呼吸療法認定士とは?看護師が取得するメリットやなるための流れを解説

呼吸器内科病棟やICUで人工呼吸器管理・酸素療法に携わるなかで、「呼吸療法認定士という資格を耳にしたけれど、具体的に何をする資格なのかよく分からない」「受験資格や費用、勉強法を確認してから挑戦するか判断したい」と感じていませんか。
この記事では、呼吸療法認定士の資格概要や受験資格、費用、合格率、勉強法など看護師が取得を検討するうえで知っておきたい情報をまとめて解説します。自分が受験資格を満たすか、取得までにどのような流れを踏むのかがイメージできるようになるでしょう。
呼吸療法認定士とは
呼吸療法認定士とは、呼吸ケアの専門知識を証明する資格です。ここでは、呼吸療法認定士の正式名称や位置づけ、取得することでできる業務などを詳しくご紹介します。
呼吸療法認定士の正式名称と資格の位置づけ
呼吸療法認定士の正式名称は「3学会合同呼吸療法認定士」です。
日本胸部外科学会・日本呼吸器学会・日本麻酔科学会の3学会が認定しており、2026年7月時点で6万6,547名が資格を取得しています。対象職種には看護師・准看護師のほか、臨床工学技士や理学療法士なども含まれる点も押さえておきたいポイントです。
看護師が取得するとできるようになること
呼吸療法認定士を取得すると、呼吸状態の変化について根拠を持って判断し、多職種へ報告・提案できるようになります。
医療行為の範囲が広がるわけではありませんが、人工呼吸器・酸素療法・呼吸リハビリテーションなどの知識をアセスメントに活かせることが特徴です。たとえば、取得者からは次のような声があります。
- ICUで人工呼吸器管理を任される機会が増えた
- 医師への報告内容に自信がついた
- 呼吸器病棟への異動希望が通りやすくなった
- 在宅で人工呼吸器利用者への対応を任される場面が増えた
このように、呼吸療法認定士は新たな医療行為をおこなうための資格ではなく、呼吸ケアの質や臨床判断力を高め、看護実践に活かせる資格です。
呼吸療法認定士を看護師が取得するメリット
呼吸療法認定士を取得すると、呼吸ケアの専門性を高められます。活かせる場面は病棟内にとどまらず、在宅医療やキャリア形成にも広がります。
病棟・ICU・救急・外来など幅広く活かせる
呼吸療法認定士の知識は、呼吸状態の悪化のサインに早く気づき、落ち着いて対応するための知識を、以下のような幅広い場面で活かせます。
- SIMVやCPAPなど換気モードの違いを理解して患者さまを観察できる
- 人工呼吸器のアラーム発生時に原因を整理して初期対応につなげられる
- 医師や臨床工学技士と共通認識を持って呼吸ケアを進められる
実際に現場からは、「呼吸ケアチームの主要メンバーとして参加するようになった」「医師とのディスカッションで、換気設定やウィーニングについて相談できるようになった」といった声が聞かれます。このように、多職種との連携にも活かされ、呼吸ケアの質を高めることにつながります。
訪問看護・在宅医療で活用できる
在宅では、限られた情報の中で状態を判断する場面が少なくありません。
たとえば、在宅酸素療法中にSpO₂が低下した際は、呼吸様式や呼吸音、酸素流量、チアノーゼの有無などを確認し、経過観察で良いか、医師へ報告すべきかを判断しやすくなります。
このように、在宅でも根拠を持って初期対応できる力につながります。
キャリアアップ・転職に役立つ
呼吸療法認定士は、呼吸器病棟やICU・HCUへの異動希望を伝える際に、呼吸ケアを学んだことを示す材料になります。また、在宅人工呼吸器や在宅酸素療法を利用する方を受け入れる訪問看護ステーションでは、歓迎要件としている求人もあります。
ただし、資格を取得しただけで昇給や昇進が決まるわけではありません。専門性を示し、自分が希望する部署や職場へ挑戦しやすくする資格と考えると良いでしょう。
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呼吸療法認定士になるには
呼吸療法認定士になるには、点数の取得からはじまり登録までのステップを順番に進めていく必要があります。
| 目安の時期 | ポイント |
| 通年 | 講習会や研修に参加して12.5点を取得 |
| 2月~4月 | メール登録・オンライン申請 |
| 5月 | 審査結果の通知を確認 |
| 6月 | 受講申込(受講料の入金等) |
| 8月~9月 | テキストを受け取り、認定講習会を受講 |
| 9月~10月 | 受験申込(受験料の入金) |
| 11月~12月 | 認定試験の受験 |
| 12月~1月 | 合格発表、認定登録の申請 |
ここでは、全体の流れや詳しい条件などを紹介します。
受験資格
呼吸療法認定士の受験資格は、以下のとおりです。
- 看護師の場合は実務経験2年以上(准看護師は3年以上)
- 受講申し込み時から過去5年以内に、認定委員会が認める学会・講習会に出席し、12.5点以上を取得
点数は講習会への出席のほか、学会発表や論文発表、eラーニングの受講などでも取得できます。
セミナーや講習会の受け方
認定講習会の受講形態には、eラーニングのみのコース(2万円)と、会場受講とeラーニングを組み合わせたコース(3万円)があります。
会場受講は東京都内で開催されており定員が設けられているため、希望する場合は早めの申し込みが必要です。開催日や会場、募集人数は年度によって変わるため、申し込む際は公式ホームページで日程を確認しましょう。
取得までにかかる期間
受験資格を満たしてから登録までにかかる期間は、1年程度が目安です。
ただし、多くの看護師は試験対策よりも、受験資格に必要な12.5点以上の取得に苦戦するのが現状です。
学会や講習会は開催日や会場が限られるため、勤務スケジュールにより思うように点数を集められず、受験が翌年になった看護師もいます。看護師は実務経験2年以上で受験できますが、点数取得を見据えて早めに計画を立てることが大切です。
呼吸療法認定士の資格取得にかかる費用の内訳
呼吸療法認定士の取得にかかるおもな費用は、以下のとおりです。
| 項目 | 費用 |
| 認定講習会 | 会場+e-ラーニング:3万円/e-ラーニングのみ:2万円 |
| 認定試験 | 1万円 |
| 認定登録 | 3,000円 |
資格取得に必要な主な費用だけでも、最低3万3,000円かかりますが、地方から東京会場へ参加する場合は、交通費と宿泊費だけで5万~10万円になる可能性があります。これらに加えて、点数を取得するための学会参加費や講習会参加費、教材費なども見落とせない費用です。
呼吸療法認定士の合格率と難易度
ここでは、呼吸療法認定士の合格率や難易度が高いと感じられやすい理由を中心に解説します。
合格率の目安
過去5年の試験の合格率は以下のとおりです。
| 年度 | 合格率 |
| 2021年度 | 70.0% |
| 2022年度 | 68.5% |
| 2023年度 | 66.1% |
| 2024年度 | 69.0% |
| 2025年度 | 69.4% |
過去5年間の合格率は66〜70%の範囲で推移しており、年度によって大きな差はありません。公式テキストを中心に出題範囲を学習すると、十分に合格を狙える水準と言えます。
難易度が高いと感じる理由
呼吸療法認定士は、出題範囲が広く、仕事と両立しながら学習を進める必要があるため、難しいと感じる方が少なくありません。試験では呼吸器の解剖生理や薬物療法、人工呼吸器、新生児の呼吸管理、呼吸リハビリテーションなど幅広い知識が問われます。
受験した看護師からは、「人工呼吸器の換気モードの違いを理解するのに苦労した」「成人病棟で勤務しているため、新生児の呼吸管理は一から覚え直す必要があった」という声もあります。
公式テキストを中心に学習し、苦手分野を繰り返し復習することが重要です。
呼吸療法認定士に合格するための勉強方法
呼吸療法認定士の勉強は、公式の認定講習会テキストを中心に進めるのが基本です。早めに学習計画を立てておくことをおすすめします。
公式テキストを中心に学習計画を立てる
認定講習会で使用される公式テキストを一通り読み、理解があいまいな分野を洗い出したうえで、重点的に復習する分野を決めると効率良く学習を進められます。
実際には、業務が忙しいため、8月の「認定講習会」への参加をきっかけに、本格的に試験勉強を開始する看護師もいるようです。また、夜勤明けは集中しづらいため、休日に2〜3時間まとめて学習し、平日は公式テキストを30分だけ読むようにしている方もいます。
過去問・問題集で繰り返し問題を解く
呼吸療法認定士の過去問は、公式には公開されていません。
市販されている問題集やeラーニングの演習問題は、あくまで参考資料として活用し、公式テキストの内容と照らし合わせながら理解を深める使い方がおすすめです。
また、受験した人からの聞き取りをもとに作成した「呼吸療法認定士予想問題集2026」を活用する方もいるようです。
呼吸療法認定士の更新制度
呼吸療法認定士の認定証の有効期間は5年間で、5年ごとに更新の手続きが必要です。
更新の手続きは、例年、認定を受けてから5年目の4月から9月の間におこないます。
更新には、認定日から更新手続きの申請受付期間までに、50点以上を取得していることが条件です。点数は新規申請のときと同様、講習会への出席や学会発表、eラーニングの受講などで取得できます。
更新手続きでは、取得した点数を証明する書類などを取りまとめて認定委員会へ提出します。更新審査手数料は3,500円です。
呼吸療法認定士と呼吸器疾患看護認定看護師の違い
呼吸療法認定士と混同されやすい資格に、呼吸器疾患看護認定看護師があります。どちらも呼吸ケアに関わる認定資格ですが、認定する団体と対象職種が異なります。
| 項目 | 呼吸療法認定士 | 呼吸器疾患看護認定看護師 |
| 認定団体 | 日本胸部外科学会・日本呼吸器学会・日本麻酔科学会(3学会合同) | 日本看護協会 |
| 対象職種 | 看護師・准看護師のほか、臨床工学技士、理学療法士など多職種 | 看護師 |
| 役割 | 呼吸ケアの知識・技術を身につけ実践する | 高度な看護実践に加え、スタッフへの教育・院内外の相談役を担う |
| 費用 | 3万3,000円~4万3,000円(講習会受講料・受験料・認定登録料) | 約100万~110万円程度(教育課程受講料・入学金・認定審査料等) |
呼吸療法認定士は多職種を対象にした学会認定資格であるのに対し、呼吸器疾患看護認定看護師は看護師の認定資格という違いがあります。制度の詳細は次の関連記事で解説しているので、あわせて確認してみてください。
関連記事:呼吸器疾患看護認定看護師になるには?取得方法・難易度・費用・給料を解説
呼吸療法認定士に関するよくある質問
ここでは、呼吸療法認定士に関するよくある質問にQ&A形式で回答します。
Q1.呼吸器科以外の病棟でも呼吸療法認定士を目指せますか?
目指せます。
呼吸療法認定士は呼吸器科に限定した資格ではなく、受験資格(実務経験年数・点数要件)を満たしていると、所属する診療科を問わず受験できます。急性期病棟や救急外来、集中治療室など呼吸ケアに関わる部署であれば、活かしやすい資格です。
Q2.訪問看護の実務経験でも受験資格を満たせますか?
満たせます。
受験資格は看護師としての実務経験年数が条件になっており、勤務先が病棟か訪問看護かなどは問われません。訪問看護の実務経験も、看護師としての実務経験としてカウントされます。
Q3.呼吸療法認定士のバッジって何ですか?
2026年度から呼吸療法認定士にロゴマーク入りのピンバッジが贈呈されることになりました。
2026年に認定更新した場合、もしくは合格・認定登録した場合は、2027年に順次贈呈される予定です。
呼吸療法認定士は呼吸ケアの専門性を高めたい看護師におすすめの資格
呼吸療法認定士は、人工呼吸器・酸素療法・呼吸リハビリテーションなど呼吸ケアに関する知識を学びたい看護師にとっておすすめの資格です。
受験資格や費用、試験の日程などは変更される可能性があるため、挑戦を考える際は公式ホームページで最新情報を確認したうえで検討してみてください。
病棟だけでなく、訪問看護などに活躍の場を広げたいと考えている方にとっても、呼吸ケアの専門性は現場で役立つ知識になります。今後のキャリアの選択肢として、資格取得を検討してみてはいかがでしょうか。
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<参考サイト・文献>
ナスキャリナビ 編集部 「ナスキャリナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「ナスキャリ」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。
