専門看護師の給料は約549万円?資格手当や認定看護師との給料の違いを解説
「専門看護師になると給料は上がるの?」「専門看護師と認定看護師の給料の違いは?」
専門看護師(CNS:Certified Nurse Specialist)とは、複雑でかつ解決が難しい看護問題がある患者さまに質の高いケアやスキルを提供するための資格のひとつです。
キャリアアップをしていくなかで、専門看護師の給料が気になる方は多いかもしれません。
専門看護師の給料の事情や費用を抑えて資格と取る方法、認定看護師との違いを解説します。この記事が、専門看護師の資格の取得を目指すあなたの悩みを解決できる助けになれると幸いです。
専門看護師の給料とは?
近年では、高齢化が進み複数の病気がある患者さまは増えてきています。そのため、求められる看護ケアの質も徐々に高まっており、専門看護師の役割は重要といえます。ここでは、その専門看護師の給料について紹介します。給料と資格手当をくわしくみていきましょう。
専門看護師の給料は549万円2,000円
(計算式) 534万8,000円(40~44歳の平均年収)+14万4,000円(年間の資格手当)=549万2,000円 |
専門看護師の給料は、約549万2,000円といえます。
この給料の内訳をみていきましょう。日本看護協会の調査によると専門看護師の平均年齢は44.4歳です。
さらに、厚生労働省が公開した「令和4年賃金構造基本統一調査」によると40~44歳の平均年収は平均年収534万8,000円であり、この年収に年間の資格手当14万4,000円をくわえると549万2,000円です。
ただし、専門看護師の給料は以下の条件により異なります。
- 業務の内容
- 所属している病院の規模や地域
- 経験年数
- 資格手当の金額
専門性の高い業務や、医療の現場で重要な役割を担い、なかには年収1,000万円を超える専門看護師の方もいるため、高収入を期待できます。
そのため、この専門看護師の給料はあくまでも目安としてください。
専門看護師の資格手当は月1万1,279円
専門看護師の資格手当は平均で月1万1,279円です。
ですが、専門看護師になっても資格手当がもらえない可能性があります。
実際に、先述した資料によると、資格手当の支給が毎月支給されるのは専門看護師の34.1%(前回調査より3.7ポイント増)に過ぎません。
さらに、この支給額に不満・やや不満と回答している専門看護師は69%に上り、多くのケースで満足していないことがわかります。
後述しますが、専門看護師になるためには高額な費用がかかり、研修参加が求められ、ほかにも家族との時間を削って勉強する必要があります。
そのため、給与の水準が上がらないことに不満を感じているのかもしれません。
専門看護師との給料の違いは?|認定看護師と一般の看護師
ここでは、専門看護師と認定看護師、一般の看護師との違いを解説します。それぞれを詳しくみていきましょう。
専門看護師と認定看護師の給料の違い
認定看護師の給料は約545万360円です。
この給料の内訳は以下のとおりです。
(計算式) 534万8,000円(40~44歳の平均年収)+10万2,360円(年間の資格手当)=545万360円 |
専門看護師と比べると、認定看護師の給料は約41,640円低いといえます。
なぜなら、先述した資料によると専門看護師と比べ、資格手当が支給される割合は認定看護師のうち41,2%であるものの、資格手当は平均して月8,530円と額が低いためです。
ただし、専門看護師と同じように認定看護師の給料は働く病院の規模や経験年数、おこなっている業務などにより異なるため、あくまでも参考としてください。
専門看護師と一般の看護師との給料の違い
一般の看護師の給料は534万8,000円(40~44歳の平均年収)です。
専門看護師との給料の差は、資格手当の差であるといえます。とはいえ、専門看護師になると夜勤をしなくなったり、院内の重要な業務を任せられたりなど、働き方が変わる可能性があります。
専門看護師になったときの処遇や仕事内容などについて、所属している病院に確認しましょう。
専門看護師になるには?|条件や資格取得までのスケジュール
専門看護師になるための条件や資格取得までのスケジュールを紹介します。専門看護師を目指している看護師の方は、ぜひ参考にしてください。
大学卒の看護師が専門看護師になるには
大学卒の看護師が専門看護師になる条件は以下の2つです。
- 日本の看護師免許を持っていること
- 実務経験が5年以上あること(うち、3年以上は専門看護の分野での実務経験)
これらの条件を満たした方が、専門看護師になる流れは以下の3ステップです。
- 看護系の大学院に入学し、専門看護師教育の課程を修了(合計38単位。2年間もしくは3年間で取得)
- 専門看護師の認定検査(筆記試験と論述式)
- 専門看護師の認定検査に合格すると、認定証を交付
ですが、2022年12月時点で専門看護師は3,155人であり、全国の看護師76万人のうち0.4%にすぎません。
さらに、専門看護師になったあとも、5年ごとの更新審査を受けなければなりません。
専門学校卒の看護師が専門看護師になるには
「専門学校卒業でもなれるの?」「大学を卒業してなければなれない?」と疑問を感じている方もいるでしょう。
結論、専門学校を卒業していても専門看護師になれる方法があります。具体的には、以下の2通りです。
- 通信制の大学で学士を取得する
- 専門卒を対象としている大学院を受験する
「3年課程の看護学校を卒業して、◯年以上の実務経験がある看護師」に対して専門看護師の課程の受験資格を認めている大学院がほとんどです。
大学院が定めた審査をパスできれば受験ができます。その後は、大学卒の場合と同様の流れで専門看護師の資格を取得します。
専門看護師になるまでにかかる費用
「お金はかかるっていわれているけど、どのくらい費用になるの?」と不安に感じている方もいるかもしれません。専門看護師の資格を取得するためにはおよそ200万円以上は必要といわれています。主な費用は以下のとおりです。
項目 | 費用 |
大学院の入学金 | 約30万円 |
大学院の授業料 | 約120万円(年間60万円×2年間) |
大学院の教材代 | 約20万円 |
専門看護師の認定審査の受験料 | 51,700円 |
認定料 | 51,700円 |
参照元:専門看護師になるには|日本看護協会などをもとに作成
ほかにも、近くに看護系の大学院がなければ引っ越しの費用や家賃、交通費をはじめ参考書代やパソコン代などがかかります。さらに、この費用は休職中に払わなければならないため、費用の負担は大きいといえるでしょう。
費用を抑えて専門看護師になるには
先述したように、専門看護師になるためには少なくない費用がかかります。その費用を抑えて資格を取得できる2つの方法を紹介します。
奨学金制度を活用する
奨学金制度を活用すると、専門看護師の資格の取得にかかる費用を軽減できます。具体的には以下の表を参考にしてください。
奨学金名 | 借りられる金額 | 条件や特徴 |
石橋美和子 がん看護CNS奨学金 | 総額180万円以内 | ・ほかの奨学金や給付金と併用可 ・保健師・助産師、または看護師の免許を持っている ・がん専門看護師になるための大学院や大学に在籍している ・臨床、もしくは地域看護の分野で4年以上の実務経験があるなど |
木村看護教育振興財団 | 総額60万円 | ・看護系大学院修士課程に在籍しており、日本看護系大学の協議会が定める専門看護師の教育課程基準の単位を取得する見込みがある ・専門看護師の認定審査を受験して資格の認定を受け、専門看護分野の臨床で2年間以上の就業を確約できるなど |
日本学生支援機構 | ・月2万~6万4,00 (無利子) ・月2万~15万円 (有利子) | ・学力や家計の基準 ・国立や私立等条件によって金額が異なる |
参考元:石橋美和子がんCNS奨学金|日本看護協会、独立行政法人 日本学生支援機構などをもとに作成
これらの奨学金制度のほかに、地方自治体によっては助成金の申請を受け付けているところがあるため、活用できると費用を抑えられるでしょう。
病院の資格取得の支援制度を活用する
病院によっては、専門看護師の資格の取得を支援する制度があります。
ですが、支援制度の有無や支援制度の内容はそれぞれです。さらに、病院を退職して大学院に通うのか、もしくは休職あつかいとなって大学院に通うのかなどによっても費用の負担が異なります。
人事課や看護部に一度、確認してみましょう。
専門看護師になるメリットとデメリット
ここでは、専門看護師になるメリットとデメリットをそれぞれ紹介します。
(メリット)
- 活躍できる幅が広がる
- 病院の垣根を超えて多職種と交流ができる
- 給料アップしやすい
- 昇進しやすい
(デメリット)
- 給料が変わらない
- 専門性が活かせない
専門看護師の資格を取得できると、活躍の幅が広がり、給料アップにつながるなどのメリットがあります。ですが、先述した資料によると、給料が変わらず、一般の看護師と業務内容が変わらない現状もあります。
さらに、キャリアアップしやすいメリットがあるものの、一般の看護師と同じように夜勤をして、管理職ではなく現場で働くケースも少なくありません。
そのため、専門看護師を目指している方は、資格の取得前に、所属している病院へ待遇を確認するだけではなく「どうして専門看護師になりたいのか」「専門看護師としてどのように病院や患者さまに貢献したいのか」などをよく考えましょう。
まとめ
専門看護師は、看護師の上位資格とされており、条件を満たしたうえで認定審査をパスしなければ資格を取得できません。
専門看護師になると、専門分野で活躍できたり、院内で重要な役割を担えたりなど給料のアップが期待できます。
ですが、専門看護師になるためには200万円以上かかり、病院によっては給料や待遇が変わらない恐れがあります。
専門看護師になりたい理由をもう一度考えてから資格取得を目指すことで、専門看護師として幅広く活躍できるでしょう。
参考文献・サイト
「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。