災害支援ナースになるには?役割や必要な資格、DMATとの違いなどを解説

「看護師として被災地の役に立ちたい」「災害支援ナースとして活動するためには資格が必要なの?」
ニュースや災害報道を見て、このように感じた看護師は少なくないでしょう。しかし、制度がよくわからず、一歩を踏み出せずにいる方も多いはずです。災害時、多くの看護師はテレビ越しに被災地を見守るしかありません。一方で、災害支援ナースは、現地で支援を届けられる数少ない存在です。
この記事では、災害支援ナースの役割や必要な資格、DMATとの違いなどを詳しく解説します。制度を正しく理解して、自分にとって現実的な選択肢かどうかを判断できるようになります。
災害支援ナースとは?
2026年3月時点で全国に1万1,472名の災害支援ナース養成研修修了者が登録されています。能登半島地震では27都府県看護協会から延べ2,982人が派遣されるなど、実際の災害現場で重要な役割を担っています。まずは、災害支援ナースの定義や活動場所、DMATとの違いを確認しましょう。
災害支援ナースの定義
日本看護協会によると、災害支援ナースとは、被災した地域で医療や看護を必要とする方々を支援するとともに、看護職員の心身の負担を軽減し支える看護職員のことです。災害時や感染症まん延時に活動します。
所定の研修を受け、都道府県を通じて厚生労働省医政局に登録しており、1995年の阪神・淡路大震災を契機に活動が始まり、国内のほとんどの災害で活動実績があります。
災害支援ナースが活動する場所
災害支援ナースは、災害の種類や状況に応じてさまざまな場所で活動します。おもな活動場所は以下のとおりです。
- 医療機関
- 避難所(福祉避難所を含む)
- 社会福祉施設
被災地の状況によって求められる役割も変わるため、柔軟な対応力が求められます。
災害支援ナースとDMATとの違い
災害支援ナースとDMATはどちらも災害時に活動しますが、役割や活動時期、必要な資格などが異なります。
| 項目 | 災害支援ナース | DMAT |
| 組織 | 厚生労働省・日本看護協会・都道府県看護協会 | 厚生労働省・DMAT事務局 |
| 活動 時期 | 急性期〜慢性期(発災後数日〜数週間以降) | 急性期(発災後おおむね48時間以内) |
| 活動 内容 | 避難所や医療機関でのケア・被災地の看護師の支援 | 重症患者の救命処置・病院支援・広域搬送 |
| 資格 要件 | 看護師免許+養成研修の修了 | 医師・看護師・業務調整員の資格+専門研修の修了 |
| 活動 単位 | 看護師個人で派遣されるが現地ではチームで活動 | 医師を含むチームで活動 |
DMATが発災直後の救命処置を担うのに対し、災害支援ナースは避難所や医療機関での継続的なケアを担います。DMATは、下記の記事でも詳しく解説しているため参考にしてみてください。
関連記事:DMAT看護師になるには?仕事内容や必要な経験、向いている人の特徴を解説
災害支援ナースの役割と仕事内容
災害支援ナースが実際に何をするのかは、災害の種類や活動フェーズによって異なります。自然災害時と新興感染症発生時の2つの場面を確認しましょう。
自然災害の発生時
自然災害が発生した際、災害支援ナースはおもに医療機関や避難所、社会福祉施設で活動します。
| 活動場所 | おもな役割 |
| 医療機関 | 被災地の看護師の業務負担の軽減・患者ケアの継続・診療補助 |
| 避難所 | 体調管理・服薬管理・感染症予防・メンタルヘルスケア・要配慮者(高齢者や妊産婦など)への対応 |
| 社会福祉施設 | 高齢者や障がい者への継続的なケアとスタッフへの支援 |
実際に、能登半島地震で活動した看護師からは「足浴を通じた下肢の観察で早期発見につながった」「訪問看護のように全テントを巡回し、生活環境整備が必要な状況を把握できた」という報告が寄せられています。
また、断水が続く中、バケツで水を運びながら感染対策をおこない、避難生活を送りながら勤務する看護師の業務を補う形で救急外来や病棟支援を担ったケースもあります。
新興感染症発生やまん延時
新興感染症の発生やまん延時にも、災害支援ナースは派遣されます。新型コロナウイルス感染症の流行時には、以下のように活動しました。
- 感染者が急増した医療機関への看護職員の応援派遣
- 宿泊療養施設での健康観察
- クラスターが発生した高齢者施設での感染管理支援
自然災害時と異なり、感染予防策を徹底しながら活動する必要があります。平時から標準予防策(スタンダードプリコーション)を身につけていることが活動の前提となります。
災害支援ナースになるには?実際に派遣されるまでの流れ
災害支援ナースになるには、登録から実際の派遣までには4つのステップがあります。
- 看護管理者を通じて養成研修に申し込み
- 災害支援ナース養成研修の受講
- 厚生労働省医政局に災害支援ナースとして登録
- 医療機関と都道府県が締結した協定にもとづき派遣
所属する医療機関の協力が必要なため、早めに職場への相談を始めることが重要です。
1.看護管理者を通じて養成研修に申し込み
災害支援ナースになるためには、養成研修に申し込む必要があります。
個人で申し込むのではなく、所属する医療機関の看護管理者、または医療機関以外に所属している場合は代表者を通じて都道府県看護協会に申し込みます。
まずは職場の看護管理者に「災害支援ナースになりたい」と相談してみましょう。
2.災害支援ナース養成研修の受講
登録には、都道府県看護協会が主催する災害支援ナース養成研修の受講が必要です。研修は以下のような構成になっています。
- 養成研修:オンデマンド研修(総論、災害各論、感染症各論で合計20時間以上)
- 都道府県ごとに実施される集合研修(講義、災害演習、感染症演習で合計10時間以上)
受講を検討している方は、日本看護協会の公式ホームページで最新情報を確認することをおすすめします。
3.厚生労働省医政局に災害支援ナースとして登録
養成研修を修了後、都道府県看護協会を通じて厚生労働省医政局に災害支援ナースとして登録されます。
このうち、医療機関に勤務している看護職は、医療法に基づく「災害・感染症医療業務従事者」としても登録されます。
4.医療機関と都道府県が締結した協定にもとづき派遣
実際に災害が発生した際は、都道府県が医療機関の管理者に対し、災害支援ナースの派遣を要請します。
協定を締結した医療機関は、正当な理由がある場合を除き、この要請に応じなければなりません。現地に入ると、都道府県に設置される保健医療福祉調整本部が活動場所や内容を調整します。
また、派遣中の給与・休暇・保険などの扱いは所属施設の規定によって異なるため、職場に条件を確認しておくことが重要です。
災害支援ナースのやりがい
災害支援ナースは、阪神淡路大震災から現在まで、国内の主要な災害のほぼすべてで活動してきました。活動した看護師の多くが、通常の臨床では得られない達成感や成長を感じると話します。活動を通じて得られる3つのやりがいを紹介します。
被災地の復興に貢献できる
被災者から「ありがとう」と言われる経験が、看護師としての使命感を強める機会になります。2011年の東日本大震災では延べ3,770人、2018年の西日本豪雨では延べ1,427人が派遣され、避難所や医療機関での継続的な支援をおこないました。
病院での日常業務とは異なり、医療資源が限られた環境で判断し行動する経験は、看護師としての視野を広げます。
チーム医療の達成感を味わえる
災害支援ナースは、初対面のスタッフと短期間でチームを組み、限られたリソースの中で医療を提供します。
「熊本地震の避難所では、子どもたちにDVT予防のポスターを描いてもらい、放送で毎日時間を決めて体操をする仕組みを作った。周りの大人たちが子どもたちを褒め、お互いに声を掛け合うきっかけになった」と記録されています。
被災者や地域住民と一体となって問題を解決し、また初対面の医師や保健師と短期間で信頼関係を築いた経験は、普段の申し送りや多職種カンファレンスでの動き方に活かせます。
看護師としてキャリアアップできる
災害現場での経験が、訪問看護や管理職、感染管理などキャリアの転機につながる看護師は少なくありません。
実際に、「東日本大震災で感染性胃腸炎の集団発生を経験したことをきっかけに感染管理を勉強し始め、2014年に感染管理認定看護師を取得した」と、座談会に参加した看護師が明かしています。
関連記事:災害看護専門看護師とは?6つの役割と仕事内容、なり方をわかりやすく解説
災害支援ナースになるために必要なスキル
災害現場は物資・人員・環境のすべてが不十分な状態で始まります。そのような環境で即戦力として動くために、重要なスキルを確認しましょう。
臨床判断力
血圧計もモニターもない環境で、フィジカルアセスメントだけを頼りに患者さまの状態を判断する力が求められます。
具体的には、「インフルエンザ罹患者の重症脱水を迅速に判断して診療につなげ、入院に至らず経過できた」と活動報告に残されています。
普段の臨床での経験が、被災地で活動するうえで欠かせません。救急・急性期・慢性期など、さまざまなフェーズの経験を積んでおくことが、災害現場での対応力を身につけるためには重要です。
柔軟な対応力
派遣先の変更や断水、物資不足など想定外の状況かつ、体制が整っていない中で「今できる最善」を考え動き続ける力が必要です。
「目的地まで残り18kmの地点で土砂崩れに遭遇し、急きょ別の避難所への派遣に変更となった。指揮命令を守りながら、いかなる変化にも柔軟に対応できる力が求められることを実感した」と活動報告に残されています。
コミュニケーション能力
被災地では「何かしてあげたい」ではなく「まず聞く姿勢」が、被災者と信頼関係を築くために大切です。
「支援に入る側はどうしても『何かやってあげよう』という気持ちが先行しがちだが、大切なのはできるだけ変えないこと。その地域のやり方を尊重しながら、必要なときには根拠を丁寧に説明し上手に関わっていくことが大事」と、座談会に参加した看護師が語っています。
災害支援ナースとして活動した看護師のよくある声
日本看護協会の座談会や活動報告に寄せられた声をもとに、やりがいと事前に知っておくべきことを整理しました。活動を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
活動してよかったこと
活動経験者から多く聞かれる声をまとめると、以下のようなものが挙げられます。
| 「被災者の方に直接感謝されることで、看護師としての使命感が強まった」 「リハビリ看護で学んだセルフケアを大事にするという考えが、被災者の日常を取り戻す支援にそのままつながった」 「限られた環境での判断経験が、日常の臨床に戻ってからも活きている」 |
感謝の言葉をもらったことや、普段とは異なる環境で判断した経験が、「自分の看護は役に立っている」という実感につながっているようです。
活動前に知っておけばよかったこと
一方で、活動した看護師が「事前に知っておけばよかった」と感じることも多くあります。
| 「現地の状況が想像以上に過酷で、精神的な準備が必要だった」 「支援に入るたびにやり方を変えられると現地の方々が疲弊する。前班が積み重ねてきた活動を尊重しながら引き継ぐことが大切」 「持参物品の準備が重要で、血圧計・聴診器・体温計に加え、足音がしにくい室内シューズや圧縮袋なども役立った」 「活動後に自分自身のメンタルケアが必要だと気づいた」 |
現地では入浴できない日が続くこともあり、睡眠環境も十分に整っていない場合がほとんどです。被災者の苦しい状況に直面し続けることによる精神的な負担も大きく、帰宅後のメンタルケアが必要になることも少なくありません。派遣期間中は家を空けることになるため、事前に家族との調整もしておきましょう。
活動前に先輩支援ナースから話を聞いたり、シミュレーション研修に参加したりすることで、現地での対応がスムーズになります。持参物品については、日本看護協会が公開している災害支援ナースリュックの中身紹介も参考にしてみてください。
災害支援ナースに関するよくある質問
災害支援ナースへの登録や活動について、よく寄せられる4つの疑問に答えます。
Q1:新人看護師でも災害支援ナースになれますか?
新人看護師の登録は難しい場合がほとんどです。
受講要件に経験年数は定められていませんが、災害現場では1人で判断する場面も多く、十分な臨床経験が求められるためです。
日常の臨床でアセスメント力・判断力・対応力を身につけながら、養成研修への参加を目指しましょう。
Q2:災害支援ナースに資格は必要ですか?
看護師免許があれば、特別な資格は必要ありません。
ただし、養成研修の修了と所属施設の看護管理者を通じた登録手続きが必要です。養成研修はオンデマンド研修と集合研修で構成されており、災害医療の基礎知識から感染症対応まで幅広く学べます。
Q3:災害支援ナースとして日当や給料はいくら出ますか?
多くの医療機関では派遣期間中も通常給与が支給されます。
ただし、派遣中の日当や手当の有無、支給条件は所属する医療機関によって異なります。
また、旅費や宿泊費については、都道府県や派遣先の制度によって補助が出る場合があります。事前に職場と条件を確認しておくことをおすすめします。
Q4:災害支援ナースに向いている人・向いていない人の特徴は?
以下の特徴を持つ看護師に向いていると言えます。
- 被災地の方々の役に立ちたいという強い意志がある
- 想定外の状況でも落ち着いて対応できる
- 初対面のスタッフともすぐに連携できるコミュニケーション力がある
- 過酷な環境でも体力・精神力を維持できる
- 普段の臨床でも幅広い経験を積んでいる
逆に「完璧な環境でないと動けない」「マニュアル通りでないと不安」という方は、まず院内の災害訓練への参加や養成研修の受講から始めることで準備を進めていきましょう。
災害支援ナースというキャリアの選択肢
災害支援ナースは、看護師免許と養成研修の修了で目指せる制度です。
断水や物資不足など、過酷な環境の中で即戦力として活動することが求められるため、決してハードルの低い活動ではありません。「いつか被災地の役に立ちたい」という思いがあるなら、まずは所属施設の看護管理者に相談し、養成研修の受講に向けて動き出してみましょう。
災害支援ナースとしての活動経験は、訪問看護や地域医療の現場でも活きます。訪問看護は、利用者さまの生活の場に出向き、限られた環境で対応する仕事です。災害支援で培ったアセスメント力と対応力が強みになります。
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<参考サイト・文献>
ナスキャリナビ 編集部 「ナスキャリナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「ナスキャリ」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。
