小児訪問看護とは?対象疾患と子どもの特徴、制度を解説

「小児訪問看護ってなに?」「小児訪問看護ではどんなケアをしているの?」
小児訪問看護は、子どもやご家族が医療的ケアを受けながら在宅で安心・安全に過ごせるように、支援するという大切な役割を担っています。
この記事では、小児訪問看護の対象疾患や実際に提供しているサービス内容、小児訪問看護に向いている看護師の特徴を解説します。小児訪問看護ではどのような支援をおこなっているのかイメージでき、現場で働くイメージも掴めるようになるでしょう。
小児訪問看護とは?
小児訪問看護とは「小児の利用者さまが、在宅で医療的なケアを受けながら安心して療養できるように、自宅でのケアや日常生活のサポートをする訪問看護」のことです。ここでは、概要や小児在宅看護との違い、需要が高まる背景をご紹介します。
小児訪問看護の概要
次のような状況にある新生児から18歳未満の方が、小児訪問看護の対象です。
- 医療的ケアが必要である
- 慢性疾患や障害がある
- 先天性疾患や神経疾患がある
主治医と連携して、子どもやそのご家族が生活の質を向上できるように訪問看護師の方は支えています。
小児在宅看護との違い
小児訪問看護と小児在宅看護は、対象とする範囲が異なります。
小児在宅看護は、子どもの在宅生活を支える看護活動全般を指す広い言葉です。一方、小児訪問看護は、看護師が自宅を訪問して健康状態の観察や医療的ケア、ご家族への指導などをおこなうサービスのことです。
つまり、小児在宅看護という枠組みに、その手段として小児訪問看護が含まれている関係です。日本在宅看護学会も、在宅看護を「病気や障害、加齢による暮らしにくさを抱える人が、自分の居場所で自分らしく暮らすことを支援する看護活動全般」と定義し、訪問看護はその目的を果たすための手段と位置づけています。
小児訪問看護の需要が高まる背景
小児訪問看護ステーションを利用する0~14歳の数は、2011年の5,700人から2019年には1万8,777人と約3倍に増加しています。
その背景には、低出生体重児の増加があります。出生数に占める割合は1980年の5.2%から2017年には9.4%に上昇し、医療の進展により生き延びられる新生児が増えました。ただし、退院後も医療的ケアやリハビリテーションが必要なケースが増えているのが現状です。
また、呼吸器管理や経管栄養など24時間ケアが必要な重症心身障害児・医療的ケア児も増加しており、ご家族の負担軽減のために訪問看護が選ばれています。さらに、小児がん治療の進歩により、点滴や呼吸器管理が必要な状態でも自宅療養が可能になったことも、需要拡大の要因です。
小児訪問看護の対象疾患と対象となる子どもの特徴
小児訪問看護の対象疾患や対象となる子どもの特徴をご紹介します。
医療依存度が高い子ども
小児訪問看護の子どもは、医療機器を使っている場合が多いです。下記の表は、あるクリニックの「医療機器を使用している子どもの割合」を調査した結果です。
| 医療機器 | 割合 |
| PCAポンプ | 2.2% |
| 自己導尿 | 3.2% |
| 中心静脈ライン管理 | 6.0% |
| 気管切開 | 47.1% |
| 人工呼吸器 | 53.5% |
| 在宅酸素療法 | 75.1% |
| 経管栄養 | 78.1% |
小児訪問看護では、子どものケアのほかに、これらの医療機器の管理や使用方法をご家族に説明して自宅で安全に生活できるようにサポートします。
成長にともない病態が変化する子ども
病気や障害を持った子どもは、成長にともない身体の状況が変化することがあります。
たとえば、子どもが成長するにつれて呼吸器や消化器の機能が変化したり、重症心身障害児は脊柱管側弯症や嚥下障害などの二次障害を併発したりする可能性があります。
そのため、子どもの成長に合わせて医療的ケアや支援の内容を見直すことが大切です。
コミュニケーションに配慮が必要な子ども
小児訪問看護でかかわる子どもは年齢や発達の状況により、言葉でのコミュニケーションが難しいこともあります。
たとえば、言葉の発達が遅れていたり、呼吸器をつけていたりする場合は「きつい」「苦しい」などの訴えを、子どもがご家族にスムーズに伝えられない恐れがあります。
訪問看護師は、表情やしぐさなどから子どもの状態をチェックして、異常の早期発見に努めたり、子どものニーズに応えたりすることが重要です。
24時間体制でのケアが必要な子ども
何らかの疾患や障害がある子どもは24時間体制でのケアが欠かせないため、ご家族だけでのケアや介護では負担が大きくなりやすいです。
たとえば、夜中のおむつ交換や、吸引をしなければなりません。ご家族のなかには、子どものことが心配で熟睡できない方もいるでしょう。
訪問看護師は、ケアをしたり悩みを聞いたりすることで、ご家族が安心してケアを続けられる環境を提供することが大事です。
発達障害を含む成長・発達支援が必要な子ども
小児訪問看護では、子どもの成長もサポートします。具体的には、発達段階に応じたリハビリテーションや飲み込みの訓練、ものごとを理解するための訓練など成長を促すための支援です。
ただし、発達障害があるからといって、必ずしも小児訪問看護の対象になるわけではありません。医療的ケアを伴わない場合は、保育所や学校、地域の療育機関など別の支援につながるケースも多くあります。小児訪問看護が関わるのは、医療的なケアや健康管理を必要とする子どもです。
小児訪問看護ステーションの6つのサービス内容
小児訪問看護ステーションのサービスは、以下のとおりです。
- 健康状態の観察
- 医療的なケア
- 発達支援・リハビリテーション
- ご家族支援
- 多職種との連携
- 在宅での看取り
それぞれのサービス内容を知って、小児訪問看護に求められるスキルや知識を把握しておきましょう。
健康状態の観察
体温や脈拍などを測定し、子どもの健康状態を観察します。発熱がみられたり活気がなかったりする場合は、主治医に報告して処置をしたり、医療機関に受診しなければなりません。
訪問看護師は、顔色や皮膚の状態、食欲などから子どもの全身状態の観察をおこない、小さな変化を見逃さないことが重要です。
医療的なケア
小児訪問看護では、子どもに以下のような医療的ケアも実施します。
- 人工呼吸器の管理
- 吸引の実施
- 創傷ケア
- 胃ろうのケア
- 点滴の管理
- 酸素の投与
- 服薬の管理
日常生活のケアと同じように、訪問看護師は人工呼吸器の管理や吸引の方法をご家族に説明したり指導したりしなければなりません。
ただし、医療的なケアはご家族の負担は大きく「私に吸引はできるのかな?」「私がミスをして子どもに万が一のことがあったらどうしよう…」など不安な気持ちを抱きやすいです。 そのため、ご家族のメンタル面のフォローをおこなうことも訪問看護師の役割といえます。
発達支援・リハビリテーション
小児訪問看護では、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などのリハビリテーションスタッフと連携して子どもの成長をサポートします。
具体的なリハビリテーションは、以下のとおりです。
- 基本動作(立つ・歩く・起き上がる)の練習
- 歩行訓練
- 読み書きの練習
- 呼吸訓練
- 非言語コミュニケーションの練習
訪問看護師も、ケアの中で発達段階に応じた声かけや遊びを取り入れ、子どもの発達を促す視点を持つことが大切です。ときには、車椅子や歩行器などの社会福祉用具の利用をアドバイスして、子どもが生活しやすいように助言することも小児訪問看護の役割です。
ご家族支援
育児のアドバイスや精神的なサポートをご家族におこなうことも大事です。
実際には、子どもの発達段階に応じた育児方法の指導や日常生活でのケアの工夫などをアドバイスします。ご家族が不安やストレスを強く感じている場合は臨床心理士やカウンセラーなどの専門家にケアを依頼することもあります。
また、ご家族支援の一環として、レスパイト(一定時間、子どもを預かるサービス)を提案することも少なくありません。きょうだい児の行事への参加や、ご家族の通院・休息が必要なときなど、レスパイトを利用することでご家族が一息つく時間を確保でき、在宅でのケアを続けられるようになります。
多職種との連携
小児訪問看護の子どもは、日常的に医療を必要としながら、成長に合わせた就園や就学などの社会活動があります。
具体的には、医療(病院や訪問診療など)・福祉(放課後等デイサービスや相談支援事業所など)・保育(保育所や幼稚園など)・教育(学校や特別支援学校など)・保健(保健センターや保健所など)などの多職種が子どもの生活を支えます。
しかし、小児期にはコーディネーターが不在なことも多く、地域によって社会資源も異なるため、ご家族が主体的に社会資源を探し、調整をする状況もあります。
そのため小児訪問看護師は、多職種との情報交換やカンファレンスを通して、子どもとご家族のニーズに沿った生活が実現できるよう、サポートをしていきます。
在宅での看取り
自宅で子どもが最期を迎えられるよう、ご家族と協力しながら看取りのケアをおこないます。
子どもとご家族が安心して看取りに臨めるように、メンタル面のサポートをしながら支援します。具体的には、ご家族に看取りの知識や心構えを伝え、不安やストレスを軽減できるような情報提供が大切です。
また、医療スタッフとご家族が繰り返し話し合い、より良い最期を迎えられるように調整することも小児訪問看護の役割です。
小児訪問看護で知っておきたい制度と医療保険
小児訪問看護に関わる制度は、医療保険・介護保険の算定ルールと、医療的ケア児を支援する法律の2つを押さえておきましょう。
小児訪問看護は、原則として医療保険の対象であり、訪問看護師は両保険の算定ルールを理解しておく必要があります。また、2021年「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」により、人工呼吸器や経管栄養などのケアを必要とする子どもへの支援体制が強化されました。
訪問看護師は、医療的ケアの提供に加え、医療的ケア児支援センターや医療費助成制度などの情報をご家族へ案内する役割も担います。制度の詳細は自治体や医療機関で異なるため、不明点は主治医やソーシャルワーカーに確認し、ご家族の不安を一緒に解消する姿勢が大切です。
小児訪問看護が難しいと言われる理由
小児訪問看護が難しいと言われる理由は、子どもの状態を判断しづらいことと、家族への指導が難しいことの2つに大別されます。
乳児や発語が難しい子どもは症状を言葉で伝えられないため、看護師は表情やしぐさのわずかな変化から異常を見逃さず判断しなければなりません。判断を誤れば、急変への対応が遅れるリスクも伴います。
さらに、医療的ケアの手技をご家族に指導する役割もありますが、教えたつもりでもご家族が実践できず事故につながる恐れもあります。医療スキルだけでなく、ご家族の不安に寄り添いながら根気強く指導するコミュニケーション力も求められる分野です。
小児訪問看護に向いている看護師の特徴
ここでは、小児訪問看護に向いている方の特徴を紹介します。
- 小児看護に興味がある
- 子どものニーズに合わせてケアを提供できる
- 子どもの成長・発達の支援ができる
- 子どもとご家族との信頼関係を築くことができる
- チームで連携してケアができる
それぞれの特徴をみていきましょう。
小児看護に興味がある
子どもの成長や発達に関心がある方は小児訪問看護に向いています。
というのも、小児看護への熱意が、適切なケアを提供するための原動力となるためです。小児訪問看護では健康の状態だけではなく、成長過程にも興味を持ち、積極的にかかわる姿勢が不可欠です。
また、子どもへの愛情と関心の深さが、療養生活を支えていくなかでの信頼関係において必要であり、ご家族の不安の軽減にもつながります。
子どものニーズに合わせてケアを提供できる
小児訪問看護では、子ども一人ひとりのニーズを理解し、それに応じた柔軟なケアを提供する能力が求められます。
医療的な課題に合わせて支援をおこない、子どもがストレスなく過ごせるよう努める姿勢が不可欠です。
そのため、ニーズに寄り添ったアセスメントをおこない、子どもとご家族にとって良い環境を提供できる方は小児訪問看護に向いているといえます。
子どもの成長・発達の支援ができる
小児訪問看護では、子どもの成長・発達に応じたケアをおこない、健康的に成長できるよう支援しなければなりません。
子どもの発達段階を理解し、リハビリテーションや日常生活のサポートができる看護師は、小児訪問看護の仕事に適しているでしょう。
子どもとご家族との信頼関係を築くことができる
小児訪問看護では、プライベートな場所でケアをおこなうため、子どもとそのご家族との信頼関係が大事です。
とくに、長期的なケアが必要な場合は一緒に過ごす時間が多くなります。
看護師を頼りにできることで、子どもやそのご家族は精神的な負担の軽減につながります。一方で、信頼関係が築けなければ、訪問看護の時間がストレスになるかもしれません。
そのため、子どもやご家族と信頼関係を築くことができる看護師は小児訪問看護で活躍できるでしょう。
チームで連携してケアができる
小児訪問看護では医師や理学療法士、作業療法士など多くの専門職がチームでケアをおこないます。
それぞれの職種が連携しながら、専門性を活かすことで、質の高いケアを提供することが可能です。また、子どもの状態をチームで共有して迅速に対応することで、さまざまな健康問題に柔軟に対応できます。
小児訪問看護に関するQ&A
ここでは、小児訪問看護に関する質問に回答します。
Q1.小児訪問看護は医療保険が適用されますか?
原則として医療保険が適用されます。
利用には主治医の訪問看護指示書が必要なため、指示書の内容を確認し、適切な保険区分でサービスを提供できるようにしておきましょう。保険区分の判断に迷う際は主治医やケアマネジャーと連携して確認することが大切です。
Q2.小児訪問看護の回数は週にどのくらいですか?
医療保険では、原則週3日までです。
ただし、主治医の診察により「特別訪問看護指示書」が出された場合は、週4日以上の訪問が可能になります。利用者さまの状態に応じて、主治医やご家族と相談しながら、訪問頻度を調整していくことが求められます。
Q3.小児訪問看護の料金はどのくらいですか?
自己負担額は年齢や加入保険、自治体の医療費助成制度(公費負担)によって異なります。
訪問看護師が料金を算定するわけではありませんが、ご家族から料金について質問されることもあるため、自治体ごとに制度が異なる点は把握しておくと安心です。
Q4.小児訪問看護は研修を受けてから働けますか?
多くの訪問看護ステーションでは、研修や同行訪問の期間を設けています。
人工呼吸器の管理や経管栄養などの医療的ケアは、先輩看護師との同行訪問を通じて実践的に学ぶのが一般的です。小児分野に不安がある場合は、研修体制が整った職場を選ぶことをおすすめします。
さらに専門性を高めたい方は、小児領域の認定看護師資格を取得するという選択肢もあります。
関連記事:小児の認定看護師とは?2つの種類と資格の取得方法【2026年制度対応】
小児訪問看護の対象疾患や制度を理解して自分に合った職場を見つけよう
小児訪問看護は、医療的ケアを必要とする子どもが家庭で安心して過ごせるように支援するサービスです。
医療機器を使用する場合や慢性疾患を持つ子どもが対象であり、サービスの提供をおこなうことで生活の質が向上することを目指しています。
医療の進歩により小児訪問看護の需要が高まっていることから、その役割はますます重要になっています。
医療的ケアだけでなく、ご家族への心理的サポートや日常生活のケアの指導をおこない、ご家族の負担軽減に貢献することが小児訪問看護の重要な役割です。
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参考サイト・文献
○医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律|厚生労働省
ナスキャリナビ 編集部 「ナスキャリナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「ナスキャリ」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。
