師の観察力が大切です。

それぞれの機器を管理するときに共通するポイントをみてみましょう。

  • なぜその機器が使われているのか
  • その機器を使うことでどのような効果があるのか
  • どのような仕組みで機器が動いているのか
  • 正常値や異常値はなにか
  • 機器を離脱できる目安はどのような状態か

ICUで使われる機器を最初からすべて理解することは難しいかもしれません。

ICUでは、それぞれの看護師の技量に合わせ、どのような機器をつけた患者さまを受け持つのか決める教育プランあるのが一般的です。そのため転職前に医療機器への不安があっても心配しないでくださいね。

医師がおこなう処置の介助

ICU看護師は医師がおこなう処置を介助する場面も多く、さまざまな知識が必要です。ICUでおこなわれる処置の具体例をみてみましょう。

  • Aライン挿入
  • 気管挿管
  • CVカテーテル挿入
  • 胸水や腹水の穿刺
  • トロッカーカテーテル挿入
  • 出血の処置介助(内視鏡を使用して出血源の特定や止血)
  • 急変時の対応

基本的な清潔操作や滅菌物品の取り扱いを覚えるところからはじめましょう。

同じ処置でも医師によって使う物品や方法が微妙に違うことがあるので、詳細に関しては入職してから徐々に覚えていきましょう。

ご家族の精神的なサポート

ICUの看護師は患者さまだけでなくご家族の精神的サポートも大切な仕事です。生命の危機状態にある患者さまを持つご家族は、精神的に動揺や混乱しているためです。

ご家族は、医師の説明の理解や、現状の把握ができてないことがあります。また患者さま本人が意思決定できずご家族にゆだねられることも少なくありません。

そのときに、ご家族に寄り添ってフォローをすることもICU看護師の重要な役割です。

いざ、混乱している患者さまのご家族を目の前にすると、どのように振る舞っていいのか分からなくなることがあるかもしれません。急性期における家族看護について事前に学んでおくと、ご家族に効果的なケアを提供できるでしょう。

ICUとHCU・CCU・SCUとの違い

ここでは、ICUと以下のユニットとの違いをみていきましょう。

  • HCU(High Care Unit):準集中治療室
  • CCU(Coronary Care Unit):冠動脈治療室
  • SCU(Stroke Care Unit):脳卒中治療室

それぞれの違いについて説明します。

ICUとHCUの違い

HCUは一般的にICUと一般病棟の中間に位置していることが多く、一般的にICUより重症度は低い患者さまが対象です。

HCUではモニター管理をしながらリハビリを積極的に開始します。患者さまが一般病棟へ移行できるようサポートします。

「いきなりICUは難しそう」「ICUに行く前にステップアップする機会がほしい」など、ICUで働くことに若干の不安がある看護師の方は、HCUも転職の候補に入れてみてくださいね。

ICUとCCUの違い

ICUの対象は重傷患者さま全般ですが、CCUの対象は心疾患の患者さまです。疾患の具体例をみてみましょう。

  • 急性冠症候群(急性心筋梗塞・不安定狭心症)
  • 狭心症(労作性狭心症、冠攣縮性狭心症)
  • 心不全
  • 不整脈

病院によっては区別がないこともあります。「とくに循環器の患者さまをみたい」「循環器に興味がある」という場合にはCCUがあるところに転職するのもおすすめです。

ICUとSCUの違い

SCU(脳卒中集中治療室)は脳血管障害の患者さまを専門的にケアします。主な対象疾患は以下のとおりです。

  • 脳梗塞
  • 脳出血
  • くも膜下出血

これらの疾患の看護に興味ある方は、SCUがある病院をぜひ調べてみてくださいね。

ICUの看護師に向いている人

ここでは、ICUの看護師に向いていつ人の特徴について解説します。

  • 観察力が高い人
  • 冷静に判断できる人
  • コミュニケーション能力が高い人
  • ICUの看護師に有利な資格に興味がある人

自分がICUの看護師に向いているのか気になる看護師の方も多いでしょう。ぜひ、参考にしてくださいね。

観察力が高い人

観察力が高い人はICU看護師に向いているといえます。重傷の患者さまは急変のリスクも高く、状態が変わりやすいためです。具体例をみてみましょう。

  • バイタルサインの変化の観察
  • 意識レベルの変化の観察
  • 皮膚や末梢循環の観察
  • 痛みの評価
  • 感染徴候の有無の観察

モニターの数値だけでなく、患者さまの細かな変化を見逃さないことが異常の早期発見の鍵となります。そのため、観察力はICU看護師にとって重要です。

冷静に判断できる人

冷静に判断できる人はICUに向いていると言えますと言えます。前述の通り、ICUでは急変のリスクが極めて高いためです。

患者さまの状態が急に変わり、急遽処置が必要となります。そのときに落ち着いて対応することがミスを防ぐことにつながります。

しかし、最初からすべてを冷静に判断できなくても大丈夫です。

ICUでは経験豊富な看護師もおり、急変時には先輩看護師もフォローに入るため、先輩の急変時の対応をみて少しずつ習得してくださいね。

コミュニケーション能力が高い人

ICU看護師にとってコミュニケーション能力が高いことは大切です。理由をみてみましょう。

状況理由
多職種との関わり医師・臨床工学士・薬剤師・リハビリなどさまざまな職種と関わることが多く、患者さまの状態を共有するのにコミュニケーション能力が高いとすみやかにおこなえるため
ご家族との関わり生命の危機状態にある患者さまのご家族は精神的な負担が大きく、ご家族とコミュニケーションをとることで不安の軽減や理解を深めるため
緊急時の対応急変時に状況を明確に伝えるため
患者さまとの関わり自分の意思を伝えられない患者さまの痛みや苦痛の訴えを読み取りケアにつなげるため

コミュニケーション能力の高さはICUで活かせるポイントです。コミュニケーション能力が高ければ、ICUの看護師として充実したお仕事ができるでしょう。

ICUの看護師に有利な資格に興味がある人

ICUは対象患者さまが幅広く、もともとの疾患もさまざまです。そのため、継続的な学習が必要です。また、医療機器に関しても学習が求められます。

そのため新しいことを学ぶことが好きな方や、以下のようなICU看護師に有利な資格に興味がある方は、学んだことが実際の看護に生かされるため、やりがいを感じられるでしょう。

  • BLS
  • ACLS
  • 呼吸認定療法士
  • JPEC(病院前外傷教育プログラム)

これらの資格はICUで持っていると役立つ資格となるので、ぜひ検討してみてください。

まとめ

ICUの看護師は手当や夜勤回数がほかと比べ多いことなどにより、給料が一般的に高い傾向です。

身体的負担や精神的負担も大きく、自分の健康管理が課題となるため休日にはしっかりリフレッシュしてくださいね。

ICUで重症患者さまの管理を学ぶことは、その先の看護師としてのキャリアでも必ず役立つ経験となるでしょう。

より良い条件で転職するためには求人サイトや転職サイトなどを活用して募集を探すのも一手です。年収が高く、さまざまなスキルが身に付くICU看護師を目指してみませんか?

参考文献・サイト

令和5年賃金構造基本統計調査|厚生労働省

集中治療部設置のための指針 2022年改訂版|日本集中治療医学会理事会

集中治療室(I C U)における安全管理について|厚生労働省

2021年度 夜勤実態調査結果|医労連

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記事投稿者プロフィール画像 NsPace Careerナビ 編集部

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