看護師と看護士の違いは?看護職の4種類や正しい呼び名を詳しく解説
「看護師と看護士の違いは?」「看護師と看護士、正しい呼び方はどちらか?」
これから看護師を目指す方は、このように考えたことがあるのではないでしょうか。
今回はそのような方のために「看護師と看護士の違い」や「看護職の種類や詳細」などを解説します。
この記事の後半では呼び方に関するよくある質問にも答えており、疑問が解決できる内容になっていますので、ぜひ最後までご覧ください。
看護師と看護士の違いは?
「看護師」とは、国家資格を持ち医師の診療の補助や、患者さまの身の回りの世話をおこなう専門職です。
これまで「看護婦」や「看護士」と呼ばれてきましたが、現在は「看護師」に名称が統一されています。まずは、看護師の名称について解説します。
- 看護「師」と看護「士」の漢字の違い
- 看護師と看護士の役割に違いはない
- 看護師と看護士の業務内容に違いはない
それぞれ、みていきましょう。
看護「師」と看護「士」の漢字の違い
「師」は、医師や教師をはじめ、専門的な知識や技術を持つ職業に使われる漢字です。
また「士」は「特別な資格を持つ人」「技術を身につけた人」などをはじめ以下の意味があります。
- 男性
- 成人した男子
- 学識・徳行のある男子
- 特別な資格を身につけた人
- 特別な技術を身につけた人
「士」には男性という意味もふくまれています。そのため、これまでは男性の看護職を「看護士」として、女性を「看護婦」と呼んでいました。
現在では、男女の格差をなくすため名称が看護師に統一されており、看護士や看護婦は使用されていません。
看護師と看護士の役割に違いはない
呼び方が変わりましたが、看護師と看護士の役割に違いはありません。
前述したとおり名称を統一する前は女性を「看護婦」男性を「看護士」と呼んでいました。名称は異なりますが、どちらも「診療の補助」「患者さまの療養上のお世話」などの役割を担っています。
看護師と看護士の業務内容に違いはない
役割と同じように、看護師と看護士で業務内容に違いはありません。
患者さまの療養上のお世話、診療の補助といった役割にもとづき、以下のようなさまざまな業務をこなしています。
- 投薬や点滴の管理
- 食事や排泄のサポート
- バイタルサインの測定
- 退院後のケアや生活指導
- カルテや看護記録の作成
このような業務内容に性別による差はありません。看護師や看護士などの名称にかかわらず同様の業務や役割が求められています。
看護士から看護師へ名称変更した理由
看護士や看護婦という名称はいつから看護師に統一されたのでしょうか。名称についてさらに深掘りしてみましょう。
看護士から看護師に名称変更された
看護士や看護婦の名称が看護師に統一されたのは、2001年の法改正がきっかけです。
看護職の名称は「保健婦助産婦看護婦法」で規定されていました。2001年には法律の名称自体が「保健師助産師看護師法」と改められており、関連する職種も以下のような名称に変更されています。
変更前 | 変更後 |
看護婦(看護士) | 看護師 |
准看護婦(准看護士) | 准看護師 |
保健婦(保健士) | 保健師 |
助産婦 | 助産師 |
これまでは女性を看護婦、男性を看護士としていましたが、男女平等の観点から名称が変更され、性別による読み方の区分もなくなりました。
看護士が使われなくなった
法改正により、男女ともに呼び方が看護師に統一されています。前述したとおり性別による呼び方の違いはなくなり、看護士や看護婦という名称は使われなくなりました。
これにより、看護師という職業は性別に関係なく、専門知識とスキルを持ち業務を遂行するケアのプロフェッショナルであることが強調されています。
看護職の4つの種類
看護職には、看護師の方をふくめて以下の4つの職種があるのはご存知でしょうか。
- 看護師
- 准看護師
- 保健師
- 助産師
それぞれの仕事内容や役割などをみていきましょう。
看護師
看護師は、患者さまの身の回りの世話や医師の診療の補助など幅広い役割を担っています。また、看護師は後述する看護職と同じく社会的に求められている職業であり、2020年時点で132万人が働いているとされています。
看護師の方が働いている場所の例は主に以下のとおりです。
- 病院
- 学校
- 企業
- 研究機関
- クリニック
- 介護福祉施設
- 訪問看護ステーション
近年では、病院やクリニックなどの医療機関以外の需要も高く、訪問看護ステーションや介護保険施設などで働く割合が高くなっています。
准看護師
准看護師は、看護師と同じように診療の補助や患者さまの療養上の世話を役割とする仕事です。
一見、看護師と似た資格ですが看護師免許は厚生労働大臣による国家資格、准看護師は都道府県知事が発行する免許です。
また、准看護師になるには「高等学校の衛生看護科」もしくは「2年生の准看護師養成校」を経て試験に合格する必要があります。准看護師は以下の記事でも解説していますので、詳細はそちらをご覧ください。
関連記事:現在提出中の「准看護師とは」の記事へ
保健師
保健師は、公衆衛生の分野で重要な役割を果たす専門職です。
地域や企業などの集団を対象に、健康増進や疾病予防の活動をおこないます。保健師は働く場所で以下のような種類に分けられています。
種類 | 内容 |
行政保健師 | ・保健所や地域の保健センターなどの行政関係の施設に勤める保健師 ・市民の健康維持や医療相談受付、難病の方のサポートなどをおこなう |
学校保健師 | ・学校に勤務する保健師 ・ケガなどを応急処置するほか、生徒や学生からの健康相談に応じる |
産業保健師 | ・企業に勤務する保健師 ・健康診断の調整や実施、社員のメンタルヘルスのチェック、健康教育と啓発活動などおこなう |
病院保健師 | ・病院内の健診センターや地域連携室で働く保健師 ・さまざまな健診や人間ドック、退院時の調整などをおこなう |
一般的に、保健師の業務内容は、健康診断の実施や健康教育の提供、生活習慣病の予防対策、感染症対策の指導などです。
助産師
「助産師」は、看護職のなかでもとくに妊娠・出産・産後のケアに特化した専門職です。正常分娩であれば医師の指示を受けることなく、自身の判断による助産介助を許されています。助産師の主な役割は以下のとおりです。
- 分娩のサポート
- 新生児の健康チェック
- 授乳や育児のサポート
- 妊娠中の健康管理と教育
- 出産後の母子ケアと指導
- 妊娠に関する相談やカウンセリング
助産師を取得するには、助産師養成校や4年制大学における助産師養成課程の修了と、助産師国家試験の合格が必要です。
また看護師免許の所有も助産師になるために必須条件であり、母子の健康に直結する分野で高い専門性が求められる職種です。
看護師になるにはどうしたら良い?
看護師になるためには、以下のような条件をいくつかクリアしなければなりません。
- 看護専門学校もしくは大学に入学
- 看護専門学校や大学を卒業
- 看護師国家試験に合格して看護師免許を取得
看護師免許の取得には「4年制の看護大学」「3年制の看護専門学校」「5年制の高等学校専攻科」など、さまざまな選択肢があります。
詳細は以下の記事で解説していますので、これから看護師免許を取得したい方はそちらもご覧ください。
関連記事:看護師になるには?必要な資格やステップ、求められるスキルを紹介!
看護師としてキャリアアップする方法
看護師としてキャリアアップするためにはどのような方法があるのでしょうか。
- 認定看護師の資格を取得する
- 専門看護師の資格を取得する
- 認定看護管理者の資格を取得する
- 診療看護師の資格を取得する
- 特定行為ができる看護師の講習を修了する
それぞれ、みていきましょう。
h3:認定看護師の資格を取得する
認定看護師は特定の分野で高度な知識と技術を持ち、専門的なケアを提供する看護師の方です。
現場でのケアの実践や、看護職の相談にもとづいたアドバイスなども役割としています。資格取得のための条件は以下のとおりです。
- 看護師免許を所有している
- 看護師免許を取得後、通算5年以上の実務研修を受けている(通算3年以上は特定の認定看護分野)
- 分野ごとの認定看護師教育機関における教育を修了している
認定看護師は「クリティカルケア」「緩和ケア」をはじめ19分野の専門領域(※)でそれぞれ活躍しています。資格取得により、職場での役割が広がり患者さまに対するケアの質を向上できるでしょう。
認定看護師を取得する過程や専門分野の特徴は、以下の記事で詳しく解説しているため、ぜひご覧ください。
関連記事:認定看護師になるには?条件や取得までの流れ、資格取得によるメリットも解説
※制度の改正中であり、2021年より21分野から19分野へ統合を図っている。
専門看護師の資格を取得する
専門看護師は「質の高いケアを提供するために、特定の専門看護分野の知識・技術・実践能力を有している」と認められた看護師の方です。
現場でのケアにくわえて「研究」「教育」も役割にふくまれています。専門看護師の資格を取得する条件は以下のとおりです。
- 看護師免許を所有している
- 看護系大学院修士課程修了者で、専門看護師教育課程基準の所定の単位を取得している
- 実務研修が通算5年以上ある(3年間以上は専門看護分野)
専門看護師の種類は「がん看護」「精神看護」をはじめ、14分野にわけられています。なお、専門看護師の種類や、取得方法などは以下の記事でも解説しています。
関連記事:現在提出中の「専門看護師」へ
認定看護管理者の資格を取得する
認定看護管理者とは、看護部門の運営やマネジメントに特化した専門職です。
スタッフの指導や育成などの「看護チームの管理」や、看護業務の効率化や質を向上するための「業務改善」といった役割を担います。認定看護管理者の資格を取得する方法は以下のとおりです。
- 看護師免許を所有している
- 看護師免許を取得後、実務経験が通算5年以上あること(うち通算3年以上は看護師長相当以上の看護管理の経験がある)
- 認定看護管理者教育課程サードレベルを修了する
- 看護管理に関連する学問領域の修士以上の学位を取得する
「認定看護管理者教育課程」とは、看護部門のマネジメントスキルを身につけるための専門的な教育プログラムです。
「ファーストレベル」「セカンドレベル」「サードレベル」の3つにわけられており、修了するためにはそれぞれ100時間以上の研修を受講する必要があります。
ハードルは高いですが、資格取得して看護部門の運営やマネジメントにかかわることで、看護師としてのキャリアの幅を大きく広げられるでしょう。
診療看護師の資格を取得する
診療看護師とは、NP協議会が実施するNP資格認定試験に合格した看護師の方です。
患者さまの生活の質を向上させるために医師やほかの職種と協力し、倫理的かつ科学的根拠にもとづいた「診療」を一定レベルでおこなえる看護師の方を指します。
診療看護師になるためには以下の条件を満たす必要があります。
- 看護師として5年の実務経験
- 大学院の診療看護師養成修士課程を修了する
診療看護師は、医師の指示書のもとで一定の範囲内の診療行為(特定行為)をおこなえます。看護師をベースに医師サイドの知識や技術を得ることで、医療現場での幅広い役割を担えるでしょう。
特定行為ができる看護師の研修を修了する
特定行為ができる看護師とは、事前に受けた指示にもとづいて、医師の判断を待たずに一定の診療補助業務(特定行為)が実施できる看護師の方です。特定行為ができる看護師になるための条件は以下のとおりです。
- 看護師として3〜5年以上の実務経験を積む
- 指定の研修機関で特定行為研を修了する
特定行為ができる看護師がおこなう「特定行為」は、21区分38行為に分類されています。資格取得により専門性が向上し、特定行為を自立してできるためより仕事の幅が広がるでしょう。
関連記事:現在提出中の「特定行為 看護師」へ
看護師と看護士に関するQ&A
最後に、看護師と看護士に関するふたつの疑問にお答えします。
Q1:看護師さんはどう呼ぶと良いの?
「看護師さん」や「〇〇さん(名前)」と呼ぶのが一般的です。
以前は女性看護師を看護婦、男性看護師を看護士と呼んでいましたが、現在はどちらも看護師に統一されています。
状況によっては「〇〇(名前)ナース」と呼ぶこともありますが、病院を利用するときは「看護師さん」と呼ぶのが一般的でしょう。
Q2: 男性の看護師はなんて呼ばれますか?
男性看護師も「看護師」と呼びます。
これまで男性と女性で看護士、看護婦と分けていましたが、前述したとおり現在は看護師で統一されています。
性別に関係なく、職業名である看護師を使うのが適切でしょう。とくに女性と男性で区別が必要な場合は「男性看護師」と表現することもありますが、一般的には「看護師」で問題ありません。
まとめ
今回は看護師の呼び方について「看護師と看護士の違い」「看護職の種類と詳細」などを解説しました。
看護士や看護婦といった呼び名は、2001年の制度改正により看護師に統一されています。
患者さまが病院内で「看護婦さん」と呼ぶのは問題ありませんが、これから看護師を目指す方は間違えないように注意しましょう。
看護師になるための方法は以下の記事で解説していますので、そちらもぜひご覧ください。
関連記事:看護師になるには?必要な資格やステップ、求められるスキルを紹介!
参考サイト・文献
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