訪問看護の営業方法とは?営業先・成功のコツ・信頼関係の築き方を解説

訪問看護ステーションを立ち上げたものの「どこに営業に行けば良いのかな」「営業が苦手で不安だけど、何を話せば良いのかな」と悩んでいる管理者の方は少なくありません。
病院勤務と異なり、訪問看護では待っているだけでは利用者さまは増えません。
自分たちのステーションを知ってもらうための営業活動が、安定した経営につながります。
この記事では、訪問看護における営業前の準備やおもな営業先、営業方法、営業を効果的にするコツを解説します。記事を読み終えるころには、明日から何に取り組めば良いかが具体的にイメージできるでしょう。
訪問看護における営業とは
訪問看護における営業とは、自分たちのステーションを地域の関係機関に知ってもらい、利用者さまの紹介につなげる活動です。訪問看護は、病院やケアマネジャー、主治医などからの紹介によって利用が始まるケースが多く、地域の関係機関との連携が欠かせません。
「営業=押し売り」というイメージを持つ方もいますが、地域の医療・介護職と顔の見える関係をつくり、必要な方に必要なサービスを届けるための活動です。厚生労働省が推進する地域包括ケアシステムでも多職種が連携しながら、利用者さまが住み慣れた地域で生活を続けられるよう支援することが重視されており、訪問看護の営業もその一部を担っています。
「地域連携活動」と捉えると、看護師としての仕事観にも馴染みやすいでしょう。
訪問看護の営業前に準備すべきこと
営業先に出向く前に、最低限の準備を整えておくことが大切です。何も用意せずに訪問しても、肝心のステーションの情報が伝わらず、相手の印象にも残りにくくなってしまいます。これから解説する内容を参考に、営業の事前準備を始めましょう。
自分のステーションの強みを言語化する
営業前にまず取り組みたいのが、自分たちのステーションの強みを言葉にすることです。
ケアマネジャーや病院の担当者は、利用者さまに合うステーションを選定する立場にあります。「どのような利用者さまを得意としているか」「どこまで対応できるか」が明確であるほど、依頼先として選ばれる可能性を高めます。
以下は、訪問看護ステーションの強みの例です。
- 精神科訪問看護に力を入れている
- 小児特化型訪問看護ステーションである
- 24時間対応・オンコール体制を整えている
- 看取りや緩和ケアの経験が豊富である
- 認定看護師や専門看護師が在籍し高度なケアを提供できる
- 利用者さまやご家族のセルフマネジメント能力の向上を意識している
- 理学療法士・作業療法士が在籍しており、リハビリテーションに力を入れている
強みはかならずしも特別なものでなくて構いません。「土日も対応できる」「訪問可能エリアが広い」といった点も、ケアマネジャーにとっては依頼しやすさにつながる重要な情報です。
関連記事:訪問看護の組織づくりでMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)が必要な理由 – NsPace(ナースペース)-家で「看る」あなたを支える
営業ツールを用意する
訪問看護ステーションの強みを整理したら、それを伝えるためのツールを準備します。
おもなツールとして、以下があげられます。
| ツール | 内容・ポイント |
| 名刺 | ステーション名・住所・連絡先に加え、強みやアピールポイントを一言添えると記憶に残りやすい |
| チラシ・パンフレット | サービス提供エリア・対応できる利用者像・スタッフ体制・加算算定状況など、口頭で伝えきれない情報を簡潔にまとめる |
| 空き状況のお知らせ | 「〇曜日の午前中に空きあり」という具体的な情報を記載する。定期的に更新して配布すると継続的な接点づくりにもなる |
| トークスクリプト | 話す内容・順序をあらかじめまとめた台本。初めての営業でも情報を端的に伝えられるよう、想定される質問への回答も含めて準備しておく |
なかでもトークスクリプトは、営業先ごとに内容を変えるのがポイントです。ケアマネジャーには「対応できる利用者像と空き状況」、病院の連携室には「退院後の受け入れ体制と緊急時の対応」など、相手が知りたい情報を中心に組み立てましょう。
営業先リストをつくる
営業先リストを作成しておくと、訪問漏れを防ぎ、進捗管理がしやすくなります。リストには、以下の項目を記録して管理します。
- 事業所名・住所
- 担当者名
- 訪問日
- やりとりの内容
営業先の情報は、自治体のホームページや介護サービス情報公表システムを活用すると、施設名や所在地をまとめて入手できます。
訪問看護のおもな営業先
訪問看護ステーションのおもな営業先は以下のとおりです。
- 居宅介護支援事業所
- 地域包括支援センター
- 病院の地域医療連携室・退院支援室
- クリニック・在宅療養支援診療所
- 訪問看護協会
紹介されやすい利用者像はそれぞれ異なるため、ステーションの強みや獲得したい利用者層に合わせて優先順位をつけて営業することが大切です。施設の特徴を見ていきましょう。
居宅介護支援事業所
居宅介護支援事業所は、もっとも重要な営業先と言えます。
ケアマネジャーが在籍しており、要介護認定を受けた利用者さまのケアプランを作成し、訪問看護ステーションへの依頼を出す役割を担っています。多くのステーションから営業を受けているため、「何ができるステーションか」を明確に伝えることがポイントです。
初回訪問では売り込みより自己紹介と情報提供に徹し、顔を覚えてもらうことを目標にしましょう。
地域包括支援センター
地域包括支援センターは、地域のネットワークに入り込むきっかけとして重要な営業先のひとつです。
おもに要支援の高齢者を対象とした地域の相談窓口で、保健師や主任ケアマネジャー、社会福祉士が在籍しており、居宅介護支援事業所や病院の地域連携室とのつながりも深い機関です。
介護度が低い利用者さまが中心であるため依頼件数はそれほど多くないこともありますが、地域との接点を広げる場として活用できます。
病院の地域医療連携室・退院支援室
病院の地域医療連携室や退院支援室は、退院後に訪問看護が必要な患者さまを紹介してもらえる営業先です。
ソーシャルワーカーや退院調整看護師が在籍しており、医療依存度の高い利用者さまや退院直後から手厚いケアが必要な方の紹介につながりやすいのが特徴です。
医療処置への対応力やオンコール体制など、退院後の安心感を伝えられると「この訪問看護ステーションなら任せられる」という信頼の獲得につながります。
クリニック・在宅療養支援診療所
クリニック・在宅療養支援診療所は、訪問看護指示書を発行する立場にある重要な営業先です。
在宅療養を続ける利用者さまの主治医となるケースが多く、とくに在宅療養支援診療所は24時間対応しており、訪問看護ステーションとの密な連携が求められます。
緊急時の対応力やオンコール体制、医師との連携の丁寧さを伝えられると依頼につながりやすくなるでしょう。
訪問看護協会
訪問看護協会は、地域の訪問看護ステーションや関係機関とのつながりを作る場として活用できます。
各都道府県に設置されており、利用者さまの紹介を目的とするものではありませんが、参加することで地域医療や介護関係者と接点が生まれ、営業活動に役立つ情報も得られるでしょう。
なお、ステーションの専門性によっては、就労支援施設や発達支援センター、デイサービス、グループホームなども有力な営業先となります。精神科に力を入れているなら就労支援施設、小児特化なら発達支援センターなど強みに合わせて候補を広げてみると、新たな営業先が見つかるはずです。
訪問看護の具体的な営業方法
訪問看護における営業の方法は、直接訪問だけではありません。営業方法ごとの特性を理解したうえで組み合わせると、より効率的に関係先へアプローチできます。ここでは、具体的な営業方法を解説します。
直接訪問
営業先への直接訪問は、訪問看護の営業方法のなかでも基本的かつ効果的な方法のひとつです。
顔を見て話すことで、人柄や熱意が伝わりやすく、相手の記憶にも残りやすくなります。
初回はアポなしの訪問でも良い場合もありますが、2回目以降はアポを取ってから訪問するのが丁寧です。開設直後は電話であいさつしておき「後日、直接ごあいさつにうかがいます」と伝える方法もあります。
訪問の際は名刺とチラシ、空き状況のお知らせをセットで持参しましょう。長居は禁物で、初回は5〜10分程度を目安に切り上げるのが多忙な相手への配慮につながります。
電話・FAX
電話やFAXは、直接訪問の前後に活用したい方法です。電話はアポ取りや空き状況の連絡に、FAXは最新のチラシや空き情報の送付に向いています。
FAXは相手の手元に残るため、タイミングよく目に留まれば依頼につながることもあります。ただし、FAXの送り過ぎは煩わしく感じられてしまうため、月1回程度を目安に送付しましょう。
SNS・ホームページの活用
直接訪問や電話・FAXと組み合わせることで、営業の効果をさらに高められるのがSNSやホームページの活用です。
ホームページには、おもに以下の内容を掲載しておくとケアマネジャーが依頼先を検討する際の判断材料となります。
- サービス内容
- 対応エリア
- スタッフ紹介
- 空き状況
InstagramやXなどのSNSでは、スタッフ紹介や日常の様子を発信すると、利用者さまやケアマネジャーだけでなく、採用活動にも良い影響を与えます。「あのステーションは知っている」という状態をつくっておくことで、訪問の際にも話が進みやすくなるでしょう。
勉強会・研修会への参加
ケアマネジャーや医療職が集まる地域の勉強会・研修会への参加も、有効な営業方法のひとつです。
具体例として、勉強会を企画・主催する方法があげられます。「在宅での褥瘡ケア」「精神疾患のある利用者さまへの対応」など、ステーションの強みに関連したものをテーマにすると、専門性のアピールにもつながります。
また、訪問看護ステーションみのりの矢島さんは、ビアガーデンや秋祭りなどのイベントにも積極的に参加し、「手をつなぐような」関係性を築いてきました。スタッフにも参加を促し、利用者さまとのご縁の広がりが営業にもつながっているそうです。
直接訪問とは異なり、対等な立場で関係を築けるため、信頼関係の構築という点でも効果的です。
関連記事:もう一度、訪問看護を始めたくなる場所~訪問看護ステーションみのり 矢島さんにインタビュー~|ナスキャリ(NsPaceCareer)
訪問看護の営業で信頼を得るコツ
訪問看護の営業は、どのくらい相手の状況を理解できているかが成功率を左右するといっても過言ではありません。これから解説するポイントを意識するだけで、同じ営業方法でも相手に与える印象が変わるため、しっかり確認しましょう。
アポを取ってから行く
飛び込み営業が絶対にNGというわけではありませんが、相手が対応できる時間をあらかじめ確保してから訪問するほうが、落ち着いて話を聞いてもらえます。
電話でアポを取る際は「ごあいさつにうかがいたいので、5〜10分ほどお時間をいただけますか」と一言添えると、相手も予定を組みやすくなります。
ケアマネジャーの繁忙期・病院の連休前を避けてタイミングを読む
ケアマネジャーは月末・月初にケアプランの作成や請求業務が集中しがちです。月の10日〜25日ごろを目安に訪問しましょう。
病院の場合は、ゴールデンウィークや年末年始などの連休前後に来院者数や退院調整が増えるため、連休の約1か月前を目安に訪問しておくと話を聞いてもらいやすくなります。
ケアマネジャーが知りたい情報を端的に伝える
ケアマネジャーは多くのステーションから営業を受けており、限られた時間のなかで対応しています。そのため、伝える内容は長くても3分程度におさめ、相手が知りたい情報を優先して話しましょう。
ケアマネジャーがとくに確認したい情報は、以下のとおりです。
- サービス提供エリアと対応可能な曜日・時間帯
- 現在の空き状況(曜日・時間含む)
- 対応できる利用者像(疾患・医療処置の内容など)
- 緊急時の対応体制(オンコール・24時間対応の有無)
上記に加えて強みを添えると、第一印象が良くなるでしょう。
| <トーク例> 「〇〇訪問看護ステーションの△△と申します。本日は簡単にごあいさつをと思いお伺いしました。現在、〇〇エリアを中心にサービスを提供しており、精神科の利用者さまの対応を得意としております。〇曜日の午前中にまだ空きがございますので、もしお困りの利用者さまがいらっしゃいましたらぜひご相談ください。チラシをお渡ししても良いでしょうか。」 |
このトーク例を参考に、自ステーションの強みや空き状況に合わせたスクリプトを用意しておくと、初めての営業でも話がスムーズに進みやすくなります。
月1回を目安に顔を出す
初回の訪問で依頼につながることはほとんどないため、月1回程度を目安に訪問し、顔を覚えてもらうことが大切です。
たとえば、訪問看護報告書をケアマネジャーに手渡しする際に、利用者さまの状態を伝えるのも効果的です。「先日ご紹介いただいた〇〇さんですが、こんな変化がありました」と一言添えることで、「丁寧に連携してくれるステーション」という印象を持ってもらえます。
また、LIVING訪問看護ステーションの吉村さんは、「お茶だけ飲みに行く」感覚で訪ねることもあるそうです。「営業というよりも、最近どうですかっていう感じで顔を出すんです。みんな忙しいので、体調大丈夫かなと思って」という姿勢が、困ったときに連携できる関係づくりになっています。
同じあいさつにならないように、訪問のたびに話題を持参する意識を持ちましょう。
関連記事:訪問看護の理念は「伴走」 人生に寄り添う看護とは ~LIVING訪問看護ステーション 吉村さんにインタビュー~|ナスキャリ(NsPaceCareer)
訪問看護の営業に関するよくある質問
訪問看護における営業に関して、多く寄せられる質問にお答えします。実際の営業活動の参考にしてください。
Q1:訪問看護の営業を断られたらどうすれば良いでしょうか?
営業を断られることは珍しくないため、断られたとしても「当たり前」という心構えで次に進むことが大切です。
状況を見ながら定期的に情報提供を続け、ケアマネジャーが依頼先に困ったときに「あのステーションに頼んでみよう」と思い出してもらえる関係をつくることが目標です。
Q2:訪問看護師は飛び込み営業しても大丈夫ですか?
飛び込み営業が必ずしもNGというわけではありませんが、事前に電話でアポイントを取ってから訪問するほうが、相手に丁寧な印象を持ってもらいやすくなります。
とくに、ケアマネジャーや病院の地域連携室は日々多忙なため、突然訪問すると十分に話を聞いてもらえないこともあります。「5〜10分ほどごあいさつのお時間をいただけますか」と事前に連絡し、相手の都合に合わせて訪問すると、良好な関係づくりにつながるでしょう。
Q3:訪問看護の営業は管理者だけがやるべきですか?
営業は管理者だけが担う必要はありません。
不慣れなスタッフには、まず管理者との同行訪問から始めると無理なく営業に慣れてもらえます。
また、スタッフが日々のケアを丁寧におこなうことも、口コミや紹介につながる立派な営業活動です。管理者1人で抱え込まず、ステーション全体で地域との関係づくりにかかわっていきましょう。
訪問看護の営業は「地道な関係づくり」を積み重ねよう
訪問看護の営業は、一度の訪問で結果を求めるものではありません。継続的に顔を出し、丁寧な連携を重ねることで「困ったときに頼れるステーション」として地域に認知されていきます。
まずは営業先リストの作成と強みの言語化から始め、できることを一つひとつ積み重ねていきましょう。
訪問看護師としてのキャリアや働き方について、さらに詳しく知りたい方は「ナスキャリ(NsPace Career)」をぜひご活用ください。
<参考サイト・文献>
NsPace Careerナビ 編集部 「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。
