訪問看護の介護保険と医療保険の違いとは?フローチャートで分かりやすく解説

訪問看護師として働き始めると「この利用者さまは介護保険?医療保険?」と判断に迷う場面が出てきます。保険の種類によって訪問回数や自己負担額が変わるため、正確に算定するためにもそれぞれの保険制度を正しく理解しておくことが大切です。
この記事では、介護保険と医療保険の基本的な違いや、どちらが適用されるかの判断基準、保険が切り替わる場面例までを分かりやすく解説します。記事を読み終えるころには、利用者さまへの説明や日々の業務判断に自信が持てるようになるでしょう。
訪問看護における介護保険と医療保険の違い
訪問看護では「介護保険」と「医療保険」の2つの保険制度が利用されます。
介護保険は日常生活を支えるための制度、医療保険は病気やけがの治療・療養を支えるための制度です。訪問看護は両方の役割を担うサービスであるため、利用者さまの年齢や病状などに応じて適用される保険が決まります。
まずは、2つの保険の違いを比較表で確認しましょう。
| 項目 | 介護保険 | 医療保険 |
| 対象者 | ・要介護・要支援認定を受けた65歳以上の方 ・特定疾病に該当し要介護・要支援認定を受けている40~64歳の方 | ・40歳未満の方 ・要介護認定を受けていない方 ・医療保険が優先される疾患、状態(別表第7)の方 ・特別訪問看護指示書が交付された方 |
| 週当たりの訪問回数 | 制限なし (ケアプランの範囲内) | 原則週3日まで |
| 長時間訪問看護加算の対象者 | 特別管理加算の対象者 | 特別管理加算の対象者に加え、15歳未満の超重症児・準超重症児、特別訪問看護指示書が交付されている方 |
| 利用できるステーション数 | 複数可 | 原則1か所のみ |
| 支給限度額 | 対象 (支給限度額内で利用) | 対象外 |
| 自己負担割合 | 所得により1〜3割 | 年齢・所得により1〜3割 |
各項目の詳細を以下で解説します。
対象者の違い
介護保険が適用されるのは、要介護・要支援認定を受けた65歳以上の方、または40〜64歳で16特定疾病に該当し要介護・要支援の認定を受けた方です。
一方、医療保険が適用されるのは、介護保険の対象外となる40歳未満の方や、要支援・要介護認定を受けていない方です。また、介護認定されている場合であっても、厚生労働大臣が定める疾病等(別表第7)に当てはまる方は医療保険が優先されます。
<厚生労働大臣が定める疾病等(別表第7)>
- 末期の悪性腫瘍
- 多発性硬化症
- 重症筋無力症
- スモン
- 筋萎縮性側索硬化症
- 脊髄小脳変性症
- ハンチントン病
- 進行性筋ジストロフィー症
- パーキンソン病関連疾患
- 多系統萎縮症
- プリオン病
- 亜急性硬化性全脳炎
- ライソゾーム病
- 副腎白質ジストロフィー
- 脊髄性筋萎縮症
- 球脊髄性筋萎縮症
- 慢性炎症性脱髄性多発神経炎
- 後天性免疫不全症候群
- 頸髄損傷
- 人工呼吸器を使用している状態
なお精神科訪問看護指示書にもとづく訪問看護をおこなう場合は、認知症を除き医療保険が適用されます。
関連記事:【看護師向け】訪問看護における医療保険の適用条件とは?実務内容や必要スキルもご紹介
週当たりの訪問回数の違い
介護保険では、ケアプランの範囲内であれば訪問回数に制限はありません。一方、医療保険では原則週3日までという制限があります。
なお医療保険であっても、別表第7や第8に該当する場合や、特別訪問看護指示書が交付されている場合は、週4日以上の訪問が可能です。
関連記事:【看護師向け】医療保険の訪問看護は何回まで?利用回数の上限と特例を解説
長時間訪問看護加算の対象者の違い
1回90分を超える長時間の訪問看護をおこなった場合に算定できる長時間訪問看護加算は、介護保険・医療保険ともに設けられています。ただし、算定できる対象者の範囲がそれぞれ異なります。
| 保険の種類 | 長時間訪問看護加算の対象者 |
| 介護保険 | 特別管理加算の対象者 |
| 医療保険 | ・特別管理加算の対象者 ・15歳未満の超重症児・準超重症児 ・特別訪問看護指示書が交付されている方 |
医療保険は介護保険よりも対象者の範囲が広く、医療的ケアが必要な小児や急性増悪時の利用者さまに対して、より柔軟に長時間の訪問看護を提供できる点が特徴の1つです。
訪問できるステーション数の違い
介護保険では、ケアプランに位置づけられていれば複数の訪問看護ステーションが同一の利用者さまを担当することが可能です。一方、医療保険では原則として1か所のステーションが担当します。
ただし、医療保険であっても、以下の場合は複数のステーションからの訪問が認められています。
- 厚生労働大臣が定める疾病等の利用者(別表第7)に該当する場合
- 特別訪問看護指示書/精神科特別訪問看護指示書の期間中で、週4日目以上の訪問が計画されている場合
複数のステーションがかかわる場合は、情報共有や連携を密におこなうことが利用者さまへの質の高いケアにつながるポイントです。
支給限度額の違い
介護保険では、訪問看護は支給限度額の対象です。そのため、ほかの介護サービスも利用している場合は、支給限度額を超えないようケアマネジャーが利用回数などを調整します。支給限度額を超えた分は、原則として全額自己負担となります。
一方、医療保険の訪問看護は支給限度額の対象外です。そのため、ほかのサービスの利用状況に影響されず、必要に応じた訪問看護を利用できます。
算定方法と自己負担額の違い
介護保険と医療保険では、利用料金の算定方法も異なります。
介護保険は、サービスごとに定められた単位数をもとに算定し、1単位あたりの単価(地域区分によって異なる)を掛けて費用を計算します。自己負担割合は、所得に応じて1〜3割です。
一方、医療保険による訪問看護では、訪問看護療養費の算定基準にもとづいて費用を算定します。医療保険の自己負担割合は年齢や所得によって異なり、原則1〜3割です。たとえば70歳未満は原則3割、70〜74歳は原則2割、75歳以上は原則1割ですが、所得等によって負担割合が異なる場合があります。
看護師が訪問した場合の目安は、以下のとおりです。なお、実際の金額は加算の有無や地域区分などによって異なります。
【介護保険の場合(目安)】
訪看Ⅰ3(30分以上1時間未満):823単位
1単位10円の地域の場合:8,230円
自己負担1割:823円/回
【医療保険の場合(目安)】
訪問看護基本療養費(Ⅰ)看護師・週3日目まで:5,550円
自己負担1割:555円
計算例だけを見ると、医療保険のほうが自己負担額は少なく見えます。
しかし、実際には訪問看護管理療養費が別途加わるため、最終的な利用額は介護保険の場合と大きな差が生じない場合もあります。
また、利用者さまやご家族が費用だけを理由に介護保険と医療保険を自由に選べるわけではない点も、説明が必要です。
【フローチャート】訪問看護の介護保険・医療保険どちらが適用?
訪問看護では原則として介護保険が優先されます。
ただし、利用者さまの年齢・要介護認定の有無・疾患・状態によっては医療保険が適用されます。以下のフローチャートで確認しましょう。

実務では判断に迷うケースもあるため、次の章で具体例を確認しておきましょう。
訪問看護の介護保険・医療保険の判断に迷いやすいケース
フローチャートで基本的な判断基準は確認できますが、実務では「要介護認定を受けているのに医療保険になる」「高齢だから介護保険だと思っていた」といったケースもあります。
ここでは、判断に迷いやすい代表的な事例を紹介します。
90歳でがん末期と診断された場合
要介護認定を受けている90歳の方でも、末期の悪性腫瘍(別表第7)に該当する場合は、医療保険が適用されます。
年齢や要介護認定の有無だけで判断するのではなく、別表第7の対象疾患に該当するかどうかを確認することが重要です。
精神疾患のある場合
精神疾患のある方に対し、精神科を担当する主治医から交付された精神科訪問看護指示書にもとづいて精神科訪問看護を行う場合は、原則として医療保険が適用されます。なお、認知症については取扱いが異なる場合があるため注意が必要です。
精神科訪問看護では、通常の訪問看護とは適用条件や必要書類が異なります。制度を正しく理解し、指示書の種類や算定要件を確認したうえで対応しましょう。
関連記事:精神科訪問看護の算定要件とは?届出要件を満たす研修や加算についても解説
訪問看護で介護保険・医療保険の切り替えが必要な場面例
訪問看護では、利用者さまの状態変化や認定状況の変化によって、利用中に保険が切り替わることがあります。切り替えのタイミングを正確に把握し、算定ミスを防ぎましょう。
急性増悪によって特別訪問看護指示書が交付された
介護保険で訪問看護を利用していた利用者さまが、肺炎や心不全の急性増悪などにより状態が急激に悪化した場合、主治医から特別訪問看護指示書が交付されることがあります。特別訪問看護指示期間に入ると、その期間は医療保険による訪問看護に切り替わります。指示期間は最長14日間です。
たとえば、要介護3で介護保険を利用していた80代の利用者さまが、誤嚥性肺炎で急性増悪したとします。この場合、主治医が特別訪問看護指示書を交付した日から医療保険での訪問看護に切り替わり、毎日の訪問も可能です。
指示書の期間が終了し状態が安定すれば、再び介護保険に戻ります。この場合、介護保険の期間と医療保険の期間で算定方法が異なりますので、算定ミスに注意しましょう。
別表第7に該当する疾患を新たに診断された
介護保険で訪問看護を利用していた利用者さまが、末期の悪性腫瘍や筋萎縮性側索硬化症(ALS)など別表第7に該当する疾患を新たに診断された場合、医療保険へ切り替えます。
パーキンソン病ホーエン・ヤールのステージⅡ・生活機能障害度Ⅰ度で、介護保険を利用していた利用者さまを例にあげます。
数年利用したのち、症状が進行してホーエン・ヤール重症度分類ステージIII以上、かつ生活機能障害度II度またはIII度と診断された場合、その時点で別表第7に該当するため医療保険への切り替えが必要です。
このケースの利用者さまは、別表第7に該当します。そのため、原則週3日目までという訪問日数の制限の対象外となり、週4日目以上の訪問が可能になります。複数のステーションからの訪問も可能となり、より手厚いケアを提供できます。
要介護認定を新たに取得した
医療保険で訪問看護を利用していた利用者さまが、新たに要介護・要支援認定を取得した場合、原則として介護保険に切り替わります。
ただし、別表第7に該当する疾患がある場合や特別訪問看護指示書が交付されている場合は、引き続き医療保険の適用です。
たとえば、39歳から医療保険で訪問看護を利用していた方が、その後42歳で16特定疾病に該当する疾患を原因として要介護認定を受けた場合、原則として介護保険による訪問看護に切り替わります。
介護保険の切り替えにあたっては、ケアマネジャーとの連携や新たなケアプランの作成が必要です。
訪問看護の介護保険・医療保険の違いに関するよくある質問
訪問看護における介護保険・医療保険の違いについて、現場でよく寄せられる質問にお答えします。日々の業務や利用者さまへの説明の際にお役立てください。
Q1:要介護認定を受けていれば、必ず介護保険ですか?
要介護認定を受けていても、必ず介護保険が適用されるわけではありません。
厚生労働大臣が定める疾病等(別表第7)に該当する場合や、特別訪問看護指示書が交付されている場合は、要介護認定を受けていても医療保険が優先されます。
判断に迷う場合は、主治医やケアマネジャーに確認しましょう。
Q2:介護保険と医療保険を間違って請求したらどうなりますか?
請求先を誤った場合は、返戻(へんれい)となり請求が差し戻されます。そのため、正しい保険で再請求が必要です。
悪意のある不正請求とは異なりますが、事務的な負担が生じるため、利用開始時に保険の種類を正確に確認しておくことが大切です。
請求に不安がある場合は、国民健康保険団体連合会や審査支払機関に問い合わせましょう。
Q3:訪問看護では介護保険・医療保険を併用できますか?
原則として、同一の訪問看護サービスに対して介護保険と医療保険を併用できません。
ただし、介護保険で訪問看護を利用している利用者さまが、別表第7該当疾患の診断や特別訪問看護指示書の交付によって医療保険に切り替わることはあります。
Q4:訪問看護における介護保険・医療保険で共通していることは何がありますか?
介護保険と医療保険では適用条件や費用に違いがありますが、訪問看護として提供するサービスの内容は変わりません。
- 提供するサービス内容(清潔ケア・服薬管理・医療処置の補助・療養上の相談など)
- 訪問する職種(保健師・看護師・准看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)
- 主治医が発行する訪問看護指示書
- 利用者さまの療養生活を支援するという目的
なお、精神科訪問看護の場合は訪問できる職種や算定体系、訪問看護指示書の形式が異なりますので、確認しましょう。
訪問看護の介護保険・医療保険の違いを押さえて自信を持って業務に臨もう
訪問看護における介護保険と医療保険の違いは、対象者や訪問回数、利用できるステーション数など多岐にわたります。
原則は介護保険優先ですが、利用者さまの疾患や状態によって医療保険が適用される場合や、利用中に切り替わる場面も少なくありません。
保険の種類を正確に判断することは、算定ミスを防ぐだけでなく、利用者さまやご家族への適切な説明にもつながります。
迷う場面では主治医やケアマネジャーと連携しながら、1つひとつ確認する習慣を大切にしましょう。
訪問看護師としてのキャリアや働き方、訪問看護にまつわる制度などについて、さらに詳しく知りたい方はナスキャリ(NsPace Career)をぜひご活用ください。
<参考サイト・文献>
一般社団法人全国訪問看護事業協会 訪問看護実務相談Q&A令和6年版 2024年 中央法規出版株式会社 p20,22,25,69,130,131,231.
ナスキャリナビ 編集部 「ナスキャリナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「ナスキャリ」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。
