手術看護認定看護師とは?役割や仕事内容・資格取得までの流れを解説

手術室で働くなかで「周術期看護をもっと深く学びたい」「手術看護の専門性を高めたい」と感じ、手術看護認定看護師に関心を持つ看護師もいるでしょう。
手術看護認定看護師は、手術を受ける患者さまとご家族を、術前から術後急性期まで支える認定看護師です。器械出しや外回り業務に加えて、患者さまのリスクを予測した看護や、スタッフへの指導や相談にも関わります。
この記事では、手術看護認定看護師の役割や仕事内容、資格取得の流れ、費用などを解説します。資格取得までの道のりや取得後の働き方を知り、自分の目指すキャリアに合っているかを考えてみましょう。
手術看護認定看護師とは
手術看護認定看護師は、周術期にある患者さまとご家族を支える、手術看護分野の認定看護師です。一般の看護師と同じように患者さまへケアするだけではなく、周術期看護の専門的な知識を生かして、手術室スタッフへの指導や看護師からの相談にも対応します。
また、術前の状態把握から術中の安全管理、術後急性期の回復支援までを見通した看護を実践します。
近年は、腹腔鏡や胸腔鏡を用いた手術が普及するなど、手術方法が進歩しており、高齢者や複数の疾患を抱える患者さまへの手術も増えています。
このように限られた入院期間のなかでリスクを予測し、術後の回復まで見越して支援する必要があるため、手術看護認定看護師の専門性が求められています。
関連記事:認定看護師の種類一覧とは?19分野の一覧と難易度を詳しく解説
手術看護認定看護師が担う「実践・指導・相談」の役割と仕事内容
手術看護認定看護師の役割は、周術期看護の現場で「実践・指導・相談」を担うことです。
ここからは、3つの役割について、手術看護の具体的な場面を交えながら解説します。
実践:患者さまの状態を予測し、安全と回復をサポートする
実践では、手術を受ける患者さまとご家族の状態を多角的に捉え、手術によって起こり得る変化を予測しながら、安全で質の高い看護を提供します。
術前から術後までの経過を見通し、患者さまの身体面だけでなく、心理面や生活背景にも配慮しながら、その人に必要な看護を考えます。また、患者さまとご家族の意思を尊重し、多職種と連携しながら、苦痛の軽減や術後の回復につなげることも重要な役割の1つです。
おもな仕事内容は次のとおりです。
- 患者さまの既往歴や身体状態、心理面を踏まえて、手術に伴うリスクを評価する
- 手術侵襲や麻酔の影響から、術中・術後に起こり得る合併症を予測する
- 手術体位による皮膚障害や神経障害を防ぐためのケアをおこなう
- 術中の患者さまの状態を観察し、急変や緊急事態に対応する
- 患者さまやご家族の意思を尊重し、苦痛の軽減と術後の回復を支援する
実践では、目の前の状態だけでなく、手術侵襲や麻酔の影響を踏まえ、その後の経過まで見据えることが大切です。患者さまごとのリスクを早期に捉え、状態の変化に合わせた看護を行います。
指導:看護実践を通してスタッフの成長を支える
指導では、自らの看護実践を通して役割モデルを示し、スタッフが手術看護に必要な知識や技術を身につけられるよう支援します。
また、個々の経験や習熟度に合わせた指導だけでなく、研修の企画や教育体制の整備も担い、手術室全体の看護の質と安全性の向上につなげます。おもな仕事内容は次のとおりです。
- 器械出し看護や外回り看護を実践し、スタッフの役割モデルを示す
- スタッフの経験や習熟度に合わせて、手術看護に必要な知識・技術を指導する
- 手術体位や安全確認、感染対策、医療機器の取り扱いについて助言する
- 新人教育や院内研修、勉強会を企画・実施し、教材や指導案を作成する
- 手順書やマニュアルを見直し、安全で統一された看護を実践できる体制を整える
指導では、スタッフの経験や理解度に合わせた関わりが求められます。日々の実践を振り返る機会を設けながら、手術看護に必要な知識や技術の定着を支援します。
相談:看護職が課題を解決できるよう支援する
相談では、手術室スタッフや病棟看護師などから周術期看護に関する相談を受け、相談者が自ら解決の方向性を見つけられるようサポートします。
また、相談内容を整理し、必要に応じて多職種と連携しながら解決を目指すのも役割の1つです。たとえば、術後の離床や身体機能の回復に課題がある場合は理学療法士、褥瘡や皮膚トラブルのリスクが高い場合は皮膚・排泄ケア認定看護師など、より専門的な支援につなげます。
おもな仕事内容は次のとおりです。
- 手術室スタッフや病棟看護師から、周術期看護に関する相談を受ける
- 相談者とともに、看護上の課題や判断に迷っている点を整理する
- 必要に応じて医師やほかの分野の専門職と情報を共有し、対応を調整する
- 自身の役割や能力を超える看護が求められる場合は、適切な専門職から支援や指導を受ける
相談では、一方的に答えを示すのではなく、相談者自身が課題を整理し、解決の方向を見いだせるよう支援することが大切です。その後の看護実践に活かせるよう、相談者の気づきや判断を引き出せる関わりを意識しましょう。
手術看護認定看護師の人数と活躍する場所
日本看護協会の最新データによると、手術看護認定看護師の人数はA課程570人、B課程240人です(2025年12月時点)。
おもに、病院の手術室や周術期センター、看護教育部門、学校・大学などで活躍しています。
手術看護認定看護師になるには?資格取得までの5ステップ
手術看護認定看護師の資格取得には、実務経験を積んだうえで教育機関に進み、所定の教育課程と認定審査をクリアする必要があります。資格取得までの流れは、次の5ステップです。
- 資格取得に必要な条件を満たす
- 認定看護師教育機関の入学試験を受ける
- 手術看護分野の教育課程を修了する
- 日本看護協会の認定審査を受ける
- 手術看護認定看護師として登録する
ここからは、それぞれについて順番に解説します。
1.資格取得に必要な条件を満たす
最初に、日本国の看護師免許の取得と、所定の実務研修経験を有する必要があります。
日本看護協会では、看護師免許取得後に通算5年以上の実務研修を受け、そのうち通算3年以上は認定看護分野での実務研修を受けることが要件です。
手術看護分野では、さらに次の条件が示されています。
- 通算3年以上、手術看護分野での看護実績を有すること
- 手術看護における器械出し看護師及び外回り看護師としての実績を5例以上有すること
- 現在、手術室で勤務していることが望ましい
経験が条件に当てはまるか分からない場合は、勤務先の看護管理者や志望する教育機関へ確認しましょう。
2.手術看護の認定看護師教育機関の入学試験を受ける
実務経験を満たしたら、手術看護分野を開講している認定看護師教育機関へ出願します。出願時には、次のような書類を求められる場合があります。
- 実務研修報告書
- 所属施設長や看護部門長の推薦書
- 志望理由書
- 手術看護の実績を示す書類
入学者の選考では、書類審査、専門科目、小論文、面接などが実施される場合があります。試験内容や必要書類、出願期間、教育機関名、開講状況は年度によって異なるため、各校の最新の募集要項を確認してください。
3.手術看護分野の教育課程を修了する
入学後は、手術看護認定看護師に必要な知識と技術を学ぶ教育課程を修了します。
B課程の開講期間は1年以内です。共通科目、専門科目、特定行為研修区分別科目、統合演習、臨地実習で構成されており、手術看護分野では合計819時間の教育課程が設定されています。おもな学習内容は次のとおりです。
- 手術侵襲と生体反応、麻酔による身体への影響
- 術前のリスクアセスメントと術中・術後の生体管理
- 患者さまやご家族の心理的・社会的状況の理解とケア
- 手術室における医療安全、感染対策、多職種連携
- 術中合併症や皮膚・神経障害を予防する手術看護技術
- 術中麻酔管理領域の特定行為に必要な知識・技術
これらの学習を通して、周術期の患者さまの状態を的確に判断し、安全な手術看護を実践するための専門性を身につけます。
4.日本看護協会の認定審査を受ける
教育課程を修了したあとは、日本看護協会が実施する認定看護師認定審査を受けます。教育課程を修了した後、認定審査を受験します。2026年の認定審査の概要は次のとおりです。
| 項目 | 2026年の認定審査 |
| 試験形式 | マークシート方式・四肢択一式の筆記試験 |
| 試験時間 | 100分 |
| 問題数 | 一般問題20問、状況設定問題20問の計40問 |
| 配点 | 一般問題50点、状況設定問題100点の合計150点 |
| 出題範囲 | 共通科目を含む各認定看護分野の教育基準カリキュラム |
| 合格基準 | 合計105点以上かつ、一般問題と状況設定問題のそれぞれで70%以上 |
試験形式、日程、申請期間、合格基準は変わる可能性があります。受験年度の認定審査実施概要と「審査・申請の手引き」を確認してください。
5.手術看護認定看護師として登録する
認定審査の合格後は、日本看護協会へ認定登録を申請します。
登録手続きと認定料の支払いを終えると、手術看護認定看護師として認定されます。認定資格は5年ごとの更新制です。所定の期間に認定更新審査を受け、継続的な学習や実践を示す必要があります。
更新要件や申請方法も変わる可能性があります。日本看護協会の最新情報を確認し、余裕をもって更新の準備を進めましょう。
手術看護認定看護師の資格取得にかかる費用
手術看護認定看護師を目指す場合、教育機関の授業料や入学検定料に加え、日本看護協会の認定審査料や認定料などがかかります。さらに、教材費や交通費、宿泊費なども必要になるため、資格取得までに100万円以上かかる可能性があることを想定しておくと良いでしょう。
資格取得までにかかる、おもな費用は次のとおりです。
- 入学検定料・入学金
- 授業料・受講料
- 教材費・実習費
- 認定審査料・認定料
- 交通費・宿泊費
教育機関によっては、入学検定料や授業料だけで100万円以上かかるケースもあります。それに加えて、日本看護協会の認定審査を受ける際には審査料、合格後の登録時には認定料も必要です。
さらに、遠方の教育機関へ通う場合は、交通費や宿泊費がかかる場合もあります。授業料だけでなく、資格取得までに必要な費用も含めて計画を立てておく事が大切です。また、費用負担を軽くする方法として、日本看護協会の認定看護師教育課程奨学金や勤務先の支援制度などがあります。具体的な支援内容は、記事後半のFAQで紹介します。
手術看護認定看護師を目指すメリット・デメリット
手術看護認定看護師には、専門性や役割の幅を広げられるメリットがある一方、資格取得や更新には時間・費用の負担があります。おもなメリットとデメリットは次のとおりです。
| メリット | ・周術期看護に関する専門知識・技術を高められる ・スタッフへの指導や相談対応など、担当できる役割が広がる ・多職種連携やスタッフ教育を通して、手術室全体の質の向上に関われる ・勤務先によっては、資格手当の支給や昇給・昇格につながる場合がある ・昇進や転職に有利に働く場合がある |
| デメリット | ・教育課程の受講や認定審査に向けて、まとまった学習時間が必要になる ・授業料や実習費、認定審査料、交通費などがかかる ・資格取得後も、継続的な学習や資格更新が必要になる ・勤務先によっては、資格手当や昇給などの処遇に反映されない |
手術看護の専門性をさらに深めたい方や、スタッフへの指導・相談、多職種連携にも関わりたい方には向いている資格と言えます。
資格取得後の役割や待遇は勤務先によって異なるため、目指す前に資格取得支援制度や取得後の業務内容などを確認しておきましょう。
関連記事:認定看護師を取得するデメリットとは?不要と言われる理由や実際に活躍する場面も解説
手術看護認定看護師についてよくある質問
手術看護認定看護師の年収や試験情報、ほかの資格との違いなど、よくある質問をまとめました。

Q1.手術看護認定看護師の年収はどのくらいですか?
手術看護認定看護師だけを対象にした公的な平均年収データは限られているため、年収を一律に示すことはできません。
日本看護協会の2022年度調査では、手術看護認定看護師の給与総月額の平均は、A課程修了者で約43.5万円、B課程修了者で約44.6万円でした。ただし、年収は経験年数や役職、夜勤回数、勤務先の規模などによって異なります。
また、資格取得が必ず収入アップにつながるとは限りません。一方で、勤務先によっては資格手当の支給や役職への登用につながるほか、専門性をアピールできることで、昇進や転職に有利に働く場合があります。
Q2.手術看護認定看護師の試験内容や過去問・合格率はどこで確認できますか?
試験内容は、日本看護協会の「認定看護師」ページと、受験年度の「認定審査 審査・申請の手引き」で確認できます。
過去問は受験者向けに開示される場合があるため、受験年度の手引きで公開方法や期間を確認しましょう。日本看護協会の会員専用ページ「キャリナース」で公開されている内容は、おもに認定看護師教育課程の入学試験問題であり、資格取得時の認定審査とは別の情報であるため注意が必要です。
また、手術看護分野だけの合格率は公表されていません。合格率は変動するため、受験年度の公式情報を確認してください。
Q3.手術室看護師が取れる資格はどのようなものがありますか?
手術室看護師が目指せる資格には、手術看護認定看護師のほかにも複数あります。代表的な資格は、日本手術看護学会の「手術看護実践指導看護師」、日本麻酔科学会の「周術期管理チーム看護師」などです。
手術看護認定看護師は、周術期看護の実践・指導・相談を担う資格です。手術看護実践指導看護師は、手術看護の質向上や指導に重点を置く資格です。周術期管理チーム看護師は、麻酔科医などと連携した周術期管理に関わります。
資格によって取得要件や役割が異なるため、自分が伸ばしたい分野に合わせて選びましょう。
関連記事:手術室看護師のスキルアップに役立つ資格7選!キャリアにつながる選び方を紹介
Q4.認定看護師資格の取得時に職場から受けられる支援制度はありますか?
勤務先によっては、認定看護師の資格取得に必要な費用の補助や、勤務面での支援を受けられる場合があります。おもな支援は次のとおりです。
- 授業料や受講料、交通費などの補助
- 出張・研修扱いによる給与の支給
- 休職制度や勤務日・実習日の調整
支援制度の有無は職場によって異なります。看護部や人事担当に確認し、受講期間中の給与や休暇、復職後の役割についても事前に確認しておきましょう。また、職場の支援を受けられない場合は、日本看護協会の貸与型奨学金を利用する方法もあります。
Q5.手術看護認定看護師がおこなう特定行為には何がありますか?
手術看護認定看護師のB課程では、「術中麻酔管理領域」の特定行為研修を受講します。おもな特定行為は、次のとおりです。
- 経口用・経鼻用気管チューブの位置の調整
- 侵襲的陽圧換気の設定の変更
- 人工呼吸器からの離脱
- 直接動脈穿刺法による採血
- 橈骨動脈ラインの確保
- 脱水症状に対する輸液による補正
- 硬膜外カテーテルによる鎮痛剤の投与および投与量の調整
- 持続点滴中の糖質輸液または電解質輸液の投与量の調整
実際に担当する特定行為は、修了した研修内容や勤務先の体制によって異なります。
手術看護認定看護師は、周術期看護の専門性を高められる資格
手術看護認定看護師は、術前から術後急性期までの患者さまの状態を見通しながら、安全で質の高い周術期看護を実践するための専門資格です。資格取得後は、患者さまへの看護実践だけでなく、スタッフへの指導、相談対応、多職種との連携など、手術看護の質を高める役割も担います。
資格取得を考える際は、実務経験や教育機関、費用だけでなく、勤務先の支援制度や取得後にどのような働き方ができるのかも確認しておくことが大切です。手術看護認定看護師を目指すかどうかも含め、これからどのような看護に携わりたいのかを整理しながら、自分に合った働き方を検討してみましょう。
資格取得を含めて今後のキャリアを考えるなかで、手術室以外の分野へ視野が広がることもあります。訪問看護への転職に関心がある方は、訪問看護に特化した転職支援サービスナスキャリ(NsPace Career)へご相談ください。
<参考サイト・文献>
認定看護師教育基準カリキュラムの概要(特定行為研修を組み込んでいる教育課程:B課程教育機関)|日本看護協会
「チーム医療実証事業報告書」の取りまとめについて|厚生労働省
特定看護分野の実務研修内容の基準(特定の看護分野における看護実績及び教育課程入学時に望まれる勤務状況)|日本看護協会
2027年度 認定看護師教育課程「手術看護分野」募集要項|兵庫医科大学臨床教育統括センター
【A課程】都道府県別登録者数【全体版】【分野別】(日本地図版) 2025年12月現在|公益社団法人日本看護協会
【B課程】都道府県別登録者数【全体版】【分野別】(日本地図版) 2025年12月現在|公益社団法人日本看護協会
認定看護師(CN)認定審査 審査・申請の手引き2026年|日本看護協会
「2022 年度 専門看護師・認定看護師に対する評価・処遇に関する調査」報告書|日本看護協会
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