児童養護施設で働く看護師の仕事内容7つ!必要な資格と求人の探し方

「児童養護施設で看護師はどのように働いているのだろう?」「子どもにじっくりかかわれるような職場でスキルを活かしたい」
児童養護施設とは、養育者の病気、死別、子どもへの虐待などの理由から家庭での養育が難しくなった子どもが生活を送る施設です。ここで働く看護師の仕事は、子どもの健康を守るだけでなく、心のケアや生活のサポートなど多岐にわたります。
この記事では、児童養護施設の看護師としてのリアルな仕事内容や必要な資格、求人の探し方まで詳しくお伝えします。
児童養護施設の看護師として働くには特別な資格は必要ない
児童養護施設で看護師として働くには、看護師免許があれば特別な資格は必要ありません。
病院のような医療処置の機会は少ない傾向ですが、子どもの成長をサポートするうえで、身体的ケアだけでなく、精神的な健康サポートや発達段階に応じたアセスメントが求められます。
看護師資格のみで働けるものの、さまざまな知識やスキルが不可欠です。
児童養護施設で働く看護師の仕事内容7つ!
ここでは、児童養護施設で働く看護師の仕事内容を7つに絞り詳しく説明します。
- 日々の健康管理と生活支援
- 体調不良の応急処置と受診の付き添い
- 定期的な健康診断と予防接種の管理
- 服薬管理と副作用のチェック
- 感染症の対策とマニュアルの整備
- 児童指導員や保育士との連携
- 保護者や関係機関との連携
子どもたちが心身ともに健やかに成長できるようにサポートするためには、これらの仕事内容を知っておく必要があります。
日々の健康管理と生活支援
子どもたちが毎日元気に過ごせるように、健康状態を常に把握し、適切にサポートすることは、児童養護施設の看護師にとって基本的な仕事です。たとえば、次のようにかかわり子どもを支援します。
- 登園・登校前の体調確認
- 栄養バランスへの配慮
- 手洗いやうがいの指導
子どもたち一人ひとりの様子を細かく観察し、異変があれば早期に気づくことが重要です。健康的な生活習慣を身につけられるようにサポートすることも、看護師の役割です。
体調不良の応急処置と受診の付き添い
体調不良の応急処置と受診の付き添いは、子どもたちの安全を守るために欠かせない業務です。子どもは急に体調を崩したり、ケガをしたりするものです。
転んで擦り傷ができたときや、発熱・腹痛などの症状が出たときには、看護師が応急処置をおこない、必要があれば医療機関の受診に付き添います。
子どもたちが安心して医療を受けられるよう、不安を取り除き、説明をするのも看護師の役割です。
定期的な健康診断と予防接種の管理
定期的な健康診断と予防接種の管理は、子どもたちの病気を予防し、早期発見につなげるために重要です。
身体測定や視力・聴力検査などの健康診断の日程を管理し、実施できるようにスケジュールを調整します。また、麻疹や風疹などの予防接種のスケジュールを管理し、漏れなく接種を受けられるように手配します。
服薬管理と副作用のチェック
服薬管理と副作用のチェックは、持病を持つ子どもや薬を服用する子どもにとって重要な仕事です。薬を間違えて飲むと、効果がないばかりか、健康を害する恐れもあるからです。
具体的には、医師から処方された薬の種類や量、服用時間を正しく把握して、副作用がないか、子どもの様子を注意深く観察し、異変があればすぐに対応します。
子どもたちが安全に薬を服用できるよう、細心の注意を払わなければなりません。
感染症の対策とマニュアルの整備
集団生活を送る児童養護施設では、感染症が広がりやすい環境であるため、施設内の感染症の対策とマニュアルの整備は、子どもたちの健康を守るうえで不可欠な業務です。
とくに、インフルエンザや胃腸炎などが流行する時期には、手洗いやうがいの徹底、マスク着用、換気などの感染予防策を実施します。
また、感染症の発生に備えて対応マニュアルを作り、職員みんなで共有することで、感染拡大を最小限に抑え、子どもたちの健康を守ります。
児童指導員や保育士との連携
児童指導員や保育士との連携は、子どもたちの成長をさまざまな視点からサポートするために大切です。
子どもたちの健康状態や生活習慣の情報を、生活を共にしている児童指導員や保育士と共有します。ほかにも、次のような専門職が働いています。
- 児童指導員・保育士
- 家庭支援専門相談員
- 里親支援専門相談員
- 心理療法担当職員
- 栄養士
チームとして子どもたちを支えるため、日常的なコミュニケーションが欠かせません。
保護者や関係機関との連携
児童養護施設の子どもたちは、それぞれ複雑な家庭環境や背景があるため、保護者や関係機関と連携し、子どもたちの課題を理解したうえで、適切な支援をおこなうことが必要です。
病院や市区町村の役場、学校など外部の関係機関と連携し、子どもの福祉や医療について情報共有します。子どもたちが社会の一員として自立できるよう、あらゆる側面からサポートしているのです。
児童養護施設で働く看護師の1日の流れ
児童養護施設で働く看護師は日勤が中心です。具体的な1日の流れは、施設によって異なります。
時間 | 仕事内容 |
8:00 | 出勤 |
8:30 | 情報収集・保育士や児童指導員からの引き継ぎ |
9:00 | 健康チェック(子どもたちの体調を確認し、検温や観察)・服薬介助 |
10:00 | 健康相談・応急処置・予防接種の準備・通院準備と付き添い |
12:00 | 昼食の準備・食事介助・服薬介助 |
12:30 | 交代で休憩 |
13:30 | 午後の健康相談・応急処置 |
14:00 | 生活支援 |
15:00 | 児童指導員や保育士と情報共有 |
16:00 | 引き継ぎ |
17:00 | 退勤 |
オンコール体制がある施設では、夜間や休日の急な体調不良にも対応する場合があります。
児童養護施設の看護師と病院看護師の違い
児童養護施設の看護師と病院看護師は、どちらも看護師免許を持つ専門職ですが、働く場所や対象、業務内容に違いがあります。この違いを理解することが、自分に合った働き方を見つけるヒントになります。
項目 | 児童養護施設の看護師 | 病院看護師 |
対象 | 子ども(0〜18歳) | 患者さま(全年齢) |
主な業務 | 健康管理、生活支援、相談対応 | 医療処置、観察、記録 |
シフト体制 | 日勤中心、オンコールあり | おもに3交代・2交代制 |
医療処置の頻度 | 少なめ(緊急時や慢性管理) | 高い |
多職種との連携 | 指導員、心理士、保育士など | 医師、薬剤師、リハビリテーションのスタッフ |
児童養護施設の看護師は、医療行為の頻度は低いものの、子どもたちの生活全般にかかわり、長期的な視点で成長を支える役割を担います。
一方、病院看護師は、病気やケガの治療、回復を目的とした医療処置や観察がおもな業務です。
どちらもやりがいのある仕事ですが、看護師としての専門性をどのように活かしたいかによって、選ぶ道が変わってくるでしょう。
児童養護施設で働く看護師のやりがいとメリット
児童養護施設で働く看護師には、病院看護師とは異なるやりがいやメリットがあります。
- 子どもの笑顔に触れるやりがいを感じられる
- 長期的なかかわりで成長を見届けられる
- 医療行為よりも「人としてのかかわり」に集中できる
それぞれのやりがいやメリットを見ていきましょう。
子どもの笑顔に触れるやりがいを感じられる
子どもたちの笑顔を見られることは、児童養護施設の看護師にとって何よりのやりがいです。
子どもたちが安心して過ごせるように、日々の健康を支えることで、彼らの笑顔や成長を見届けられます。
体調を崩していた子どもが回復し、元気に走り回る姿を見たときや悩み事を打ち明けてくれた子が笑顔を取り戻したときなど、子どもたちの喜びが自分の喜びにつながります。
子どもたちの健やかな成長を間近で感じられることは、達成感をもたらします。
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長期的なかかわりで成長を見届けられる
長期的なかかわりで成長を見届けられることは、児童養護施設の看護師のメリットです。
こども家庭庁「児童養護施設入所児童等調査の概要」によると、入所している子どもの平均年齢は11.8才であり、入所している平均期間は5.2年とされています。
つまり、病院では限られた期間のかかわりとなることが多い一方で、児童養護施設では数年単位で子どもたちと接するため、成長段階に応じたサポートをおこなう必要があるのです。
医療行為よりも「人としてのかかわり」に集中できる
医療行為よりも「人としてのかかわり」に集中できることは、児童養護施設の看護師の魅力です。
病院では、医療処置や記録業務に多くの時間を費やしますが、児童養護施設では、子どもたちとのコミュニケーションや心のケアに重点を置けます。
たとえば、話をじっくり聞いたり、一緒に遊んだりするなかで、心の状態を把握し、寄り添います。
医療技術を磨くことよりも、子ども一人ひとりの個性を尊重し、人間性を育む支援に力を注ぎたい看護師にとって、理想的な環境といえるでしょう。
児童養護施設で働く看護師の厳しさとデメリット
児童養護施設で働く看護師には、やりがいやメリットがある一方で、厳しさやデメリットも存在します。
- 虐待や家庭環境の複雑な背景に心を痛めることもある
- 医療スキルが低下する可能性がある
- 多職種との連携や立ち回りに戸惑う場面もある
子どもたちの複雑な背景に向き合うことや、病院とは異なる環境での働き方に戸惑うかもしれません。それぞれのデメリットを事前に把握して、理想と現実とのギャップに悩まないようにしましょう。
虐待や家庭環境の複雑な背景に心を痛めることもある
虐待や家庭環境の複雑な背景に心を痛めることは、児童養護施設の看護師が直面する厳しい現実です。実際に、養育に問題が発生する理由は次の表のとおりです。
養育に問題が発生する理由 | 割合 |
母の放任・怠惰 | 16.4% |
母の虐待・酷使 | 15.0% |
母の精神疾患等 | 14.5% |
父の虐待・酷使 | 12.5% |
その他 | 9.0% |
実際に、虐待の痕跡や親との関係に悩む子どもの姿を見ると、胸が締めつけられる思いを抱くこともあるでしょう。
子どもたちの抱える心の傷に寄り添うことは重要ですが、看護師の精神的な負担も大きくなるため、感情のコントロールやストレスマネジメントが求められます。
医療スキルが低下する可能性がある
病院より医療処置をおこなう機会は少ないため、看護技術が衰える恐れがある点は、児童養護施設で働く看護師のデメリットといえます。
とくに、点滴やカテーテル挿入などをおこなう頻度が減るため、スキルを維持しにくいかもしれません。
自主的に研修に参加したり、学習を積んだりして学び続ける姿勢が大切です。
多職種との連携や立ち回りに戸惑う場面もある
児童養護施設では、児童指導員や保育士、心理療法担当職員など多様な専門職が働いていたり、ときには行政機関のスタッフと情報共有したりします。
医療的な視点と福祉的な視点の違いから、意見の相違が生じることもあるでしょう。チームの一員として、自分の役割を明確にし、積極的に関わることが重要です。
児童養護施設の看護師に向いている人
児童養護施設の看護師は、一般的な病院看護師とは異なる資質が求められます。子どもたち一人ひとりに寄り添い、長期的な視点で成長を支えたいと考える方には、とくに向いているでしょう。
- 子どもとじっくり向き合いたい人
- 感情のコントロールができる人
- チームで協力して働ける人
- 医療だけではなく生活面のサポートにも関心がある人
ただし、これらの特徴に当てはまらない人でも、働いていくなかで適性を磨けます。入職後の研修や経験を通じて、子どもたちの成長を支える喜びを見つけ、資質を育むことも可能です。
子どもとじっくり向き合いたい人
子どもとじっくり向き合いたい人は、児童養護施設の看護師に向いています。
病院では、多くの患者さまを短時間で対応する必要があるため、一人ひとりの子どもに時間をかけてかかわることが難しい場合があります。
しかし、児童養護施設では、子どもたちの日常生活に深く入り込み、心身の健康を長期的にサポートできるでしょう。
感情のコントロールができる人
感情のコントロールができる人は、児童養護施設の看護師として活躍できるでしょう。
子どもたちは、複雑な家庭環境や心の問題を抱えていることがあります。たとえば、子どもが感情的に不安定になったときや、反発的な態度を取るときでも、冷静に対応し言葉をかけなければなりません。
自分の感情に流されず、子どもの状況を客観的に判断し、最善のサポートを提供できる能力が必要です。
チームで協力して働ける人
施設では、児童指導員や保育士など、さまざまな専門職が連携して子どもたちを支えているため、チームで協力して働ける人は、児童養護施設の看護師に適しています。
自分の意見を伝えつつ、相手の意見も尊重し、協力して子どもたちの成長をサポートできる人が求められます。
医療だけではなく生活面のサポートにも関心がある人
病院看護師がおもに医療行為をおこなうのに対し、児童養護施設の看護師は、生活全般にわたって支援するため、医療だけではなく生活面のサポートに関心がある人は向いています。
食事の指導や生活習慣のアドバイス、心のケアなど、健康を土台とした生活の質向上に関心がある人は、その能力を存分に発揮できるでしょう。
児童養護施設の看護師の求人を探すコツ
児童養護施設の看護師の求人は、病院の求人とは異なる特徴があります。
- ハローワークや地域の福祉人材センターを活用する
- 「児童福祉施設」「社会福祉法人」も視野に入れて検索する
- 求人サイトや転職サイトを活用する
これらのコツを押さえて、効果的に求人を探しましょう。
ハローワークや地域の福祉人材センターを活用する
ハローワークや地域の福祉人材センターを活用することは、児童養護施設の求人を探すうえで有効な方法です。
これらの機関は、地域に密着した求人情報を多く扱っており、特定の地域の児童養護施設の求人情報や、施設に関する詳細な情報を提供している場合があります。
担当者に相談することで、非公開の求人情報や施設の内情について教えてもらえることもあります。
「児童福祉施設」「社会福祉法人」も視野に入れて検索する
「児童福祉施設」「社会福祉法人」といったキーワードも視野に入れて求人検索すると、より多くの求人を見つけられる可能性があります。
児童養護施設は、児童福祉施設のひとつであり、多くが社会福祉法人によって運営されているからです。求人の候補が増えると、選択肢を広げ、自分に合った施設を見つけやすくなります。
求人サイトや転職サイトを活用する
求人サイトや転職サイトを活用することも、児童養護施設の看護師の求人を探すうえで効果的です。求人情報が網羅的に掲載されており、希望条件に合わせて絞り込み検索できるからです。
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児童養護施設の看護師に関するQ&A
児童養護施設の看護師についての疑問は多いでしょう。ここでは、よくある質問とその回答をまとめました
Q1:児童養護施設は新卒看護師でも働けますか?
新卒看護師でも児童養護施設で働くことは可能です。実際に、新卒看護師を受け入れている施設もあります。
しかし、病院看護師とは異なり、子どもたちとのかかわり方や生活支援の知識を学ばなければなりません。そのため、新卒で働く場合は、教育体制が整っている施設を選ぶと良いでしょう。
Q2:児童養護施設には何人の看護師がいますか?
児童養護施設に配置される看護師の人数は、施設の規模や入所している子どもの人数によって異なります。
法律で定められた配置基準はありませんが、一般的には1名から数名程度のみです。そのため、単独で判断を求められる場面もあるため、主体性が求められます。
Q3:児童養護施設の看護師の給料はいくらですか?
厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、看護師の平均年収は519万7,000円です。
児童養護施設の看護師の給料は、施設の規模や運営形態、経験年数などによって異なりますが、一般的には、病院看護師と比較してやや低い傾向にあるといわれています。
しかし、夜勤が少ない分、ワークライフバランスを整えやすいでしょう。求人情報を確認する際には、給与だけでなく、福利厚生や手当なども評価することが重要です。
児童養護施設の看護師は多様な役割を担う専門職!
児童養護施設の看護師は、子どもたちの心身の健康を守り、健やかな成長を支えるうえで欠かせない存在です。
病院看護師とは異なり、医療処置の頻度は少ないものの、子どもたちとじっくり向き合い、長期的な視点で彼らの人生に寄り添えることは、この仕事ならではのやりがいとなるでしょう。
複雑な背景を持つ子どもたちとかかわるなかで、心を痛めることもあるかもしれません。
しかし、子どもたちの笑顔や成長を間近で見届けられる喜びは、何物にも代えがたいものです。ぜひ、この記事で紹介した求人探しのコツを参考に、あなたにぴったりの職場を見つけてください。
<参考サイト・文献>

「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。