心不全看護認定看護師とは?なり方や倍率、給与事情をわかりやすく解説

「心不全の患者さまにもっと寄り添いたい」「キャリアアップのために認定看護師に興味がある」とお考えではありませんか。
高齢化が進む現代において、心不全患者が増えており、専門的なケアを担う心不全看護認定看護師のニーズは高まっています。
この記事では、心不全看護認定看護師の役割やなり方、給与、難易度までをわかりやすく解説します。将来への漠然とした不安を具体的な目標に変え、スペシャリストへの道に自信を持って歩み出せるようになるはずです。
心不全看護認定看護師とは?
心不全看護認定看護師は、日本看護協会が定めた認定看護師の資格の1つです。ここでは、注目されている理由や、活躍している認定看護師数を見ていきましょう。
心不全分野が注目されている理由
心不全分野が注目されているのは、患者数の増加に加え、再発を防ぐための専門知識が求められているためです。
高齢化の影響により、心不全患者は年々増加しており、いわゆる「心不全パンデミック」と呼ばれる状況になっています。日本心臓財団の調査によると患者数は全国で約120万人とされ、2030年には130万人に達すると推計されています。
心不全は一度症状が安定しても再発しやすい特徴があり、塩分の過剰摂取や服薬忘れなどをきっかけに急激に悪化し、再入院を繰り返すケースが少なくありません。
こうした事態を防ぎ、患者さまが自宅でも安心して過ごせるように支える人材は、医療現場だけでなく、在宅や地域医療でも欠かせない存在となっています。
全国の認定者数
日本看護協会の調査によると、心不全看護認定看護師(B課程)の認定数は2025年12月時点で128名です。
全国の病院数に対して数が少なく、貴重な存在といえます。裏を返せば、資格を取得することで、キャリアアップや転職においても評価されるポイントになります。
心不全看護認定看護師になるには?
認定看護師になるためには、一定の実務経験と専門機関での学びが必要です。まずは、目指す前に知っておきたい次の3つのポイントを押さえましょう。
- 心不全看護認定看護師になるまでの流れ
- 試験の倍率と難易度
- 学費や費用の目安
資格取得のハードルは高いですが、手順がわかると落ち着いて準備を進められるようになります。
心不全看護認定看護師になるまでの流れ
認定看護師を目指すには、臨床経験を積んだうえで、教育課程を修了する必要があります。まずは、自分が受験資格を満たしているかを確認しましょう。看護師免許取得後の年数や、心不全ケアの経験年数がポイントになります。
| ステップ | 必要な条件・内容 | 目安の時期・期間 |
| 1. 受験資格を満たす | 看護師免許取得後、実務経験が5年以上あること(そのうち3年以上は心不全患者の看護経験が必要) | 5年以上 |
| 2. 教育機関への入学・受講 | 指定された教育機関の入学試験に合格し、講義や実習を受講 | 約1年 |
| 3. 認定審査 | 日本看護協会が実施する筆記試験に合格 | 毎年秋頃 |
| 4. 認定・更新 | 合格後、認定看護師として登録 | 5年ごと |
2025年12月時点で、心不全看護認定看護師の教育機関は岡山県「川崎医療福祉大学」の1校(定員は15名)のみです。入学試験では筆記試験と小論文、面接が課され、入学後は約1年間で合計800時間の授業や実習を受けます。
試験の倍率と難易度
心不全看護認定看護師になるためには、「教育機関の入学試験」と日本看護協会が実施する「認定試験(筆記試験)」、この2つの試験に合格する必要があります。
心不全看護認定看護師になるための認定試験の合格率は近年100%(2021~2025年)と高い水準です。ただし、教育機関の入学試験では、限られた15名の定員枠を争う厳しい関門となっていることに加え、約1年間続く講義や実習を乗り越えなければならないため、資格取得までの難易度は高いといえます。
長期間の努力が求められるからこそ、得られた資格は現場での信頼に直結します。
学費や費用の目安
心不全看護認定看護師の資格取得にかかる学費は、入学金や授業料、実習費などを含めると約100万~110万円ほどが目安です。川崎医療福祉大学を例に挙げると、費用の内訳は次のとおりです。
- 入学検定料:5万円
- 入学金:5万円
- 授業料:93万5,000円
- 修了試験料:5万円
これらに加えて、遠方の学校に通う場合は引っ越し費用や家賃、生活費なども必要になります。「資格取得支援制度(出張扱いでの給与支給や学費補助)」を設けている病院もあるため、勤務先の制度を確認して、費用の負担を減らしましょう。
関連記事:認定看護師になるには?条件や取得までの流れ、資格取得によるメリットも解説
心不全看護認定看護師の役割と仕事内容
心不全看護認定看護師の役割は、日本看護協会が定義する「実践・指導・相談」の3つにわけられます。ここでは、実際の場面での役割や仕事内容をご紹介します。
- 急性期での役割
- 慢性期・退院支援での役割
- 多職種連携での役割
患者さまの状態に合わせた専門的なケアから、スタッフへのアドバイスまで、その活躍の場は多岐にわたります。現場の要としてどのような業務を担うのか見ていきましょう。
急性期での役割
急性期における認定看護師の役割は、観察力で患者さまの生命を守りながら、心身の苦痛を最小限に抑えることです。症状が急激に変化しやすい時期は、わずかなサインを見逃さないアセスメントと、迅速な対応が求められます。
たとえば、人工呼吸器といった医療機器を使用しながら、苦痛を和らげるケアを実践し、不安を抱えるご家族への精神的なフォローも並行しておこないます。危機的な状況にある患者さまとご家族を支えることが急性期看護には欠かせません。
慢性期・退院支援での役割
慢性期や退院支援では、セルフケア能力を高める支援が中心となります。患者さまが自分らしい生活を送りながら、心不全の悪化を防ぐことが目的です。心不全は生活習慣が病状に直結するため、退院後の過ごし方が症状に影響します。
実例として、入院中は看護師やスタッフが薬や食事の塩分を管理するため症状は安定しますが、退院後に管理がうまくいかず、再入院を繰り返してしまうケースは少なくありません。
そのため、患者さまの生活習慣を聞き取り、無理なく続けられる減塩方法や薬の飲み忘れを防ぐ工夫を一緒に考え、自宅でも迷わず管理できるよう指導します。生活に密着したケアが、再入院を未然に防ぎます。
多職種連携での役割
多職種連携においては、チーム医療のまとめ役として、患者さまにとって最適なケアを調整する役割を担います。心不全治療には、次のように多くの職種がかかわるため、情報共有が欠かせません。
- 医師
- 薬剤師
- 管理栄養士
- リハビリスタッフ
たとえば、カンファレンスで患者さまの希望を代弁し、専門家の意見を調整しながら退院計画を作り上げます。チームの力を最大限に引き出すことで、患者さまを支えられる体制を築くのです。
心不全看護認定看護師の給与事情
ここでは、心不全看護認定看護師の給与事情をご紹介します。

平均給与
2022年度の日本看護協会の調査によると、心不全看護認定看護師(B課程)の平均給与は38万1,635円です。一方で、厚生労働省の調査によると、一般の看護師の平均給与は35万1,600円であるため、心不全看護認定看護師の給与は高めになります。
実際の給与は働く施設や病院の規模に左右されますが、専門性が評価されて役職に就きやすくなり、結果的に基本給がアップするケースも見られます。
資格手当の相場
日本看護協会の調査によると、認定看護師の資格手当は平均8,530円です。しかし、認定看護師の58.8%は資格手当が支給されないという現状があります。
手当の金額以上に、専門職としての評価が得られ、昇進や昇給のチャンスが広がることは、長期的なキャリア形成においてプラスとなります。
心不全看護認定看護師と心不全療養指導士との違い
ここでは、心不全看護認定看護師と心不全療養指導士の違いを解説します。
| 項目 | 心不全看護認定看護師 | 心不全療養指導士 |
| 受験資格 | ・看護師免許取得後、実務経験が5年以上あること(そのうち3年以上は心不全患者の看護経験が必要) ・認定看護師教育機関を修了していること | 以下の条件をすべて満たすこと ・看護師、理学療法士、薬剤師、管理栄養士などの資格保有者 ・日本循環器学会会員であり年会費を納付 ・心不全療養指導に従事 ・受験者用eラーニング講習を受講し、修了証を取得 ・症例報告書5例を提出 |
| 目的・役割 | 高度な看護技術の実践、スタッフへの指導、チーム医療の調整 | 患者さまへの生活指導(食事、運動、服薬など)による再発予防 |
| 取得の難易度 | 1年の通学・実習後に試験 | 指定のeラーニング受講と試験 |
| 費用 | 100万円程度(約100万〜110万円 | 受験料:1万5,000円 |
現場のリーダーとして専門性を極めたいなら「認定看護師」、今の仕事を続けながら幅広い職種と知識を深めたいなら「療養指導士」が適している可能性があります。自分の目指すキャリアや、確保できる学習時間に合わせて最適な資格を選びましょう。
心不全看護認定看護師のメリットと将来性
心不全看護認定看護師の資格を得ることは、看護師としての自信につながるだけでなく、キャリアの可能性を広げられます。スペシャリストとして得られるメリットを、次の視点から見ていきましょう。
- 専門的な知識やスキルの向上
- 心不全患者の増加による需要の高まり
- 管理職や教育担当へのキャリアパスの拡大
近年、心不全ケアの重要性は増しており、現場で頼られる存在として活躍できるだけでなく、後輩育成や病院経営にかかわれるようになります。
専門的な知識やスキルの向上
心不全看護認定看護師になるメリットは、根拠のある質の高いケアができるようになることです。資格取得の過程で、心臓の働きや薬の効果、患者さまの身体の状態を見極める力を学べます。
たとえば、息切れやむくみから悪化のサインをいち早く察知し、医師へ報告したり、患者さまに合ったケアをすぐに実践したりできるようになります。
心不全患者の増加による需要の高まり
心不全看護認定看護師は、今後さらに社会から求められ、活躍の場が広がる将来性のある資格です。先述したように、再発しやすい心不全と付き合いながら生活する患者さまが増え続けているためです。
病院のケアだけでなく、訪問看護ステーションで症状を管理したり、地域のクリニックと連携して再入院を防ぐ仕組みを作ったりといった役割が期待されています。働く場所の選択肢が増え、どこでも重宝される強みのある資格といえるでしょう。
管理職や教育担当へのキャリアパスの拡大
資格の取得で、現場でケアをするだけでなく、看護師としてのキャリアが広がります。
実際に、病棟の看護師に心不全のケアを教える教育担当に選ばれたり、再発防止のための生活指導を担う「心不全看護外来」を任されたり、管理職に昇進しやすくなったりします。
取得前に知っておきたいデメリット
心不全看護認定看護師の資格を取得するメリットがある一方で、挑戦する前に知っておくべき注意点もあります。
- 100万円以上の費用がかかる
- 岡山県にしか教育機関がない
- 病院によっては評価が限定的である
資格を取得するためには、費用がかかるうえ、教育機関が岡山県の川崎医療福祉大学のみのため、自宅からの通学が難しいといった高いハードルがあります。しかし、勤務先の支援制度や日本看護協会の「認定看護師教育課程奨学金」を活用することで負担を抑えることも可能です。
また、今の職場だけでなく転職市場で高評価を得られる側面もあるため、将来のキャリアを見据えて、慎重に準備を進めましょう。
心不全看護認定看護師に向いている人
次の特徴に当てはまる方は、心不全看護認定看護師に向いています。
- 心不全分野のケアに興味がある
- 慢性疾患の患者さま支援を学びたい
- 患者教育が得意である
患者さまの生活を支えることに喜びを感じる方に最適です。また、周囲を巻き込むリーダーシップを発揮したい方も、高いコミュニケーション能力を活かして活躍できるでしょう。
心不全看護認定看護師についてのよくある質問
心不全看護認定看護師の資格取得を目指す看護師からよく寄せられる疑問にお答えします。
Q1:心不全看護認定看護師は働きながら取得できますか?
フルタイムで夜勤もこなしながら通学するのは、実質的に困難です。教育機関では、平日の昼間に講義や実習がおこなわれるためです。
そのため、入学試験を受験する前に、看護師長や人事担当者へ、夜勤免除や「出張・研修扱い」での通学が可能であるかを相談しておくことをおすすめします。
Q2:認定看護師は2026年に終了するって本当ですか?
2026年に認定看護師の資格そのものがなくなるわけではありません。
これまでのA課程の教育制度が2026年度をもって終了し、特定行為の研修を組み込んだB課程へ完全に移行するという意味です。これから資格取得を目指す方は、新しい制度での受講となります。
関連記事:認定看護師制度はなくなるの?新制度への移行と資格を目指す人が知っておくべきこと
Q3:心不全看護認定看護師の教育機関は岡山県以外で増える予定はありますか?
今後は増える可能性がありますが、現在は限られています。
2025年時点では岡山県の1校のみですが、日本看護協会の公式ホームページで最新の開講状況をチェックしておきましょう。
関連記事:循環器看護師とは?仕事内容7つと給料、向いている人の特徴を紹介
心不全看護認定看護師はこれから重要性が高まる資格!
心不全看護認定看護師は、取得までのハードルは決して低くありません。しかし、高齢社会を迎え心不全パンデミックとも呼ばれる現代においては、病院から地域まであらゆる場面で必要とされる資格です。
「資格取得を全力で応援してくれる環境へ転職したい」「心不全看護のスキルを活かして、在宅医療で活躍したい」とお考えなら、まずは理想のキャリアを実現できる職場を見つけることが大切です。
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<参考サイト・文献>
【目次】認定看護師【B課程】都道府県別登録者数(日本地図版)|日本看護協会
認定看護師教育機関別の開講状況・定員数一覧(特定行為研修を組み込んでいる教育機関:B課程)認定看護師教育機関|日本看護協会
認定看護師教育課程(B課程)|川崎医療福祉大学看護実践・キャリアサポートセンター
令和8年度認定看護師教育課程(B課程)【心不全看護分野】募集要項|川崎医療福祉大学看護実践・キャリアサポートセンター
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