訪問看護の同一建物減算とは?介護保険と医療保険の違いや計算例を解説

公開日:2026/06/09 更新日:2026/06/09
訪問看護の同一建物減算とは?介護保険と医療保険の違いや計算例を解説

訪問看護では、同一建物に居住する複数の利用者さまに訪問した場合、通常とは異なる算定ルールが適用されます。これを一般に「同一建物減算」と呼びます。

しかし、介護保険と医療保険では仕組みがまったく異なり、さらに令和8年度の診療報酬改定で医療保険側のルールが大きく変わりました。算定を誤ると返戻や指導監査での指摘につながるため、正確に把握しておきたい制度の1つです。

この記事では、介護保険・医療保険それぞれにおける同一建物への訪問看護の仕組みと計算方法を詳しく解説します。自事業所に適用される減算区分を判断できるようになり、請求業務に必要な計算方法や実務上の注意点を理解できるでしょう。

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【令和8年度改定】訪問看護の同一建物減算とは

同一建物減算とは、同一の建物に居住する複数の利用者さまへ訪問看護を提供した場合に適用される算定ルールのことです。

制度を正しく運用するために、基本的な用語の定義と、介護保険・医療保険それぞれの仕組みの違いを確認しましょう。

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「同一建物」「同一敷地内建物等」の定義

同一建物減算を正しく適用するには、まず「同一建物」と「同一敷地内建物等」の違いを押さえておきましょう。

用語定義該当する建物の例
同一敷地内建物等事業所と構造上・外形上一体的な建物、または同一敷地内・隣接する敷地内にある効率的なサービス提供が可能な建物・1階部分に訪問看護ステーションがある建物
・渡り廊下でつながっている建物
・幅の狭い道路を挟んで隣接する建物
同一建物(同一敷地外)同一敷地内建物等には該当しないが、同一の建物に利用者さまが居住している場合事業所とは別の場所にある以下の建物(一部抜粋)
・マンション
・サービス付き高齢者向け住宅
・有料老人ホーム
参考:一般社団法人全国訪問看護事業協会,訪問看護実務相談Q&A令和6年版,2024年,中央法規出版株式会社

一方、以下のような場合は同一敷地内建物等には該当しません。

  • 広大な敷地に複数の建物が点在している
  • 河川や幹線道路など、横断に迂回が必要な障壁によって敷地が隔てられている

位置関係だけで判断するのではなく、効率的なサービス提供が可能かどうかが判断の軸となります。

なお、令和8年度の診療報酬改定により、医療保険においては同一敷地内の建物も「同一建物」として扱うよう規定が変更されました。介護保険側の定義に変更はありません。

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介護保険と医療保険の仕組みの違い

「同一建物減算」という呼称は介護保険側の用語であり、「集合住宅減算」とも呼ばれます。

介護保険と医療保険では、同一建物への訪問に関するルールの仕組みが以下のように異なります。

介護保険医療保険
仕組み所定単位数に対して一定割合を減算通常の基本療養費(Ⅰ)ではなく、基本療養費(Ⅱ)を算定
カウント単位1か月単位(月平均利用者数)同一日単位
別日訪問の扱い減算対象基本療養費(Ⅰ)を算定
参考:一般社団法人全国訪問看護事業協会,訪問看護実務相談Q&A令和6年版,2024年,中央法規出版株式会社

医療保険では「減算」という概念はなく、同一日に同一建物へ訪問した人数に応じて、算定する訪問看護基本療養費の区分が切り替わる仕組みです。別の日に訪問した場合は、通常の訪問看護基本療養費(Ⅰ)を算定します。

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【介護保険】訪問看護での同一建物減算の要件と計算方法

介護保険における同一建物減算は、サービス提供の効率性を報酬に反映させる目的で設けられた制度です。要件と計算方法を正確に理解しておきましょう。

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減算が適用される3つのケースと減算率

介護保険における同一建物減算は、以下の3つのケースに該当する場合に適用されます。

対象減算率
訪問看護事業所と同一敷地内建物等に居住する利用者さま10%(所定単位数の100分の90)
同一敷地内建物等以外の建物に1か月あたり20人以上居住する利用者さま10%(所定単位数の100分の90)
同一敷地内建物等に1か月あたり50人以上居住する利用者さま15%(所定単位数の100分の85)
参考:一般社団法人全国訪問看護事業協会,訪問看護実務相談Q&A令和6年版,2024年,中央法規出版株式会社

なお、ここでいう利用者数は延べ人数ではなく、実利用者数です。同一の利用者さまが月に複数回訪問を受けていても、1人としてカウントします。

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介護保険の同一建物減算の計算方法

介護保険の同一建物減算は、同日・別日にかかわらず1か月あたりの実利用者数をもとに判定します。減算は1回あたりの所定単位数に対して適用されます。具体的な計算例で確認してみましょう。

【計算例】
同一敷地内建物等以外の集合住宅に21名の利用者が居住しており、そのうちAさんが訪問看護Ⅰ2(30分未満・471単位)を週2日(月8日)受けた場合

・通常:471単位×8日=3,768単位
・減算後:471単位×90/100=424単位×8日=3,392単位
・差額:376単位の減算

利用者数が基準人数を超えるかどうかは月ごとに変わる可能性があるため、毎月の利用者数を適切に把握しておくことが重要です。

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介護保険で同一建物居住者に算定する場合の留意点

介護保険で同一建物減算を適用するときは、以下の2点に注意してください。

  • 運営法人に関係なく、位置関係の要件を満たす場合は減算の対象となる
  • 支給限度額の管理は、減算後ではなく減算前の単位数でおこなう

とくに支給限度額の管理については見落としやすいポイントです。事務担当者とも共有し、算定誤りが起きにくい体制を整えておきましょう。

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【医療保険】訪問看護における同一建物居住者の基本療養費の取り扱い

前述のとおり、医療保険では「減算」という仕組みではなく、同一日に同一建物へ訪問した人数に応じて基本療養費の区分が切り替わります。

また、令和8年度の診療報酬改定で3人以上の区分が細分化され、全体で5段階となり、同一建物の定義も変更されました。以下で詳しく解説します。

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同一建物居住者への訪問は「訪問看護基本療養費(Ⅱ)」を算定

同一日に同一建物へ2人以上訪問した場合は、通常の訪問看護基本療養費(Ⅰ)ではなく、訪問看護基本療養費(Ⅱ)を算定します。令和8年度改定後の点数は以下のとおりです。

同一日の人数イ:看護師等ロ:准看護師等ニ:理学療法士等
2人週3日目まで:5,550円
週4日目以降:6,550円
週3日目まで:5,050円
週4日目以降:6,050円
5,550円
3人以上9人以下週3日目まで:2,780円
週4日目以降:3,280円
週3日目まで:2,530円
週4日目以降:3,030円
2,780円
10人以上19人以下月20日目まで:2,760円
月21日目以降:2,660円
月20日目まで:2,520円
月21日目以降:2,420円
月20日目まで:2,760円
月21日目以降:2,660円
20人以上49人以下月20日目まで:2,710円
月21日目以降:2,610円
月20日目まで:2,470円
月21日目以降:2,370円
月20日目まで:2,710円
月21日目以降:2,610円
50人以上月20日目まで:2,610円
月21日目以降:2,510円
月20日目まで:2,370円
月21日目以降:2,270円
月20日目まで:2,610円
月21日目以降:2,510円
参考:令和8年度診療報酬改定について【訪問看護ステーション向け】|厚生労働省

精神科訪問看護基本療養費(Ⅲ)および精神科訪問看護・指導料(Ⅲ)についても、同様の区分が適用されます。

なお、同一日の訪問が1人のみの場合は、通常の訪問看護基本療養費(Ⅰ)を算定します。

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医療保険で同一建物居住者に算定する場合の留意点

令和8年度の診療報酬改定による変更点は複数にわたります。算定の際は、以下の点をあらためて確認しましょう。

  • 20分未満の訪問は訪問看護基本療養費(Ⅱ)を算定できない
  • 同一日の人数が10人以上になると、カウント軸が「週」から「月」に変わる
  • 同一敷地内の建物も「同一建物」として扱われる
  • 医療保険の場合、訪問看護基本療養費(Ⅱ)が適用されるのは「同一日」に訪問した場合に限られる
  • 精神科訪問看護基本療養費を算定している利用者さまも同一建物居住者の人数に含まれる
  • 各種加算(難病等複数回訪問加算、夜間・早朝・深夜訪問看護加算、複数名訪問看護加算など)も令和8年度改定で見直しがあり算定時は注意する

なかでも同一建物の定義変更と区分の細分化は実務への影響が大きいため、改定前のルールと混同しないよう注意が必要です。

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訪問看護の同一建物減算で間違いやすいポイント

同一建物減算は要件の理解だけでなく、現場での算定判断でも迷いが生じやすい制度です。ここでは、実務で間違いが起きやすい2つのポイントを解説します。

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夫婦や兄弟であっても「2人」としてカウントする

同一建物に夫婦や兄弟など家族が複数人居住しており、それぞれが訪問看護を利用している場合、家族であっても人数のカウントに例外はありません。

たとえば、同一のサービス付き高齢者向け住宅に夫婦で入居しており、同一日に2人とも医療保険で訪問看護を受ける場合は、同一日2人として訪問看護基本療養費(Ⅱ)を算定します。介護保険の場合も同様に、2人分が月の利用者数としてカウントされます。

ただし、介護保険と医療保険では利用者数のカウント方法が異なるため、それぞれの制度ごとに判定します。

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介護保険と医療保険の利用者数は合算しない

介護保険の同一建物減算における利用者数のカウントに、医療保険の利用者さまは含まれません。介護報酬と診療報酬はそれぞれ別の法律にもとづく制度であり、カウントは保険種別ごとに切り離して考えるためです。

以下の具体例で確認してみましょう。

<状況>

同一のマンションにAさんご夫婦(2人とも介護保険)と、Bさん(医療保険)が居住しており、同一日にどちらにも訪問した

保険種別人数カウント算定
Aさんご夫婦介護保険・介護保険の利用者数として2人分
・Bさんは含まれない
当該建物の介護保険利用者が1か月あたり20人以上であれば減算が適用される
Bさん医療保険・医療保険の利用者数として1人分
・Aさんご夫婦は含まれない
医療保険利用者が1人のみのため、訪問看護基本療養費(Ⅰ)を算定

このように、介護保険と医療保険のカウントは別々に管理されます。同一日・同一建物への訪問であっても、保険種別をまたいで人数を合算することはありません。

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訪問看護の同一建物減算に関するよくある質問

同一建物減算について、多く寄せられる質問をまとめました。算定に迷ったときの参考にしてください。

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Q1:訪問看護の同一建物減算は(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)のように違いがありますか?

介護保険の同一建物減算(集合住宅減算)には(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)のような区分はありません。

減算率が100分の90か100分の85かの違いはありますが、これは区分ではなく適用要件の違いによるものです。

なお、訪問看護基本療養費に(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)の区分があるのは医療保険側です。

(Ⅰ)は通常の訪問、(Ⅱ)は同一建物居住者への訪問、(Ⅲ)は在宅療養に備えて一時的に外泊している利用者さまへの訪問に適用されます。

「同一建物減算の(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)」ではなく「基本療養費の区分が(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)」という理解が正確です。

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Q2:同じ建物に複数の訪問看護ステーションが訪問している場合、人数カウントはステーションをまたいで合算しますか?

人数のカウントはステーションごとに独立しておこなうため、合算しません。

たとえば、同じサービス付き高齢者向け住宅にAステーションが10名、Bステーションが15名訪問していた場合、A事業所の利用者数は10名、B事業所の利用者数は15名としてそれぞれ独立して減算の要件を判定します。

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Q3:同一建物減算が適用されると、利用者さまの自己負担額も変わりますか?

同一建物減算の適用により、利用者さまの自己負担額は変わります。

介護保険の場合、減算により1回あたりの単位数が下がるため、利用者さまの自己負担が減少する仕組みです。

医療保険の場合も、同一日の訪問人数が多いほど訪問看護基本療養費(Ⅱ)の金額が低くなるため、利用者さまの自己負担額は下がります。

「同一建物減算=事業所の収益が下がる」点が注目されがちですが、利用者さまにとっては自己負担が軽減されるというメリットもある点を覚えておきましょう。

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訪問看護の同一建物減算を正しく理解し返戻を防ごう

訪問看護の同一建物減算は、介護保険と医療保険で仕組みが異なります。

介護保険では1か月の実利用者数をもとに減算が適用されるのに対し、医療保険では同一日の訪問人数によって基本療養費の区分が切り替わります。

さらに令和8年度の診療報酬改定により、医療保険側では基本療養費(Ⅱ)の区分の細分化や同一建物の定義変更など、実務に直結する変更が複数おこなわれました。制度改定のたびに内容を確認し、算定誤りのない運営を続けていきましょう。

訪問看護に関する制度解説やキャリア情報は、「ナスキャリ(NsPace Career)」でも多数掲載しています。算定ルールの理解を深めたい方や、訪問看護でのキャリアアップを考えている方は、ぜひほかの記事もあわせてご覧ください。

<参考サイト・文献>

一般社団法人全国訪問看護事業協会 訪問看護実務相談Q&A令和6年版 2024年 中央法規出版株式会社 p37,40,69,133,134,269,275,276.

令和8年度診療報酬改定について【訪問看護ステーション向け】|厚生労働省

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記事投稿者プロフィール画像 NsPace Careerナビ 編集部

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