新人看護師は転職できるの?1年目で退職する理由5つと転職成功のコツ
「新人看護師も転職できるの?」「新人看護師が転職して成功するコツを知りたい」
このように新人看護師の転職について気になっている方もいるのではないでしょうか。
新人看護師の方が転職する際には「また、すぐに退職するのでは?」と思われたり、スキルや経験不足に疑問を持たれたりする恐れがあります。
この記事では、新人看護師の方は転職できるのか、また転職を成功させるコツを紹介します。「新人だから、今の職場をやめられない」と悩んでいるあなたの助けになれれば幸いです。
新人看護師は転職できるの?
結論からお伝えすると、新人看護師の方は転職できます。
厚生労働省の「看護師等(看護職員)の確保を巡る状況」によると、2022年度の看護師と准看護師の有効求人倍率は2.2倍であり、看護業界は人手が足りないからです。
全職業の有効求人倍率1.19倍と比べると、看護師の転職市場は売り手市場であり有利に進められるでしょう。実際に「未経験者歓迎」「第二新卒可(※)」とする病院やクリニックもあります。
ただし、なかには「就職してもすぐに辞めそう」「前の職場をすぐに辞める理由は何?」など新人看護師の方の転職にネガティブな印象を持つところもあります。
そのため、転職するのが難しい場合は、病院側にハラスメントなどの明らかな問題がない限り1年間は頑張ってみると良いかもしれません。
実際に、新人看護師の方がどのくらい転職しているのかについては、以下の記事で詳しく解説しているのでぜひ参考にしてください。
関連記事:新人看護師でも転職できる?1年目看護師の主な転職先や転職理由とは
*第二新卒:一般的に新卒入社後、社会人経験が3年未満のビジネスパーソンのこと。
1年目で退職する主な5つの理由
ここでは、日本看護協会の「「2023 年 病院看護実態調査」 結果」をもとに、看護管理者が考える看護師が1年目で退職する主な理由をみてみましょう。
退職する理由 | 割合 |
健康上の理由(精神疾患) | 49.4% |
自分の看護職員としての適性の不安 | 45.5% |
自分の看護実践能力への不安 | 40.5% |
上司・同僚との人間関係 | 27.6% |
他施設への興味 | 23.4% |
参考: 「2023 年 病院看護実態調査」 結果|日本看護協会
1.健康上の理由(精神疾患)
新人看護師の方が退職する理由で最も多いのは精神疾患です。
厚生労働省「過労死等公表」の調査によると、精神障害の請求件数が多い職種で「保健師・助産師・看護師」は171件で2番目の多さとされています。
新人看護師の方は、以下のような状況で業務をおこなうためストレスが高くなりやすい傾向にあります。
- 仕事量の多さ
- 生命にかかわるという緊張感
- 交代勤務による不規則な生活
- 患者さまやその家族との人間関係
さまざまな原因により新人看護師の方は、健康上の理由で退職することがあります。
2.自分の看護師としての適性の不安
新人看護師の方は、仕事でのミスや、患者さまとの関係がうまくいときなどに「看護師に向いていない」と感じることはよくあるものです。
看護師の仕事は、少しのミスがインシデントやアクシデントにつながり、患者さまの生命にかかわることも珍しくありません。
とくに、新人看護師の方の場合は、ミスが続くことで自責の念にかられることが多いです。
このような状況が続くことで、看護師としての適性に不安を感じて退職するケースがあります。
3.自分の看護実践能力への不安
看護師免許を取得したからといって、すぐに何でもできるわけではありません。
看護師免許を取得したことは、あくまでもスタートラインに立てただけであり、その後で研修への参加や、勉強と実務を繰り返すことでスキルアップできます。
ただし、新人看護師への研修体制が整っている病院やクリニックもあれば、十分に整っておらず教育や指導を受けられないところもあるのが現状です。
研修体制が不十分な環境であると、新人看護師の方はうまく業務をおこなえないため「看護師としてスキルがない」と不安を感じ続けた結果、退職します。
4.上司・同僚との人間関係
上司や同僚との人間関係を苦に、退職する新人看護師の方は多いです。
医療現場では、重症の患者さまへのケアや急変時の対応など、緊迫した場面が多く「きつい」「冷たい」「怖い」などと感じることがあります。
さらに、看護師長や先輩看護師から厳しく指導されることもあり「嫌われているのでは?」と人間関係を苦痛に感じることもあります。
このような職場環境で人間関係が合わないと感じ、業務を続けられなくなる新人看護師の方は少なくありません。
5.他施設への興味
「心臓カテーテルの勉強がしたい」「脳神経外科の術後のケアを学びたい」と考え就職したものの、思っていたスキルを学べないケースがあります。
また、就職したあとで「やっぱり精神疾患を学びたい」「集中治療の分野に興味が出てきた」などと考えが変わることもあるかもしれません。
看護師の業務は、病院の方針や患者さまの状況に合わせておこなうため、思うようにいかないこともあります。
そのため、徐々にほかの施設へ興味を持ち、結果として退職する新人看護師もいます。
新人看護師が転職するメリット
新人看護師の方が転職する主なメリットは以下のとおりです。
- 現職での悩みを解決できる
- 一から教育を受けられる
- 別のスキルを身につけられる
上司や同僚との人間関係の悩みや、時間外労働が多い環境に苦痛を感じている場合は、転職がきっかけで問題を解決できる可能性があります。
さらに、1年目で転職する看護師は第二新卒として扱われ、他の新人看護師の方と同じように教育や指導を受けられる場合もあります。
新人看護師の方は、転職することで現職では得られないスキルや経験を身につけられるでしょう。
新人看護師が転職するデメリット
新人看護師の方が転職するデメリットもあります。
- 転職をネガティブに捉えられる
- 即戦力として期待される
- 現職と同じ悩みを抱える可能性がある
「もし採用しても、すぐに辞めてしまうのではないか?」と新人看護師の方の転職をネガティブに捉えられることもあります。
さらに、転職先によっては新人看護であっても、即戦力のある中途採用の看護師として期待される場合もあります。この状況では、スキルが十分ではないため、転職先の期待に応えられない恐れがあります。
そのため、転職先の状況や採用の意向を確認したうえで転職活動を進めることが大事です。
転職したほうが良い新人看護師の状況
新人看護師の方が転職するデメリットがある一方で、次の状況に当てはまる場合は転職を検討したほうが良いでしょう。
- イジメやハラスメント行為がある
- 教育や指導を受ける機会がない
- 入職時の労働条件や待遇に異なる点が多い
- 心身に不調をきたしている
とくに、心身に不調をきたしている場合は、現職を続けることで状態が悪化する恐れがあります。
上司に相談して回復の見込みがあるときは一旦休職したり、回復が難しいときは退職や転職を検討したりしてください。
新人看護師が転職を成功させるコツ
新人看護師の方が転職を成功させるコツは以下のとおりです。
- 転職先をしっかりと選ぶ
- 転職先に求める条件を決める
- 転職先が決まった後で職場を退職する
- 転職先の職場見学やインターンシップに参加する
- 転職を考えていることは職場では話さない
- 求人サイトを活用する
それぞれのコツを把握し、転職を成功させましょう。
転職先をしっかりと選ぶ
新人看護師の方が転職を成功させるためには、転職先の選択が重要です。
まず、自分のキャリアプランを明らかにして「自分がどのような看護師として成長したいのか」を考えましょう。次に、以下のポイントで転職先の情報を集めてください。
- 勤務時間
- 給料・手当
- 業務内容
- 年間の休日数
- 研修の体制と内容
これらの情報をもとに転職先を選ぶことも一手です。
信頼できる情報源として、病院やクリニックのホームページだけではなく、ナースセンターや求人サイトがおすすめです。
求人サイトを利用すると自分のペースで求人を探せたり、専門家のサポートを受けられたりするため、情報収集がスムーズに進みます。
ただし、口コミや掲示板などは情報が偏っていたり、その情報の信ぴょう性が乏しかったりするため、信用しすぎないように注意してくださいね。
転職先に求める条件を決める
転職を考えている新人看護師が成功するためには、転職先に求める条件を明らかにすることが重要です。
転職の成功のカギは、自分の希望条件を具体的に挙げて、その条件の優先順位をつけることです。
最初に、自分が譲れない条件をはっきりとさせましょう。たとえば「給与」「勤務時間」「勤務地」「教育体制」「キャリアアップの機会」などが考えられます。これらの条件をリストアップしたうえで優先順位をつけると、何が重要かを把握できます。
次に、希望条件を追求しすぎないように注意しましょう。理想の条件が多すぎると、応募できる求人が限られてしまうからです。
優先順位の高い条件を1~2つに絞ることがポイントです。また、面接のときには求人情報ではわからないことを質問して、転職先についての悩みを解決してくださいね。
転職先が決まった後で職場を退職する
転職先が決まらないという焦りから、十分に検討しないまま選ぶ恐れがあるため、転職先が決まるまでは、現職を退職しないように注意しましょう。
転職先が決まった、もしくは転職先の目星がついたタイミングで退職する旨や希望する退職日、最終出社日などを上司に伝えることが大切です。
具体的な日にちを上司に伝えることで、退職までのスケジュール調整や後任の手配がスムーズに進むからです。
退職の理由を伝えるときには、現職への不満は避けて以下のように前向きな理由を伝えてください。
- 新しいことに挑戦したい
- スキルをさらに磨きたい
- 認定看護師の資格取得を目指したい
ポジティブな理由であることを強調しましょう。
円満に退職したい新人看護師の方は、下記の記事で詳しく解説しているのでぜひ参考にしてください。
関連記事:看護師の退職ガイド!円満退職までの流れを8ステップで解説
転職先の職場見学やインターンシップに参加する
転職を考えている新人看護師の方にとって、職場見学やインターンシップに参加することは、転職先を理解した上で適応していくために重要です。
職場見学では、病棟の環境や業務の流れを観察でき、自分がその職場で働くイメージをつかめます。
また、見学の際に現場のスタッフに具体的な質問をすることで、内部の雰囲気やチームの連携状況を把握できます。
インターンシップは、職場の実情を深く知るための機会です。実際に、短時間でも働くことで、職場の雰囲気や看護師と患者さまのコミュニケーションの様子などがわかります。
職場見学やインターンシップを通じて、自分に合った職場を見つけるためには、積極的な姿勢で臨むことが大切です。業務内容や勤務条件などについて質問をして、自分をアピールする機会としても活用しましょう。
転職を考えていることは職場では話さない
転職を考えている新人看護師の方は、職場で転職の意向を話すことは避けるべきです。
転職活動中に職場で転職を公言すると、同僚や上司との人間関係が悪化し冷遇されるリスクがあるからです。
上司や同僚の中には、転職を知った途端に態度が冷たくなる人も少なくありません。職場での居心地が悪くなり、ストレスが増すかもしれません。
また、新人看護師の方はスキルや実績が少ないため、転職活動がうまくいかないケースもあります。
そのため、転職活動は職場に黙っておこなうのが良いでしょう。転職先が決まってから初めて退職の意向を伝えることで、余計なトラブルを避け、スムーズに転職を進めることができます。
関連記事:看護師の退職は何カ月前に伝えるの?円満退職への切り出し方を解説
求人サイトを活用する
求人サイトは、転職活動において非常に有効なツールです。
求人情報が豊富であり、サイト独自の情報が掲載されているため、全国各地の病院やクリニックなどから自分に合った転職先を見つけられるでしょう。
求人サイトを効果的に活用することで、スムーズに転職活動を進められます。訪問看護ステーションへの転職を検討している新人看護師の方はNsPaceCareerに登録してみてください。
訪問看護業界の経験者への無料相談も実施しているため、あなたの転職の悩みを解決できることでしょう。
新人看護師が転職するためのおすすめの職場
新人看護師の方が転職するためのおすすめの職場は次のとおりです。
- クリニック
- 美容クリニック
- 総合病院
- 訪問看護ステーション
それぞれの職場の特徴を抑えて、新人看護師の方に合った転職先を見つけましょう。
クリニック
新人看護師の方が転職先としてクリニックを選ぶことは、多くのメリットがあります。
病院と比べて、クリニックは規模が小さく患者さまとの距離が近いため、患者さまとの信頼関係を築きやすく、新人看護師の方にとってケアを学びやすいです。
また、クリニックは外来診療が中心で夜勤がないため、ワークライフバランスがとりやすいのが特徴です。
しかも、小児科や産婦人科などの専門クリニックでは、特定の診療科目にかかわる知識と技術を習得できます。これらのクリニックでの経験は、今後のキャリアにおいても役立つでしょう。
ただし、クリニックでの業務は次のように多岐にわたる場合はあります。
- 採血
- 注射
- 患者さまの問診
- 処置の補助
- 受付業務
- 機器の消毒や片付け
看護師業務のほかに医療事務や看護補助者の業務を担わなければならないクリニックもあります。
しかし、病院のように急変対応が少ないため、精神的な負担が軽減される点は魅力です。これにより、患者さま一人ひとりに対して丁寧なケアを提供できる余裕が生まれます。新人看護師にとって、クリニックは自身のペースで成長できる職場と言えるでしょう。
関連記事:看護師1年目でクリニックに転職できる?楽しい理由や転職の6つのコツ
美容クリニック
美容クリニックは、転職先の選択肢の一つです。
美容クリニックでの主な業務は以下のとおりです。
- 美容外科や美容皮膚科での施術と補助
- 患者さまへのカウンセリング
- アフターケア
これらの業務では、通常の病院でのケアとは異なるスキルや知識が必要です。
ただし、多くの美容クリニックでは入職後のOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)で学ぶことができるため、過度に不安にならなくて良いでしょう。
美容クリニックの勤務は、予約制のところが多く、緊急対応も少ないため、残業が少ない傾向です。また、夜勤がないことも多く、ワークライフバランスを重視する新人看護師の方に向いています。
そのうえ、インセンティブ制度があるクリニックも多く、頑張り次第で収入を増やすことができます。
しかし美容クリニックでは、基礎看護技術や病院で経験できる看護ケアが経験できず、美容クリニックを経て病院へ転職したいと考えた時に、選択肢が狭まる可能性もあります。
転職する前には、クリニックの評判や労働条件をしっかりと確認して、自分に合った職場を選びましょう。
総合病院
新人看護師の方が転職を考えるとき、総合病院は魅力的な選択肢といえます。
総合病院では幅広い診療科目の医療に対応するため、新人看護師の方がさまざまなスキルを身につけられるからです。
また、新人看護師の育成プログラムやプリセプター制度など教育体制が充実しているため、安心して働き始められます。
加えて、総合病院では病棟での異動や研修プログラムを通じて、専門知識を深めることも可能です。これにより、自分の興味や適性に応じたキャリアパスを見つけることができ、将来スペシャリストとして活躍する道も開けるでしょう。
訪問看護ステーション
訪問看護ステーションでは、在宅での看護ケアを提供します。
働き方や休日の取得に柔軟性があり、仕事とプライベートのバランスが取りやすい訪問看護ステーションが多くあります。
また、新人訪問看護師への教育体制を整えているところもあるため、新人看護師の方にとって魅力的といえます。
訪問看護師の方の主な業務は、自宅での看護サービスの提供や家族へのサポート、ケアマネージャーとの連携などです。
訪問看護ステーションでの勤務は、患者さまとの密接なかかわりを持つことができスキルを活かせるため、新人看護師の方にとってやりがいのある転職先となるでしょう。
関連サイト:NsPaceCareer
まとめ
新人看護師の方でも転職できます。
ただし、新人看護師の方の転職はネガティブな印象を持たれることもあるため、対策をしたうえで転職活動を進めなければなりません。
たとえば、転職先をしっかり選んだり、転職先が決まった後で職場を退職したりすることが大切です。
今回紹介したことをもとに、転職を成功させましょう。
参考サイト・文献
「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。