専門看護師になるには?資格取得までの流れや必要な臨床経験、認定看護師との違いも解説
自身の看護師としてのキャリアを歩む中で、資格取得の道を検討している方もいるでしょう。
そこでおすすめしたいのは専門看護師の資格です。
今回は専門看護師とはどのような資格なのか、資格取得までの流れや必要な経験などの条件、よく比較される認定看護師との違いも合わせて解説していきます。
キャリアアップを検討している、もしくは興味のある方はぜひご覧ください。
専門看護師とは?
専門看護師とはCertified Nurse Specialistといわれ、日本看護系大学協議会と日本看護協会が連携して運営している資格制度です。
特定の専門看護分野の知識や看護技術を得た専門看護師を世の中に排出し、看護学そのものの質を向上させることを目的とした資格です。
2022年12月時点で全国に3,155人の専門看護師がおり、「実践・相談・調整・倫理調整・教育・研究」の6つの役割を果たすことを求められています。
専門看護師は認定看護師と混同される資格でもあるため、次の章で認定看護師との違いについてみていきましょう。
※記事内の専門看護師や認定看護師に関する資格の条件などの情報は上記日本看護協会公式サイトから参照
専門看護師と認定看護師との違い
認定看護師との違いは主に下記の2つです。
- 特定分野の違い
- 役割の違い
特定分野は認定看護師が19分野(統合後)なのに対し、専門看護師は14分野と認定看護師よりも少なくなっています。
また役割についても、認定看護師が「実践・指導・相談」の3つに対し、認定看護師はさらに3つの役割が加わった「実践・相談・調整・倫理調整・教育・研究」と計6つの役割があります。
後述しますが資格取得の要件なども異なるため、総合的にみると資格取得の難易度も異なると言って良いでしょう。
専門看護師になるには?条件や費用、流れを解説
ここでは専門看護師になるにはどのような流れをたどるのか、条件やかかる費用について、それぞれ解説していきます。
※掲載する条件や費用は2024年1月18日時点の情報
専門看護師になるための条件と流れ
専門看護師になるには看護師資格を保有しているという免許要件と教育要件、実務研修要件が求められます。
教育要件は看護系大学院修士課程修了者でありながら日本看護系大学協議会が定める専門看護師教育課程基準の所定の単位(総計26単位もしくは38単位)を取得していることを指します。
実務研修要件は通算5年以上の実務研修があり、そのうち3年以上の専門看護分野での実務研修が必要とされており、これら3つのすべてを満たさなければなりません。
これらのすべてを満たしたのち、書類審査と筆記試験の認定試験を受験できます。試験は毎年1回のみ開催しており、試験の申請はWEB申請で指定のサイトから申し込みます。
筆記試験は論述式であり、事例問題と総合問題それぞれ100点ずつの120分の試験です。
そして試験の合否は試験の申し込みと同じWEBサイトの『資格認定制度 審査・申請システム』で発表されます。
合格後は、専門看護師の認定証が交付され、専門看護師として登録すると専門看護師になれます。しかし資格の有効期限は取得後5年であり、5年ごとの更新が必要です。
更新では看護実践の実績・研修実績・研究業績等の書類審査を受けなければならないため、資格取得したからといって看護師の現場を離れてしまうと、資格が失効してしまう可能性もあります。そのため専門看護師の資格は、継続的な自己研鑽が求められる資格といえるでしょう。
専門看護師になるためにかかる費用
専門看護師になるための年1回の審査の費用は51,700円で、登録に必要な認定料も同額の51,700円です。
また更新せず資格が喪失してしまったあと、再度申請する場合の再認定審査の費用は30,800円で、登録にかかる費用は定料20,900円です。
必ず試験合格後は、登録にかかる認定料の振り込みも忘れないようにしましょう。
専門看護師資格を取得するメリット
看護師としてのキャリアアップとして専門看護師の資格取得を目指す方もいるでしょう。
ここでは資格取得を目指す方や、資格を取得しようか悩んでいるという方に向けて、取得におけるメリットを紹介します。
主なメリットは下記のものです。
- 給料や待遇が改善される場合がある
- 高いレベルの看護知識・技術を保有している客観的な証明となる
- 自分自身の成長のきっかけとなる
それぞれ解説していきます。
給料や待遇が改善される場合がある
所属する医療機関によって条件は異なるため確実ではないものの、資格取得後に資格手当や基本給アップなどの昇給や、役職者への昇進など、待遇が改善される可能性もあるでしょう。
実際に日本看護協会の「2022年度専門看護師・認定看護師に対する評価・処遇に関する調査」報告書からは、特に変化がないという割合が多数ではあるものの、昇給した、昇格・昇進したという意見も聞かれています。
同資料の中から、昇給額の平均値は14,471円、認定看護師の場合は11,191円と、わずかに専門看護師の方が上昇率は高くなっています。病院設置主体別に昇給率をみると、医療法人が19.8%と最も高くなっています。
そもそも資格手当の有無については、専門看護師の34.1%が「ある」と回答しているため、基本給の変化がなくても資格手当を期待できる職場が多いのではないでしょうか。
また昇格については公益法人で勤務している看護師が31.3%と最も高くなっています。
参照:公益社団法人日本看護協会「2022 年度 専門看護師・認定看護師に対する評価・処遇に関する調査」報告書p26-27
高いレベルの看護知識・技術を保有している客観的な証明となる
実際に専門看護師を保有している人数は、前述の通り多くはなく2022年12月時点で全国に3,155人に留まっています。
もし専門看護師を保有していると、高いレベルの看護知識や技術を保有しているという客観的な証明にもなるため、自身のキャリアの選択肢も広がるでしょう。
特に小児看護や母性看護、在宅看護などそれぞれの専門分野での知識と経験が証明できると、貴重な人材として重宝されるかもしれません。
自分自身の成長のきっかけとなる
専門看護師の資格取得にあたり、教育要件や実務研修要件などの厳しい要件を満たす必要があります。
これらの課程をこなし、資格を取得して働いていくことは、自分自身の成長のきっかけとなるのではないでしょうか。
自己研鑽を経て医療や福祉業界へ還元していくことが、専門看護師を取得する何よりの意義となるでしょう。
また院外のセミナーや研修の講師に抜擢される可能性もあるため、院外での人脈形成もできて、看護師としての幅広いキャリア形成もひろがっています。
専門看護師の活躍する場所
専門看護師の活躍する場所は病院が8割を超えており、資格取得後も現場で活躍している看護師が多いのがわかります。
ただ、病院以外にも訪問看護ステーションや診療所、保健所、企業の健康管理部門なども活躍の場として存在しています。
取得する専門分野によって、活躍する場所は異なると考えるのが良いでしょう。
参照:公益社団法人日本看護協会「2022 年度 専門看護師・認定看護師に対する評価・処遇に関する調査」報告書p15
専門看護師が訪問看護ステーションで活躍するには?
特定分野の中には「地域看護」や「在宅看護」などの地域医療に関わる分野が存在しています。しかしどちらも保有している看護師の数は多くなく、同様の報告書から調査数769名に対して専門看護師の分野ごとの割合は、下記のようになっています。
専門看護師の分野 | 割合 |
地域看護 | 0.8% |
在宅看護 | 4.0% |
ただこれらの分野の専門看護師資格を取得して、訪問看護ステーションで活躍するのは十分に可能と考えられるでしょう。
まだまだ活躍している専門看護師の数が少ないからこそ、自身が所属する訪問看護ステーション以外を対象にしたセミナーや研修、勉強会を実施したり、指導を行ったりすることも可能です。そういった活動によって地域看護や在宅看護などの質の向上へ貢献できるでしょう。
また、多様な疾患をもった患者さまが在宅での療養へと移行していくことも予想できるため、地域看護や在宅看護以外にもがん看護や精神看護、小児看護などの専門分野の取得もおすすめです。
今後需要が高まる在宅医療において、専門性の高い看護師の存在は重宝されていくでしょう。
参照:公益社団法人日本看護協会「2022 年度 専門看護師・認定看護師に対する評価・処遇に関する調査」報告書p4
専門看護師に向いている人
最後に専門看護師に向いている人を解説します。
ただし、もし向いている人の項目に当てはまっていない方でも、働いていく中で適性を身に付けていく方もいます。
当てはまっていないから専門看護師を諦めようなどと考える必要はなく、あくまでも参考として読んでいただければ幸いです。
看護業界・医療福祉業界の質向上に貢献したい人
専門看護師は前述のように該当の分野の専門看護師を取得することで、看護・医療福祉の業界全体の質を向上させることも可能な資格です。
セミナーや研修の実施はもちろん、医療機関の教育体制や制度づくりに関わるのも可能なため、業界全体に影響を与える存在になれる場合もあるでしょう。
そのため自分自身のキャリアや自己研鑽だけでなく、該当の分野の全体の質向上にも貢献していきたいと考えている方にとって、向いている資格といえます。
該当の分野を深く学びたい人
専門看護師の取得している人が多い分野として「がん看護」が全体の3割となっており、他に「急性・重症患者看護」や「精神看護」が10%を超えているものの、他の分野はまだまだ取得率10%を切っているという状況です。
そんな中で家族支援や在宅看護、災害看護など、需要の高い分野は他にも多く、専門性の高い看護師の需要も依然として高いままです。
自分自身の専門性を高めて活躍の場を広げたい、新たに活躍の場を設けていきたい、該当の分野を深く学びたいという人にとっても、専門看護師の取得は向いているといえます。
参照:公益社団法人日本看護協会「2022 年度 専門看護師・認定看護師に対する評価・処遇に関する調査」報告書p4
専門看護師になるには専門分野の経験が必要!自分がやりたい看護を考えてみよう
ここまで専門看護師とはどのような資格なのか、資格取得までの流れや必要な経験などの条件や、認定看護師との違いも解説しました。
また専門看護師に向いている人についても解説していきました。
専門看護師になるための要件は資格要件と合わせて3つあり、該当の専門分野での臨床経験も必要です。
もし自分がやりたい看護を考えてみた際に、ある分野に興味があるもののまだ臨床経験がないという方は、これからのキャリアプランに転職や病棟異動を検討してみるのも良いでしょう。
また、訪問看護師としてのキャリアアップについてより深く知りたい場合、以下の記事も参考にしてみてください。
「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。