看護師の役職とは?役職一覧と給与事情、役職に就く3つの基準を解説

看護師のキャリアパスは多様で、専門性を深める道もあれば、管理職として組織運営に携わる道もあります。
役職に就くことは、仕事の幅を広げ、責任とやりがいを感じる機会を増やします。
看護師の方のなかには「役職ってどんな種類があるの?」「管理職に昇格するにはどうすればいいの?」といった疑問を持つ方もいるでしょう。
とくに、将来管理職を目指したりキャリアチェンジを考えたりする方は、このような疑問を感じやすいのではないでしょうか。
この記事では、看護師の役職の一覧や役割、昇格する基準などを詳しく解説します。キャリアアップを目指す看護師の方の疑問や悩みを解決できるため、ぜひ参考にしてください。
看護師の役職とは?
看護師の役職は、病院や施設の規模、種類、組織体制によって異なります。また、役職名は施設によって違う場合があるため、転職時には注意が必要です。ここでは、看護師のおもな役職と、なぜ職場に管理職が必要であるのか、その理由を具体的に解説します。
看護師の役職一覧
看護師のおもな役職は、次のとおりです。
- 看護主任
- 看護師長
- 看護部長
大規模な病院では、これらの役職の間に副看護師長や副看護部長といった役職が設けられている場合があります。看護主任を副看護師長と呼ぶケースもあります。
これらの役職をおく目的は、上位役職の補佐や業務分担などです。それぞれの役職は、組織のなかで異なる役割を担い、看護サービスの質向上に貢献しています。
看護師に管理職が必要な理由
看護師の方の職場に管理職が必要な理由は、次のような役割を担うためです。
- 現場の看護師をまとめる:チームワークを促進し業務効率を高める
- 病院の方針を現場に伝える:組織全体の目標と現場の活動を一致させる
- 現場の意見を経営陣に上げる:現場の課題や改善点を吸い上げ組織運営に反映させる
管理職がいることで、現場の看護師の方は安心して業務に集中でき、その結果として患者さまは質の高いケアを受けられます。また、組織全体としても、より効果的な運営ができるでしょう。
看護師の役職別の役割
各役職には、責任範囲と役割が定められています。ここでは、看護主任や看護師長、看護部長の役割と仕事内容を理解することで、キャリアアップの目標を立てやすくなるでしょう。
看護主任の役割と仕事内容
看護主任の役割は、現場の看護師と看護師長との橋渡し役として、日々の看護業務が円滑に進むようサポートすることです。実際には、次の業務を通して、質の高いケアの提供と円滑な病棟運営、働きやすい職場環境の実現に貢献しています。
- 看護師の指導:新人看護師の育成や経験のある看護師へのスキルアップ支援する
- 物品管理:物品の補充や管理をおこない業務がスムーズに進むようにサポートする
- 看護記録の確認:適切に記録できているかチェックする
- 現場の把握と報告:看護師の状況や患者さまの状態を把握し看護師長に報告する
このように、看護主任の方は現場と管理職をつなぐ要として、業務に取り組んでいます。
看護師長の役割と仕事内容
看護師長の役割は、病棟や外来などそれぞれの部門の責任者として、看護サービスの質向上とスタッフ看護師の育成に責任を持つことです。
具体的には、病棟の看護体制の管理や看護師の教育・評価、患者さまへの看護サービスの質管理などです。
看護師長は、現場の看護師と経営陣(看護部長や病院長などの経営陣)をつないでいます。現場の状況を把握し、経営陣に報告することで、病院の運営に現場の視点を反映できます。
さらに、看護師長の役割や仕事内容についてより詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてください。
関連記事:看護師長の役割と求められる資質は?身につけ方やめざす方法について解説
看護部長の役割
看護部長は、病院の看護部門の最高責任者として、看護部の運営と管理を担当します。具体的には、次の業務を通して、質の高い看護提供できるように体制を作ったり、病院経営に貢献したりすることを目指します。
- 看護部の方針策定:病院や施設の理念をもとに看護部の方針を策定する
- 看護師の採用と育成:優秀な人材を確保する
- 病院経営への参画:経営会議に参加して看護部の立場から意見を伝える
- 他部署との連携:他部署との連携を強化して病院の運営を円滑に進める
看護部長のポジションには、病院全体の経営に深くかかわり、看護の専門知識と経営的な視点を持ったリーダーシップが求められます。

看護師の役職の給料
看護師の場合、昇格すると責任の重さが増す分、給料も上がります。
- 看護主任の給料
- 看護師長の給料
- 看護部長の給料
それぞれの役職の給料について紹介します。
看護主任の給料
日本看護協会の「2021年看護職員実態調査」の調査によると、看護主任の方の給料は43万4,895円(中間管理職・フルタイム・平均税込給与総額)です。
スタッフ看護師は35万6,163円であるため、その差は7万8,732円です。スタッフ看護師の方と比べて、主任看護師に昇格すると、役職手当がついたり、基本給が上がったりするため、この差になります。
看護師長の給料
日本看護協会の「2021年看護職員実態調査」の調査によると、看護師長の給料は43万4,895円(中間管理職・フルタイム・平均税込給与総額)です。
しかし、看護師長が含まれる中間管理職には副看護師長や看護主任も含まれているため、実際の看護師長と主任看護師の給料差はもう少し大きいでしょう。
看護部長の給料
日本看護協会の「2021年看護職員実態調査」の調査によると、看護部長の給料は48万484円(管理職・フルタイム・平均税込給与総額)です。
ただし、これはあくまで平均値であり、病院の規模や種類、地域によって大きく異なります。
病院の規模や条件によっては、年収1,000万円を超える場合もあります。さらに、看護部長の給料について詳しく知りたい場合は、下記の記事を読んでみてください。
関連記事:看護部長は年収1,000万円超えも?訪問看護ステーション転職で役立つ経験を解説
看護師が役職に昇格する3つの基準
看護師が役職に昇格するための基準は、病院によって異なります。年功序列の要素が強い職場もあれば、実力主義の職場もあります。しかし、一般的に重視される要素は共通しており、それらを意識することで昇格する可能性を高められるでしょう。
- クリニカルラダーでの評価
- 所属している上司からの推薦
- 昇格に必要な資格の保有
ここでは、昇格を左右する基準を詳しく解説します。
クリニカルラダーでの評価
クリニカルラダーは、看護師の方の能力を段階的に評価し、個々の成長とキャリア開発を支援することを目的とした制度です。クリニカルラダーで評価されるほど、昇格やキャリアアップの可能性が高まります。
たえば、レベルIII以上であれば看護主任への昇格候補となる、レベルIV以上であれば看護師長への昇格候補となる、といった基準が設けられている場合があります。
また、昇格試験や面接においても、クリニカルラダーの評価をもとにする場合があります。
クリニカルラダーで高評価を得るためには、日々の業務を着実にこなし、自己研鑽を続けることが大切です。研修への積極的な参加や学会発表、論文執筆なども評価の高さにつながるでしょう。
所属している上司からの推薦
看護師が役職に昇格するためには、上司からの推薦が重要です。日頃の仕事ぶりや能力が評価されているかどうかがポイントになります。
上司は、あなたの仕事ぶりを間近で見ています。責任感や協調性、リーダーシップ、コミュニケーション能力など、管理職として必要な資質を備えているかどうか評価しています。上司からの推薦を得るためには、次の点を意識しましょう。
- 日々の業務を着実にこなす
- 組織への貢献意欲を示す
- 研修や勉強会に積極的に参加する
- スタッフ看護師との良好なコミュニケーションを心がける
業務改善の提案や、現場の課題解決に取り組むなど組織への貢献意欲を示すことも効果的です。さらに、自身のキャリアプランや目標を上司に伝え、アドバイスを求めることで評価が高まり、昇格できるきっかけになるでしょう。
昇格に必要な資格の保有
次のように昇格に必要な資格の保有することも、主任看護師や看護師長になるために有利に働くかもしれません。
- 認定看護師
- 専門看護師
- 認定看護管理者
これらの資格は、特定の分野における高度な知識やスキルを証明するものであるため、昇格に有利に働くかもしれません。
ただし、資格の取得には、一定の経験年数や研修の受講などの要件を満たす必要があるため、事前にリサーチしたうえで挑戦してみてください。
看護師の役職に向いている人の特徴
看護師の方が役職に就くには、向き不向きがあります。管理職は、現場の看護とは異なるスキルや資質が求められるためです。ここでは、役職に向いている人の特徴を3つ紹介します。
- リーダーシップを発揮できる
- 臨機応変に対応できる
- スタッフ看護師からの信頼が厚い
これらの特徴を備えているか自己分析することは、キャリアプランを考えるうえで重要です。
リーダーシップを発揮できる
看護師の管理職にはリーダーシップが不可欠であり、この能力がある方が管理職に向いています。
というのも、看護師の管理職は多職種とコミュニケーションを取り、他部門と連携するなど、あらゆる場面で調整したうえで意見をまとめなければならないためです。
また、適切にフィードバックする能力も重要です。リーダーシップを発揮できる人は、周囲の看護師から信頼され、協力を得やすい傾向があります。
臨機応変に対応できる
看護現場では次のように予期せぬ事態が起こるため、看護師の管理職には臨機応変に対応できる人が向いています。
- 患者さまの容態急変
- 医療機器の故障
- 看護師の欠勤
計画通りに進まない状況でも、優先順位をつけて柔軟に対応することで、現場の混乱を最小限にできるでしょう。
スタッフ看護師からの信頼が厚い
スタッフ看護師からの信頼は、管理職にとって不可欠です。
信頼関係があることで、スムーズに業務を進められチームのパフォーマンスも向上するためです。
信頼を得るためには、日頃から誠実な態度で接し、公平な判断を心がけなければなりません。
また、スタッフ看護師の意見を尊重し、困っているときには親身になって相談に乗ることで、信頼関係を築けるでしょう。
看護師の役職に関するよくある質問
ここでは、看護師の役職に関するよくある質問に回答します。
Q1:看護師が役職に就くメリットは?
看護師が役職に就くメリットは、次のように多岐に渡ります。
- 給料がアップする
- 仕事の幅が広がる
- やりがいを感じる
- 夜勤勤務が免除になる
- キャリアアップを目指せる
- 自己成長につながる
このように、看護師の方が役職に就くことは収入面だけでなく、仕事のやりがいやキャリアアップ、自己成長などさまざまなメリットがあります。
ただし、責任の重さを感じる場面や、マネジメント能力が不十分であると降格するなど、デメリットもあります。
そのため、役職に就いてどのようなことを実現したいのか明らかにしたうえで、昇格を目指しましょう。
Q2:役職のない看護師の場合は役職の欄になんてかけばいいの?
履歴書や職務経歴書などで役職の欄がある場合、役職がないスタッフ看護師の方は「看護師」と記載すれば問題ないでしょう。
看護師が役職に就けないときは転職することも検討しよう
看護師の役職はおもに看護主任や看護師長、看護部長です。
これらの職に就き役割を果たすことで、現場の看護師は安心して業務に集中できるため、結果として患者さまへの質の高いケアにつながります。また、効果的な運営が可能になるでしょう。
ただし、看護師の役職に昇格する基準は病院によって異なります。昇格の機会が限られている場合、現在の職場で役職に就くのが難しいと感じている看護師の方はいませんか。
この場合は、転職を検討することもひとつの手段です。ほかの病院や施設では、あなたの経験や能力を高く評価してくれる可能性があります。なかには、管理職候補の求人もあるでしょう。
転職を検討する際には、自身のキャリアプランや希望条件を明確にし、しっかりと情報収集をすることが大切です。
<参考サイト・文献>

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