ジェネラリスト看護師とは?役割、キャリア、適正、転職のヒントまで
中堅看護師の方は、今後のキャリアプランを考える中で「ジェネラリスト」という言葉を耳にする機会があるのではないでしょうか。
また「スペシャリスト」と比較して迷うこともあるでしょう。
今回の記事では、ジェネラリストの定義や役割、スペシャリストとの違い、キャリアプランなどについてくわしく解説します。「キャリアに自信が持てない」「不安がある」といった、中堅看護師の方の悩みを解決する手助けになれば幸いです。
ジェネラリスト看護師とは?
ジェネラリスト看護師とは、診療科や専門領域に限定されず、幅広い知識と柔軟な対応力を活かして、さまざまな場所や状況において第一線で活躍する看護師のことです。ここでは、ジェネラリストの定義やスペシャリスト看護師との違いをみていきましょう。
ジェネラリスト看護師の定義
日本看護協会は、ジェネラリスト看護師について「特定の専門あるいは看護分野にかかわらず、どのような対象者に対しても経験と継続教育によって習得した多くの暗黙知に基づき、その場に応じた知識・技術・能力を発揮できる者」と定義しています。
引用:日本看護協会「看護にかかわる主要な用語の解説 概念的定義・歴史的変遷・社会的文脈」(2024年12月18日参照)
ジェネラリスト看護師は、特定の診療科や分野にとらわれることなく、幅広い経験と学びを活かし、どのような状況にも柔軟に対応できる看護師であるといえます。
患者さま一人ひとりのニーズや状態に合わせて、スキルを発揮する力が求められる存在です。
ジェネラリスト看護師とスペシャリスト看護師の違い
日本看護協会によると、スペシャリスト看護師は「ある学問分野や知識体系に精通している看護職」と定義されています。
ジェネラリスト看護師とスペシャリスト看護師の違いは、以下のとおりです。
ジェネラリスト看護師 | スペシャリスト看護師 | |
活躍の場 | 幅広い診療科や病棟、地域 | 特定の診療科や医療機関 |
必要な資格 | 特別な資格は不要 | 専門的な資格の習得が必要 |
特徴 | さまざまな医療機関や診療科で活躍でき、応用力が養われる | 高度な専門性を持ち、特定の分野での強みがある |
具体的には、専門看護師や認定看護師が該当し、がん看護や感染管理、緩和ケアなどの特定の分野で専門的なケアを提供したり、院内でほかの看護師の方を指導したりします。
ジェネラリスト看護師は、ある専門分野に精通するというよりは、幅広い分野において柔軟に対応できる能力を養う必要があります。
ジェネラリスト看護師の役割
ジェネラリスト看護師には、あらゆる状況への柔軟な対応力が求められます。患者さまのケアだけでなく、医療チームの調整役や教育者としても重要な役割を果たします。具体的な役割は、以下のとおりです。
- 患者を包括的に捉えたケアの提供
- 多職種との連携・調整
- 部署内教育と啓発の促進
ひとつずつ解説します。
患者を包括的に捉えたケアの提供
ジェネラリスト看護師には、患者さまを包括的に捉えたケアの提供が求められます。
患者さま一人ひとりの状況に合わせた柔軟な対応力を発揮し、回復のプロセスだけでなく、退院後の生活を見据えたケアを実践する役割を担います。
多職種との連携・調整
ジェネラリスト看護師には、多職種連携の中心的な存在となり、さまざまな職種や組織と連携する役割もあります。
患者さまの入院生活を身近で支える立場として、多職種へのタイムリーな情報提供やケアの提案力などが求められます。
部署内の教育
ジェネラリスト看護師は、部署内の教育や指導を通じて、チームのスキル向上に貢献すべき存在です。
ジェネラリスト看護師としての経験やスキルの共有のほかに、スペシャリスト看護師が専門性を発揮できる環境を整えることも役割のひとつです。
ジェネラリスト看護師になる方法
ジェネラリスト看護師は、以下の3つを意識し学習を続けることが大切です。
- 幅広く臨床経験を積む
- 生涯学習を意識する
- セミナーや研修会に参加する
順に解説します。
幅広く臨床経験を積む
あらゆる状況に対応できる知識やスキルを身に着けるには、臨床経験を多く積むことが重要です。
特定の診療科だけでなく、異なる分野の病棟や外来など、幅広い場面で看護実践を多く経験することで、さまざまな視点からより良いケアを学べます。
生涯学習を意識する
ジェネラリスト看護師として成長を続けるためには「生涯学習」の姿勢が欠かせません。
医療や看護の現場は進歩しているため、臨床経験で得られない知識を自己学習で補う必要があります。
新しい看護研究や論文を読む習慣をつけ、自分の知識をアップデートしましょう。
セミナーや研修会に参加する
外部のセミナーや研修会、学会に積極的に参加することも、ジェネラリスト看護師としての成長のために有益です。
これらの場では、最新の医療情報や看護技術を学ぶだけでなく、他施設の看護師の方や専門家との交流を通して、新たな知見を得ることができます。また、研修やセミナーで得た知識を職場に還元することで、チームのスキル向上にも寄与できます。
ジェネラリスト看護師に求められる能力と向いている人の特徴
ジェネラリスト看護師には、標準的な知識や技術を統合し、あらゆる分野で実践できる能力が求められます。そのためには、以下の能力が重要です。
- コミュニケーション能力
- 豊富な臨床経験
- アセスメント力・看護実践能力
- 指導力
- 知識や技術をアップデートする能力
- リーダーシップ
ひとつずつ解説します。
コミュニケーション能力
ジェネラリスト看護師には、必要な情報を整理し、周囲に的確に伝える力が求められます。たとえば、患者さまやご家族に分かりやすく説明したり、ほかの看護師の方や医療チームへ積極的にコミュニケーションをとったりする姿勢が大切です。
情報を整理し簡潔に伝えることが得意な方、相手の立場に立って会話を進められる方は、ジェネラリストに向いています。
豊富な臨床経験
豊富な臨床経験は、ジェネラリスト看護師にとって必要不可欠です。幅広い診療科や分野での経験を積むことで、あらゆる患者さまに柔軟に対応できる力が養われます。
外科や内科、混合病棟や救急外来など、さまざまな分野での経験を通して、ハイレベルな看護実践能力が身につきます。
複数の診療科での実務経験がある方や、新しい環境に挑戦したい方は、ジェネラリスト看護師としての成長が期待できます。
アセスメント力・看護実践能力
ジェネラリスト看護師には、適切なアセスメントと、それにもとづいた看護実践能力が求められます。
状況を素早く分析し優先順位を考えて行動できる方や、患者さまの些細な変化に気づき、状態の悪化を未然に防ぐ観察力を持っている方は、向いているでしょう。
指導力
指導力もジェネラリスト看護師に必要なスキルのひとつです。
これまでに培った豊富な臨床経験や知識を自分だけのものにするのではなく、同僚の方や後輩へ伝えることで、現場のケアの質を高めることが重要です。
ただ単に知識や技術を教えるのではなく、後輩が自主的に学び、成長していけるようなサポート力や指導方法が求められます。
成長をサポートするのが好きな方、チーム全体としての成長を考えられる方は、ジェネラリスト看護師として活躍できるでしょう。
知識や技術をアップデートする能力
医療や看護の分野は常に進歩しています。新しい治療法やケア技術が次々と登場するなかで、最新の知識を積極的に取り入れ、得た知識を実践に活かしたり、チームに還元したりすることが重要です。
学び続ける探究心がある方、変化を前向きにとらえられる方は、ジェネラリスト看護師に向いています。
リーダーシップ
ジェネラリスト看護師には、さまざまな場面においてリーダーシップが求められます。
日々の業務での調整や急変時などにおいて、リーダーシップを発揮することが必要です。また、カンファレンスにおいても、参加者に積極的な意見交換を促し、課題をまとめる力が求められます。
ほかのスタッフの方に考えや指示を明確に伝えられる方やマネジメント能力がある方は、ジェネラリスト看護師に向いているといえます。
ジェネラリスト看護師のキャリアプラン
ジェネラリスト看護師の大きなメリットは、幅広い知識や経験を活かし、さまざまなキャリアを切りひらける点です。病院で第一線の看護師として働き続けることも可能でありながら、これまで培った経験をもとに、病院以外の施設や専門職へキャリアチェンジを図ることもできます。
ここでは、ジェネラリスト看護師としての成功ストーリ―を3つご紹介します。今後のキャリアプランを考えるうえで、参考にしてみてください。
Aさん:内科病棟から訪問看護へ
内科病棟において、慢性疾患のある患者さまや、いくつもの疾患をかかえる患者さまのケアに長年携わってきたAさん。日々の業務のなかで「病院でのケアだけでなく、退院後の生活にも寄り添いたい」という思いが芽生え、訪問看護ステーションへ転職しました。
訪問看護では、利用者さまがご自宅で「その人らしい生活」を送れるよう、個別性のあるケアを提供しています。また、幅広い病棟経験を活かし、病気だけでなく心理的な側面や生活環境のアセスメントにも重点を置いています。
さらに、ケアマネージャーの資格を取得し、利用者さまのケアプラン作成にも関わるようになりました。
Bさん:急性期病院から高齢者施設へ
急性期病院で10年間勤務し、幅広い疾患や緊急対応の経験を積んだBさん。ジェネラリスト看護師としてスキルアップしようと、医療処置が多い高齢者施設に転職することになりました。高齢者施設では、褥瘡ケアや栄養管理、バイタルサインのモニタリングなど、急性期で培った技術や知識を活かしながら、一人ひとりの入所者さまに合わせた丁寧なケアをおこなっています。
また、施設では医師の常駐がないため、Bさんの迅速な判断力や柔軟な対応が重宝されています。急性期病院とは異なり、長期的な視点で高齢者の生活を見守ることにやりがいを感じているそうです。
Cさん:救急外来から手術室へ
Cさんは、救急外来で10年以上勤務し、急性期の対応力を磨いてきました。緊急オペが必要な患者さまを手術室へ搬送するなかで、手術そのものに興味を持つようになり「ケアと治療の一連の流れを学びたい」という思いから手術室への異動を決意しました。
現在は、手術前の準備から術中の看護、術後のケアまで、患者さまを支えるケアを実践しています。救急外来で培ったスピード感ある対応力やアセスメント力が、手術室でも活かされています。
ジェネラリスト看護師のこれから
日本の高齢化が急速に進むなかで、ジェネラリスト看護師の需要は今まで以上に高まると考えられます。
高齢者は複数の疾患を抱えていることがあり、ひとつの診療科にとどまらない総合的なケアが必要です。また、高齢者のQOLを尊重したケアが求められている今、在宅療養のサポートも急務とされています。
ジェネラリスト看護師は、その柔軟な対応力を活かし、さまざまな場所において、高齢者の生活と医療を支える中心的な存在として活躍することが期待されます。
医療現場でのスキルアップはもちろんのこと、予防ケアの推進や多職種連携による包括的なケアへの知識や技術も身につけられると良いでしょう。
ジェネラリスト看護師によくある質問
さいごに、ジェネラリスト看護師によくある質問とその回答をご紹介します。
ジェネラリスト看護師は、何年目から目指せますか?
ジェネラリスト看護師を目指す明確な基準はありませんただし、看護師として求められる基礎的なスキルや経験が身につくとされる3年目ころから、ジェネラリスト看護師を意識するとよいでしょう。
ひとつの診療科や業務に集中して看護技術やアセスメント力を身につけた後は、異なる診療科や部署で経験を積むことで、幅広い患者層や病気に対応できる力を養うことが重要です。
ジェネラリスト看護師になるために、資格は必要ですか?
ジェネラリスト看護師になるための資格はありません。ジェネラリスト看護師になるために何よりも重要なのは、日々の臨床経験を積みながら、幅広い診療科や分野で柔軟に対応できる力を身につけることです。
また、キャリアアップのために研修会や勉強会に参加したり、最新の知識や技術を学び続けたりといった姿勢も欠かせません。継続的な学びと経験の積み重ねこそが、ジェネラリスト看護師としての力を磨くカギとなります。
ジェネラリスト看護師としてのキャリアを描いてみよう
ジェネラリスト看護師は、活躍の場を問わないため、あらゆる職場で活躍できる存在です。
さまざまな経験を積むことが大切であるため、現在の部署でスキルを極めるだけでなく、ほかの部署や機関など、新たなフィールドへの挑戦も視野に入れてみましょう。
自身の理想とするキャリアを明確にし、今の経験を未来へどうつなげるかを意識することがポイントです。ジェネラリスト看護師としての成長を重ね、理想のキャリアを築いていきましょう。
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