【例文つき】看護実習記録の書き方を4つのポイントに沿って解説

実習の記録について、「実習記録が終わらない」「何を書けば良いか分からない」と悩みを抱える看護学生は少なくありません。
「実習期間中、記録に追われて気づけば朝になっていた」という経験をした方もいるでしょう。
記録に時間がかかるのは「書き方の型」がまだ身についていないからかもしれません。コツをつかめば、スムーズに質の高い実習記録が書けるようになります。
この記事では、看護実習記録の目的や基本構成、看護過程に沿った書き方・例文、効率よく書くためのコツについて解説します。記事を読み終えたあとには、記録に対する苦手意識が少し和らぐでしょう。
看護実習の記録を書く前に押さえておきたいこと
実習記録の書き方を学ぶ前に「そもそも記録は何のために書くのか」「どのような内容で構成されているのか」を理解しておきましょう。書く目的と構成を把握してから取り組むと、何をどこに書くべきかが明らかになり、スムーズに記録が進みます。
- 実習記録を書く目的
- 実習記録の基本的な構成
まずは上記を解説します。
実習記録を書く目的
看護実習記録は、実習中に観察したことや実践したこと、学んだことを言語化して残すものです。書くことで頭の中に散らばった情報が整理され、自分が考える看護の根拠を確かめられるでしょう。
文部科学省が公表している「看護学教育モデル・コア・カリキュラム」でも、看護過程を通じた思考の整理が臨地実習における中心的な学びとして位置づけられています。
また、実習記録は指導者や教員が学生の思考過程を確認し、フィードバックするための素材にもなります。修正やコメントを受けながら書き直すことで、記録の質は日を追うごとに上がっていくでしょう。
実習記録の基本的な構成
実習記録は学校や実習先によって書式が異なりますが、一般的には、以下の3つで構成されています。
1. 行動計画・実習目標
その日の実習で「何を・いつ・どの順番でやるか」を整理した計画です。
患者さまの検査や処置などの予定を先に書き出し、空いた時間に自分がおこないたいケアや目標を組み込んでいくと立てやすくなります。実習終了後は、目標の達成度を振り返る材料としても活用できます。
2. 看護過程の記録
患者さまに提供する看護のプロセスを記録したものです。
「情報収集・アセスメント・看護計画・実施・評価」の5つのステップで構成されており、看護過程の一連の流れを書き残します。
一般社団法人日本看護系大学協議会の看護学教育質向上委員会による「看護学実習ガイドライン」でも、看護過程の習得が重要な学習要素として位置づけられています。
この記事でも、看護過程の記録を中心に詳しく解説します。
3. 学びレポート
実習全体を振り返り、学んだことや課題を言葉にしたものです。
体験したことを時系列で書く日記とは異なり「その体験から何を感じ、看護観がどう変わったか」を掘り下げることが求められます。うまく書けないときは、実習中に印象に残った場面を1つ選び、そこから広げていくと書きやすいでしょう。
看護実習記録の書き方【看護過程に沿って解説】
看護過程の各ステップには、記録として整理すべき内容があります。日本看護協会が公表する「看護記録に関する指針」でも、看護過程に基づいて思考を整理し、記録することの重要性が示されています。
そのため、各ステップに毎に「何をどのように書くか」を理解しておくことが、分かりやすく実践的な記録につながります。
- 患者情報(Sデータ・Oデータ)
- アセスメント
- 看護計画
- 実施内容
- 評価
各ステップで「何をどう書くか」を押さえておくと、記録全体の流れがつかめるようになります。
患者情報(Sデータ・Oデータ)
患者さまから収集した情報は「Sデータ(主観的情報)」と「Oデータ(客観的情報)」に分けて記録します。
- Sデータ:患者さまが話した言葉をそのまま「」に入れて記載
例)「昨日の夜はあまり眠れなかった」「足が重い感じがする」 - Oデータ:看護師が観察・測定した事実を記録
例)血圧・体温・SpO2などの数値、表情、全身状態など
患者情報には「患者さまが苦しそうだった」のように、事実と解釈を混在させないよう注意しましょう。解釈や判断はアセスメント欄で記載します。
アセスメント
SデータとOデータをもとに「患者さまの状態をどう解釈したか」を記述します。書く際は以下の流れを意識しましょう。
- 収集した情報を整理する
- 「この情報から、こう判断した」と考えたことを示す
- 「今の状態から今後どうなる可能性があるか」という予測・リスクまで言及する
「〜と考えられる」「〜の可能性がある」といった表現を使い、感想文にならないよう注意します。
看護計画
アセスメントをもとに看護計画を立案します。看護計画は以下の3つに分けて書くのが一般的です。
- 観察計画(OP):何を観察するか
- ケア計画(TP):どのようなケアをおこなうか
- 教育計画(EP):患者さまやご家族に何を伝えるか
目標は「患者さまが〜できる」という形で書くのが基本です。「食事を残さず食べられる」よりも「昼食を8割以上摂取できる」のように、数値や回数を使って具体的に書くと達成度を評価しやすくなります。
実施内容
実際におこなったケアや観察を時系列で記述します。書き方のポイントは以下の3点です。
- 「〜を実施した」「〜を観察した」など過去形で書く
- 患者さまの反応(言葉・表情・バイタルサインの変化など)も合わせて記録する
- 第三者が読んでも何をどのように実施したかが分かる程度に具体的に書く
ここで書くのはあくまで「事実」だけです。「〜のように見えた」「〜だと感じた」といった解釈は評価欄で記載します。
評価
実施したケアが「計画どおりだったか」「目標に近づいたか」をまとめます。書く際は以下の流れを意識しましょう。
- 患者さまの反応や変化をもとに達成度を判断する
- うまくいった要因・うまくいかなかった要因を分析する
- 次回どうするかを示す
「できた・できなかった」で終わらせず、要因の分析と次のアクションまで書くことで、指導者からも具体的なフィードバックをもらいやすくなります。
関連記事:看護学生におすすめ!患者さまと良好な関係を築くコミュニケーションのコツと留意点
看護実習記録の書き方における4つのポイント
看護実習記録の質を左右する、4つのポイントを紹介します。
- 事実と考察をわけて書く
- 客観的な表現を使う
- 時系列で整理する
- 根拠(なぜそう判断したか)を明示する
それぞれ見ていきましょう。
1. 事実と考察をわけて書く
記録の際に混乱しやすいポイントが「見たこと(事実)」と「解釈したこと(考察)」の境界線です。
たとえば「患者さまが足を痛そうにしていた」との記述は「痛そう」という看護師の解釈が含まれており、事実の記録としては不十分です。正しくは「患者さまは眉をひそめ、右足をかばうように歩いていた」のように、観察した事実をそのまま書きます。
2. 客観的な表現を使う
「少し」「かなり」「良さそう」といったあいまいな表現は、読み手によって受け取り方が異なります。記録には数値や頻度、具体的な言葉を使いましょう。
「少し熱っぽい」なら「体温38.2℃」と検温して得られた数値で示します。眠れていない様子が見られる場合は、患者さまの言葉をそのままSデータに「昨日の夜は2時間しか眠れなかった」と記録するのが正確です。
3. 時系列で整理する
時系列が崩れていると、読み手に患者さまの状況や変化が伝わりにくくなります。実習中のメモに時刻を記入しておき、文章に起こす前に順番を整理するとスムーズです。
たとえば、以下のような流れで記録されていれば、ケアの前後で患者さまの状態がどのように変化したかが一目で分かります。
10時:バイタルサインを測定
10時30分:全身清拭を施行
11時:呼吸状態を確認
記録は「何をしたか」だけでなく「その前後で何が変わったか」を伝えるものだと意識しておきましょう。
4. 根拠(なぜそう判断したか)を明示する
アセスメントや評価で「〜と考えた」とだけ書かれている記録は、なぜそう判断したのかが伝わりません。「〜との情報があるため、〜と考えた」というように、判断の理由を添えましょう。根拠になるのはSデータ・Oデータ、教科書の知識、正常値との比較などです。
たとえば「体動後にSpO2が96%から92%に低下し、呼吸困難感の訴えもあることから、身体を動かす際に呼吸状態が悪化しやすい状態にあると考えた」のように、データと判断をセットで書くことを意識してみてください。
看護実習記録で使える例文
ここでは、書き方に迷いやすい3つの場面の例文を紹介します。以下の患者例をもとに「バイタルサイン・患者情報」「アセスメント」「看護ケアの実施内容・評価」の順に解説します。
【患者例】Aさん 70代男性
- 肺炎にて入院、入院8日目
- 抗菌薬投与中
- 安静度:病棟内歩行可
- 労作時に呼吸困難感あり
担当患者さまの記録を書く際の参考にしてみてください。
バイタルサイン・患者情報
「何をどこまで観察・記録すれば良いか」は、迷いやすいポイントの1つです。以下の例文では、肺炎で入院中のAさんを例に、データの分け方と記録する情報の選び方を示します。
| 【例文】 10:00 バイタルサイン測定実施。 <Sデータ> 「昨日の夜は少し咳が出たが、眠れた」 「起き上がると少し息が切れる気がする」 「あまり食べたくない」 <Oデータ> 血圧118/72mmHg、脈拍76回/分(整)、体温36.8℃、SpO2 98%。 安静時の呼吸困難感はなし。 体動時に咳嗽が見られ、呼吸困難感の訴えあり。 肺雑音:右下肺野に軽度の水泡音あり。 チアノーゼなし、四肢末端の冷感なし。 訪室時、臥床中。日中の離床は基本排泄時のみ。 食事摂取量:昼食6割程度。 抗菌薬投与中。 採血データ:WBC 9,800/μL(入院時 18,200/μL)、CRP 1.2mg/dL(入院時 12.4mg/dL) |
Sデータは患者さまの言葉をそのまま「」で記録します。Oデータは測定や観察した事実を数値・単位を省略せずに具体的に書きましょう。
担当患者さまの疾患や看護計画に関連する項目を優先して記録すると、アセスメントに必要な情報が揃いやすくなります。
アセスメント
アセスメントで難しいのは、情報を集めることよりも「そこからどう解釈するか」を言葉にする部分です。「データを並べただけで終わってしまった」「根拠の書き方が分からない」と感じる方もいるでしょう。情報の整理から判断・今後の方針まで、どのように書くかを以下の例文で確認してみてください。
| 【例文】 入院8日目。 入院当日より抗菌薬の投与を継続している。 本日のバイタルサインは血圧118/72mmHg、体温36.8℃、SpO2 98%といずれも基準値内であり、バイタルサイン上の異常は認められない。 採血データはWBC 9,800/μL、CRP 1.2mg/dLであり、入院時(WBC 18,200/μL、CRP 12.4mg/dL)と比較して炎症反応の改善傾向が認められる。 全身状態は回復傾向にあることから、本日は清潔ケアの実施を検討する。 労作時に呼吸困難感の自覚があり、炎症反応も正常値には至っていないため、身体への負担が少ない全身清拭が適切と考える。 実施の際は、ケア中・ケア後の呼吸状態とSpO2の変化を注意深く観察する必要がある。また、異常が見られた場合は速やかに指導者へ報告する。 |
ケアを提案する場合は「なぜそのケアを選んだのか」の理由も含めると、指導者に意図が伝わりやすくなります。
看護ケアの実施内容・評価
実施内容や評価の記録では「できたこと・できなかったことをどう整理すれば良いか分からない」「次回につなげる書き方が難しい」と感じることもあるでしょう。実施内容(事実)と評価(判断)を区別しながら、課題と次回の目標まで記録する流れを例文で見ていきます。
| 【例文】 本日はAさんの全身清拭を実施した。 事前に呼吸状態を確認し、動作の合間に休憩を挟みながら進めた。 Aさんから「ゆっくりやってもらえて楽だった」との言葉があり、呼吸状態に配慮したケアが提供できたと評価する。 一方、清拭中のSpO2変化の観察が不十分で、動作後の数値確認を忘れる場面があった。次回は、ケア中・ケア後のSpO2と呼吸数を継続して観察できるよう意識する。 |
「できた・できなかった」で終わらせず、うまくいかなかった点も「なぜそうなったか」「次はどうするか」まで記録することで、次の記録や看護計画の修正につながります。こうした振り返りの積み重ねが、看護の質を少しずつ高めていきます。
看護実習記録の効率を上げる書き方のコツ
記録に時間がかかるおもな原因として「実習中のメモが不十分」「書き始める前に情報が整理できていない」「判断の根拠が言葉にならない」などが挙げられます。
- 実習中にこまめにメモをとる習慣を作る
- 書き始める前に箇条書きで情報を整理する
- 「なぜそう判断したか」を言葉にしてから文章にする
上記のコツを取り入れることで、記録にかかる時間を減らしながら内容の質も上げやすくなるでしょう。
実習中にこまめにメモをとる習慣を作る
記録に必要な情報が不足してしまう原因の多くは、実習中のメモが不十分なことにあります。以下のポイントを意識してメモを取ると、記録を書く際に情報が揃いやすくなるでしょう。
- 1つのケアが終わったら、その場でメモする時間を作る
- 事前に「今日集めるべき情報」を整理してから患者さまと話す
- 事実だけでなく、そのときに感じた気づきや疑問もあわせて書き残す
たとえば「患者さまがため息をついた(事実)」と「薬の副作用で気分が落ちているかもしれない(気づき)」を分けてメモしておけば、アセスメントを記述する際に活用しやすくなります。
書き始める前に箇条書きで情報を整理する
最初から文章を書こうとすると、手が止まりやすくなります。まずSデータ・Oデータ・気づきを箇条書きで並べ「何を伝えたいか」を決めてから文章に起こすとスムーズです。
「アセスメントに何を書くか」「評価の根拠はどれか」を先に絞り込むことで、不要な情報を除いたまとまりのある記録が書けるようになります。
情報の整理には、関連図を活用する方法も効果的です。関連図は患者さまの病態や症状、生活背景などの情報をつなげて視覚的に整理するツールで、現在も看護実習で取り入れられているケースもあります。書き方に慣れておくと、アセスメントや看護計画を考える際の土台として活用しやすくなるでしょう。
関連記事:看護で使う関連図の書き方を5ステップで解説!つまずきやすいポイントも紹介
「なぜそう判断したか」を言葉にしてから文章にする
「結論は出ているけれど根拠が言葉にならない」という状態になると、アセスメントで詰まりやすくなります。
行き詰まったときは「〇〇だから△△と考えた」という一文を先にメモしてから、文章を肉付けしていく方法が有効です。
たとえば「SpO2が昨日より低下しているから、呼吸状態に注意が必要と考えた」と書き出し、前後のデータや今後の方針を加えていくとアセスメントが書きやすくなります。
看護実習記録の書き方についてのよくある質問
看護実習記録の書き方について、よくある質問に回答します。
Q1. 実習記録に何を書くか迷ったときはどうすれば良い?
記録の内容に迷ったときは「患者さまに今日何が起きたか」を時系列で思い出すところから始めてみてください。思い出した内容から、Sデータ・Oデータ・アセスメント・評価の枠に当てはめていくと整理しやすくなります。
実習中にこまめにメモを取っておくと、記録を書くときの手がかりになるでしょう。
また、実習要項やシラバスには「この実習で学ぶべきこと」が記載されているため、そこに立ち返ると「何を観察・記録すべきか」の優先順位がつけやすくなります。
Q2. アセスメントの書き方はどうしたら身につきますか?
アセスメントの書き方を身につけるには、先輩看護師の記録を読み「どのような根拠で判断しているか」の流れを参考にするのが効果的です。
また、教科書や参考書の正常値・異常値の基準と照らし合わせながら「数値はどの程度の逸脱か」「どのようなリスクが考えられるか」を意識して書く習慣をつけていくと、根拠のある記録が書けるようになるでしょう。
関連記事:看護アセスメントの書き方!4つの手順と例文でわかりやすく解説
Q3. 指導者に「内容が浅い」と言われたときの対処法は?
「内容が浅い」と言われる場合、情報の羅列になり、思考プロセスが読み取れない状態になっている可能性があります。アセスメントに「だからこのように判断した」という一文が入っているかどうか、見直してみてください。
指導者に「どこをどのように改善すれば良いか」を具体的に聞き「浅い」と言われた個所を1つずつ改善していきましょう。
看護実習記録は「書き方のコツ」をつかめば怖くない
看護実習記録は書く量が多く、大変に感じることもあるかもしれません。それでも、実習記録で培った「観察・判断・言語化」の力は、看護師になってからの看護記録にも直結するスキルです。
看護師としてのキャリアをどのような環境で築くか考えている方には、訪問看護という働き方も選択肢の1つです。訪問看護では、利用者さまとじっくり関わることができアセスメントの力がより重要となる環境です。
訪問看護ステーションの求人を専門に扱う「NsPace Career」では、働き方や仕事内容の情報も豊富に掲載しています。将来の選択肢を広げるきっかけに、ぜひチェックしてみてください。
<参考文献・サイト>
NsPace Careerナビ 編集部 「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。
