訪問看護記録の書き方|記録書Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの違いや記入例、テンプレートを解説

「訪問看護の記録、どこまで書けばいいのか迷ってしまう」「記録書ⅠとⅡの違いがよく分からないから自信が持てない」
訪問看護の記録は、利用者さまの状態や実施したケアを記録し、継続したケアや多職種との情報共有に活用する書類です。記録書Ⅰは利用者さまの基本情報、記録書Ⅱは訪問ごとの状態や看護内容を記録します。また、2026年度の診療報酬改定では、一定の対象者について記録書Ⅲも作成するようになりました。
この記事では、訪問看護記録の書き方のポイントや記録書Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの違い、場面ごとの記入例などを解説します。記録に必要な情報の整理方法や、第三者にも伝わりやすい書き方が分かるため記録作成に役立てられます。
訪問看護記録とは?記録書Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの違い
訪問看護記録は、記録する内容や目的によって「記録書Ⅰ」「記録書Ⅱ」「記録書Ⅲ」に分けられます。それぞれの役割や対象者は次のとおりです。
| 種類 | 内容 | 作成するタイミング |
| 記録書Ⅰ | 利用者さまの基本情報や療養状況 | 初回訪問時など |
| 記録書Ⅱ | 訪問ごとの利用者さまの状態や看護内容 | 訪問するたび |
| 記録書Ⅲ | 包括型訪問看護療養費を算定する利用者の訪問内容 | 対象者は1日ごと |
それぞれを詳しく見ていきましょう。
訪問看護記録の目的
訪問看護記録の目的は、主に以下の3つです。
- 利用者さまへの継続したケアにつなげること
- 多職種との情報共有に活用すること
- サービス提供の証明になること
次の訪問を担当するスタッフが利用者さまの状態を把握し、継続したケアを行うために必要です。主治医やケアマネジャーなど多職種との情報共有の資料として活用されるほか、サービス提供の事実を確認する資料にもなります。
訪問看護記録書ⅠとⅡの違い
訪問看護記録書Ⅰは利用者さまの基本情報や療養状況を把握するための書類、訪問看護記録書Ⅱは訪問ごとの状態や実施した看護内容を記録する書類です。
| 項目 | 訪問看護記録書Ⅰ | 訪問看護記録書Ⅱ |
| 目的 | 利用者さまの基本情報や療養状況を把握するため | 訪問ごとの状態や実施した看護内容を記録するため |
| 記録するタイミング | 初回訪問時や利用者さまの情報に変更があったとき | 訪問看護を実施するたび |
| 記載内容 | 疾患・既往歴・療養環境・家族状況・生活状況など | バイタルサイン・症状の変化・実施したケア・利用者さまの反応など |
| 役割 | 利用者さまを理解し、看護計画や支援方針を検討する材料になる | 日々の訪問経過を共有し、継続したケアにつなげる |
| 記録の特徴 | 利用者さまの基本情報を整理する記録 | 日々の変化を追う経過記録 |
記録書Ⅰが「基本情報を整理する記録」に対し、記録書Ⅱは「日々の経過を積み重ねる記録」という役割です。両方を確認することで、利用者さまの状態の変化を把握できます。
2026年度に新設された訪問看護記録書Ⅲとは
2026年度の診療報酬改定では、包括型訪問看護療養費の新設に伴い、包括型訪問看護療養費を算定する利用者について、訪問看護記録書Ⅲを1日ごとに作成することとされました。
そのため、通常の訪問看護療養費を算定するすべての利用者さまに記録書Ⅲの作成が必要になるわけではありません。
なお、厚生労働省の参考様式そのものを使用する必要はなく、必要な項目を満たす別の様式を使用することも認められています。具体的な運用は、事業所の方針を確認しましょう。
訪問看護記録書Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの書き方
訪問看護記録書Ⅰ・Ⅱ・Ⅲは、厚生労働省が示す参考様式に沿って記載します。
訪問看護記録書Ⅰの書き方


訪問看護記録書Ⅰには、利用者さまの基本情報や療養環境に関する項目を記載します。初回訪問時にできるだけ多くの情報を集めておくと、看護計画の検討や緊急時の対応がスムーズになります。おもな記載項目は次のとおりです。
- 利用者氏名
- 生年月日
- 住所
- 電話番号
- 看護師等氏名
- 訪問職種
- 初回訪問年月日
- 主たる傷病名
- 現病歴
- 既往歴
- 療養状況
- 介護状況
- 生活歴
- 家族構成
- 主な介護者
- 住環境
- 訪問看護の依頼の目的
- 要介護認定の状況
- ADLの状況
- 日常生活自立度
- 主治医等
- 緊急時の主治医・家族等の連絡先
- 指定居宅介護支援事業所、特定相談支援事業所、障害児相談支援事業所の連絡先
- 関係機関
- 保健・福祉サービス等の利用状況
初回訪問時等に把握した情報を記載し、その後新たに把握した情報や変更が生じた情報についても、適宜反映していきましょう。
訪問看護記録書Ⅱの書き方

訪問看護記録書Ⅱには、訪問ごとのケア内容や利用者さまの状態を記載します。毎回の訪問で作成するため、迷わず書けるようにしておくことが効率化のポイントです。おもな記載項目は次のとおりです。
- 利用者氏名
- 看護師等氏名
- 訪問職種
- 実際の訪問日時
- 利用者の状態(病状)
- 実施した看護・リハビリテーションの内容
- その他
- 備考
- 次回の訪問予定日
「利用者の状態」欄は自由記述形式ですが、事実を整理して記載しやすくするため、SOAP(主観的情報・客観的情報・アセスメント・計画)の形式を取り入れている事業所もあります。SOAPの書き方は、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:看護記録SOAPの書き方|例文つきでわかりやすく解説【テンプレートつき】
訪問看護記録書Ⅲの書き方

厚生労働省の参考様式では、次の項目を記載します。
- 利用者氏名
- 訪問年月日
- 記録責任者
- 合計訪問時間(分/日)
- 訪問時間(時刻)
- 訪問時間(分)
- 利用者の状態(病状)、実施した看護・リハビリテーションの内容
- 看護師等氏名
- 訪問職種
- その他
- 次回の訪問予定日
関連する記録や実際の訪問内容に不整合が生じないよう、実際の訪問内容を確認しながら作成しましょう。
訪問看護記録の記入例
訪問看護記録は、場面によって記載する内容やポイントが異なります。代表的な4つの場面を例に、書き方のイメージを紹介します。
初回訪問時の記入例(訪問看護記録Ⅰ)
| 【既往歴】 高血圧のため、アムロジピンの内服を継続中。 【介護状況】 家族(長女)が介護者で、週3回程度で様子を見に来ている。 |
初回訪問では、既往歴・生活歴・家族構成など記録書Ⅰの項目を中心に、利用者さまとご家族から聞き取った情報を整理して記載します。今後の支援方針を検討する材料になる情報を、具体的に記録することがポイントです。
通常訪問時の記入例(訪問看護記録Ⅱ)
| 【利用者の状態(病状)】 S:朝から少し息苦しい感じがします。 O:体温36.6℃、血圧148/82mmHg、脈拍84回/分、不整なし、呼吸数24回/分。 SpO₂ 92%。会話時に息切れあり。呼吸苦の訴えあり。安静によりSpO₂ 95%まで改善。HOT(在宅酸素療法)の鼻カニューレを外していたため、装着のサポートを行った。 A:呼吸苦の訴えがあり、SpO₂の低下もみられる。鼻カニューレを外してしまうことが多く、呼吸状態の変化に注意が必要。 P:安静を促し、呼吸状態を継続して観察する。HOTの必要性を説明し、継続できるように支持的に関わる。呼吸苦の増悪やSpO₂の低下がみられた場合は、主治医へ報告して指示を受ける。 |
通常の訪問では、記録書Ⅱにバイタルサインや利用者さまの反応などを記載します。毎回似たような内容になりがちな部分だからこそ、その日ならではの変化や利用者さまの反応を残しておくことで、変化に気づきやすくなるでしょう。
状態変化があった場合の記入例(訪問看護記録Ⅱ)
| 【利用者の状態(病状)】 9時45分に電話があり、10時10分に緊急訪問した。咳嗽・喘鳴が増強。SpO₂ 92%に低下。呼吸苦の訴えあり。 【実施した看護・リハビリテーションの内容】 10時12分、主治医の指示に基づき吸引を実施。吸引後、SpO₂ 95%まで改善し、喘鳴軽減。呼吸苦の訴えも軽減した。主治医へ電話で状態を報告。 |
状態変化があった際は、変化の内容と対応を具体的に記載します。いつ・何が起き・どう対応したかを時系列で記載することが重要です。観察した事実と実施した対応、その後の変化を分けて書いておくと、主治医への報告や他職種との共有の際にも状況が伝わりやすくなります。
医療処置を実施した場合の記入例(訪問看護記録Ⅱ)
| 【利用者の状態(病状)】 創部に少量の漿液性の滲出液あり。周囲皮膚に発赤・腫脹なし。 【実施した看護・リハビリテーションの内容】 創部を生理食塩水で洗浄し、滅菌ガーゼで保護した。 |
医療処置を実施した場合は、利用者さまの状態や観察結果、実施した処置の内容などを具体的に記載します。必要に応じて使用した衛生材料なども記録しておくと、処置内容を共有しやすくなります。処置前後の状態を比較できるよう、観察内容はできるだけ詳しく残しておきましょう。
※上記は記録方法を示す一例です。実際の対応は利用者さまの基礎疾患や通常時の状態、主治医からの指示、事業所の対応基準などに基づいて判断します。
訪問看護記録を書くときの注意点
訪問看護記録は、訪問時の事実や利用者さまの変化を残し、適切に情報を共有できるように記載することが大切です。記録を書く際は、主観的な表現を避けるだけでなく、いつ・何が起きたのかを明確にし、個人情報を管理する必要があります。
訪問看護師の主観や推測ではなく客観的事実を書く
「元気そう」「調子が悪そう」といった、受け手によって解釈が異なる表現は避けましょう。
たとえば、「元気がない」と記載するのではなく、「朝食は全量摂取。体温36.5℃、血圧128/76mmHg。『昨夜はあまり眠れなかった』との発言あり」のように、観察した状態や測定値、利用者さまの発言を記載します。
看護師の判断や評価を記載する場合も、何を根拠に判断したのかが分かるように、観察した事実とあわせて記録することが重要です。
第三者が読んでも分かる内容にする
「いつ・何が起き・どのように対応したのか」が記録だけで分かるようにしましょう。
訪問看護記録は、担当した看護師だけでなく、別の訪問看護師や主治医、ケアマネジャーなどが確認することもあります。
「発熱あり」と記載するのではなく、「14時の訪問時、体温38.2℃。悪寒の訴えあり。水分摂取を促し、主治医へ電話で報告。受診の指示を受けた」のように、利用者さまの状態や訴え、実施した対応などを記載すると、訪問時の状況を正確に共有できます。
また、施設内だけで使われる略語や担当者にしか分からない表現は、スムーズな情報共有を妨げるため避けましょう。
個人情報の管理に注意する
訪問看護記録は、利用者さまの病状や生活状況など重要な個人情報が含まれているため、持ち運んだり、保管したりする際に個人情報が漏れないように管理しなければなりません。
紙の記録を持ち運ぶ場合は、車内や訪問先への置き忘れ、紛失などに注意します。タブレットやパソコンで記録する場合は、パスワード設定や画面ロックをおこない、家族や訪問先の関係者など、記録を閲覧する権限のない人に画面を見られないようにする必要があります。
また、記録を共有する際は、宛先を間違えていないか確認するなど、事業所の情報管理のルールや厚生労働省のガイダンスに従って取り扱いましょう。
訪問看護記録を効率良く書くコツ
訪問看護記録を効率良く書くことで、利用者さまへのケアに充てる時間を確保でき、スタッフ間の情報共有もスムーズになります。また、残業時間の削減にもつながります。それぞれの方法を見ていきましょう。
訪問中にメモして情報を整理する
訪問看護記録は、訪問中に書き終わることが理想ですが、利用者さまの状態によっては難しいことがあります。訪問中に気づいた変化や利用者さまの発言は、その場で簡潔にメモしておくと、訪問後の記録作成がスムーズです。
体温や血圧などの数値、「夜間覚醒2回」「昼食8割」「足の痛みは軽減」など、キーワードだけを残しておきます。訪問後にメモを見返しながら記録すれば、内容を思い出す時間を減らせるため、記録漏れの防止にもつながります。
定型文や単語帳などの機能を活用する
毎回記載する内容は定型文や単語登録を活用し、利用者さまごとの変化だけを追記すると、入力時間を短縮できます。
たとえば、「訪問時、拘縮予防のためにリハビリテーションを実施した」といった共通部分を定型文にしておきます。ただし、定型文をそのまま使うのではなく、食事量や症状、発言などその日の状態に合わせて内容を修正しましょう。
前回記録との差分を中心に書く
前回の記録をそのまま繰り返すのではなく、「前回と比べて何が変わったか」を中心に記載すると、利用者さまの経過が分かりやすくなるでしょう。
たとえば、前回はご家族からの問いかけにうなずくのみだった利用者さまが、今回は自分から言葉を発した場合、その変化を記録することが大切です。実際に、あまね訪問看護ステーション様のインタビュー記事でも、訪問を重ねる中で利用者さまが少しずつ自分の言葉で気持ちを話せるようになった事例が紹介されています。こうした小さな変化も記録に残すことで、ケアの積み重ねが見えるようになります。
関連記事:“断らずに向き合う訪問看護”を支える若手チームの強み ~あまね訪問看護ステーション 丹後さんにインタビュー~
訪問看護記録に関するよくある質問
訪問看護記録について、よくある質問にお答えします。
Q1.訪問看護記録の保存期間はどのくらいですか?
記録の保存期間は、厚生労働省令では完結の日から2年間と定められています。事業所の運営規程や所在自治体の基準をあわせて確認しておくと安心です。
Q2.訪問看護記録はSOAPで書く必要がありますか?
訪問看護記録書の記載において、SOAP形式が義務づけられているわけではありません。
ただし、利用者さまの状態を整理して記録しやすくするため、SOAP形式を取り入れている事業所も多くあります。記録の書き方には事業所ごとの工夫やルールがあるため、先輩スタッフの記録を参考にしながら少しずつ慣れていきましょう。
Q3.訪問看護記録と訪問看護計画書の違いは何ですか?
訪問看護計画書は、看護・リハビリテーションの目標や問題点・解決策を定める書類です。
一方、訪問看護記録は、実際に提供したケアの内容や利用者さまの状態を訪問ごとに記録する書類という違いがあります。
計画書で立てた方針が、記録によって日々の実践として積み重ねられていくイメージです。記録の内容は、計画書を見直すタイミングでも重要な参考資料になります。両方の役割を理解しておくと、書類作成の流れも把握しやすくなります。
訪問看護記録は利用者さまの生活を支える情報共有ツール
訪問看護記録は、利用者さまへの継続したケアや多職種との連携を支える大切な情報共有ツールです。
記録書Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの役割の違いを理解し、客観的な事実を分かりやすく記載することを意識すれば、質の高い記録を残せるでしょう。
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<参考サイト・文献>
ナスキャリナビ 編集部 「ナスキャリナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「ナスキャリ」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。
