【看護師向け】訪問看護における医療保険の適用条件とは?実務内容や必要スキルもご紹介

「訪問看護への転職を考えているけれど、制度が難しそう」と感じていませんか。制度の理解が浅いまま転職活動を進めることに、不安を感じる方もいるでしょう。
訪問看護では、利用者さまの年齢や疾患・状態によって適用される保険が異なり、訪問回数や自己負担割合にも差が生じます。制度を正しく理解しておけば、転職先のステーション選びや、入職後の利用者さま・ご家族からの質問があった際にも役立ちます。
この記事では、医療保険が適用される条件・介護保険との違い・医療保険メインのステーションの実務内容まで、転職前に知っておくべき知識をまとめました。転職活動をスムーズに進めるための参考にぜひご覧ください。
訪問看護における医療保険とは?
訪問看護では、利用者さまの状態や年齢に応じて「医療保険」と「介護保険」のいずれかが適用されます。まずは、医療保険の基本的な仕組みと訪問看護における位置づけを確認しましょう。
医療保険とは、病気やケガの治療にかかる費用を保障する公的な保険制度です。会社員が加入する健康保険や、自営業者が加入する国民健康保険などが該当し、日本に住む人は原則いずれかに加入しています。
訪問看護においても医療保険は適用されますが、利用できる条件や対象者には一定のルールがあります。
介護保険との違い
訪問看護で適用される保険が医療保険か介護保険かは、基本的には年齢と要支援または要介護認定の有無で決まります。疾患や状態によって例外もありますが、まずは基本的な振り分けを確認しましょう。
| 年齢 | 医療保険になる人 | 介護保険になる人 |
| 40歳未満 | 全員 | 対象外 |
| 40歳以上65歳未満 | 16特定疾病に該当しない人 | 16特定疾病に該当し、要支援・要介護認定を受けた人 |
| 65歳以上 | 要支援・要介護認定を受けていない人 | 原則として要支援・要介護認定を受けた人 |
40歳未満は介護保険サービスの利用や保険料の支払いが対象外となるため、原則として医療保険適用となります。
ただし、「第2号被保険者」と呼ばれる40歳以上65歳未満では、関節リウマチや初老期における認知症など、介護保険法で定められた16特定疾病に該当し、要支援・要介護認定を受けた人のみ介護保険が適用されます。
「第1号被保険者」である65歳以上は、原則として介護保険適用です。
利用者の自己負担割合の比較
訪問看護の自己負担額は、利用する保険や年齢、所得によって異なります。基本的には、病院の窓口で支払う割合と同じです。
| 保険区分 | 対象・年齢 | 自己負担割合 |
| 医療保険 | 6歳未満(未就学児) | 2割(こども医療費助成制度にて無料もしくは軽減) |
| 6歳〜70歳未満 | 3割 | |
| 70歳〜74歳 | 2割 (現役並み所得者は3割) | |
| 75歳以上 | 1割 (一定所得者は2割、現役並み所得者は3割) | |
| 介護保険 | 40歳以上 | 1割 (一定所得以上は2〜3割) |
なお、指定難病や小児慢性特定疾病、重度心身障害者医療費助成など、公費負担医療制度の対象となる利用者では、自己負担割合が実質的にさらに低くなるケースもあります。
さらに、医療費が高額となった場合には、高額療養費制度を活用し自己負担額を軽減することができる制度もあります。
このような制度を知っておくと、訪問看護の現場で非常に役立ちますので覚えておくとよいでしょう。
医療保険と介護保険ではどちらが優先されるのか
訪問看護において医療保険・介護保険の両方を使える場合、原則として介護保険が優先して適用されます。
介護保険での訪問看護の利用には、まずケアマネジャーが作成するケアプランへの組み込みが必須です。ケアプランの中には、ヘルパーやデイサービス、福祉用具など利用者さまが日常生活を送るうえで必要なサービスが組まれています。
ただし、要支援・要介護認定を受けていても「厚生労働大臣が定める疾病等(別表第7)※」に該当する重症者や、病状悪化により特別訪問看護指示書が交付された期間などは、例外的に医療保険が優先適用される場合があります。
訪問看護で医療保険が適用される3つの条件
原則として介護保険が優先される訪問看護ですが、一定の条件を満たす場合は医療保険が適用されます。
医療保険が適用される条件は大きく3つに整理でき、転職後の実務でも判断基準となる大切な知識です。それぞれ詳しく確認していきましょう。
介護保険の要介護(要支援)認定を受けていない場合
40歳未満の小児や若年層、または65歳以上で要支援・要介護認定を受けていない方は、原則として医療保険の対象です。
具体的には、先天性疾患や事故の後遺症を抱える小児、あるいは急なケガや急性疾患の発症により、一時的に医学的管理が必要になったケースなどが該当します。
また、退院直後で要支援・要介護認定の申請が間に合っていない場合も、主治医から訪問看護指示書が発行されていれば、医療保険での介入が可能です。認定が下りたタイミングで介護保険へ切り替えるといった柔軟な対応をおこなうケースもあります。
厚生労働大臣が定める疾病等に該当する場合
介護保険の認定を受けていても、認知症を除く精神疾患により精神科訪問看護が必要な方や、以下のような厚生労働大臣が定める特定の疾患(別表第7)に該当する方は、原則として医療保険が適用されます。
- 末期の悪性腫瘍
- 多発性硬化症
- 重症筋無力症
- スモン
- 筋萎縮性側索硬化症
- 脊髄小脳変性症
- ハンチントン病
- 進行性筋ジストロフィー症
- パーキンソン病関連疾患
- 多系統萎縮症
- プリオン病
- 亜急性硬化性全脳炎
- ライソゾーム病
- 副腎白質ジストロフィー
- 脊髄性筋萎縮症
- 球脊髄性筋萎縮症
- 慢性炎症性脱髄性多発神経炎
- 後天性免疫不全症候群
- 頸髄損傷
- 人工呼吸器を使用している状態
これらの疾患は医療依存度が高く、中長期的な頻回訪問が必要となるのが特徴です。
特別訪問看護指示書が交付された場合
急性増悪時や退院直後、終末期など、主治医が「頻回な訪問看護が必要」と判断した際に交付されるのが特別訪問看護指示書です。
特別訪問看護指示書が交付された期間(原則14日間)は、介護保険の利用者であっても一時的に医療保険へと切り替わります。交付は月1回が原則ですが、以下の状態にある方に限り、例外的に月2回まで交付が認められています。
- 気管カニューレを使用している
- 真皮を超える褥瘡の状態にある
訪問看護の現場では、退院直後の不安定な時期の集中ケアや、終末期の看取りケアにおいて、この月2回の交付ルールを活用した柔軟な対応に役立てられています。
特別訪問看護指示書が交付される具体的な条件やルールについては、以下の記事で解説していますので参考にしてみてください。
関連記事:訪問看護の特別指示書が交付される条件とは?期間や回数のルールも解説
医療保険適用の訪問看護における訪問回数・算定ルール
ここでは訪問看護への転職を検討している看護師向けに、医療保険の基本的なルールを簡単にご紹介します。
原則週3日・1日1回まで
医療保険が適用される訪問看護には、訪問回数と時間に上限が設けられています。
基本的なルールは週3日・1日1回まで、1回あたりの提供時間は原則30分以上、1回あたり最大90分未満です。
介護保険では利用者のケアプランに応じて訪問回数が決まりますが、医療保険ではこのように回数・時間ともに明確な上限があることを押さえておきましょう。
例外的に回数が増えるケース
原則として週3日までの訪問ですが、以下の場合は週4日以上・1日2回以上の訪問が認められます。
- 別表第7・別表第8(※)に該当する利用者
- 特別訪問看護指示書の交付期間中
なお、別表第8とは、気管カニューレを使用している状態や真皮を超える褥瘡など、とくに医療管理が必要な処置・状態にある方を指します。
実務上では、持続点滴の管理や頻回な喀痰吸引、終末期の疼痛管理などで1日複数回の訪問が発生するケースが多く、利用者さまの状態が不安定で夜間や休日のオンコール対応につながりやすい場面でもあります。
複数名訪問が認められるケースもある
通常、訪問看護は看護師1名で利用者宅に訪問しますが、一定の条件のもとで複数名での訪問が認められています。具体的には以下の条件が該当します。
- 別表第7・別表第8に該当する利用者
- 特別訪問看護指示書の交付期間中の利用者
- 暴力行為や著しい迷惑行為、器物破損行為などが認められる利用者
- 身体的な理由により1名での訪問看護が困難と認められる利用者
ただし、複数名訪問を実施するには利用者または家族の同意が必要です。また、同行者が看護師か看護補助者かによって算定要件が異なるなど、運用上のルールも細かく定められています。
医療保険メインの訪問看護ステーションの仕事内容
医療保険が適用される条件や算定ルールを踏まえると、医療保険メインのステーションではおのずと対象となる利用者層や提供するケアの内容が異なります。
医療保険メインの訪問看護ステーションへの転職を検討する際は、具体的な仕事内容をイメージしておきましょう。
対象となる利用者の特徴
医療保険が適用される利用者さまの中には、介護保険の枠組みでは対応しきれない高度な医療管理を必要とする方もいます。
主な具体例として、以下のような特徴が挙げられます。
- 小児・重症心身障害児
先天性疾患や周産期のリスクを抱え、24時間体制での経管栄養や喀痰吸引など、日常的な医療的ケアが必要
- 別表第7に該当する難病指定患者
ALS(筋萎縮性側索硬化症)や多系統萎縮症など、進行に伴い呼吸管理や嚥下評価といった緻密な観察と臨床判断が欠かせない
- 精神疾患患者(認知症を除く)
統合失調症やうつ病、双極性障害などを抱え、服薬管理や症状の観察、社会復帰に向けた心理的ケアが必要
- 終末期患者(ターミナルケア)
自宅での最期を希望され、日単位で変化する苦痛症状に対して、即時的な緩和ケアの調整が必要
このように、医療的ケアから精神的サポートまで、高度な専門性が求められる利用者さまと向き合うのが、医療保険メインの訪問看護ステーションの特徴です。
提供する看護ケアの具体例
介護保険メインのステーションでは食事・排泄・入浴介助といった生活支援が中心となります。対して、医療保険メインのステーションでは、医療依存度の高い利用者への医療的ケアが中心となりやすいのが特徴です。主な看護ケアの例は以下のとおりです。
| 看護ケアの例 | |
| 医療的ケア | 人工呼吸器や在宅酸素(HOT)の設定確認、点滴・中心静脈カテーテル(IVH)の管理、気管カニューレの管理など |
| 栄養・排泄ケア | 胃ろう・腸ろうの管理、CAPD(腹膜透析)やストーマのケア |
| 緩和ケア | 麻薬を用いた疼痛管理、緩和ケア |
| 創傷・褥瘡管理 | 褥瘡への軟膏選択や処置、創傷処置 |
| 心理・社会的支援 | 服薬指導・生活指導、看取り後のエンゼルケアやご家族へのグリーフケア |
なお、特定行為研修を修了した看護師が在籍するステーションでは、医師が予め作成した手順書にもとづき気管カニューレの交換や壊死組織の除去(デブリードマン)なども担うケースがあります。
転職先を選ぶ際には、ステーションの体制や自身のキャリア目標と照らし合わせて確認してみましょう。
多職種連携の重要性
介護保険では原則としてケアマネジャーのケアプランを経てサービスが始まるのに対し、医療保険は主治医の訪問看護指示書が直接の根拠となります。
間にケアマネジャーが介在しない分、看護師は医師と直接やり取りする機会が増え、より主体的な行動と迅速な報告が求められます。
さらに、麻薬管理では薬剤師、入退院を繰り返す重症者の支援ではMSW(医療ソーシャルワーカー)との連携も欠かせません。
DX化推進に伴い、ICTツールを活用したリアルタイムな情報共有も普及しています。電話やFAXだけでなく、クラウド型の多職種連携ツールを通じて医療機関と密に連携するステーションも増えているようです。
医療保険メインの訪問看護で求められるスキル
医療保険が適用される利用者は、医療依存度が高く、状態が不安定な方が多い傾向にあります。
そのため、医療保険メインのステーションで働く訪問看護師には、アセスメントした上でエビデンスに基づいた在宅ならではの専門的なスキルが求められます。
高度なアセスメント力
医療保険が適用される利用者さまの多くは、別表第7・別表第8に該当する難病や重症疾患を抱えており、わずかな変化が重篤な状態に発展することも少なくありません。
訪問看護師が訪問できる時間は限られているため、その短い時間のなかで全身状態を的確に観察し、異常の予兆を早期にとらえることが重要です。
的確なアセスメントによってトラブルを未然に回避できれば、夜間の緊急訪問やオンコールを減らすことにもつながります。これは利用者さまの安心感だけでなく、看護師自身の負担も軽減し、持続可能な働き方を実現するための重要なスキルでもあります。
医療機器の管理スキル
医療保険メインのステーションでは、人工呼吸器、中心静脈栄養(IVH)、持続点滴などの医療処置の比重が大きくなります。
病院とは異なり、利用者さまが使う医療機器のメーカーがバラバラであることは珍しくありません。
医療機器の操作自体はもちろん、トラブル発生時の対応やご家族への指導まで含めた管理能力が求められます。
主体的な提案・相談スキル
医療保険メインの現場では、医療処置の比重が大きい分、医師への連絡が日常的に発生します。ただ指示を待つだけでなく、起こりうるトラブルを予測して事前に提案できる主体性が求められます。
たとえば、訪問看護では病状悪化や膀胱留置カテーテル・点滴ルートのトラブル、スキントラブルといった突発的な問い合わせが医師へ集中しがちです。こうした事態を予測して事前に指示を仰いだり、相談しておいたりすることが緊急対応の回避につながることもあります。
医師のパートナーとして、先を見通した動きができる看護師は、在宅医療の現場で信頼される存在になれるでしょう。
医療保険メインの訪問看護ステーションについてのよくある疑問
ここでは、医療保険メインの訪問看護ステーションに関するよくある疑問にお答えします。
Q1:オンコール対応や緊急訪問の頻度はどのくらい?
医療保険だからといって、極端に緊急訪問が多いわけではありません。
中央社会保険医療協議会の在宅医療(その4)によると、緊急訪問は利用者1人当たり2.9回となっています。介護保険中心のステーションと大きな差はありません。トラブルを先読みし対処しておく予防的な対応が、緊急訪問の頻度を抑えることにもつながります。
もちろんステーションの利用者層や体制によって異なりますが、「医療保険メイン=緊急訪問が多い」と一概にはいえません。転職先を検討する際は、実際の緊急対応件数や当番体制を面接などで確認してみましょう。
Q2:医療保険と介護保険、報酬単価はどちらが高い?
ステーションの収益という観点では、医療保険メインのほうが1訪問あたりの報酬単価が高くなりやすい傾向にあります。
医療依存度の高い利用者は、基本療養費に加えて24時間対応体制加算や特別管理加算などの各種加算の算定要件を満たしやすく、結果として単価が上がりやすい構造にあるためです。
ただし、単価の高さがそのまま看護師個人の給与に反映されるとは限りません。給与規程やステーションの経営戦略などによっても、手元に届く報酬は異なります。転職時には、給与規程の仕組みを具体的に確認することをおすすめします。
Q3:急性期やICUの経験がなくても、医療保険メインのステーションで働ける?
急性期やICUの経験がなくても、医療保険メインのステーションで働くことは可能です。
訪問看護の需要拡大にともない、未経験者向けに同行訪問期間を十分に設けるなど、丁寧な教育体制を整えているステーションもあります。
また、整形外科や慢性期病棟での経験も決して無駄にはなりません。ALSやパーキンソン病などの神経難病患者に対するポジショニング、拘縮予防、ADL維持の視点は、そのまま現場で活かせる強みになります。
面接では、入職後の同行訪問期間の長さや、未経験の医療処置に対するフォローアップ体制について具体的に確認しておくと安心です。
訪問看護への転職前に医療保険ならではの特徴を押さえておこう
医療保険が適用される利用者さまは、難病や末期の悪性腫瘍、精神疾患など、高度な医療管理を必要とする方が多く、訪問看護師には専門的なスキルが求められます。
一方で、看護師としての主体性やアセスメント力を磨く機会にもなるでしょう。急性期やICUなどの経験がなくても、これまでの経験を活かしながら活躍できるステーションもあります。
転職先を選ぶ際は、利用者層や教育体制、オンコールの体制、給与規程の仕組みなどを具体的に確認することが大切です。
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<参考サイト・文献>
令和6年度 厚生労働省 医療施設運営費等補助金(看護職員確保対策特別事業)機能強化型1訪問看護ステーションにおける特定行為研修修了者等の配置や活動状況の実態調査等事業|日本訪問看護財団
NsPace Careerナビ 編集部 「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。
