新人看護師でも転職できる?1年目看護師の主な転職先や転職理由とは
看護師の仕事は多忙で大きな責任を抱える仕事でもあるため、新人看護師である1年目でも転職を検討するという看護師の方もいるでしょう。
今回は新人看護師でも転職できるのか、1年目の看護師の主な転職先や転職理由について解説していきます。
1年目の看護師の方で転職を検討しているという方は、ぜひ参考にしてください。
新人看護師でも転職できる?
新人看護師でも転職自体は可能です。
新人であるという点から、素直な性格であり新たに教育しやすかったり、長期的なキャリア形成を見込んだりなどで、新人看護師の採用を歓迎している病院も多く存在します。
ただし1年目で退職したのには、早い段階での離職を決断する大きな理由があったのだろうと考えられて、転職の際に退職理由について深く追求されるでしょう。
また「もし採用したとしても、最初の病院と同様の理由で退職されてしまうのではないか」と考えられたり、忍耐力がないと考えられて「慣れない環境に耐えかねてすぐにやめてしまうのではないだろうか」と捉えられたりするケースもあります。
そのため新人看護師の転職の際には、退職理由だけでなく今後は長期的に働いていきたいという思いをうまく伝える必要があるでしょう。
新人看護師の主な転職理由4選
新人看護師が転職するのにはさまざまな理由がありますが、主に下記の4つの理由が考えられます。
- 時間外の勤務が多い
- 理想と現実のギャップを感じる
- 看護師に向いていないと感じる
- 人間関係に馴染めない
それぞれ詳しく解説していきます。
時間外の勤務が多い
看護師の勤務では特に病院の場合、時間外の勤務が多い傾向にあります。
新人看護師のうちは、要領がつかめず仕事が終わらないために、やむなく残業をする日が続いたり、知識が少なく勉強するために残業をしたりというケースも多いです。
また、看護師にある文化として前残業というものがあります。前残業は、出勤予定時間よりも15〜30分、もしくはそれ以上早く出勤して患者さまの情報収集などの業務を行うものです。前残業は、サービス残業扱いとなり給料がもらえないという職場も少なくありません。
前残業はなくなってきている傾向ではあるものの、やはり業務の多忙さから、なかなかなくすのは難しい現状があります。
そういった時間外の勤務が続き心身の休養が取れなかったり、プライベートとのバランスを取れなかったりして退職を決意する新人看護師もいます。
理想と現実のギャップを感じる
看護師の仕事に対して「人の命を助けたり支えたりする素敵な仕事」と感じて、看護師になろうと決めた方も多いのではないでしょうか。
実際に人の命を助けたり支えたりする仕事ではあるものの、介護に近い仕事も多かったり、患者さまからの暴言や暴力を受けたり、上司からの理不尽な指示を受けたりなど、看護師の業務は理想のようなキラキラしたイメージとは異なる場面も多いです。
特に最近では感染症の流行によって、医療現場に実習に行っていない看護学生も多く、実際の医療現場を見ていないことから「自分が考えていた理想の看護師の現場と異なっていた」と働いてからギャップを感じる新人看護師も少なくないでしょう。
看護師に向いていないと感じる
新人看護師のうちは、プリセプターがついて指導してもらえたり、周りの先輩が気にかけてくれたりするものです。だからこそ指導を受ける場面も多く、命に関わる現場である点からも叱責される場面も多いでしょう。
新人看護師の成長を思って指導をする先輩も多いですが、あまりに指導を受ける場面や叱責される場面が多いと「自分は看護師に向いていないのでは」と感じてしまう新人看護師も少なくありません。
家に帰ってからも気持ちが切り替えられず思い悩み、精神的な負担から限界を感じて最終的に1年目の時点で転職を決意する看護師もいます。
人間関係に馴染めない
前述のように先輩から指導を受ける場面も多いですが、中には無理難題を押し付けるパワハラのような看護師や、理不尽に怒ってくる看護師、気分で周囲を振り回すような看護師も残念ながらいます。
看護師に限らず、どの職場でも一定数関わりにくい人はいるものですが、うまくやり過ごせなかったり、標的となってしまったりする場合には、人間関係に馴染めないと感じてしまうでしょう。
新人看護師の中には、今の職場の人間関係に苦痛を感じ、新しい人間関係の構築を検討して退職・転職を決意するという方もいるでしょう。
新人看護師・1年目看護師の実際の転職率はどれくらい?
実際に日本看護協会の「2022年病院看護実態調査」において、2022年10月1日~11月10日の間に全国8,165施設(うち有効回収数2,964施設)を調査した結果によると、新卒の離職率は下記のようになっています。
時期 | 割合 |
2018年 | 7.8% |
2019年 | 8.6% |
2020年 | 8.2% |
2021年 | 10.3% |
2022年 | 10.2% ※別資料:3,639病院を対象としたデータ |
※2022年のデータは「2023年病院看護実態調査」によるもの
おおむね横ばいではあったものの、2021年には新卒の離職率は過去にない10%超えというデータになっています。また2023年病院看護実態調査から2022年の新卒離職率は10.2%と出ており、集計数は多くなっているのにも関わらずデータは2021年と大きく変わらないことから、以前として新卒看護師の離職率は変わらないと言えるでしょう。
ただし、2021年から2022年の間は、特に感染症流行により病院自体が多忙となっており過酷な勤務を強いられた現場も多かったことから、離職率が高くなっていたという可能性もあります。
新人看護師の転職における5つのメリット
前述でも簡単に記載しましたが、ここでは新人看護師が転職する上でのメリットを解説します。
新人看護師の転職には下記のような5つのメリットが考えられます。
- 自分に合った転職先が見つかるかもしれない
- 一から教育を受けられる
- 先輩に質問しやすい立場である
- 体力面で期待されやすい
- こだわりやプライドがなく教育しやすいと捉えられる
1つずつみていきましょう。
自分に合った転職先が見つかるかもしれない
早い段階での転職を決断して転職することで、長期的なキャリアを築いていける、自分に合った転職先が見つかる可能性もあります。
よく「最初の職場では3年間は働くべき」という意見を口にする看護師も多いですが、必ずしもそうとは限りません。
「臨床経験3年以上」を要件にしている転職先も多いため、3年間働いてから転職した方が転職先を探しやすいという点や、基本が身についていると判断され即戦力と捉えられやすい点からは、3年働くと良いといえます。しかし、合わない環境で無理して我慢して続ける必要はなく、むしろ早い段階での転職を決意することで、自分に合った転職先に早く転職できる場合もあるでしょう。
適した環境でキャリア形成していくことは、自分自身によっても大きく成長しやすいというメリットもあります。
早めに自分に合った転職先を見つけられる可能性があるという点は、新人看護師が転職する上でのメリットとなります。
一から教育を受けられる
新人看護師の転職では、採用する側もまだまだ教育が必要な人材だと認識した上で採用するため、転職後も一から教育を受け直すことが可能です。
基本的に一から教育を受け直せる場合が多いとはいえ、前の病院ではどこまで教えてもらったのか、今は何ができるのか、何ができないのかなど明確にしておくと、さらに新しい職場でも学びやすいでしょう。
先輩に質問しやすい立場である
新人看護師という立場からも、先輩に質問しやすい立場であるといえます。
1年目だと口に出さなくても、年齢やふるまいなどから周囲も「1年目で転職したのかな」と捉えるため即戦力とは認識されておらず、基礎的な内容でも質問しやすいでしょう。
ただし質問しやすい立場とはいえ、やはり前述のように何ができて何ができていないのかははっきりさせておいた方が先輩看護師も指導しやすいです。
転職前に、自分が今できることとできないことを明確にしておくと良いでしょう。
体力面で期待されやすい
新人看護師であるといった点から、体力面で期待されやすく、初めての業務でも積極的に体を動かして取り組んでくれるのではないかと期待されているケースが多いです。
この点は早く成長したい、技術を得たい、経験を積みたい、周囲からの信頼を得たいと考えている看護師からはメリットといえる部分でしょう。
ただし、もし体に不調があるなどで体力面に自信がないのであれば、転職時に転職先にあらかじめ伝えておく必要があります。
こだわりやプライドがなく教育しやすいと捉えられる
新人看護師は、看護師としての実務経験がまだ浅いため、固定観念や先入観が少なく、指導を受け入れやすい傾向にあると見られることがあります。その柔軟性から、教育しやすく、採用する際の魅力とされることも少なくありません。
つまり、先輩看護師の指導を素直に受け入れ、自己成長へとつなげる姿勢が新人には求められるでしょう。
そのため、「こんな質問をするのは恥ずかしい」というプライドから、わからないことを相談しなかったり、自己の過ちを他人の責任にするような行動をしたりするのは避けるようにしましょう。
新人看護師らしく素直な姿勢でいれば、転職した後に周囲に受け入れられやすいといえます。
新人看護師が転職するデメリット
次に新人看護師が転職する上でのデメリットを解説します。
主なメリットは下記のものが考えられます。
- 転職前と同じ悩みを抱える可能性もある
- 同期と差がつく場合もある
- 転職先が少ない
それぞれみていきましょう。
転職前と同じ悩みを抱える可能性もある
新人看護師の転職理由はさまざまですが、また転職した先でも前の職場と同じ悩みを抱える可能性があります。
悩みを抱えて転職したとしても、また同じ悩みを転職先で抱えてしまっては、再度転職を検討することになりかねません。
ある程度は我慢して、折り合いをつけながら働いていかなければならないと認識することも考えましょう。周囲の看護師の方へ相談したり、場合によっては、部署異動などの対処を人事へ相談したりなどして、転職しない解決方法をとっていく必要があるでしょう。また、自分自身の見方や考え方を見直すきっかけにもなるかもしれません。
同期と差がつく場合もある
次の章で紹介しますが、年度の途中で退職したとしても、すぐには転職先が見つからない可能性もあります。
中途採用として新人看護師を採用する枠は少なく、夏頃に第二新卒枠として募集し次年度の4月に入職予定とするケースも多いのです。そのため、自分自身のキャリアにはブランクができることになるでしょう。
その間に、同期の看護師は病院で働き続けているため、中には同期と差がつくことが気になってしまう看護師もいるのではないでしょうか。
気になってしまう看護師の方は、できる範囲で次の病院で実践するかもしれない内容について勉強したり、疾患や解剖生理などの基本知識について復習したりすると良いかもしれません。
転職先が少ない
新卒看護師でも受け入れてくれる病院はある、と解説しました。
しかし、丁寧な教育が必要な点からも、前述のように即戦力として中途採用するというケースはほぼなく、転職先が少ないと感じるかもしれません。
また、限られた転職先であったとしても、教育体制が整っている長期的なキャリアを築けそうな転職先を探すのが望ましいため、限られた転職先の中でさらにじっくりと吟味する必要があります。
新人看護師の主な転職先
転職する上でメリットもデメリットもある新人看護師ですが、新人看護師の転職先にはどのような職場があるのか気になっている方もいるでしょう。
最後に新人看護師の主な転職先を解説します。
総合病院
新人看護師には、看護技術やアセスメントなどの観察力の点など、基本的な部分について丁寧な指導が必要です。
さまざまな症例の患者さまと関わり学びたい、総合病院で働き丁寧な指導を受けたいという理由から、総合病院への転職を考える新人看護師も多いです。
さらに総合病院の場合、さまざまな診療科が入っているため、自分自身が何を学びたいかわからないという看護師の方でも、部署異動をしながら自分の学びたい分野が見つかる場合もあります。
さまざまな診療科が集約されており、多くの患者さまが来院される総合病院は、新人看護師の転職先としては最もおすすめです。
介護施設
有料老人ホームやデイサービス、介護老人保健施設のような高齢者の入居や利用を対象とした介護施設も、転職先として検討される場合もあります。
このような施設では、医療的ケアを必要とする方は少なく、高い看護技術は必要ではないことも多いため、あまり経験を積んでいない新人看護師でも働きやすいでしょう。
ただし、特別養護老人ホーム(特養)の場合は、難易度の高い医療的ケアを必要とする方が入居されているため、新人看護師には対応が難しい患者さまも多く、あまりおすすめできません。
また、介護施設内で一緒に働く人は、主に介護職が一般的です。そのため、周りに先輩看護師が少なく、周囲に質問して学んでいくのが難しいという職場もあるでしょう。
美容クリニック
美容のクリニックは主に美容皮膚科と美容外科に分かれている、もしくはどちらも行っているところがあります。
そして、美容クリニックの中には看護師経験を不問としているところもあり、新人看護師の転職先としても注目されやすいです。
看護師は女性が多く、その中には美容に関心があるという看護師もいます。働きながら美容に関する知識を身につけられるという環境には、魅力を感じる新人看護師も少なくないでしょう。
ただし「基本的に美容クリニックでの勤務は臨床経験としてカウントしない」としている求人もあり、美容以外の医療機関へ再度転職しようとした時には、転職先が限られてしまう点は注意が必要です。
一般企業
転職理由に「看護師に向いていないと感じる方もいる」と解説しました。「自分は看護師に向いていない」と感じた方の場合には、看護師をやめて他の企業への転職を検討するケースもあります。
まだまだ若いという点からもキャリアの再構築はしやすいため、早い段階で看護師ではないキャリアを築いていこうと、転職を決断する方もいます。
ただし経験不問としている一般企業への転職であったとしても、なぜ看護師資格をとったのにやめてしまったのかという点を確認されるでしょう。
また、一般企業ではPCスキルを必要とするケースも多く、看護専門学校や大学ではあまりPCスキルについて学ばないため、一から学び直さなければならない点は覚悟しておく必要があります。
新人看護師でも転職は可能!転職先は限られるため転職の決断は慎重になろう
ここまで新人看護師の転職は可能なのか、転職におけるメリットやデメリット、また主な転職先についても解説してきました。
新人看護師でも転職は可能ですが、臨床経験年数を条件とする職場も多いため転職できる職場は限られてきます。一方で早い段階でのキャリアの再形成は、長期的なキャリア構築の上でも重要といえます。長期的な視点で検討しつつ、転職については慎重に決断するようにしましょう。
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