看護の引き出しを増やす場所——管理者・池田さんが語る“素直な人”が輝く理由 ～レイケア訪問看護リハビリステーション 池田さんにインタビュー～

神奈川県横浜市にある「レイケア訪問看護リハビリステーション」で管理者を務める池田さんに、訪問看護に転身したきっかけや現場での気づき、スタッフ育成への思いを伺いました。未経験から訪問看護を始め、今では後進の成長を支える立場となった池田さん。その穏やかな語り口からは、“人とともに育つ”訪問看護のあたたかさが伝わってきます。

子どもとの時間がくれた転機——訪問看護への一歩

―もともとは病棟で勤務されていたとのことですが、訪問看護に転職されたきっかけを教えてください。

「子どもとの時間を大事にしたくて、夜勤のない働き方ができる訪問看護を選びました。三交代制の病棟で働いていた頃は、朝送り出すこともできず、夜いないことで不安にさせてしまって…。体力的にも大変だったんです」

家庭と仕事の両立に悩みながらも、看護師として働き続けたいという気持ちは強くあった池田さん。そんな中、訪問看護師として活躍する親族の姿が、次のキャリアへの背中を押してくれたそうです。

「イキイキと働いていて、やりがいがあるって話を聞いていたんです。最初は“在宅って何をするのか想像もつかない”と思っていましたが、生活に合わせて働ける条件面にも惹かれて、思い切って挑戦しました」

「今ここにいる人」を看る——病棟との違いに戸惑いながらも

―実際に訪問看護を始められて、ギャップなどはありましたか？

「はい、最初に就職した訪問看護ステーションは立ち上げ時期で、スタッフ全員が未経験に近い状態でした。また、訪問看護は病院の環境とは違って、利用者さんの薬の情報も不十分なまま訪問に行く―――そういった違いがとても怖かったです。いきなり“お風呂お願いします”と頼まれて戸惑ったこともありました」

病棟では、すべての情報を確認してから患者さんに関わるのが当たり前。けれど訪問の現場では、その場で状況を把握し、臨機応変に対応する力が求められます。

「“今を看ること”の大切さに気づかされました。病院では過去のデータが重要視されますが、在宅では“今ここにいるこの人”を中心に考えるんですね。利用者さんや介護職の方との関わりを通じて、少しずつ視点が変わっていきました」

レイケアとの出会いと、“管理者”という新たな挑戦

―今のレイケア訪問看護リハビリステーションに入職されたきっかけは？

「訪問看護師として働いていたなかで、代表からお声がけいただきました。正直、転職は考えていませんでしたし、管理者経験もなかったので不安もありました。でも、代表の在宅医療に対する志に心を動かされて、“一緒に働いてみたい”と思ったんです」

池田さんの背中を押したのは、代表の一言でした。「一冊の本との出会いで在宅の世界に入った」という話に親近感があり、自分もその流れの一員として関わっていきたいと思うようになったそうです。

「看護も、管理も学べることがありがたかったです。どちらか一方だけでなく、両方を経験することで、自分の“引き出し”も増えましたし、スタッフの力に支えられている実感があります」

経営理念として「大切な人に信頼を 支える私たちに誇りと生きがいを」としています。スタッフ同士支え合い、「大切な人」である、利用者さんやご家族、連携先と絆を育んでいく―――。そんな想いが込められた理念は、大切な道しるべとなっています。

“素直さ”を育む現場——チームづくりで大切にしていること

―訪問看護師の教育をするにあたって、大切にしている価値観はありますか？

「“素直さ”です。経験の有無より、素直に受け止められる人のほうが成長できると思っています」

池田さんが重視しているのは、「教える」よりも「ともに考える」姿勢。スタッフが自ら学び、成長できる場を意識的につくっていると話します。

「週1回、1時間程度のミーティングでは、利用者情報の共有に加えて、スタッフが持ち回りで勉強したことをシェアする時間も設けています。資料はわざわざ作らないでいいよって伝えています。準備に時間をかけすぎず、日常の中で学べるようにしています」

“持ち回り制”にすることで、新しい情報や知識、学び直しにもつながり、チーム全体で学びが深まっていきます。

また、「迷ったらすぐ報告・相談」という合言葉も徹底。違和感をそのままにせず、言葉にすることが、ケアの質を高める第一歩になるといいます。

「報告って、誰かのためというより、自分の安心のためでもあるんです。報告してよかったと思える体験を積むことで、スタッフはどんどん自立していきます。結果、スタッフの看護の質も上がりますし、利用者さんやご家族も良いケアを受けることができる。すごく良い循環だと思っています」

働きやすさは「一人ひとり」に向き合うことから

―働きやすさの工夫もたくさんあるそうですね。

「直行直帰や移動手段の選択、自家用車使用時の手当など、働きやすさを考えています。なかにはスタッフの声から生まれた制度もあります。給与面では、訪問件数に応じたインセンティブや、“どしゃぶり手当”（大雨時の訪問に対する手当）なんていうユニークな制度もあります」

制度は形式的なものではなく、働くスタッフ一人ひとりの状況に合わせて設計されています。たとえば運転に不安のある新人スタッフからは「社用車ではなく、日頃も練習できる乗り慣れた自家用車で訪問したい」という声を聞き、制度を導入しました。

「直行直帰の制度を導入して時間を上手に使えるようになったと、スタッフが言ってくれました。事務所には1日1回、顔を出してもらってお互いに話すようにしています。と言っても、スタッフ同士が利用者さんのことをいつも考えてくれていて、自然とあちこちで”小さなカンファレンス“が開催されていますね」

―忙しくてもコミュニケーションを大切にされていると感じました。勉強会の時間を確保するのは大変ではないでしょうか？

「はい、その時間だけは訪問を入れないようにしています。訪問件数を増やすことだけがゴールではないと考えています。スタッフがやりがいを持って働き続けられることが、利用者さんにとっての“良い看護”につながると信じています」

―最後に、これから訪問看護に挑戦しようと考えている方へメッセージをお願いします。

「やりたいと思ったら、まずは進んでほしいです。未経験でも、うちはゼロから一緒に育てていける体制があります。素直に学ぶ姿勢があれば、どんな方でも成長できると信じています」

インタビュアーより

池田さんのお話を通じて、利用者さまやご家族のことを思って、自然とスタッフが考え行動するサイクルが根付いていると感じました。忙しい訪問の合間に話し合うことの大切さを、スタッフそれぞれが実感しているからこそ、日々の看護やケアにも活かせているのではないでしょうか。

そして何よりも、池田さんご自身が「一人の看護師」として現場を大切にし続けている姿勢が印象的でした。役職に関係なく、仲間として、伴走者として寄り添うその姿に、訪問看護の本質があるように思います。

事業所概要

事業所名：レイケア訪問看護リハビリステーション

住所：神奈川県横浜市南区通町2丁目-39-11 7階

事業所紹介ページ：https://ns-pace-career.com/facilities/13982