認知症ケア専門士になるには?受験資格や合格率、看護師が取得するメリットを解説

「認知症ケア専門士ってどういう資格なの?」「看護師が取得すると、どういうメリットがあるの?」
このように気になっている看護師も多いのではないでしょうか。夜間の不穏や帰宅願望、ケアや処置の拒否など、認知症のある患者さまへの対応に悩む看護師は少なくありません。認知症ケア専門士は、認知症ケアの専門的な知識やスキルを身につけられる資格であり、要件を満たした看護師が受験できます。
この記事では、認知症ケア専門士の受験資格や取得までの流れ、合格率、勉強方法などを解説します。2026年度の試験日程や費用まで紹介しているため、自分が受験できるのか、いつまでに何を準備すればよいのかが分かるようになるでしょう。
認知症ケア専門士とは?
認知症ケア専門士は、認知症ケアに必要な知識を学び、実践力を高めるための民間資格です。ここでは、資格の概要と学べることについてご紹介します。
認知症ケア専門士の概要
認知症ケア専門士とは、認知症の方への関わり方を体系的に学べる民間資格です。一般社団法人日本認知症ケア学会が認定しています。
ただし、認知症ケア専門士を取得したからといって、できる業務が増えるわけではありません。認知症への関わり方を学び、ケアに活かすための資格と考えると分かりやすいでしょう。
認知症ケア専門士で学べること
出題範囲は「認知症ケア標準テキスト」に準拠しており、認知症の定義や原因疾患、症状の理解、コミュニケーション方法、ご家族への支援、社会資源などを学ぶことができます。
本人の尊厳をどう守るか、ご家族の負担にどう向き合うかまで含まれます。「なぜその行動が起きているのか」を背景から考えられるようになることが、この資格の特徴です。
認知症ケア専門士になるには?資格取得までの流れ
認知症ケア専門士になるには、実務経験の要件を満たしたうえで、第1次試験と第2次試験に合格する必要があります。ここでは、2026年9月8日時点での情報をもとにお伝えします。
受験資格
認知症ケア専門士は、試験実施年の3月31日から遡って過去10年間に、3年以上の認知症ケア実務経験があれば受験できます。
たとえば、2026年度(第22回)の場合は、2016年4月1日〜2026年3月31日の間に3年以上の実務経験が必要です。また、以下のように実務経験の条件は広くなっています。
- 実務経験を証明する施設・団体は、認知症専門である必要はない
- 経験職種や職務内容にも制限はない
- 介護福祉士や介護支援専門員などの資格の有無は問わない
一般病棟や訪問看護、介護施設などで認知症の方に関わっていれば対象になります。ただし、ボランティア経験や実習は実務経験に含まれません。また、すべての受験者が「認知症ケア実務経験証明書」を所属先に作成してもらう必要があります。
申し込みから認定までの流れ
認知症ケア専門士になるまでの流れは、以下の5ステップです。
- 受験の手引(願書を兼ねている)を購入する
- 第1次試験(Web試験)を受験する
- 第2次試験(論述試験)を受験する
- 合格後に認定登録をおこなう
- 倫理研修を受講する
「受験の手引(1,000円)」は1人につき1部必要で、コピーして複数人で使うことはできません。また、書類作成や手引購入の遅れを理由とする申請遅延は認められないため、早めの準備が欠かせません。
認知症ケア専門士の試験内容
第1次試験と第2次試験の内容は、次のとおりです。
<第1次試験>
| 項目 | 内容 |
| 試験方法 | Web試験(インターネット上で受験) |
| 試験分野 | 認知症ケアの基礎/認知症ケアの実際I/認知症ケアの実際II/認知症ケアにおける社会資源 |
| 出題数 | 各分野50問、4分野合計200問(五者択一) |
| 合格要件 | 各分野70%以上の正答率。4分野すべての合格で第1次試験合格 |
| 有効期間 | 各分野の合格有効期間は5年間 |
<第2次試験>
| 項目 | 内容 |
| 受験対象 | 第1次試験の4分野すべての合格者など |
| 試験内容 | 論述試験(認知症ケアの事例3題に対する論述) |
| 合格要件 | 適切なアセスメントの視点/認知症の理解/適切な介護計画の立案/制度・社会資源の理解/倫理的課題の理解の5つを満たすこと |
第1次試験は分野ごとに合否が判定され、合格した分野は5年間有効です。一度に4分野すべてに合格できなくても、翌年以降に不合格の分野だけを受け直せます。働きながら受験する方にとっては、負担を分散できる仕組みです。
ただし、2027年度から試験方法が変更される予定です。
過去5年の合格率と難易度
日本認知症ケア学会が公表している合格状況は、次のとおりです。
| 開催年 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
| 第21回(2025年) | 2,219人 | 1,068人 | 48.1% |
| 第20回(2024年) | 2,585人 | 1,182人 | 45.7% |
| 第19回(2023年) | 2,799人 | 1,440人 | 51.4% |
| 第18回(2022年) | 3,666人 | 1,998人 | 54.5% |
| 第17回(2021年) | 3,063人 | 1,645人 | 53.7% |
| 第16回(2020年) | 2,550人 | 1,442人 | 56.5% |
合格率は50%前後で推移しており、直近の2025年は48.1%でした。およそ2人に1人が不合格になるため、十分な学習なしに合格できる試験とは言えません。
看護師にとっては、認知症の病態や症状の理解などは日常業務で対応できる部分もある一方で、介護保険制度や成年後見制度といった分野は、病棟業務で触れる機会は少ないでしょう。苦手な分野も学習する必要がある点が、難しいと感じやすい理由の1つです。
関連記事:看護師がスキルアップできる資格一覧25選!プラスの資格を取るメリット
認知症ケア専門士の試験日と費用
2026年度の申込みは終了しているため、これから受験する方は第23回以降を目指します。2026年の日程を参考に、おおよその日程を把握しておきましょう。
2026年度の試験日程
| 項目 | 日程 |
| 第1次試験 申請期間 | 2026年3月10日(火)〜4月10日(金)消印有効 |
| 第1次試験 試験日 | 2026年7月12日(日)9:30〜15:15 |
| 第1次試験 結果通知投函 | 2026年8月17日(月) |
| 第2次試験 申請期間 | 2026年8月25日(火)〜9月25日(金)消印有効 |
| 第2次試験 結果通知投函 | 2027年1月12日(火) |
第1次試験は1日で4分野を受験します。Web試験のため自宅などから受験できますが、事前動作確認期間に、使用する端末や通信環境を確認しておく必要があります。2026年9月8日時点では第23回以降の情報はまだ公開されていないため、公式サイトで最新情報を確認しましょう。
受験料・認定登録料
認知症ケア専門士にかかる費用は次のとおりです。
| 項目 | 金額 |
| 受験の手引 | 1,000円 |
| 第1次試験 受験料 | 3,000円×受験分野数(4分野で1万2,000円) |
| 第2次試験 受験料 | 8,000円 |
第1次試験から受験する場合、合計2万1,000円が目安です。このほか、認知症ケア標準テキスト(4分野分)を購入する場合は、その費用も見込んでおきましょう。
また、2027年度から試験制度が変更される予定です。受験料の変更に加え、第1次試験や第2次試験の試験方法なども見直されます。2027年度以降に受験する方は、2026年度の試験内容・費用をそのまま参考にせず、最新の公式情報を確認してください。
看護師が認知症ケア専門士を取得するメリット
看護師が認知症ケア専門士を取得するおもなメリットは、日頃のケアに活かせるだけでなく、今後のキャリアを考える際の選択肢にもなることです。それぞれを詳しく見ていきましょう。
認知症の患者さまへの対応を考える視点やスキルが身につく
認知症の患者さまの症状や行動について、背景から考える視点が身につきます。
たとえば、夕方になると「家に帰らないといけない」と繰り返し訴える場合は、「なぜ帰りたいのか」「入院前の生活では何をしていた時間なのか」といった生活歴や時間帯などの背景を考える必要があります。
また、点滴ルートを何度も引っ張る患者さまに対して、痛みや違和感、排泄の訴え、不安などの原因をアセスメントする視点も必要です。行動の理由を考えることで、本人に合ったケアを検討しやすくなります。
専門性を深め、次のキャリアを考えるきっかけになる
認知症ケア専門士の学習は、認知症ケアの専門性を深め、今後のキャリアを考えるきっかけになります。
たとえば、スタッフから「この患者さまは毎晩興奮するので、どう対応すべきですか」と相談されたとき、生活歴や環境、身体症状などを確認する視点を共有できるようになります。
資格取得だけで給与が上がったり、転職で必ず有利になったりするわけではありませんが、認知症看護認定看護師といった、さらに専門性を高めるための次のキャリアを検討しやすくなるでしょう。
認知症ケア専門士の勉強方法
働きながら合格を目指すには、効率的な学習が欠かせません。
公式テキストを中心に学習する
第1次試験は「認知症ケア標準テキスト」に準じた内容から出題されるため、テキストを軸に学習を進めるのが基本です。
4分野の全体像を把握し、どこに時間をかけるか計画を立てましょう。看護師の場合、認知症ケアの基礎は業務経験と重なる部分がありますが、社会資源の分野は馴染みが薄いことが多いため、早めに着手するのがおすすめです。
なお、教材を選ぶ際は、学会が認定・監修する公式テキストと、それ以外の市販教材を区別して選びましょう。
現場での経験を結びつける
看護師としての実務経験は、そのまま学習の武器になります。
ご家族へのケアの項目を読んだら、実際に対応した場面を思い出してみてください。
また、第2次試験では事例に対する論述が求められるため、日頃から自分のアセスメントやケアの根拠を言語化しておくことも重要です。カンファレンスで自分の考えを説明したり、ケアを振り返ったりする機会を活用し、疑問点は周囲に質問しながら理解を深めていきましょう。こうした積み重ねが、論述対策にもつながります。
認知症ケア専門士と認知症看護認定看護師の違い
認知症に関わる資格として、認知症看護認定看護師と比較されることがあります。
| 項目 | 認知症ケア専門士 | 認知症看護認定看護師 |
| 認定団体 | 日本認知症ケア学会 | 日本看護協会 |
| 資格の位置づけ | 民間資格 | 認定看護師 |
| 対象者 | 認知症ケアに携わる職種 | 看護師 |
| 受験要件 | 認知症ケアの実務経験3年以上 | 実務経験5年以上 (そのうち通算3年以上は特定の認定看護分野) +認定看護師教育課程の修了 |
| 取得負担 | 比較的目指しやすい | 教育課程の受講が必要 |
| 更新 | 5年ごと(30単位) | 5年ごと |
両者には、取得までの負担に違いがあります。認知症ケア専門士は実務経験と試験合格で取得できますが、認定看護師は所定の教育課程を修了する必要があります。認知症への関わり方やケアについて学びたい方には認知症ケア専門士、認知症看護の専門性をさらに高めたい看護師には認知症看護認定看護師が選択肢になります。
関連記事:認知症看護認定看護師になるには?役割や条件、学校にかかる費用を解説
認知症ケア専門士に関するよくある質問
認知症ケア専門士について、よく聞かれる質問にお答えします。
Q1.認知症ケア専門士の受験対策講座や研修は受けるべきですか?
必須ではありませんが、活用する方法も1つの手です。
日本認知症ケア学会では受験対策講座を実施しています。合格率が50%前後で推移していることを踏まえると、独学に不安がある方や、苦手な分野がある方は検討しても良いでしょう。まずは公式テキストで学習を進め、理解が進まない分野を補う形での活用がおすすめです。
Q2.認知症ケア専門士は更新が必要ですか?
5年ごとの更新が必要です。
日本認知症ケア学会が主催する講座、または学会が認定する団体の講座に参加し、5年間で30単位以上を取得する必要があります。更新しない場合は資格が失効するため、取得後も継続的に学び続ける前提の資格だと理解しておきましょう。
Q3.認知症ケア専門士は加算の対象になりますか?
認知症ケア専門士を取得しただけでは、介護報酬の加算要件を満たすことにはなりません。
たとえば、訪問介護や定期巡回・随時対応型訪問介護看護などのサービスの認知症専門ケア加算(Ⅰ)では、認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱ以上の利用者さまへの専門的な認知症ケアに加え、認知症介護実践リーダー研修などを修了した人の配置が要件の1つとされています。
加算の算定を目的に資格取得を考えている場合は、認知症ケア専門士の取得ではなく、勤務するサービスの種類ごとに必要な研修や人員配置の要件を確認しましょう。
Q4.認知症ケア専門士は過去問で学習できますか?
学会から公式の過去問題集は公開されていません。
そのため、過去問だけに頼るのではなく、まず「認知症ケア標準テキスト」で出題範囲を確認し、問題集などを活用して知識の定着を図ると良いでしょう。
Q5.認知症ケア専門士は意味がないと言われているのはなぜですか?
認知症ケア専門士が「意味ない」と言われるおもな理由は、勤務先の教育体制や業務内容によっては、取得しても業務範囲が広がらないことがあり、資格手当や給与アップが保証されるわけではないためです。
一方で、認知症ケアを学ぶ機会は、日常業務のなかではありません。そのため、資格取得を目的にする人よりも、「認知症の患者さまへの関わり方を学びたい」「現場での対応を経験則だけに頼りたくない」という看護師に向いている資格です。
認知症ケア専門士は認知症ケアを学びたい看護師におすすめ
認知症ケア専門士は、日本認知症ケア学会が認定する民間資格です。
過去10年間で3年以上の認知症ケアの実務経験があれば受験でき、認知症専門の施設で働いた経験がなくても対象になります。
合格率は50%前後と、決して簡単な試験ではありません。ただし、認知症の患者さまへの対応から社会資源の活用まで学べるため、夜間の不穏や帰宅願望、処置の拒否といった場面でも、「なぜその反応が起きているのか」を考える視点につながります。
学んだ知識は、病院だけでなく施設や訪問看護でも活かせます。認知症の支援に力を入れたい方や、そうした経験を積める職場を探したい方は、訪問看護専門の求人サイトナスキャリ(NsPace Career)を活用してみてください。
<参考サイト・文献>
認知症ケア専門士認定試験に関する重要なお知らせ|一般社団法人日本認知症ケア学会
| 監修:飛鳥馬 沙耶(あすま さや)/訪問看護ステーション 管理者 HCU・高度急性期病棟にて約6年間、循環器・心臓外科・脳外科領域を中心とした急性期看護に従事。2023年より訪問看護ステーションの管理者として、在宅医療の現場に携わる。専門領域は、訪問看護・在宅医療、急性期看護。 |
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