訪問看護師の仕事内容6つ!訪問看護師になる方法や病棟看護師との違い

「訪問看護師ってどのような仕事をするの?」「訪問看護師になる方法を知りたい」
このように悩んだり不安を感じたりしていませんか。
訪問看護師の方は、利用者さま宅や施設を訪問して健康を管理したりケアしたりします。
この記事では、訪問看護師の方の仕事内容や訪問看護師と病棟看護師の違い、訪問看護師になる方法も紹介します。この記事を読むと、訪問看護師の方の仕事がよくわかり、現場で活躍するためのヒントが得られるでしょう。
訪問看護師の仕事内容6つ
訪問看護師の仕事内容は多岐に渡ります。ここでは、おもな仕事内容を6つにわけて説明します
- 利用者さまの健康管理
- 在宅療養のお世話
- リハビリや予防ケア
- 医師の指示にもとづく処置
- 利用者さまとご家族の精神的ケア
- 関係機関との調整
それぞれの仕事内容をみていきましょう。
利用者さまの健康管理
利用者さまの健康状態を把握することは、訪問看護師の方の重要な仕事です。
たとえば、体温や血圧、脈拍などを測って身体の状態を観察したり、生活の様子や介護を担うご家族の状況も確認したりし、ご自宅で安全に生活できるように支援します。
また、高血圧がある利用者さまの場合は、血圧の変動を記録して、食事や運動などの生活習慣についてアドバイスします。さらに、糖尿病がある利用者さまには、血糖値の測定やインスリン注射のほかに、運動療法や食事療法を指導するなど訪問看護師の方の役割はさまざまです。
利用者さまをケアするなかで些細な変化も見逃さないように、じっくり向き合うことが大切です。不安なことや困っていることがあれば、丁寧に話を聞き、適切なアドバイスや情報提供をおこなうことも訪問看護師の方には欠かせません。
在宅療養のお世話
利用者さまが自宅で安心して療養生活を送るために、次のように生活上のお世話をすることも訪問看護師の方の仕事です。
- 清潔ケア(シャワー浴、清拭など)服薬介助
- 排泄介助(腹部マッサージ、摘便や浣腸など)
- 更衣の介助
- 褥瘡予防のケア
- 口腔ケア
訪問看護師が実施して生活をサポートするだけではなく、ご家族(介護者)に排泄介助の方法や着替えのコツ、褥瘡予防の体位変換の方法などを具体的に説明します。
在宅介護は、ご家族にとって負担が大きくなることがあるため、ご家族の心身の負担を軽減するためのサポートも重要です。
リハビリや予防ケア
なかなかご自宅から外出する機会が少ない在宅療養中の方は、廃用症候群が発生しやすいこともあるでしょう。利用者さまのライフスタイルに合わせて、たとえば寝室が2階にある場合は階段の昇降訓練をしたり、歩行訓練をしたりしてADLを維持できるように支援します。
時にはご自宅の近くを散歩しながら歩行訓練を行うケースもあります。
セラピストが在籍している訪問看護ステーションでは、訪問看護師と協働することでより良いケアが実践できるでしょう。
利用者さまの身体機能に合わせてリハビリを提供することは、訪問看護師の重要な仕事です。
医師の指示にもとづく処置
医師の指示にもとづき、次のような医療処置をおこないます。
- 点滴
- インスリン注射
- 褥瘡の処置
- カテーテルの管理
- 人工呼吸器管理
医療処置をおこなう際に、異常があれば早めに医師に報告して、利用者さまの状態が悪化しないようにケアすることがポイントです。
利用者さまとご家族の精神的ケア
病気や障害を抱える利用者さまや、介護をするご家族は、不安や孤独を感じることがあります。そのような方の心の支えとなることも、訪問看護師の方の役割です。
利用者さまの不安や悩み、希望などに共感し寄り添うことで精神的なケアをおこないます。また、必要に応じて、次のような地域の相談窓口や支援制度などを紹介します。
- 病気や障害の相談窓口
- 病気や介護についての患者会経済的な支援制度
利用者さまとご家族が安心して療養生活を送れるようにサポートすることは、訪問看護師の重要な役割です。
関係機関との調整
訪問看護では、病院や施設のほかに、福祉用具業者や市区町村の行政機関、地域包括支援センターなどさまざまな職種の職員とも連携します。
それぞれの専門家と情報共有をおこない、利用者さまやそのご家族にとって最適なサービスを提供できるように調整することが大切です。
訪問看護師と病棟看護師の違い
訪問看護師と病棟看護師は、働く場所や仕事内容が異なります。それぞれの違いをみていきましょう。
仕事内容の違い
病院看護師の方は、多くの患者さまを対象としており、専門的な治療および病状の回復に重点をおきケアします。たとえば、心臓血管外科病棟で働く看護師の方の場合は、心臓の病気や治療など特定の知識やスキルが必要です。
一方で、訪問看護師の方は利用者さまやご家族がご自宅や施設で生活を続けられるようにケアし、特定の病気ではなく幅広い知識が求められます。
また、訪問看護師の方が働く場所はおもに利用者さま宅、もしくは施設です。病院のように、専用の清拭の道具や点滴の物品などそろっていない環境であることがほとんどです。
そのため、訪問看護師の方は物品や道具が限られているなかで、利用者さまの生活や状況に合わせて創意工夫をこらして対応します。

給料の違い
日本看護協会の調査によると、訪問看護師と病棟看護師の給料は次の表のとおりです。
職種 | 平均基本給額 | 平均税込給与総額 |
訪問看護師 | 26万9,811円 | 36万7,775円 |
病院の看護師 | 27万7,696円 | 38万6,046円 |
訪問看護師と病棟看護師、両者の給料の差(平均税込給与総額)は1万8,271円です。
訪問看護師の方の仕事には基本的に夜勤はなく、オンコールでの対応であることを考えると、比較的高い給料であるといえるでしょう。
訪問看護師の1日の流れ
ここでは、訪問看護師の1日の流れを紹介します。
時間 | 仕事内容 |
8:30 | ・出勤 ・朝礼 ・利用者さまの情報収集 (訪問看護ステーションに出勤せず、直行・直帰する看護師にはメールで朝礼の内容を共有) |
8:45 | ・訪問の準備 ・訪問物品の確認 |
9:00 | ・利用者さま宅を訪問しケア ・午前2~3件の訪問を実施 |
12:00 | ・昼食 ・昼食を摂る場所は決まっていない (訪問看護ステーションや自宅に戻る、もしくは近隣の駐車場で昼食を摂る) |
13:00 | ・利用者さま宅を訪問しケア ・午後2~3件の訪問を実施 |
17:00 | ・帰社 ・各種報告や記録を実施 |
17:30 | 退勤 |
このスケジュールは一例です。所属している訪問看護ステーションや利用者さまの状況により異なります。
訪問看護師の1日の流れについて、さらに詳しく知りたい方は下記の記事を参考にしてみてください。
関連記事:【完全ガイド】訪問看護師とは?仕事内容と1日の流れを徹底解説
訪問看護師のやりがい
訪問看護師の方の仕事は、利用者さまの在宅生活を支えることであり、そのなかで次のようにやりがいを感じられる場面が多々あります。
- 利用者さま一人ひとりとじっくり向き合える
- 自分のペースでケアがしやすい
- 仕事とプライベートを両立できる
それぞれについて詳しくみていきましょう。
利用者さま一人ひとりとじっくり向き合える
訪問看護師の方の場合、利用者さま宅を訪問し、一人ひとりに向き合ったケアを提供できます。
利用者さまの生活背景や価値観を理解し、その方に合った看護を提供することで、深い信頼関係を築きやすいです。
そのため、訪問看護の場は「利用者さまにじっくりかかわりたい」と考える看護師の方にとって、やりがいを感じやすい環境といえます。
自分のペースでケアがしやすい
病院勤務は、決められたタイムスケジュールのなかで、多くの業務をこなしていく必要があります。
しかし、訪問看護では、決められた訪問時間のなかで、ある程度自分のペースで仕事を進められます。
利用者さまに合わせて臨機応変に対応する必要がありますが、時間配分やケアの方法などを自分で工夫できる余地があり、これをやりがいと感じる訪問看護師の方もいるようです。
また、訪問看護を提供中は病院のようにナースコールが鳴らないため、集中してペースを乱さずにケアができることも魅力の一つでしょう。
関連記事:訪問看護のやりがいエピソード【つたえたい訪問看護の話】
仕事とプライベートを両立できる
訪問看護は、比較的柔軟な働き方ができるため、仕事とプライベートの両立がしやすいといわれています。
訪問看護ステーションでは土日祝日が休みのところもあるため、子育て中の看護師の方は学校の行事に参加しやすかったり、友人や家族との時間を過ごしやすかったりします。
自分のライフスタイルに合わせて働き方を選択できるのは、訪問看護の魅力のひとつです。
関連記事:【事例あり】訪問看護師のやりがいとは?働き方のメリットまで解説
訪問看護師のきついこと
訪問看護師の仕事にやりがいがある一方で、きついと感じることもあります。
- オンコール対応が求められる
- ひとりで判断しなければならない
- 季節によっては移動が大変である
実際に、訪問看護師になってみてイメージしていたものとは異なり、ギャップを感じる方もいます。訪問看護の現状を知っておきましょう。
オンコール対応が求められる
訪問看護では、24時間体制で利用者さまからの連絡に対応するオンコール体制をとっている事業所が多くあります。厚生労働省の調査によると、オンコール体制を取っている事業所の実態は下記のとおりです。
加算の種類 | 加算の届出の有無 (事業所数) | 1人あたりの緊急訪問回数 (1ヶ月) |
24時間対応体制加算(医療保険) | 88.5% | 3.1回 |
緊急時訪問看護加算(介護保険) | 87.8% | 3.5回 |
医療保険と介護保険、いずれの訪問看護ステーションでも約90%近くが、オンコール体制をとっており、訪問看護師の方1人あたり月に3回くらい緊急訪問に対応しています。
オンコール担当になると、夜間や休日でも電話対応や緊急訪問が必要になる場合があります。そのため「電話は来ないかな?」「お酒は飲めないな」など、常に緊張感を持って過ごさなければならず、精神的な負担を感じる訪問看護師の方もいるかもしれません。
しかし、オンコール体制を複数人で交代制にしたり、オンコール手当を増やしたりするなど、訪問看護師の方の負担を軽減する取り組みをおこなっている事業所あります。
また、オンコールがない事業所を選ぶと夜間や休日に気にする必要がなくなるため、気が休まるでしょう。
ひとりで判断しなければならない
病院勤務の場合、医師や先輩の看護師など、相談できる人がすぐ近くににいます。
しかし、訪問看護では、基本的にひとりで利用者さま宅を訪問し、状況に応じて判断しなければなりません。
そのため、ある程度の経験や知識、判断力が求められます。判断に迷うときは、管理者や先輩看護師に電話などで相談できる場合もあるため、事業所のフォロー体制について確認しておきましょう。
季節によっては移動が大変である
訪問看護は、利用者さまの自宅を訪問してケアをおこなうため、移動手段が必要です。
自動車や自転車、公共交通機関など、移動手段はさまざまですが、天候によっては移動が大変になることがあります。
たとえば、真夏の日差しや真冬の寒さを感じながらの移動は、体力的につらいと感じるかもしれません。また、訪問先の地理に詳しくない場合は、道に迷うこともあるでしょう。
どんな仕事にもあるように、訪問看護師の仕事は、やりがいと大変さが両方ある仕事です。訪問看護の仕事についてより深く理解し、自分に合った働き方を見つけてください。
関連記事:訪問看護はきつい?大変といわれる11個の理由とその対処法を解説
訪問看護師になるには
看護師の資格があれば、訪問看護師への転職は可能です。ほかに、求められる医療資格はありません。
ただし、職場によっては一定の経験や特定の分野に特化したスキルが必要な訪問看護ステーションもあります。具体的には、3年以上の経験年数、認知症の認定看護師や精神科の専門看護師などの資格があると、転職に有利にはたらくでしょう。
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訪問看護師に向いている人・向いていない人
訪問看護師は、利用者さまの生活を支えるやりがいのある仕事ですが、向き不向きもあります。自分に合っているかどうかを判断するために、向いている人と向いていない人の特徴を見ていきましょう。
訪問看護師に向いている人
訪問看護師に向いている人には、次の特徴があります。
- 利用者さまと接することが好きな人
- 利用者さまの役に立ちたいと思う人
- 自律的に行動できる人
- 自動車の運転が苦にならない人
「人の役に立ちたい」「困っている人を助けたい」という気持ちが強い看護師の方は、訪問看護師としてやりがいを感じられます。また、自分で考えて行動できるといった自律性の高い方が向いています。
訪問看護師に向いていない人
逆に、次のような特徴を持つ方は、訪問看護師として働くことが難しいかもしれません。
- ひとりで行動するのが苦手な人
- 臨機応変な対応が難しい人
- 責任を強く感じてしまう人
ただし、訪問看護師に向いていないと感じていても焦る必要はありません。訪問看護師として経験を積んだり、先輩の訪問看護師の方から学んだりすることでスムーズに対応できるようになるでしょう。
また、訪問看護ステーションを変えることで業務の負担やストレスが軽減され、働きやすくなる可能性があるため、転職を検討することも大事です。
訪問看護師に転職する際のポイント
実際に、訪問看護師に転職する際のポイントは次のとおりです。
- オンコール対応の回数や頻度を確認する
- 入職する前に職場見学をおこなう
- 利用者さまの背景疾患や介護度を知っておく
オンコール体制は、心身の負担にかかわるため重要です。また、職場の雰囲気や一緒に働くスタッフの様子を知るために、入職前に職場見学に参加することをおすすめします。
関連記事:【事例あり】訪問看護への転職を失敗しないために!転職で気をつけるポイントを解説
訪問看護師の仕事内容を知って、現場で活躍しよう
訪問看護師の仕事は、利用者さまの在宅生活を支える、やりがいのある仕事です。この記事を参考に、訪問看護の現場で活躍してみませんか。訪問看護師の仕事内容が自分に合っているかどうかをよく考え、後悔のない選択をしましょう。
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<参考サイト・文献>

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