【2026年度】訪問看護ステーションの廃業率は?経営が難しい理由と赤字を防ぐ対策

訪問看護の需要は年々高まり、ステーション数は過去最多を更新し続けています。
一方で、訪問看護の経営は難しいと聞き「開業しても潰れるのではないか」と、実際のリスクがどの程度なのか確かめたいと感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、2026年度の最新調査をもとに訪問看護ステーションの廃業率を算出し、廃業に至るおもな理由と赤字を防ぐための対策を解説します。
廃業率の推移や地域差にも触れているので、訪問看護ステーションの開業を検討している方はぜひ参考にしてください。
訪問看護ステーションの廃業率は5.1%
全国訪問看護事業協会の「令和8年度訪問看護ステーション数調査結果」をもとに算出すると、訪問看護ステーションの廃業率は約5.1%です。
なお、再開の可能性を残した「休止」は含めず、「廃止」のみを廃業として扱っています。
この約5.1%という数字はどのように推移してきたのか確認していきましょう。
訪問看護ステーションの廃業率の推移
訪問看護ステーションの廃業率は、2024年度に上昇し、以降は高い水準で推移しています。
| 年度 | 期初の稼働数 | 廃止数 | 廃業率※ |
| 2023年度 | 15,697件 | 701件 | 約4.5% |
| 2024年度 | 17,329件 | 886件 | 約5.1% |
| 2025年度 | 18,754件 | 960件 | 約5.1% |
廃止数はこの3年間で701件から960件へと増え、過去最高の水準になっています。廃業率をみても、2023年度の約4.5%から直近2年度は約5.1%へと水準が切り上がっています。
一方で、新規開業も2025年度に2,428件と高い水準となっており、2026年4月1日時点の稼働数は2万51件と過去最多です。
新たに開業するステーションが増えるなかで廃止数も増加していることから、開業後の事業継続には一定の難しさがあることがうかがえます。
訪問看護ステーションの廃業率は他業種よりもやや高め
中小企業庁「2024年度の中小企業の動向」によると、2023年度の全業種の廃業率は3.9%です。算出方法が異なるため単純には比較できないものの、訪問看護ステーションの廃業率はこれを上回る水準となっています。
ただし廃業率が高いからといって、業界の衰退を意味しているわけではありません。
訪問看護は新規開業が過去3年は2,400件を超える参入の活発な市場です。
開業して間もない事業所が多いほど、経営が軌道に乗る前の撤退も起こりやすく、廃業率は高く出やすい傾向があります。
訪問看護ステーションが廃業に至るおもな理由
訪問看護ステーションの廃業には、共通するパターンがあります。いずれも事前に知っていれば備えられるものばかりなので、ここで代表的な5つの理由を確認しておきましょう。
看護師の確保や定着が難しい
訪問看護ステーションの廃業につながる理由の1つが、看護師の確保や定着の難しさです。
訪問看護ステーションにおける看護師・准看護師の有効求人倍率は、2024年度の調査で4.54倍と看護業界のなかでも高い水準にあり、採用競争は激しい状況です。
さらに、訪問看護では看護師が1人で利用者さまの自宅を訪問します。そのため、経験の浅い看護師にとっては心理的な負担が大きく、応募をためらう要因になったり早期離職につながるケースもあります。
こうした状況に加え、訪問看護ステーションは、看護職員を常勤換算で2.5人以上配置する必要があります。とくに人員基準ぎりぎりの小規模なステーションでは、看護師が1人退職しただけで基準を維持できなくなる場合があります。
人員不足によって残ったスタッフの負担が増え、さらなる離職を招けば、必要な人員を確保できず、事業の継続が難しくなるケースもあるでしょう。
関連記事:訪問看護の人員基準とは?常勤換算2.5人の計算方法や違反時のペナルティまで解説
利用者獲得ができず稼働率があがらない
利用者さまを十分に確保できず稼働率が上がらない状態が続くと、廃業に至るおそれがあります。
訪問看護は訪問件数に応じて売上が決まるため、稼働率が低い状態が続くと、家賃や人件費などの固定費をまかなえなくなるためです。
開業直後は利用者さまが集まりにくいうえ、入院や看取りで訪問件数が変動することもあります。また、訪問看護の利用はケアマネジャーや医療機関などからの紹介が中心となるため、紹介が少ないと新規利用者の獲得が進まず、稼働率が低迷するおそれがあります。
開業資金・運転資金の計画が甘い
開業資金や運転資金の計画の甘さも、事業の継続を難しくさせる要因となり得ます。訪問看護は開業後すぐに利用者さまが増えるとは限らない一方、人件費や家賃などの費用は発生し続けるためです。
厚生労働省「令和7年度介護事業経営概況調査結果」によると、訪問看護では売上高の70%前後が人件費にあてられています。さらに、介護報酬・診療報酬の入金はサービス提供から約2か月後となるため、利用者さまが増えても手元の資金がすぐに増えるわけではありません。
黒字化までの赤字期間を十分に見込んでいないと、利用者さまが増える前に運転資金が尽き、事業を継続できなくなる可能性があります。
訪問看護ステーションの開業資金の内訳や目安は、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:訪問看護ステーションの開業資金はどう準備する?融資先の選び方と失敗しないポイント
管理者としての経験が不足している
管理者としての経験不足も、訪問看護ステーションの廃業につながる要因の1つです。管理者には、収支管理やスタッフのマネジメントだけでなく、訪問看護ならではの臨床マネジメントも求められるためです。
管理者の役割として、以下があげられます。
- 在宅での看護技術・臨床判断の応用
- スタッフからの相談対応
- 主治医・ケアマネジャー・リハビリテーション職などとの支援方針の調整
- 利用者さま・ご家族への意思決定支援
厚生労働省の運営基準に関する通知でも、管理者には看護提供の状況を把握し、職員と業務を一元的に管理する役割が示されています。
病棟での経験を活かせる部分もありますが、訪問看護では異なる判断や調整が求められるため、管理者としての経験や学習も必要です。
また、管理者個人の資質や努力だけに頼らない視点も大切です。
管理者向け研修の受講や、経験豊富な管理者に相談できる関係づくり、管理業務を1人に集中させない分担体制など、組織的なバックアップがあれば、経験不足を補いながら運営を安定させられるでしょう。
制度改定や法令遵守に対応できない
制度改定や法令への対応が不十分なことも、訪問看護ステーションの廃業につながりかねません。診療報酬・介護報酬の改定や運営基準の変更に対応できなければ、算定ミスや不正請求、基準違反となる可能性があるためです。
診療報酬・介護報酬は定期的に改定され、算定要件や必要な様式なども変更されます。情報収集が十分でなければ、収益機会を逃すだけでなく、意図せず誤って請求してしまうおそれがあります。
実際に、医師の指示を受けないままリハビリテーションを提供し、376回分の介護給付費を不正に請求したとして、指定取消処分を受けた事例が公表されました。
また、2025年4月には指導・監査の運用が見直され、1件あたりの請求額が高額なステーションへの個別指導や、悪質なケースへの抜き打ち監査の方針が明確化されました。
こうした制度や法令への対応が不十分なまま運営を続けると、返還や行政処分などによって経営に大きな影響が生じ、事業の継続が難しくなる可能性があります。
訪問看護ステーションの廃業を防ぐための対策
訪問看護ステーションの廃業を防ぐには、人材・利用者・資金・業務効率・管理者の経験という5つの観点から、事業を安定させる取り組みが重要です。
とくに開業直後は、人材や利用者が十分に確保できず、資金繰りが厳しくなりやすい時期です。廃業を招きやすい課題をあらかじめ把握し、早い段階から対策を講じておきましょう。
訪問看護師の採用と定着に力を入れる
訪問看護ステーションの安定した運営には、看護師の採用だけでなく、長く働ける環境を整えることが重要です。
採用では、求人サイト・人材紹介・知人からの紹介など複数の方法を活用し、応募者との接点を増やしましょう。なかでも訪問看護に特化した求人サービスを活用すれば、在宅医療に関心のある看護師へ効率的にアプローチできます。
求人票には給与だけでなく、オンコールの頻度や教育体制など、実際の働き方が分かる情報を掲載すると、入職後のミスマッチ防止にも役立ちます。
また、オンコール体制の負担分散や柔軟な勤務形態、教育体制の整備なども定着には欠かせません。たとえば、以下のような工夫があげられます。
- オンコールの担当を特定のスタッフに固定せず輪番制にする
- 当番の翌日は訪問件数を減らす
- オンコールなしの働き方を選べるようにする
- 時短勤務や週3日からの勤務を可能にする
- 直行直帰の体制を導入する
採用を強化すると同時に、「辞めない職場」をつくることが安定した人員確保につながります。
訪問看護ステーションの立ち上げを検討している方や、立ち上げに向けてスタッフの採用・求人を考えている方は、ぜひナスキャリ(NsPace Career)をご活用ください。
地域との関係構築で利用者さまを獲得する
利用者さまを安定して獲得するには、地域の関連機関と信頼関係を築き、紹介を生む接点を増やすことが重要です。
開業前からケアマネジャーが在籍する居宅介護支援事業所や、病院の地域連携室、地域包括支援センターなどへあいさつに回り、開業後も定期的に情報提供を続けましょう。
その際は、「精神科訪問看護に対応できる」「24時間対応体制がある」など、自ステーションの強みを明確に伝えることが大切です。依頼する側が「どのような利用者さまを任せられるステーションなのか」をイメージできれば、紹介される機会も増えていきます。
また、依頼を受けた際のレスポンスの速さも信頼を左右します。受け入れ可否を迅速に判断できる体制を整えておくことも、利用者さま獲得の重要なポイントです。
営業活動の具体的な進め方は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:訪問看護の営業方法とは?営業先・成功のコツ・信頼関係の築き方を解説
余裕を持った資金計画を立てる
訪問看護ステーションの廃業を防ぐには、利用者数が計画どおりに増えない場合も想定し、余裕を持った資金計画を立てることが重要です。
訪問看護の立ち上げでは、開業資金と3~6か月分の運転資金をあわせて500万〜1,000万円程度を準備するケースが多いとされています。運転資金には人件費や家賃、車両の維持費などの費用を計上し、売上が伸びなくても一定期間は運営できる資金を確保しておきましょう。
また、急な採用費の増加や物価高騰などの想定外の支出も織り込んでおくと安心です。開業後も月次で資金繰り表を更新し、現預金の残高を把握しておく必要があります。
必要資金の詳しい内訳や、融資・補助金といった資金調達の方法は、以下の記事で解説しています。
関連記事:訪問看護の立ち上げの資金はいくら?開業資金の内訳や失敗例、黒字化のポイントを解説
業務を効率化して収益性を高める
限られた人員で安定した収益を確保するには、日々の業務を効率化し、訪問に充てられる時間を確保することが重要です。
電子カルテや請求ソフトを活用して記録・レセプト業務の時間を短縮すれば、看護師が訪問に使える時間を増やせます。残業の削減は人件費の抑制だけでなく、職員の負担軽減や離職防止にも有効です。
また、訪問ルートの見直しや書類作成のテンプレート化など、費用をかけずに始められる工夫もあります。
なお、厚生労働省「令和7年度介護事業経営概況調査結果」によると、訪問看護全体の収支差率は10.3%で黒字である一方、約38%の事業所が赤字となっています(2024年度決算)。
同じ報酬体系でも収益に差が生じていることから、業務の効率化を積み重ねることが経営の安定につながるといえるでしょう。
開業前に管理者・管理者候補として経験を積む
訪問看護ステーションの開業を考えているなら、事前に管理者や管理者候補として経験を積んでおくことが、開業後の安定した運営を支えます。
管理者候補の立場であれば、収支や採用の実務に関わりながら、難しいケースの相談対応や多職種との調整、利用者さま・ご家族への意思決定支援などを、管理者のそばで経験できます。
厚生労働省の通知では、管理者には看護の実務経験に加えて、資質を確保するために研修を受講することが望ましいとされているため、研修と実務を並行して積んでいくのが現実的です。
現在の職場で管理者を目指すのが難しい場合は、管理者候補を募集しているステーションへ転職するのも1つの方法です。
ナスキャリ(NsPace Career)では、管理者・管理者候補の求人も含めて、訪問看護に特化した求人を掲載していますので、ぜひご活用ください。
訪問看護ステーションの廃業率についてよくある質問
訪問看護ステーションの廃業率に関して、多く寄せられる質問にお答えします。いずれも開業判断に関わるポイントなので、あわせて確認しておきましょう。
Q1:廃止と休止は何が違いますか?
廃止は指定を返上して事業を終了すること、休止は一時的に事業を停止することです。休止には再開の可能性があり、統計上も廃止とは別に集計されています。
なお、休止からそのまま廃止に至るステーションもありますが、移行の割合を示す統計は公表されていません。
Q2:廃業(閉鎖)する場合はどのような手続きが必要ですか?
廃止・休止する場合は、原則としてその廃止、休止予定日の1か月前までに、都道府県といった指定権者への届出が必要です。
あわせて、利用者さまへの説明とほかの事業所への引き継ぎを計画的に進めましょう。なお、廃止した場合でも、改めて指定を受ければ事業を再開することも可能です。
Q3:訪問看護ステーションの廃業率には地域差がありますか?
訪問看護ステーションの廃止数には地域差があります。
2025年度中の廃止数は大阪府137件、東京都83件、愛知県76件と、ステーション数の多い都市部で目立ちます。とくに大阪府は、稼働数・新規開業数・廃止数のいずれも全国最多です。開業予定地によって競争環境も異なるため、地域のステーション数や利用者さまのニーズなどを事前に確認しておきましょう。
Q4:開業してすぐに廃業するケースは多いですか?
開業した年度のうちに廃止となるケースも一定数あります。
全国訪問看護事業協会「令和8年度訪問看護ステーション数調査結果」によると、2025年度中に開業したステーションのうち87件が、同年度中に廃止となりました。
開業直後は利用者さまの獲得や採用が十分に進んでいない一方で、人件費や家賃などの費用は発生します。そのため、開業前から資金計画や人材確保、地域への営業などを準備しておくことが重要です。
Q5:開業する前に訪問看護の実務経験は必要ですか?
法令上、実務経験がなくても保健師・助産師・看護師のいずれかの資格があれば開業は可能です。
ただし、訪問看護の現場や管理者としての経験があると、報酬制度や記録業務への理解を深められるほか、地域の関係機関との連携やスタッフの管理など、開業後に必要となる業務を事前に経験できます。
とくに訪問看護の管理者には経営面だけでなく、利用者さまへの看護提供や多職種連携など、訪問看護特有の経験も求められるため、開業前に実務を通じて学んでおくと良いでしょう。
訪問看護ステーションの廃業の原因を知り、対策を講じて開業準備を進めよう
訪問看護ステーションの廃業率は約5.1%と、全業種の廃業率3.9%を上回る水準です。
しかし、その背景には人材不足や利用者獲得、資金計画、業務効率、管理者としての経験不足など、いくつかの共通した要因があります。
これらは、開業前から課題を把握して準備を進めることで、廃業のリスクを抑えられる可能性があります。とくに看護師の確保と定着は、人員基準の維持だけでなく、安定した訪問件数や収益にも関わる重要なポイントです。
廃業率のみで開業を判断するのではなく、廃業につながる要因を理解し、自ステーションに必要な準備を1つずつ進めていきましょう。
<参考サイト・文献>
令和8年度訪問看護ステーション数調査結果|全国訪問看護事業協会
令和6年度訪問看護ステーション数調査結果|全国訪問看護事業協会
令和7年度訪問看護ステーション数調査結果|全国訪問看護事業協会
2024年度ナースセンター登録データに基づく看護職の求職・求人・就職に関する分析|日本看護協会
指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準|e-Gov法令検索
指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準について|厚生労働省
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