精神科訪問看護指導料とは?基本療養費との違いや連携のポイントを解説

精神科訪問看護に携わっていると、「精神科訪問看護指導料」という言葉を耳にする機会があるでしょう。
精神科訪問看護指導料は、病院や診療所が算定する報酬であり、訪問看護ステーションが算定する精神科訪問看護基本療養費とは別物です。
「訪問看護ステーションには関係ないのでは?」と感じるかもしれません。
しかし、連携先の診療所や病院がどのような報酬体系で動いているかを理解しておくことは、スムーズな連携や返戻リスクの回避にもつながります。
この記事では、精神科訪問看護指導料の概要と算定要件、精神科訪問看護基本療養費との違いを解説します。
精神科訪問看護指導料とは
精神科訪問看護指導料とは、病院や診療所(みなし訪問看護)が、精神疾患を有する利用者さま、またはそのご家族に対して訪問看護をおこなった場合に算定できる診療報酬です。
区分番号は「Ⅰ012」で精神科専門療法に分類され、同一建物に訪問する利用者さまの人数によって(Ⅰ)と(Ⅲ)の2つの区分があります。算定回数は週3回までが上限で、退院後3か月以内の利用者さまは週5回まで算定できます。
ただし、服薬中断等により急性増悪した場合は、医師の指示があれば月1回に限り急性増悪した日から7日以内は毎日の算定が可能です。
なお、訪問看護ステーションの「精神科訪問看護基本療養費」とは算定する主体が異なります。精神科訪問看護指導料は病院・診療所側の報酬、精神科訪問看護基本療養費は訪問看護ステーション側の報酬と整理しておきましょう。
訪問看護ステーションが精神科訪問看護指導料を知っておくメリット
精神科訪問看護指導料は訪問看護ステーションが直接算定するものではありません。
しかし、連携先の報酬体系や制度を理解しておくことで、日々の業務に役立つメリットがあります。どのような利点があるのか、詳しくみていきましょう。
連携先の診療所・病院とスムーズに相談できるようになる
連携先の医師が「精神科訪問看護指導料」という言葉を使った際に、それが何を指すかを訪問看護ステーション側が理解していると、報告・相談がスムーズに進みます。
訪問回数や訪問時間を調整する場面でも、連携先の算定要件を把握しておくことで、医師との認識のずれが生じにくくなります。
訪問看護ステーション側の理解が深いと「連携しやすい」と感じてもらえる可能性があり、病院や診療所からの直接依頼にもつながるでしょう。
同月・同日算定のルールを把握でき返戻リスクを減らせる
精神科訪問看護指導料のルールを理解しておくと、返戻や算定ミスの防止につながります。
精神科訪問看護指導料と精神科訪問看護基本療養費は、原則として同一利用者さまに対して同月に併算定できません。
そのため、連携先の医療機関が精神科訪問看護指導料を算定している月は、訪問看護ステーション側で精神科訪問看護基本療養費を請求すると返戻につながる可能性があります。
ただし、条件によっては例外的に両者の算定が認められます。事前に算定状況を確認しておきましょう。
精神科訪問看護指導料の区分と点数
精神科訪問看護指導料には(Ⅰ)と(Ⅲ)の2区分があり、訪問する利用者さまが同一建物内に複数いるかどうかでどちらかに該当するか変わります。
それぞれの点数と算定条件を押さえておきましょう。
精神科訪問看護指導料(Ⅰ)
精神科訪問看護指導料(Ⅰ)は、入院中以外の精神障害を有する利用者さま、またはそのご家族に訪問した場合に算定します。
ただし同一建物居住者は除きます。算定点数は以下のとおりです。
| 訪問職種 | 訪問時間 | 週3日目まで | 週4日目以降 |
| 保健師・看護師・作業療法士・精神保健福祉士 | 30分以上 | 580点 | 680点 |
| 30分未満 | 445点 | 530点 | |
| 准看護師 | 30分以上 | 530点 | 630点 |
| 30分未満 | 405点 | 490点 |
連携先の病院や診療所がこの点数で算定している場合、訪問看護ステーション側での同月算定は原則できません。
精神科訪問看護指導料(Ⅲ)
精神科訪問看護指導料(Ⅲ)は、同一建物居住者である入院中以外の精神障害を有する利用者さま、またはそのご家族を複数人訪問した場合に算定します。
令和8年度の診療報酬改定から、同一日に3人以上を訪問する場合の区分がさらに細かく規定されました。なお、10人以上の区分は週単位ではなく月単位での算定となります。
<同一日に2人の場合>
| 訪問職種 | 訪問時間 | 週3日目まで | 週4日目以降 |
| 保健師・看護師・作業療法士・精神保健福祉士 | 30分以上 | 580点 | 680点 |
| 30分未満 | 445点 | 530点 | |
| 准看護師 | 30分以上 | 530点 | 630点 |
| 30分未満 | 405点 | 490点 |
<同一日に3〜9人の場合>
| 訪問職種 | 訪問時間 | 週3日目まで | 週4日目以降 |
| 保健師・看護師・作業療法士・精神保健福祉士 | 30分以上 | 293点 | 343点 |
| 30分未満 | 225点 | 268点 | |
| 准看護師 | 30分以上 | 268点 | 318点 |
| 30分未満 | 205点 | 248点 |
同一日に10人以上を訪問する場合は、1日あたり「10〜19人」「20〜49人」「50人以上」と分類されています。
グループホームをはじめとする同一建物で複数の利用者さまに訪問する場合、連携先の診療所がどの区分で算定しているかを把握しておくと、算定調整の際に役立つでしょう。
精神科訪問看護指導料の算定要件
精神科訪問看護指導料を算定するには、以下の要件を満たす必要があります。
- 精神科を標榜する保険医療機関であること
- 精神科を担当する医師の指示にもとづいて訪問看護をおこなうこと
- 保健師・看護師・准看護師・作業療法士・精神保健福祉士が訪問すること
- 対象となる利用者さまが入院中でないこと
なお、訪問看護ステーションが算定する精神科訪問看護基本療養費では、精神保健福祉士は算定対象の職種に含まれません。
連携先の医療機関と情報共有する際は、この違いを理解しておきましょう。
精神科訪問看護指導料と精神科訪問看護基本療養費の違い
名称が似ているため混同されやすいですが、精神科訪問看護指導料と精神科訪問看護基本療養費は、算定する主体や根拠、使用単位がいずれも異なります。
算定する主体と根拠の違い
精神科訪問看護指導料と精神科訪問看護基本療養費のおもな違いは、以下のとおりです。
| 項目 | 精神科訪問看護指導料 | 精神科訪問看護基本療養費 |
| 算定する主体 | 病院・診療所(みなし訪問看護) | 訪問看護ステーション |
| 算定根拠 | 診療報酬(医科点数表) | 精神科訪問看護療養費 |
| 訪問できる職種 | 保健師・看護師・准看護師・作業療法士・精神保健福祉士 | 保健師・看護師・准看護師・作業療法士 |
| 区分 | (Ⅰ)(Ⅲ) | (Ⅰ)(Ⅲ)(Ⅳ) |
| 使用される単位 | 点数 | 円 |
両者の実務上の最大の違いは、精神科訪問看護指導料では精神保健福祉士も訪問できる職種に含まれる点です。連携先から精神保健福祉士が派遣されている場合、精神科訪問看護指導料での算定と考えてよいでしょう。
同月・同日算定のルール
先述した通り、連携先が精神科訪問看護指導料を算定している月は、同じ利用者さまに対して、訪問看護ステーション側で精神科訪問看護基本療養費を請求することは、原則できません。
ただし、次の条件に該当する場合は、例外的に両者を同月に算定することが認められています。
- 別表第7の疾病等の利用者さまに対して算定した場合
- 特別訪問看護指示書または精神科特別訪問看護指示書が交付され、週4日以上の訪問看護が計画されている場合
- 退院後1か月以内の利用者さまで、当該医療機関が在宅患者訪問看護・指導料等を算定した場合、または退院後3か月以内の利用者さまで精神科訪問看護・指導料を算定した場合
- 緩和ケア・褥瘡ケア・人工肛門ケアおよび人工膀胱ケアの専門の研修を修了した看護師が共同して訪問看護をおこなった場合
- 精神科在宅患者支援管理料を算定している利用者さまの場合
- 精神科在宅患者支援管理料の施設基準を届け出ている医療機関において、精神保健福祉士が精神科訪問看護指導をおこなった場合
返戻を防ぐには、連携先の算定状況をあらかじめ把握しておくことが大切です。新規の利用者さまの依頼を受けた際は、連携先の医療機関に算定内容を確認しておきましょう。
関連記事:精神科訪問看護基本療養費とは?3つの区分と対象者・算定要件を詳しく解説
精神科訪問看護指導料のおもな加算
精神科訪問看護指導料には、訪問の状況や時間帯に応じてさまざまな加算が設けられています。おもな加算は、以下のとおりです。
| 加算名 | 内容 |
| 複数名精神科訪問看護・指導加算 | ・保健師または看護師がほかの保健師・看護師・作業療法士・精神保健福祉士・准看護師・看護補助者と同時に訪問した場合に算定 ・同行職種・同一建物内の人数・1日の訪問回数によって点数が異なる |
| 長時間精神科訪問看護・指導加算 | ・1回の訪問が90分を超えた場合に算定 ・週1日が限度(対象者によっては週3日まで) |
| 夜間・早朝訪問看護加算 | ・夜間(午後6時〜午後10時)または早朝(午前6時〜午前8時)に訪問した場合に算定 |
| 深夜訪問看護加算 | ・深夜(午後10時〜午前6時)に訪問した場合に算定 |
| 精神科緊急訪問看護加算 | ・患者またはご家族の求めに応じて医師より指示を受けて緊急訪問を実施した場合に算定 |
| 精神科複数回訪問加算 | ・精神科在宅患者支援管理料を算定する医療機関が、1日に2回または3回以上訪問した場合に算定 |
| 看護・介護職員連携強化加算 | 登録喀痰吸引等事業者の介護職員への技術指導等をおこなった場合に、月1回に限り算定 |
| 特別地域訪問看護加算 | 遠い地域や特定の地域の利用者さまを訪問する場合に算定 |
| 外来感染対策向上加算 発熱患者等対応加算 連携強化加算 サーベイランス強化加算 抗菌薬適正使用体制加算 | 感染対策に関する体制整備や対応をおこなった場合に算定(診療所のみ) |
| 訪問看護医療DX情報活用加算 | 電子資格確認により患者の診療情報を取得・活用した場合に算定。月1回限り |
これらの加算は病院や診療所が算定するものですが、訪問看護ステーション側の加算体系と共通する部分も多くあります。
連携先の算定状況を理解しておくと、訪問時間帯の調整や緊急訪問の対応などで認識のずれを防げるでしょう。
精神科訪問看護指導料に関するよくある質問
精神科訪問看護指導料について、多く寄せられる質問にお答えします。
知識を深めて、実務に役立てましょう。
Q1:精神科訪問看護指導料と精神科訪問看護指示料は何が違いますか?
両者の名称は似ていますが、まったく異なるものです。
精神科訪問看護指導料(Ⅰ012)は病院や診療所が訪問看護をおこなった際に算定する診療報酬です。一方、精神科訪問看護指示料は病院や診療所が訪問看護ステーションへ精神科訪問看護指示書を交付した際に算定するもので、訪問看護の実施に対する報酬ではありません。
なお、訪問看護ステーション側が算定するのは、精神科訪問看護基本療養費です。
Q2:精神科訪問看護指導料を算定している医療機関かどうかは、どうすれば確認できますか?
連携先の医師や医療機関の事務担当者に直接確認するのが確実です。
精神科訪問看護指導料を算定しているかどうかは、同月に訪問看護ステーション側で精神科訪問看護基本療養費を算定できるかの判断にもかかわるため、連携開始前に確認しておきましょう。
確認の際は、「当ステーションで精神科訪問看護基本療養費を算定する予定ですが、貴院で精神科訪問看護指導料を算定されていますか」と具体的に尋ねると、スムーズに情報共有できます。
精神科訪問看護指導料の基本を押さえ、連携先との信頼関係を強化しよう
精神科訪問看護指導料は訪問看護ステーションが直接算定するものではありません。
しかし、連携先の病院・診療所がどのような報酬体系で動いているかを理解しておくことは、返戻リスクの回避やスムーズな連携、制度の理解につながります。
今回解説した内容を参考に連携先の医療機関と定期的に情報共有をおこない、利用者さまにとって最適なサービスを提供しましょう。
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<参考サイト・文献>
NsPace Careerナビ 編集部 「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。
