訪問看護師になるには?あると便利な資格も解説!

看護師として働く中で「退院後の患者さまの様子が気になる」「再入院を繰り返してしまう方がおり、在宅での支援の方が有効なのではないか」と考え、訪問看護師へ興味を持ったという方もいるのではないでしょうか。
今回は、訪問看護師になるにはどうすれば良いのか、また訪問看護師として働く際に、あると便利な資格についても紹介します。
訪問看護師について興味がある方はぜひ読んでみてください。
訪問看護師とは
訪問看護師とは、地域で暮らす小児から高齢者までのすべての年代の方を対象とした利用者さまへ、医療ケアや生活の支援を行う看護師を指します。
国は、進み続ける高齢化に対応するために、地域で生活する方を支援する施策である地域包括ケアシステムの構築など、国をあげて医療の在宅移行を進めています。その中で需要の高まりから、年々訪問看護ステーションの数も増加しており、訪問看護師はさらに注目が高まる職種といえるでしょう。また訪問看護ステーションの中でも特化型とした場所もあり、小児や精神などの分野で特化しているステーションもみられます。そのため自身の興味のある分野に在宅でも活躍していきたいという看護師の方にとっても、活躍しやすい現場となってきています。
訪問看護師として働くメリット・デメリットについては以下の記事も参考にしてみてください。
関連記事:訪問看護師として働くメリット・デメリットとは?|仕事の特徴も解説
参照:公益財団法人日本訪問看護財団「訪問看護とは(一般の方向け)」
参照:一般社団法人全国訪問看護事業協会「令和4年度 訪問看護ステーション数 調査結果」
訪問看護師になるには?必要な臨床経験
訪問看護師の求人には、一般的に3年以上の臨床経験を求めているケースが多いです。とはいえステーションによって、臨床経験は1年のみでもOKであったり、経験不問のところもあります。ただし、可能であれば一通りの医療技術ができるようになってから、訪問看護ステーションへ転職した方が良いでしょう。特に、訪問看護ステーションの規模が小さい場合は、まだまだ教育体制が整っていないところもあり、あまり丁寧に教えてもらえずに困ってしまったというケースも聞かれます。
最低でも下記のようなスキルは、訪問看護の現場で実践する場面が多いスキルのため、病院等で働いている間に一人でできるように学んでおくと良いでしょう。
- 排泄ケア(浣腸、摘便、導尿、ストーマ管理など)
- セルフケア、家族指導
- 褥瘡や創傷処置
- 胃瘻の管理
- ターミナルケア
- 緊急時の対応
基本的には訪問看護師は1人での訪問が一般的です。そのため上記のようなものを1人で実践できるのが理想的です。しかし病院では学ぶ機会がなかったという方もいるかもしれません。その場合は、訪問看護ステーションで勤務してから、先輩と同行訪問して教えてもらうという方法もあります。
また、臨床経験を条件に設けているステーションとしては、スキルだけではなく経験から得られるアセスメント力や判断力、対応力などを求めているというところもあります。これは先輩から教えてもらったからといってすぐに身に付くものではありません。
臨床経験があまりないという方は、未経験や1年などの浅い経験でも問題ないステーションを探すのが良いでしょう。
ただその場合は、教育制度が整っているところであるのか、入職前に確認する必要があります。
また小児や精神特化型などのステーションでは、該当の科目での臨床経験を条件としているケースもあるため、募集要項はよく確認するようにしましょう。
訪問看護師になるには?必要な資格
訪問看護師になるには、看護師資格が必要です。他の特別な資格は必要ではなく、場合によっては前の章で説明したように臨床経験や特定の科での経験が求められます。
また、准看護師でも勤務は可能です。しかし、准看護師の場合は24時間対応ができなかったり、准看護師による訪問は減算の対象となったりとさまざまな違いがあります。そのため、基本的には何らかの制限があるという認識でいた方が良いでしょう。
ただし採用コストの面などを含めて検討すると、准看護師の採用は運営側にとって必ずしも悪いこととはいえません。准看護師の方も、准看護師だから訪問看護師になれないという訳ではないと理解して、就職先を探してみましょう。
必要な資格に加え、どのような人が訪問看護師に向いているのかを知るには以下の記事も参考にしてみてください。
関連記事:訪問看護師に向いてる人とは?向いている人の特徴7選とその理由、向いていない人の特徴も解説!
訪問看護で活用できる資格
他の資格は原則不要と前述しましたが、資格を保有していた方が転職で有利になるケースもあります。最後に訪問看護で活用できる資格を紹介します。転職で有利になる可能性や、働いてから活用できる可能性がある資格は下記の8つです。
- 緩和ケア認定看護師
- 皮膚・排泄ケア認定看護師
- 在宅ケア認定看護師
- 特定行為研修を修了した看護師
- 介護支援専門員(ケアマネジャー)
- 認知症ケア専門士
- 終末期ケア専門士
- 普通自動車免許
それぞれの資格の概要や、取得条件などについても解説していきます。
緩和ケア認定看護師
特化型としている訪問看護ステーションもあると前述しましたが、ご自宅での看取りや緩和ケアを希望する利用者さまもおり、そのような方へ対応できるスペシャリストの存在は重要視されています。
訪問看護ステーションで働く看護師皆が、緩和ケアについて詳しいという状況はなかなか難しく、スペシャリストとなる専門分野の認定看護師がいることで質を維持した看護が提供できるからです。
皮膚・排泄ケア認定看護師
糖尿病などの合併症があり褥瘡のリスクが高い方や、ストーマがあり自分での適切なケアが難しい方も利用者さまの中にはいます。
そういった皮膚や排泄ケアの質を上げるためにも、皮膚・排泄ケア認定看護師の存在は重要です。
高齢化が進む時代の中で寝たきりの方や、QOLを維持するのが難しい方は増えていくと考えられるため、皮膚や排泄ケアの需要も高まっていくと考えられます。
特に訪問看護師は、利用者さまの生活に着目したケアへの介入が多く、ケアだけではなく介護指導やセルフケア能力の向上といった役割も担います。
その中で皮膚・排泄ケア認定看護師の存在を筆頭に、訪問看護ステーション全体におけるケアの質の向上が期待できるでしょう。
参照:一般社団法人創傷・オストミー・失禁管理学会「皮膚・排泄ケア認定看護師について」
在宅ケア認定看護師
訪問看護師に必要なスキルとして、医療現場とは異なる在宅の現場で柔軟な思考をもち臨機応変に対応できる力が挙げられます。そのような在宅でのケアにおけるスペシャリストというのが、在宅ケア認定看護師です。
在宅ケア認定看護師の資格を持っているというのは、訪問看護ステーションへの転職において非常に役立ちます。それだけでなく、ステーション側としても在宅ケア認定看護師が在籍していることは、ステーションの看護の質を他の関連機関や利用者さまにアピールできることとなります。ステーション全体の認知度に貢献できる存在にもなり得るでしょう。
特定行為研修を修了した看護師
特定行為研修を修了した看護師の存在も在宅の現場で重宝されます。
特定看護師制度は正確には「特定行為に係る看護師の研修制度」と呼ばれ、2015年の10月から開始された制度です。
医師の手順書をもとに必要に応じて特定行為を実施できるようになるため、タイムリーに医師と連携をとることが難しい訪問看護の現場では、特定行為研修を修了した看護師による看護の需要は非常に高いと考えられています。
2021年3月時点では特定行為研修を修了している看護師は3,307名となっており、特定行為によって人数のばらつきはあるものの、国は特定行為研修の受講を推進している傾向にあります。増加し続ける在宅での医療ケアの需要に対応するためにも、今後さらに特定行為研修を修了した看護師の存在は市場価値が高まっていくでしょう。
参照:厚生労働省「特定行為研修を修了した看護師数(特定行為区分別)」
介護支援専門員(ケアマネジャー)
介護支援専門員は介護保険法をもとに定められた専門資格です。
別の呼称としてケアマネジャー(以下介護支援専門員と記載)とも呼ばれており、ケアマネと略されることもあります。
介護サービス計画というケアプランの作成や他職種との連携を主な業務としており、介護保険を利用する利用者さまを対象とする訪問看護ステーションでは、いわゆる保険制度のスペシャリストがいてもらえるのは非常にメリットといえるでしょう。
また看護師の方の中にはケアについては詳しいものの、制度や費用については病院であまり触れてこなかったことから知識が浅い方も多いのが現状です。間違った情報を利用者さまへ提供しないように介護に関する学習をする必要があるでしょう。
介護支援専門員の存在は、看護師への知識普及にも繋がります。
認知症ケア専門士
認知症ケア専門士は、一般社団法人日本認知症ケア学会が認定する民間資格です。
高齢化が進み続ける中で、在宅で生活する認知症の方も増えていきます。
認知症へのケアや看護は、看護師も悩む場面が多くジレンマを抱える看護師の方も多いのではないでしょうか。
その中で専門士の資格を持っている方がいると、悩んでいた看護ケアの解決の糸口となったり、看護師たちの精神的な支えにもなったりするかもしれません。
民間資格ではあるものの持っていると注目される資格の一つです。
終末期ケア専門士
終末期ケア専門士は、一般社団法人終末期ケア学会が認定する民間資格です。
高齢化が進み、在宅医療への移行も進む中で必然的に最期を在宅で過ごす人口も増えていくと予想できるでしょう。
その中で終末期ケア専門士の資格を持っていると、同僚の看護師や訪問看護ステーションのスタッフ、また他の関連機関から終末期へのケアの専門家として注目されるかもしれません。
ただし終末期に関しては緩和ケア認定看護師の方が評価される傾向にあるのが事実です。
とはいえ、終末期ケア専門士の資格はWeb講習のようなオンラインで学習できたり、全国260ヶ所にて受験できたりなど、多忙な日々の中でも資格取得がしやすいのも特徴です。
興味があるものの、認定看護師を取得するための時間や費用の捻出が難しいという方は、まずは終末期ケア専門士の取得を検討してみるも良いでしょう。
普通自動車免許
東京都や首都圏などの道路が混み合ったり、道が複雑な地域では、自転車での訪問を基本としています。
また、バスや電車などの交通機関を使うこともあります。
とは言え、地域差や訪問看護ステーションの方針もそれぞれであり、車での移動をメインとしている場合もあり、普通自動車免許を持っているのを入職の際の条件としているところもあります。この場合は、大前提として免許がなければ働けないというケースもあるため、そもそも求人を探す際に注意が必要です。
また自動車免許を持っていても普段はあまり運転しないという方は、入職前にある程度は、一般道路を走る練習をしておくと良いでしょう。
訪問看護師になるには3年臨床経験を積むのがおすすめ!転職を有利にするなら資格取得も!
ここまで訪問看護師になるにはどうすれば良いのか、必要な経験や資格について紹介しました。また訪問看護師として働く際に、あると便利な資格についてもそれぞれ概要や取得のメリットについて解説しました。
訪問看護師になるには特別な資格は必要ありませんが、基本的にはスキルやアセスメント力、判断力などの総合的な看護師の力を考えると3年の臨床経験を積んでおくのがおすすめです。また、転職を有利にするために資格取得をするのも良いでしょう。
ただし必ずしも3年の経験が必要とは限らず、1年の臨床経験や、経験不問のところもあります。
訪問看護師になりたいと考えている看護師の方は、まずはさまざまな求人を確認してみてはいかがでしょうか。

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