訪問看護を辞めたい看護師へ|退職前に考えることと後悔しない転職先の3つの選び方

「オンコール当番の負担が大きく、もう辞めたいと思うことがある」「これくらいで辞めたいと感じるのは甘えなのではないかと、誰にも相談できない」
このような悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか。訪問看護を辞めたいと感じる看護師は珍しくありません。一例ではありますが、神奈川県の令和5年度の調査では、訪問看護ステーションの看護職員(常勤・非常勤)の離職率は16.7%でした。病院の常勤看護職員の離職率である13.9%と比べても高い水準です。
この記事では、訪問看護を辞めたいと感じる理由を整理し、退職前にできる対処法や後悔しない転職先の選び方を解説します。今の職場で働き続けるべきか、転職を考えるべきかを冷静に判断できるようになります。
訪問看護を辞めたいと感じたら原因を分けて考える
「訪問看護を辞めたい」と感じても、その原因が訪問看護という仕事にあるのか、それとも今の職場にあるのかで、取るべき対応は変わります。まずは辞めたい原因を整理してみましょう。
心身の不調やハラスメントは早めに相談する
パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントを受けている場合や、眠れない・食欲がないなど心身の不調が続いている場合は、我慢せず相談しましょう。
訪問看護師に限った調査ではありませんが、日本医療労働組合連合会の調査(看護職員を対象)では、パワハラについては34.5%、セクハラについては15.0%が『よくある』『ときどきある』と回答しています。
心身の不調がある場合は、管理者や事業所の担当者、産業医、看護協会の窓口などへ相談し、休職や転職も含めて環境を見直すことが大切です。
職場環境への不満は改善できるか考える
待遇や業務量への不満は、「相談すれば改善できる余地があるか」という視点で考えてみましょう。
たとえば、オンコールの回数が多い、担当件数に偏りがあるといった悩みは、上司への相談やシフト調整で改善できる場合があります。
一方、教育体制や人間関係、給与への不満は、事業所ごとの差が大きい要素です。今の職場で改善が難しい場合でも、転職によって解決できる可能性があります。
関連記事:訪問看護は大変?乗り越えるコツや現役訪問看護師の声について紹介
訪問看護の働き方が自分に合うか考える
「訪問看護が合わない」と感じたときは、何が自分に合わないのかを整理してみましょう。
- 判断を任される場面の多さや裁量の大きさが自分に合わない
- チームで動く病棟と違い1人で対応する場面が多い働き方が苦手
- 医療処置よりも生活支援の比重が高いのが物足りない
感覚的に『向いていない』と片付けず、何が合わないのかを整理してみましょう。事業所を変えることで改善するケースもあります。それでも合わないと感じるのであれば、無理に訪問看護師にこだわる必要はありません。
訪問看護師が辞めたいと思いやすい理由と本音
訪問看護師が「辞めたい」と感じる理由は人それぞれですが、実際には多くの看護師に共通する悩みがあります。ここでは、とくに多い4つの理由を紹介します。
オンコールや緊急対応の負担が大きい
いつ呼び出されるか分からない緊張感は、訪問看護師が辞めたいと感じる理由の1つです。
休日でも着信音が気になってスマートフォンを手放せなかったり、「呼び出しがあるかもしれない」と落ち着かない方も少なくありません。
日本看護協会の調査では、1か月のオンコール対応は「5〜9回」が多い一方、「50回以上」の事業所もあり、負担には大きな差があるのが現状です。また、緊急時の判断や医師への報告方法について経験を積めるため、訪問看護師としてのアセスメント力や対応力を高める機会にもなります。
オンコールの回数や出動頻度、相談体制は事業所によって異なるため、「訪問看護がつらい」のではなく「今の職場の体制が合わない」ケースもあります。
1人で訪問する責任や孤独感がつらい
訪問看護は、利用者さまのご自宅に1人で訪問するのが基本です。病棟のように周囲にスタッフがいる環境ではないため、急変時の対応を1人で背負わなければならない不安があります。
褥瘡の処置や排泄介助中に「この対応で本当に間違っていないのか」と迷っても、その場で確認できる相手がいないという状況は、経験の浅いうちほどプレッシャーになりがちです。訪問を終えたあとも「あの判断で良かったのだろうか」と、不安が残ることもあります。
ただし、電話で相談できる体制が整っている事業所であれば、この負担感は変わります。1人で訪問することそのものよりも、相談できる環境があるかどうかが、負担の大きさを左右するといえるでしょう。
移動やスケジュール管理で体力的に消耗する
訪問看護は、車や自転車で複数のご自宅を回るため、移動そのものでも体力を消耗させます。悪天候の日の移動や、1日に訪問する件数が多い日は負担が大きくなります。
訪問の間隔が詰まっていたり、利用者さまからのコールで緊急対応が必要になったりすると、時間に余裕がなくなり休憩や記録の時間まで削られてしまうことも少なくありません。
訪問件数や移動範囲は事業所によって差があるため、体力的な負担の感じ方も職場や個人によって変わってきます。
教育体制・人間関係・給与への不満が重なる
オンコールや移動といった負担に加え、教育体制・人間関係・給与への不満が重なることも、辞めたい気持ちを強める要因になります。
新人教育の手厚さや同行期間の長さは、事業所によって差があり、十分なサポートを受けられないまま独り立ちを求められ、不安が募ることも珍しくありません。スタッフ間で情報共有や相談がしやすい雰囲気かどうかも、働きやすさに直結します。
また、「オンコールにも対応しているのに給与が思ったほど上がらない」「頑張っても正当に評価されている実感がない」と感じることもあります。こうした不満が重なると、「このまま働き続けていいのだろうか」という気持ちが強くなりやすいでしょう。
関連記事:訪問看護はきつい?大変といわれる11個の理由とその対処法を解説
訪問看護を辞める前にできる対処法
辞めたいと感じても、いきなり退職を決める前にできることがあります。実用的な対処法を順番に解説します。
上司へ相談するときは具体的な困りごとを伝える
上司に相談するときは、「辞めたい」という気持ちだけを伝えるのではなく、困っている状況を具体的に伝えることが大切です。
たとえば、「月に4回オンコールを担当しており、睡眠不足になっている」「重症度の高い利用者さまの担当が集中し、不安が大きい」と伝えると、状況を理解してもらいやすくなります。
そのうえで「オンコールの回数を減らしてほしい」「同行できる先輩を増やしてほしい」など、具体的な希望もあわせて伝えましょう。
担当件数の調整、重症度の高い利用者さまの偏りの見直し、同行・研修期間の延長など、相談をきっかけに改善できる例もあります。
改善が難しい場合は転職準備を始める
相談しても状況が変わらない場合や、心身の負担が限界に近い場合は、無理に今の職場に居続ける必要はありません。
ただし、焦って退職を決めるのではなく、オンコール回数や教育体制など次の職場で重視したい条件を整理してから転職活動を始めると、同じ理由で転職を繰り返すことを防ぐことができるでしょう。
日本看護協会が2025年11月に発表した調査によると、2024年度の求人倍率は訪問看護ステーションが4.54倍で、病院(20〜199床)3.00倍、病院(500床以上)1.93倍を上回っていました。求人は比較的多いため、自分に合う職場を探しやすい環境といえるでしょう。
後悔しないための転職先の選び方
転職で同じ悩みを繰り返さないためには、求人票だけで判断せず、面接や見学で次のような項目を確認することが大切です。
| 確認項目 | 面接・見学で確認したいこと |
| オンコール・訪問件数・移動範囲 | ・オンコールは何人で分担していますか? ・月の出動回数はどのくらいですか? ・1日の平均訪問件数と移動時間を教えてください。 |
| 教育体制・相談体制 | ・同行訪問はどのくらいの期間がありますか? ・独り立ちの基準はありますか? ・緊急時は誰に相談できますか? |
| 利用者層・医療依存度・ステーション規模 | ・利用者さまの疾患や年齢層を教えてください ・人工呼吸器や医療依存度の高い利用者さまはいますか? ・スタッフは何名在籍していますか? ・どのように情報共有していますか? |
気になる事業所が見つかったら、応募前にこれらの項目をメモしておくと、当日の質問し忘れを防げます。
オンコール・訪問件数・移動範囲を見る
日々の働きやすさは、オンコールや訪問スケジュールによって大きく変わります。
求人票に「オンコールあり」と書かれていても、実際の負担は事業所によって異なります。月の当番回数や出動頻度、1日の訪問件数、担当エリア、移動手段に加え、オンコールを何人で分担しているかまで確認しましょう。
たとえば、訪問看護ステーションタウンナースさまでは6人のスタッフでオンコールを分担し、ファースト・セカンド制で1人に負担が集中しない仕組みを取り入れているとのことです。こうした運営体制は、面接や見学で確認することで、入職後のギャップを減らせます。
関連記事:訪問看護 地域密着20年 チームで支える現場とは~訪問看護ステーション タウンナース 藤田さんにインタビュー~
教育体制と相談体制を見る
安心して長く働くためには、教育体制と相談しやすい環境が欠かせません。
同行訪問の期間や独り立ちの基準、緊急時の相談先、記録・申し送りの仕組みなどを確認しましょう。
訪問看護リハビリステーション東京敬寿園さまでは、毎日30分の情報共有を行い、スタッフ全員で新人を育てる体制を大切にしています。「困ったときに誰へ相談できるか」「新人をどのように育成しているか」まで確認すると、入職後の安心感につながります。
関連記事:訪問看護1年目で見つけたやりがいと成長~訪問看護リハビリステーション敬寿園 椎名さんにインタビュー~
利用者層・医療依存度・ステーション規模を見る
自分に合った職場かどうかは、利用者層や事業所の特徴も大切な判断材料です。
小児科・精神科・終末期など、対応する利用者層や医療依存度は事業所によって異なります。また、スタッフ数が多い事業所は相談相手が多く、オンコールも分担しやすい傾向があります。
「どのような利用者さまが多いですか」「新人はどのようなケースから担当しますか」などと質問すると、自分に合った職場かどうかを判断しやすくなります。
『訪問看護を辞めたい』と感じる方によくある質問
訪問看護を辞めたいと感じたときによく聞かれる疑問に、Q&A形式でお答えします。
Q1.訪問看護はすぐ辞めても問題ないですか?
期間の定めのない雇用契約の場合、民法では退職の申入れから2週間が経過すると退職できるとされています。
しかし、勤務先や利用者さまへの影響を考え、後任への引き継ぎや業務の整理にある程度の期間を見込んで、就業規則に定められた期限までに退職の意思を伝えることが望ましいでしょう。心身の負担が大きい場合は、無理に長く勤め続ける必要はありません。
Q2.訪問看護に向いていない人の特徴はありますか?
急変時の対応や医師への報告など、その場で判断を求められる場面で強い不安を感じる場合は、訪問看護の働き方があわないと感じやすいかもしれません。
ただし、これらは経験を積むことや、教育・相談体制が整った事業所に移ることで解消される場合もあります。「向いていない」と決める前に、原因を分けて考えてみることをおすすめします。
Q3.転職先には退職理由をどう伝えれば良いですか?
面接では、不満をそのまま伝えるのではなく、前向きに伝えると印象が良くなります。
たとえば「オンコールの負担がつらかった」ではなく、「オンコール体制が整った環境で、より長く安定して働きたいと考えた」のように、今後に向けた希望として伝えると良いでしょう。
訪問看護を辞めたいときは条件を整理して相談してみよう
訪問看護を辞めたいという気持ちは、甘えではありません。まずは原因を整理し、相談で解決できる部分と、転職でしか解決できない部分を分けて考えてみましょう。
訪問看護そのものが合わないのではなく、『今の職場』が合わないだけというケースも少なくありません。
もし「訪問看護を続けたい気持ちはあるけれど、今の職場では難しい」と感じている場合は、転職によって環境を変えることで悩みが解決できる可能性があります。
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<参考サイト・文献>
令和5(2023)年度看護職員就業実態調査結果(訪問看護ステーション)|神奈川県
令和5(2023)年度看護職員就業実態調査 (病院)|神奈川県
2024年度診療報酬・介護報酬改定等に向けた訪問看護実態調査|公益社団法人日本看護協会
「2024年度ナースセンター登録データに基づく看護職の求職・求人・就職に関する分析|公益社団法人日本看護協会
ナスキャリナビ 編集部 「ナスキャリナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「ナスキャリ」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。
