診療看護師の年収はいくら?働きながら大学院に通う方法を紹介

公開日:2024/04/24 更新日:2024/04/24
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「診療看護師の年収っていくら?」「働きながら大学院に通って診療看護師になれるの?」

このように悩んだり不安に感じたりしていませんか。

看護師として働いている方のなかには診療看護師(ナースプラクティショナー:Nurse Practitioner)、いわゆるNPになりたいと考えている方は多いでしょう。

診療看護師とは「大学院修士課程で医学にかかわる知識や特定の医療業務に関する実践を学んだ看護師」のことです。一般の看護師と診療看護師の違いは、診療看護師は医師のような診療行為をおこなえるかどうかという点です。

つまり、診療看護師は医師と一般の看護師の中間に存在しているといえます。

この記事では診療看護師の年収や働きながら大学院に通う方法を紹介します。

診療看護師の年収はいくら?

診療看護師の年収はおよそ508万~572万円です。

厚生労働省が公開している「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、一般の看護師の年収は508万1,300円であり、この年収にくわえ診療看護師には資格手当が支給され相場は月額6万円とされています。

一方で、日本NP教育大学院協議会によると診療看護師の22%は一般の看護師と同じくらいの給料と回答しています。

そのため、診療看護師の年収は約508万~572万円といえます。

ただし、診療看護師の職場によっては夜勤がなかったり待遇が異なったりして、年収に差がある可能性があります。所属している病院での役割や業務内容によっては、高い年収を期待できるでしょう。

診療看護師とほかの資格を持つ看護師の年収を比較

ここでは、診療看護師と以下のようなほかの資格を持つ看護師の年収を比べます。

  • 専門看護師
  • 認定看護師
  • 特定看護師

それぞれの年収の差を詳しくみていきましょう。

専門看護師との違い

専門看護師の年収はおよそ549万円2,000円です。

日本看護協会によると、専門看護師の資格手当の相場は1万1,279円とされています。一方で、診療看護師の資格手当は6万円とされています。

この資格手当の差は、診療看護師と専門看護師の業務内容の違いによって生まれるのかもしれません。

関連記事:専門看護師の給料は約549万円?資格手当や認定看護師との給料の違いを解説

認定看護師との違い

認定看護師の年収は約約545万360円です。

先述した資料によると、認定看護師の資格手当の相場は月8,530円とされています。専門看護師と同様に、この資格手当の差が年収の差であるといえます。

特定看護師との違い

特定看護師の年収は、調査されておらず求人も少ないことから推測が難しいのが現状です。

厚生労働省は2025年までに10万人以上の特定看護師を養成することを目標としているため、特定看護師の処遇改善に期待できるでしょう。

診療看護師とは特別な医療行為ができる看護師

診療看護師は、特別な医療行為ができます。ここでは、診療看護師の役割や仕事内容などについて詳しく紹介します。

診療看護師の役割や仕事内容

そもそも診療看護師とは、大学院で診療看護師養成の修士課程を修了し、診療看護師の認定資格試験に合格した看護師のことです。

診療看護師は、一般の看護師の業務にくわえ以下のような業務をおこなっています。

  • 問診や初期診療などの相対的な医療行為
  • 医療計画の作成
  • 医師と看護師の連携
  • 一般の看護師の教育
  • 多職種との連携

医行為には医師が必ずおこなわなければならない「絶対的医行為」と、医師の指示のもとで看護師がおこなえる「相対的医行為」があります。診療看護師は、この相対的医行為に積極的にかかわれます。

日本NP教育大学院協議会によると、2024年4月1日時点で診療看護師は872名です。

医師が不足しているといわれる医療現場において、医師の具体的指示(直接指示)のもと、患者さまに検査や処置ができる診療看護師の需要は今後も高まるといえます。

また、このような医療行為の一部を担えるため、診療看護師は一般の看護師から相談されやすい立場にいて、一般の看護師の教育を担えるなど、自身のキャリアにつながる場合もあります。

診療看護師ができること

診療看護師は、厚生労働省が定める特定行為(21区分38行為)を医師にかわって実施することが認められています。ここでは、診療看護師がおこなう特定行為について詳しく解説します。

特定行為区分の名称特定行為
気道確保に係るもの経口用、もしくは経鼻用の気管チューブの調整
人工呼吸療法に係るもの侵襲的陽圧換気の設定変更
非侵襲的陽圧換気の設定変更
人工呼吸管理中の鎮静薬の投与量の調整
人工呼吸器からの離脱
長期呼吸療法に係るもの気管カニューレの交換
循環器関連一時的ペースメーカの操作及び管理
一時的ペースメーカリードの抜去
経皮的心肺補助装置(PCPS)の操作及び管理
大動脈内バルーンパンピング(IABP)から離脱するときの補助の調整
心嚢ドレーン管理関連心嚢ドレーンの抜去
胸腔ドレーン管理関連低圧胸腔内持続吸引器の吸引圧の設定と変更
胸腔ドレーンの抜去
腹腔ドレーン管理関連腹腔ドレーンの抜去
ろう孔管理関連胃ろう、もしくは腸ろうカテーテル又は胃ろうボタンの交換
膀胱ろうカテーテルの交換
中心静脈カテーテル管理中心静脈カテーテルの抜去
末梢留置型中心静脈注射用カテーテル管理末梢留置型中心静脈注射用カテーテルの挿入
創傷管理関連褥瘡もしくは、慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去
創傷に対する陰圧閉鎖療法
創部ドレーン管理関連創部ドレーンの抜去
動脈血液ガス分析関連直接動脈穿刺法による採血
橈骨動脈ラインの確保
透析管理関連急性血液浄化療法における血液透析器又は血液透析濾過器の操作及び管理
栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整
脱水症状に対する輸液による補正
感染に係る薬剤投与関連感染徴候がある者に対する薬剤の臨時の投与
血糖コントロールに係る薬剤投与関連インスリンの投与量の調整
術後疼痛管理関連硬膜外カテーテルの鎮痛剤の投与及び投与量の調整
循環動態に係る薬剤投与関連持続点滴中のカテコラミンの投与量の調整
持続点滴中のN、K、Clの投与量の調整
持続点滴中の降圧剤の投与量の調整
持続点滴の糖質輸液又は電解質輸液の投与量の調整
持続点滴中の利尿剤の投与量の調整
精神及び神経症状に係る薬剤投与関連抗けいれん剤の臨時の投与
抗精神病薬の臨時の投与
抗不安薬の臨時の投与
皮膚損傷に係る薬剤投与関連抗癌剤その他の薬剤が血管外に漏れたときのステロイド薬の局所注射及び投与量の調整
参照元:特定行為区分とは|厚生労働省

診療看護師は、上記のような専門的な知識やスキルを要する特定行為をおこないます。循環器や呼吸器、ドレーン管理をはじめ創傷管理、薬剤の調整など幅広く実施できます。

診療看護師になるには

診療看護師になるためには、看護師で5年以上の経験を積んだ後、指定された大学院で学ばなければなりません。

ここでは、診療看護師になる方法について詳しく紹介します。

大学院の受験資格・合格率

診療看護師の会員校の試験を受けるためには、大学卒・大学院卒もしくは、専門学校卒業の場合でも5年以上の実務経験が必要です。

専門学校卒の場合は、出願審査に通ったら大学院を受験できます。

合格率は受験する会員校によって異なります。大学院が少ないため、応募する地域や年代によっては高倍率となることもあり、難易度は高いといえます。

診療看護師の大学院進学・資格認定試験の出題科目

診療看護師になるためには、次の会員校(診療看護師になるための養成課程のある大学院)に進まなければなりません。

北海道医療大学大学院国立大学法人 秋田大学
国立大学法人 山形大学大学院東北文化学園大学大学院
国際医療福祉大学大学院東京医療保健大学大学院看護学研究科
藤田医科大学大学院佐久大学大学院
国立大学法人 富山大学大学院愛知医科大学大学院
東京医療保健大学大学院医療保健学研究科森ノ宮医療大学大学院
公立大学法人 名古屋市立大学大学院聖隷クリストファー大学大学院
国立大学法人 大阪大学大学院公立大学法人 島根県立大学大学院
令和保健科学大学大学院公立大学法人 大分県立看護科学大学大学院
参照元:会員校紹介|一般社団法人 日本NP教育大学院協議会

2024年4月時点で日本NP教育大学院協議会の会員は18校です。2022年時点で13校であり、会員校は増加傾向です。

いったん休職して大学院に通う看護師の方もいれば、週3日働きながら週3日大学院に通う方もいます。

会員校の大学院に2年通った後にある認定試験に合格すると診療看護師の資格を取得できます。

試験方法は筆記試験のみで、出題科目は以下の通りです。

  1. NP(診療看護師)論
  2. 疾病予防・健康増進
  3. 医療倫理
  4. 医療安全・関係法規
  5. 病態機能学
  6. 臨床薬理学
  7. クリニカルアセスメント
  8. クリニカルマネジメント

診療看護師が大学院で学ぶこと

診療看護師の会員校では以下の7つのことを学びます。

  • 包括的健康アセスメント能力
  • 医療処置・管理の実践能力
  • 熟練した看護実践能力
  • 看護マネジメント能力
  • チームワーク・協働能力
  • 医療保健福祉制度の活用・開発能力
  • 倫理的意思決定能力

これら7つの能力を習得するために、クリニカルアセスメントや病態機能学、医療安全などを学びます。

幅広い分野を大学院で学ぶことができるため、診療看護師の資格を取得できると活躍できるでしょう。

診療看護師になるために働きながら大学院に通う方法

ここでは、診療看護師になるために、働きながら大学院に通う4つの方法を紹介します。

  • 週2~3日程度働きながら大学院に通う
  • 働き方に合わせて昼間制・夜間制を選び大学院に通う
  • オンデマンド配信に対応している大学院に通う
  • 休職して大学院に通う

それぞれの方法を詳しく紹介します。

週2~3日程度働きながら大学院に通う

週2~3日程度を看護師として働きながら、大学院に通い診療看護師になる方法があります。

たとえば、ある大学院では木曜と金曜の6、7限目18:20~21:30、土曜の1~3限目9:30~15:10に遠隔での講義を実施し、月に1回集中講義をおこないます。

ただし、大学院によってカリキュラムは異なるため注意してください。さらに、大学院は2年課程であり2年次になると臨床での実習があります。この実習は5~7ヶ月間、平日の日中におこなわれます。

働きながら大学院に通うことを考えている方は、職場に休職制度はあるのか、配属先はあなたが抜けても問題ないのかなど上司や人事課と事前に確認しておきましょう。

働き方に合わせて昼間制・夜間制を選び大学院に通う

大学院によっては、授業時間が昼間制、もしくは夜間制など選べます。

なかには日によって昼夜どちらかに授業がおこなわれるケースもあり、働き方に合わせて大学院に通うことができます。

ただし、大学院のカリキュラムは希望する大学院によって異なるため、一度確認してみてください

オンデマンド配信に対応している大学院に通う

オンデマンド配信に対応している大学院に通うと、看護師として働きながら通うことができます。e-ラーニングや、Zoomでの授業をおこなうところがあります。

ただし、先述したように2年次には臨床での実習があり研修の機会が増えるため、勤務しながら大学院に通うことはできないでしょう。

そのため、職場の休職制度を活用できないか検討することが大切です。

休職して大学院に通う

休職して大学院に通えると、現在の職場を退職せずに済みます。

ただし、休職という形が取れても休職中は給料が支払われなかったり、支払われても通常よりも少なかったりするケースがあります。

給料が支払われないと生活にかかわるため、休職中の待遇について職場に確認したうえで大学院に通う準備をしましょう。

まとめ

診療看護師の年収はおよそ508万~572万円です。

多くの病院では資格手当が支給されるため、一般の看護師よりも診療看護師の年収が高くなる傾向です。

年収が高くなるほかにも、医師の指示のもと相対的医行為を実施でき、医師と看護師の架け橋になれるなど、一般の看護師にはない役割を果たせます。

そのため、大規模な病院だけではなく、クリニックや訪問看護ステーションなど幅広く活躍できます。

診療看護師としての働き方を、一度検討してみてはいかがでしょうか。

参考サイト・文献

ナースプラクティショナー制度構築|日本看護協会

令和4年賃金構造基本統計調査|厚生労働省

令和5年度診療看護師活動実態調査報告|日本NP教育大学院協議会

「2022 年度 専門看護師・認定看護師に対する評価・処遇に関する調査」報告書|日本看護協会

特定行為に係る看護師の研修制度について|厚生労働省

NP資格認定者|日本NP教育大学院協議会特定行為区分とは|厚生労働省

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記事投稿者プロフィール画像 NsPace Careerナビ 編集部

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