看護師から救急救命士になれる?4つの違いや資格取得の流れ、現実的な壁を解説

救急現場でやりがいを感じながらも、「看護師を続けるべきか」「今からでも救急救命士になれるのか」と迷っている看護師は少なくありません。
看護師から救急救命士になることはできます。令和5年4月末時点で救急救命士の登録者数は7万1,495人であり、うち9,264人が看護師とのダブルライセンス保持者です。
ただし、看護師免許だけでは救急救命士になれず、養成課程の修了や国家試験の合格が必要です。また、消防機関への就職には年齢制限が設けられているケースもあります。
この記事では、看護師と救急救命士の違いや資格取得の流れ、現実的な壁などを整理します。自分にとって最適な選択肢が見えてくるため、ぜひ最後までご覧ください。
看護師と救急救命士の4つの違い
同じ救急に関わる仕事でも、看護師と救急救命士では働く場所・仕事内容・処置の範囲・給与に違いがあります。資格取得を検討する前に、両者の違いを把握しておきましょう。
| 項目 | 看護師 | 救急救命士 |
| 働く場所 | 病院・クリニック・施設など | 消防署・救急車内など |
| 仕事の範囲 | 入院から退院まで継続的に関わる | 現場から病院到着までに特化 |
| 処置の内容 | 採血・注射・バイタルサインの測定など | 呼吸音の確認・心電図の測定・救急指導医師の指示を受け輸液や気管内チューブによる気道確保など |
| 平均年収 | 524万7,000円 | 335万3,000円 |
まずは表で全体像を把握したうえで、それぞれの詳細を確認してみてください。
働く場所の違い
看護師と救急救命士では、活躍する場所と所属する組織が異なります。
看護師は病院・クリニック・介護施設・訪問看護ステーションなど、幅広い施設で働きます。一方、救急救命士の多くは消防機関に所属し、救急車の中や事故・災害の現場がおもな活躍の場です。消防本部から指令を受けて現場に急行し、病院到着までに必要な処置をおこないます。
近年では、病院やドクターカー、ドクターヘリなどに所属している救急救命士もいます。
仕事内容や役割の違い
看護師は患者さまの入院から退院まで継続的に関わる役割を担い、救急救命士は現場から病院到着までの限られた時間に特化した役割を担います。患者さまと関わる期間と場面が、両者の違いです。
また、看護師は医師や薬剤師など多職種とチームを組んで、治療の補助や日常生活のサポートまで幅広く担います。救急救命士は現場ごとに状況が異なる中で、傷病者の迅速な状態把握と処置の判断が求められ、搬送後の対応は病院のスタッフに引き継ぎます。
実施する処置の内容の違い
看護師と救急救命士では、実施できる処置の内容と場面が異なります。どちらが上というわけではなく、それぞれの活躍する場面に応じた処置をおこなうという違いです。
看護師が実施するおもな処置
- 採血・注射・点滴
- バイタルサインの測定
- 傷の処置・包帯交換
救急救命士が実施するおもな救急救命処置
- 聴診器による心音や呼吸音の確認
- 心電図の測定
- 酸素吸入器による酸素吸入
- 自動体外式除細動器(AED)による除細動
救急救命士は、専用の端末で救急指導医師の指示を受けながら、輸液や気管内チューブによる気道確保などもおこなう場合もあります。看護師と救急救命士ともに、医師の指示のもとで処置をおこなう点は共通しています。

給料や待遇の違い
給与水準と待遇という点では、一般的に看護師のほうが有利です。
厚生労働省の調査によると、看護師の平均年収は524万7,000円に対して、救急救命士は335万3,000円です。
ただし、どちらも所属する施設や自治体、地域によって差があります。看護師は病院の規模や夜勤回数によって収入が変わり、救急救命士は各自治体の給与規定や出動手当の有無によって異なります。転職や転換を検討する際は、あくまでも目安として参考にしてください。
看護師から救急救命士になるには?資格取得までの流れ
看護師から救急救命士になるには、3つのステップを踏む必要があります。消防機関で救急救命士として活動するには、救急救命士国家試験に合格して免許を取得したうえで、消防職員として採用される必要があります。
- 救急救命士の受験資格を得る
- 国家試験に合格し資格を取得する
- 消防機関などに採用され現場に立つ
それぞれのステップで何が求められるのかを確認し、現実的な計画を立てましょう。
1.救急救命士の受験資格を得る
看護師から救急救命士になるには、救急救命士の国家試験に合格する必要があります。
看護師免許を持っていても、原則として救急救命士養成課程を修了しなければ国家試験を受験できません。専門学校や大学などに進学するのが一般的です。
平成3年8月15日時点で看護師免許を取得していた方、または看護師養成所に在籍・卒業していた方は、養成課程への進学なしに国家試験を受験できる特例制度があります。ただし、対象者は限られるため、詳細は厚生労働省のホームページをご確認ください。
2.国家試験に合格し資格を取得する
救急救命士の国家試験は年1回実施されています。試験内容を以下の表にまとめました。
| 項目 | ポイント |
| 試験日 | 毎年1回 |
| 試験地 | 北海道、東京都、愛知県、大阪府、福岡県 |
| 試験科目 | 基礎医学、臨床救急医学総論、臨床救急医学各論(一)、臨床救急医学各論(二)、臨床救急医学各論(三) |
| 合格基準 | 下記いずれの基準を満たす 必修問題:44.0点以上/55.0点、通常問題132.0点以上/220.0点 |
合格率は、過去5年間90~95%と高水準で推移していますが、この数字は養成課程で学んだうえでの結果です。看護師として培った知識が役立つ分野もありますが、病院到着前の現場に特化した内容は、これまでの学習範囲と異なるため新たに学ぶ覚悟が必要です。
3.消防機関などに採用され現場に立つ
国家試験に合格しても、採用されなければ救急救命士として現場に立つことはできません。救急車に乗務するには消防職の公務員試験を受けて消防士として採用される必要があります。
また、消防機関に所属せずに病院やドクターカー、ドクターヘリなどの場面で働く場合は、それぞれの採用試験に合格することが条件です。
看護師から救急救命士になるときに知っておきたい現実
看護師から救急救命士への転換には、知っておきたい3つの現実的な壁があります。
- 年齢による制約
- 学費や時間の負担
- 採用枠の少なさ
これらは決して「救急救命士になるべきではない」という意味ではありません。しかし、進路変更を目指すうえでは避けられない課題です。年齢や家庭環境、キャリアプランも踏まえて検討しましょう。
年齢による制約
30代以上の看護師にとって、消防採用試験の年齢上限は避けて通れない壁です。動き出すタイミングによっては、そもそも受験できない自治体が大半になる可能性があります。
消防職員の採用試験には多くの自治体で年齢上限が設けられており、自治体によっては30歳前後に設定されているケースが少なくありません。
養成課程で2〜3年学んだ後に採用試験を受けることを考えると、30歳を超えている方の転換は難しいのが現状です。
学費や時間の負担
養成課程への進学には、一般的に200万〜300万円の学費と2〜3年間の時間が必要と言われています。看護師を辞めたり、休職したりして収入が途絶える期間も含めると、経済的な負担は想像以上に大きくなりがちです。
さらに、学校に通う期間は、看護師としてのキャリアが止まり、医療行為やケアを実施するスキルが低下する恐れがあるため、これらのリスクも含めて冷静に判断することが重要です。
採用枠の少なさ
救急救命士の資格を取得しても、希望する地域の消防本部に採用枠がなければ現場に立てません。
消防職員の採用試験は年1回の自治体が多く、不合格になれば翌年まで待つことになります。複数の自治体を受験することも可能ですが、転居が前提になるケースもあります。
実際には、養成課程を修了しても採用試験に合格できず、看護師に戻るケースも少なくありません。
年齢制限や学費、採用枠の少なさという現実を踏まえると、救急医療に携わりたい場合は、看護師のまま救急外来やICUなどで専門性を高める選択肢も検討してみましょう。
関連記事:看護師がスキルアップできる資格とは?救急に役立つ8つの種類を紹介
看護師のまま救急現場で働く選択肢
看護師のまま救急現場で活躍できる環境は複数あります。
救急外来や救命救急センター
看護師のまま救急の最前線に立ちたいと考えるケースでは、救急外来や救命救急センターへの転職が現実的です。看護師免許を活かしたまま救急医療に携わることができます。
三次救急の救命救急センターでは、とくに重症な患者さまへの処置やケアを実施できます。
集中治療室や高度治療室
重症患者に継続して関わりたい救急志向の看護師には、集中治療室(ICU)や高度治療室(HCU)もおすすめです。救急で培ったスキルを活かせる職場です。
クリティカルケア認定看護師や急性・重症患者看護専門看護師などの資格を取得することで、さらに専門性を高められます。
DMATや災害支援ナースなど災害医療チーム
平時は病院勤務を続けながら、災害時に救急最前線で活動する選択肢もあります。
DMAT(災害時に被災地へ派遣される医療チーム)は看護師もメンバーとして参加でき、所定の研修を修了することで登録できます。災害支援ナースも同様に、登録・研修を経て災害時の医療支援に参加できる制度です。
普段の看護師としてのキャリアを守りながら、救急・災害医療の現場に立てる方法です。
関連記事:DMAT看護師になるには?仕事内容や必要な経験、向いている人の特徴を解説
救急救命士と看護師どちらを選ぶべきか
救急救命士と看護師は、働き方や価値観によって向き不向きがわかれます。これまで見てきた違いや現実を踏まえて、自分の志向と照らし合わせてみてください。
救急救命士が向いている人
- 病院到着前の現場で傷病者を助けることにやりがいを感じる
- 30歳以下で体力面に自信がある
- 公務員としての安定した雇用形態を望む
看護師のまま救急分野を深めるのが向いている人
- 救急外来やICUでの高度な処置・管理に魅力を感じる
- 転居や育児などライフイベントを見越して柔軟に働きたい
- 30代以降で現実的なリスクを抑えたキャリアを選びたい
救急救命士への転換を検討する看護師がいる一方で、年齢制限や給与面、働き方を考慮し、看護師のまま救急外来やICUで専門性を高める選択をする人も少なくありません。大切なのは、自分がどの現場で力を発揮したいかをイメージすることです。
関連記事:救急看護師に向いている人の9つの特徴!年収やきついと言われる理由
看護師から救急救命士になることに関するよくある質問
看護師から救急救命士への転換を検討する際に、制度や試験、資格の活かし方など気になる点は多いはずです。よく寄せられる質問に答えます。
Q1:看護師資格を持っていると救急救命士の試験は免除されますか?
看護師資格を持っていても、救急救命士の国家試験を免除されることはありません。
ただし、一定の条件を満たす場合には、養成課程への進学を経ずに国家試験の受験資格が認められる特例制度もあります。
Q2:看護師と救急救命士ダブルライセンスのメリットはありますか?
ダブルライセンスのメリットはありますが、活かせる場面は限られます。
消防本部内での教育担当や地域への救急講習など、医療知識を発信する役割では強みになります。一方で、救急救命士として消防機関に勤務する際は、看護師免許を使った業務はできない可能性があります。
Q3:救急救命士と看護師はどっちが難しいですか?
一概にどちらが難しいとは言えません。
国家試験の合格率だけを比較すると、令和8年に実施された試験では看護師は88.3%、救急救命士は94.9%です。
どちらも養成課程での学習を前提とした数字であり、難易度を単純に比較できるものではありません。就職という観点では、看護師・救急救命士ともに採用試験がありますが、看護師は全国に求人が豊富にあるのに対し、救急救命士は消防機関の採用枠が限られるため、就職までの難易度には差が出やすい傾向があります。
Q4:救急救命士と看護師はどっちが上ですか?
どちらが上とは言えません。看護師と救急救命士は資格の種類も活躍する場面も異なるため、優劣で比較できるものではありません。
看護師は医療施設での幅広い処置と継続的なケアを担い、救急救命士は病院到着前の現場での迅速な対応に特化しています。それぞれが異なる役割を担う専門職であり、どちらが上というわけではなく、自分がどの現場で力を発揮したいかで選ぶものです。
看護師か救急救命士か、「何のために救急で働きたいか」を整理しよう
看護師から救急救命士になれますが、養成課程への進学、国家試験や採用試験の受験というステップが必要です。とくに、30代以上の方にとっては、年齢上限や採用枠の少なさという現実的なハードルがあります。
一方で、看護師のまま救急外来・集中治療室・DMATなどの形で救急医療に関わることもできます。今のキャリアを活かしながら、救急の最前線に立てるでしょう。
「もっと患者さまに近い場所で働きたい」「在宅や地域で向き合いたい」という方は、訪問看護という働き方も選択肢の1つです。訪問看護は生活の場に出向き、利用者さまの状態を近くで見て判断する仕事です。救急で培ったアセスメント力が、そのまま強みになります。
ナスキャリ(NsPace Career)では、救急経験を活かせる訪問看護の求人を多数掲載しています。まずは求人情報をチェックしてみてください。
<参考サイト・文献>
看護師-職業詳細|職業情報提供サイト(job tag)-厚生労働省
救急救命士-職業詳細 |職業情報提供サイト(job tag)-厚生労働省
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