呼吸器疾患看護認定看護師になるには?取得方法・難易度・費用・給料を解説

「呼吸器の認定看護師って、どれくらい難しいの?」「スキルアップできるの?」と気になっている看護師の方は多いのではないでしょうか。
呼吸器疾患看護認定看護師は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や肺炎など、呼吸器疾患のある患者さまを看護するエキスパートです。人工呼吸器の管理や呼吸リハビリテーションといったケアを実践しながら、スタッフへの指導や相談役も担います。
この記事では、呼吸器疾患看護認定看護師の役割や取得方法、給料などを解説します。自分がこの資格を取るべきかどうかを判断できるようになるでしょう。
呼吸器疾患看護認定看護師とは?
呼吸器疾患看護認定看護師とは、日本看護協会が認定する認定看護師資格のひとつで、呼吸器疾患を持つ患者さまへのケアを提供できる看護師のことです。役割や活躍している分野などをご紹介します。
呼吸器分野の認定看護師としての役割
呼吸器疾患看護認定看護師には、実践・指導・相談の3つの役割が求められます。
- 実践:NPPV(非侵襲的陽圧換気療法)や人工呼吸器の管理、気道分泌物のケア、呼吸リハビリテーションなどをおこなう
- 指導:看護師に呼吸ケアの知識や技術を教育する
- 相談:スタッフや多職種から介入が難しい患者さまのケアについてアドバイスをおこなう
「呼吸のことならあの人に聞けばわかる」という存在になることが認定看護師としてのひとつの理想像です。
活躍している分野
呼吸器疾患看護認定看護師は、急性期病院だけでなく幅広い分野で活躍しています。おもな活躍の場は、次のとおりです。
- ICUやHCU、呼吸器外科病棟などの急性期領域
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)や肺がんを抱える患者さまへの外来・慢性期領域
- 在宅酸素療法や人工呼吸器を使用している患者さまへの訪問看護
院内のRST(呼吸サポートチーム)として活動するケースも多く、病院の呼吸ケアの質向上に貢献できる点が特徴です。
呼吸器疾患看護認定看護師になるには?取得までの流れ
呼吸器疾患看護認定看護師になるためには、受験資格を満たしたうえで認定看護師教育機関を修了し、認定審査に合格する必要があります。日本看護協会によると、2026年4月現在で、開講している教育機関は福井大学大学院医学系研究科附属地域医療高度化教育研究センター看護キャリアアップ部門(定員30名)のみです。
- 受験資格
- 資格取得までの流れ
- 教育課程の内容と期間
- 認定審査の試験内容と合格率の目安
受験を検討する際は、募集要項や開講スケジュールを早めに確認しておくことが大切です。
受験資格
受験資格を満たすには、看護師免許取得後に一定の実務経験が必要です。
- 日本の看護師免許取得後、実務経験が通算5年以上
- 呼吸器疾患看護の実務経験が3年以上
これらの受験資格を満たすことで、教育機関の入学試験に出願できるようになります。
資格取得までの流れ
資格取得までの流れは、次の5ステップです。
- 受験資格を確認する
- 認定看護師教育機関に出願し合格する
- 教育課程を修了する
- 日本看護協会の認定審査(書類審査・筆記試験)を受験する
- 合格後、認定証が交付される
認定後は5年ごとに更新審査があり、実務研修時間の要件を満たす必要があります。
教育課程の内容と期間
教育課程では、講義・演習・実習を通じて呼吸ケアの専門知識と技術を学びます。
学習内容は認定看護師共通の基礎科目(看護倫理・ヘルスアセスメントなど)と、専門科目(呼吸リハビリテーション・在宅呼吸ケアなど)にわかれており、特定行為に関する科目も組み込まれています。期間は1年程度が目安で、スケジュール例は次のとおりです。
| 時期 | 内容 |
| 10月 | 出願 |
| 11月 | 選抜試験 |
| 12月 | 合格発表 |
| 翌年4月 | 入学式・オリエンテーション |
| 7月 | 開講 |
| 11月 | 実習 |
| 翌々年2月 | 修了試験 |
| 3月 | 修了式 |
| 10月 | 認定審査 |
実習は自施設または提携施設でおこなうケースが多く、職場と勤務を調整しながら進めることが一般的です。
認定審査の試験内容と合格率の目安
認定審査は「客観式一般問題(20問50点)」「客観式状況設定問題(20問100点)」で構成されています。
合格率の公式な公表はありませんが、教育課程を修了した受験者の多くが合格しているとされています。ただし、教育課程への入学試験(書類審査・小論文・面接)は選考があるため、出願準備に力を入れることが重要です。
関連記事:認定看護師になるには?条件や取得までの流れ、資格取得によるメリットも解説
呼吸器疾患看護認定看護師になるためにかかる費用の目安
呼吸器疾患看護認定看護師の取得には、教育課程の授業料や認定審査料などを合わせて110万円程度かかります。費用の内訳は次のとおりです。
| 項目 | 費用 |
| 入学検定料 | 5万円 |
| 入学料 | 5万円 |
| 授業料 | 95万円 |
| 認定審査料 | 5万1,700円 |
福井大学のみが開講校であるため、遠方から通う場合は交通費や宿泊費が別途かかる点にも注意が必要です。費用の負担が大きいと感じる場合は、ハローワークの教育訓練給付金や、勤務先の資格取得支援制度を活用できる場合もあるため、事前に確認しておきましょう。
呼吸器疾患看護認定看護師の仕事内容
呼吸器疾患看護認定看護師の仕事は、呼吸ケアの実践や院内教育、チーム活動などです。
- 人工呼吸器の管理(NPPV・HFNC・挿管管理)
- 呼吸リハビリテーション
- RST活動
- 院内教育や指導
それぞれを詳しく見ていきましょう。
人工呼吸器の管理(NPPV・HFNC・挿管管理)
人工呼吸器の管理は、呼吸器疾患看護認定看護師が専門性を発揮できる業務です。
挿管患者の人工呼吸器設定のアセスメントや、NPPV・HFNC(高流量鼻カニュラ酸素療法)の導入・調整、ウィーニング(人工呼吸器からの離脱)支援をおこないます。医師や理学療法士、臨床工学技士と連携しながら、患者さまの呼吸状態を評価する役割を担います。
呼吸リハビリテーション
呼吸リハビリテーションでは、呼吸機能の改善と患者さまの生活の質向上を目的としたケアを提供します。
たとえば、歩行時に息切れが強い患者さまに対して、歩行ペースや休憩タイミングを指導したり、自力での排痰が難しい患者さまに対してスクイージング(胸郭を圧迫して痰の排出を促す手技)をおこなったりします。
急性期だけでなく、COPDや肺がんを抱える患者さまの在宅移行支援においても呼吸リハビリテーションの知識は不可欠であり、退院後の生活を見据えたケアが必要です。
RST活動
RST(呼吸サポートチーム)のメンバーとして、呼吸ケアの質を向上させる役割を担います。RSTは医師・看護師・理学療法士・臨床工学技士などで構成されるチームで、病棟をラウンドしてケアを検討します。
「自発呼吸が安定しているため、人工呼吸器のウィーニングを開始できるのではないか」と医師に提案したり、「血圧が安定しているため、座位の時間を増やして排痰を促してはどうか」と病棟看護師にアドバイスしたりすることも業務です。また、人工呼吸器関連肺炎の予防策として、口腔ケアの頻度や頭側挙上の角度を統一するためのプロトコル作成に関わります。
患者ケアにとどまらず、合併症予防や呼吸ケアの標準化に貢献できる点が、認定看護師ならではの強みです。
院内教育や指導
院内教育では、スタッフが抱える呼吸ケアの疑問や困りごとに対して、根拠にもとづいた指導をおこなう役割を担います。
たとえば、「気管吸引はいつ実施すべきか判断できない」「NPPVのマスクが合わず患者さまが嫌がる」といった現場の悩みを解決するのが認定看護師の役割です。研修の企画・運営に加えて、ベッドサイドでのリアルタイムな個別指導もおこないます。

呼吸器疾患看護認定看護師の給料
日本看護協会の調査によると、呼吸器疾患看護認定看護師の給料は平均42万2,605円です。認定看護師の資格手当は、平均8,530円であるため、一般の看護師と比べてこの手当分だけ高くなる傾向にあります。
大学病院や急性期の基幹病院では資格手当が充実しているケースが多く、認定看護師であることがキャリアアップや昇進にも影響する職場もあります。
呼吸器疾患看護認定看護師のメリット・デメリット
呼吸器疾患看護認定看護師の取得には費用や通学の負担がある一方、専門性の向上やキャリアの広がりといったメリットもあります。取得を検討する際は、両方を把握したうえで判断することが大切です。
メリット
呼吸器疾患看護認定看護師を取得することで、専門性の証明や収入アップ、やりがいの向上というメリットが得られます。
- 専門性の証明:根拠をもって呼吸ケアを実践できるようになり、多職種からの信頼も高まる
- 資格手当による収入アップ:多くの病院で資格手当が支給され、収入増加につながる
- キャリアの選択肢の拡大:急性期病院や地域医療、訪問看護ステーションなど、活躍できるフィールドが広がる
「実践しているものの、本当に正しいのか不安」という状態から抜け出し、自信をもって行動できるようになることが取得後の変化です。
デメリット
教育機関への通学負担と取得費用の高さが、デメリットとして挙げられます。
- 通学期間中の負担:教育課程の約1年間は、休職または勤務調整が必要になる
- 費用の負担:授業料や審査料を合わせると約110万円の費用負担になる
- 取得後も更新が必要:更新審査があるため、継続的な学習と実務経験が求められる
いずれも事前に職場と相談し、資格取得支援制度の活用や休職の条件を確認しておくことで、負担を軽減できる可能性があります。
関連記事:認定看護師のメリット6つ!種類別のメリットやデメリットも解説
呼吸器疾患看護認定看護師に向いている人
呼吸器疾患看護認定看護師は、急変対応や人工呼吸器管理に深く関わり、教育や指導にもやりがいを感じる看護師に向いています。
急変対応にやりがいを感じる人
呼吸状態の急変にいち早く気づき、適切に対処することに充実感を覚える人は、資格取得がおすすめです。
たとえば、SpO2が急に低下した患者さまに対して「気道分泌物の貯留か、肺水腫か、気胸か」と原因を鑑別し、吸引や体位の調整、医師への報告を迷わず判断できるようになりたいと感じている看護師に向いています。急変のたびに「これで合っているのか」と不安を感じながら対応している看護師こそ、この資格で得られる知識を現場で活かせます。
人工呼吸器管理に興味がある人
人工呼吸器の仕組みや設定の根拠を理解したいと考えている人に向いています。
「酸素濃度を上げるよう指示されたけど、なぜPEEPの設定変更ではないのかわからない」「新人からPSとPCVの違いを聞かれたが自信をもって答えられなかった」といった経験のある看護師は少なくありません。
人工呼吸器の設定は医師が決めるものと思い込み、意味を考えずに操作していたという状況から脱したい方に適した資格です。
教育や指導に関わりたい人
後輩の指導や院内教育に関わりたいという意欲がある人にも、この資格は強みになります。
「吸引のタイミングを後輩に聞かれたが、根拠を説明できなかった」「新人が人工呼吸器のアラームに怖がって固まってしまっているが、どう指導すればいいかわからない」といった場面で行き詰まりを感じている看護師に向いています。
人に教えるためには自分が根拠をもって理解していることが前提であり、教育課程で得た知識があるからこそ、自信をもって指導できるようになります。
呼吸器疾患看護認定看護師以外におすすめの資格
呼吸器領域でのスキルアップを目指す際、呼吸器疾患看護認定看護師以外にも選択肢があります。自分の働く環境やキャリアの方向性に合わせて取得する資格を検討しましょう。
クリティカルケア認定看護師
| 項目 | 内容 |
| 受験資格 | 通算5年以上の実務経験(うちクリティカルケア看護3年以上) |
| 取得までの期間 | 養成課程修了まで約1年 |
| 費用 | ・養成機関の受講料:約126万円 ・審査料:5万1,700円 |
| 更新 | 5年ごと |
| 活躍の場 | ICU、救命救急センター、急性期病棟 |
クリティカルケア認定看護師は、ICUや救急領域における重症患者への看護に特化した資格です。呼吸管理だけでなく、循環管理・鎮静・鎮痛・せん妄対応など集中治療全般をカバーするため、ICUや救急で幅広く活躍したい看護師に向いています。
関連記事:クリティカルケア認定看護師になるには?仕事内容も解説
3学会合同呼吸療法認定士
| 項目 | 内容 |
| 受験資格 | 2年以上の実務経験 |
| 取得までの期間 | Eメール登録やオンライン申請から約1年 |
| 費用 | ・講習会:3万円(会場+e-ラーニング)、2万円(e-ラーニングのみ) ・認定試験:1万円 ・認定登録料:3,000円 |
| 更新 | 5年ごと |
| 活躍の場 | ICU、救命救急センター、急性期病棟 |
看護師や臨床工学技士、理学療法士など多職種が取得できる資格で、人工呼吸器の管理・酸素療法・呼吸リハビリテーションなど呼吸療法全般の知識を証明できます。2025年の合格率は69.4%となっており、受験の難易度は高くはないと言えます。
呼吸器疾患看護認定看護師に関するよくある質問
資格取得を検討している看護師からよく寄せられる疑問を、Q&A形式でまとめました。
Q1:呼吸器疾患看護認定看護師は働きながら取得できますか?
多くの場合は、教育期間中に休職、もしくは夜勤の免除や週末のみの勤務といった勤務調整が必要です。
講義に加えて、レポート作成や実習もあるため、フルタイムで働きながら資格取得を目指すのは難しいのが実情です。職場に資格取得支援制度があるかどうかを確認し、休職・復職の条件も看護師長や人事と相談しておくとスムーズに進められます。
Q2:呼吸器疾患看護認定看護師になると特定行為ができるようになりますか?
B課程では特定行為研修が教育課程に組み込まれているため、修了した区分に限り特定行為を実施可能になります。
福井大学では、「栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連」「呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連」についての特定行為を学べます。
Q3:呼吸器疾患看護認定看護師を取っても意味ないと言われるのはなぜ?
「意味ない」と言われる背景には、資格手当が低い職場や、認定看護師の役割が十分に活かされていない環境があることがおもな理由として挙げられます。
職場によっては認定看護師の役割が明確でなく、「資格を取っても業務が変わらない」と感じる看護師がいることも事実です。また、認定看護師になっても夜勤や委員会業務を続ける職場も多く、「責任は増えたのに待遇が大きく変わらない」と感じるケースもあります。
しかし、それは職場環境の問題であり、資格の価値は別です。呼吸器疾患看護認定看護師を取得することで得られる知識や実践力などは、どの職場でも活きるスキルです。
呼吸器疾患看護認定看護師は専門性を高めてキャリアを広げられる資格
呼吸器疾患看護認定看護師は、人工呼吸器管理や呼吸リハビリテーションなどの実践力を身につけ、教育や多職種連携でも活躍できる資格です。「自分の判断に自信がない」「専門性を高めて評価されたい」という思いがある看護師にとって、キャリアの選択肢を広げることにつながります。
まずは、教育機関の資料請求や職場への相談から始めてみてください。
認定看護師として専門性を高めた先には、訪問看護というキャリアの選択肢もあります。在宅で人工呼吸器を使用している患者さまや、慢性呼吸器疾患を抱える方へのケアニーズは高まっており、呼吸器の専門知識がある看護師は訪問看護の現場でも重宝されます。訪問看護に特化した求人サイト「ナスキャリ(NsPaceCareer)」では、呼吸ケアに力を入れている事業所の情報も確認できます。専門性を活かせる職場を探したい方は、ぜひご活用ください。
<参考サイト>
令和7年度(2025年度) 認定看護師教育課程|福井大学大学院医学系研究科附属地域医療高度化教育研究センター看護キャリアアップ部門
NsPace Careerナビ 編集部 「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。
