訪問看護ステーションの管理者とは?役割や4つの条件、必要な資格を解説

「訪問看護の管理者の役割って何?」「訪問看護の管理者になるための条件を知りたい」訪問看護の管理職への転職に興味があるものの経験したことがなく、悩みや不安を感じている看護師の方は多いはず。
というのも、訪問看護ステーションに勤務する看護師の割合は全体の6.7%であり、ほとんどの看護師は訪問看護での経験がないためです。訪問看護の管理者の経験者はさらに少ないといえるでしょう。
そこで訪問看護の管理者になる条件や業務内容、必要な資格、所長との違いなどについて解説します。自分が管理者を目指せるのか、転職やキャリアアップに向けて何を準備すべきかを判断できるようになり、転職後のミスマッチを防げるようになるでしょう。
訪問看護ステーションの管理者とは?
訪問看護ステーションの管理者とは「疾病または負傷により自宅での療養を受ける利用者さまに対して、療養上の世話や診療の補助をおこなう看護師をマネジメントする者」のことです。訪問看護の管理者は以下の3つのタイプに分けられます。
- 管理者かつ経営者
- スタッフと経営者の中間の立場にある管理者
- 訪問スタッフかつ管理者
「管理者=経営者」をイメージする方が多いでしょう。
ただし、管理者と一言でいっても、訪問看護ステーションによって少しずつ立場が違い、求められる役割が異なります。
そのため、訪問看護の管理者を理解するためには、まずは管理者がどの位置にあるのかを把握することが大切です。
訪問看護ステーションの管理者の役割
訪問看護の管理者の役割はおもに4つです。
- 事業経営
- 提供するケアやサービスの質の管理
- スタッフの管理
- 多職種との連携
それぞれについて詳しく解説します。
事業経営
「事業経営したことないからどうやって進めていけばいいのか分からない」「倒産訪問看護ステーションの管理者には、事業所を安定して運営する役割があります。具体的には、以下のような業務です。
- 利用者さまの数を増やす
- 訪問看護師を確保する
- 事業計画書を作成する
- 資金を確保する
- 設備や備品を手配する
病院勤務では事業経営にかかわる機会が限られるため、「経営の経験がないから不安」と感じる看護師もいるでしょう。訪問看護の管理者としてこういった役割が求められるため、利用者さまとスタッフ、双方に向けた支援が必要といえます。
提供するケアやサービスの質の管理
訪問看護の管理者には、提供するケアやサービスの質の管理が欠かせません。
しかし、訪問看護師は基本的には利用者さまの居宅で1人で看護サービスを提供するため、どのようなケアをおこなっているのか、過不足なくケアがおこなわれているのかを評価することが難しいのが現状です。
そのため、管理者はスタッフの記録や報告書を見て、利用者さまに最適なケアがおこなわれているのか確認し、ケアやサービスの質を高めましょう。
スタッフの管理
訪問看護ステーションの管理者には、スタッフが適切に働ける環境を整え、チームをまとめる役割があります。具体的には、以下のような業務です。
- シフトや訪問スケジュールの作成
- 勤怠管理
- スタッフの採用・育成
- 急な休みや緊急訪問への対応
- スタッフの相談対応
スタッフの希望や能力、利用者さまの状態に合わせて勤務表を作成できると、効率的に働くことができ、利用者さまにとって適切なサービスを提供できます。また、スタッフが安心して働ける環境をつくることは、訪問看護の質の向上や人材の定着にもつながります。
多職種との連携
訪問看護ステーションの管理者には、医師やケアマネジャー、リハビリスタッフなどと連携し、利用者さまを支える体制を整える役割があります。
在宅療養では、利用者さまの状態や希望に応じて、さまざまな職種がかかわります。多職種間で情報共有が不足すると、必要なケアが提供できなかったり、利用者さまや家族の希望に沿わない支援になったりする可能性があります。
実際に、エール訪問看護リハビリステーションでは、ケアマネジャーやヘルパーなどと利用者さまの情報を共有し、顔を合わせた関係づくりを重視しています。
関連記事:チームで支え合いながら、地域とつながる~エール訪問看護リハビリステーション 谷島さん・久保さんにインタビュー~

訪問看護ステーションの管理者の年収
日本看護協会の調査によると、訪問看護ステーションの管理者の平均年収は591万1,504円です。
管理者へのキャリアアップによって年収アップを目指せる可能性があります。管理者の年収事情については下記の記事で詳しく解説しています。
関連記事:訪問看護の管理者の年収は600万円!大変さとやめたいと感じる現状を紹介
訪問看護の管理者になるための条件
訪問看護ステーションには、原則として専従かつ常勤の管理者を1名配置する必要があります。ここでは、訪問看護ステーションの管理者に求められる主な条件や、管理者を目指すうえで身につけておきたい経験・知識について解説します。
保健師・助産師・看護師のいずれかの資格が必要
訪問看護ステーションの管理者は、原則として保健師、助産師または看護師でなければなりません。そのため、准看護師や介護福祉士は、原則として管理者にはなれません。
ただし、やむを得ない理由がある場合は、この限りではないとされています。なお、管理者には、適切な訪問看護を提供するために必要な知識や技能も求められます。
原則として専従かつ常勤の管理者を配置
訪問看護ステーションでは、原則として専従かつ常勤の管理者を配置することが基準とされています。
ただし、管理業務に支障がない場合は、一定の条件のもとで兼務できる場合があります。
たとえば、同じ訪問看護ステーションの看護職員として勤務する場合や、一定の条件を満たす近隣の事業所・施設などで職務に従事する場合です。兼務の可否や運用は、自治体によって異なる場合があるため、事前の確認が必要です。
医療機関や訪問看護での経験を活かせる
訪問看護ステーションの管理者には、利用者さまの状態を把握し、スタッフを適切に指導・管理するための知識や技能が求められます。
そのため、病院などの医療機関や訪問看護の現場で、さまざまな疾患や医療処置に対応した経験は、管理者として業務をおこなううえで役立ちます。とくに、ターミナルケアや医療依存度の高い利用者さまへの対応、多職種連携などの経験は、訪問看護ステーションの運営やスタッフ支援にも活かせるでしょう。
訪問看護や管理業務に関する知識・技能を身につける
訪問看護の管理者には、看護の知識だけでなく、スタッフの管理や業務の調整、事業所の運営など幅広い知識や技能が求められます。
訪問看護の経験が少ない場合は、訪問看護に関する研修や管理者向けの研修を活用し、必要な知識を身につけることが大切です。
研修では、訪問看護の制度やサービス提供の仕組み、スタッフのマネジメント、多職種連携など、管理者として役立つ知識を学べます。
訪問看護の管理者の業務内容
主主に以下の4つが訪問看護の管理者の業務内容です。
- スタッフの育成とマネジメント
- 訪問スケジュールの調整
- 営業活動の管理
- 看護記録の内容確認と修正
それぞれを詳しく解説します。「訪問看護の管理者は具体的に何をするの?」と疑問に感じる方はぜひ参考にしてください。
スタッフの育成とマネジメント
スタッフの育成とマネジメントは、訪問看護の管理者の重要な業務です。
というのも、スタッフのケアが利用者さまの満足度を左右するためです。
具体的には、外部から講師を招いて研修をしたり、管理者自身で勉強会を開催したりしてスキルアップできる機会を提供しましょう。訪問看護の経験が少ないスタッフに対しては、訪問に慣れるまで同行訪問をおこないスタッフを育成していきましょう。
スタッフの能力開発の支援だけではなく、マネジメントも重要です。
働く理由や看護師の経歴が異なるスタッフに対して、強みや弱みを把握することが大切です。訪問看護の管理者は、定期的な個別面談の実施や、普段からスタッフとコミュニケーションを図ることで、スタッフの不安を取り除きスキルアップの機会をつくりましょう。
スタッフの育成やマネジメントについては以下の記事も参考にしてみてください。
関連記事:訪問看護管理者が真にやるべきこと~スタッフ支援としくみづくりに注力する~
訪問スケジュールの調整
訪訪問スケジュールを調整することも、訪問看護の管理者の欠かせない業務です。
訪問看護では、あらかじめ訪問日時が決定しているケースだけではなく、以下のような変則的なケースにも対応しなければなりません。
- 急に退院が決まる
- 利用者さまの状態が悪くなる
- 施設から出て状態を確認する
厚生労働省の調査によると、令和4年の訪問看護の利用者数は約69万人であり、年々増加しています。一方で、事業所に所属するスタッフ数は10人未満のところが多く、少ない人数で通常の訪問と緊急の訪問、さらには夜間や休日の訪問にも対応します。
利用者さまに適切に対応しつつ、スタッフの負担をできるだけ減らすために、管理者のスケジュール調整が重要になります。
営業活動の管理
訪問看護の管理者の業務として、営業活動の管理が欠かせません。
訪問看護の営業の目的は、新規の利用者さまを獲得することです。特に、開設したばかりの事業所は、営業をおこなわなければ新規の利用者さまを獲得できません。
具体的には、利用者さまを仲介するケアマネジャーや施設、病院に出向いて訪問看護ステーションの特徴をしっかり伝えましょう。
丁寧な営業活動を続けることで、訪問看護ステーションの印象を持ってもらい、利用者さまの紹介につながるでしょう。
看護記録の内容確認と修正
訪問看護の管理者は、記録の内容を確認して必要であれば修正を依頼します。
管理者はスタッフが作成した記録に必要な項目がすべて記載されているか、正しい内容や表現であるかなどを確認することが重要です。
その理由は、適切な記録でなければ、利用者さまとのトラブルの際に証拠として使えなかったり、診療報酬に影響したりする恐れがあるためです。裁判に発展した際に、記録の提示が求められるケースもあるため、日ごろから適切な記録の記載を心がけてください。
実施したケアや、利用者さまの発言、反応などを書いているか確認してください。記録のマニュアルを作成してスタッフに周知できると、統一した記録を書けるでしょう。
訪問看護ステーションの管理者の大変さ
訪問看護ステーションの管理者は、事業所の運営やスタッフの管理、多職種との連携など、幅広い役割を担うため、大変さを感じることもあります。とくに、スタッフの急な休みや利用者さまの状態変化への対応など、予定どおりに進まない状況にも臨機応変に対応しなければなりません。
また、管理者が訪問看護の現場に出る場合は、訪問業務と管理業務を両立する必要があります。管理者を目指す方は、こうした訪問看護ならではの大変さも理解しておくことが大切です。訪問看護の大変さや乗り越えるコツについては、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:訪問看護は大変?乗り越えるコツや現役訪問看護師の声について紹介
訪問看護ステーションの所長と管理者の違い
訪問看護ステーションの所長と管理者の違いは、法律上の設置義務があるかどうかです。
管理者は、指定訪問看護ステーションに配置することが法律で定められています。一方、「所長」は法律上の役職名ではないため、必ずしも設置する必要はありません。
ただし、訪問看護ステーションでは、管理者を「所長」と呼んだり、管理者が所長を兼ねたりするケースがあります。そのため、求人情報などで「所長」と記載されている場合は、管理者を指しているのか、管理者とは別の役職なのかを確認することが大切です。
訪問看護ステーション管理者向けの研修
訪問看護の管理者は、自身のスキルアップのために研修受講の機会を設けること訪問看護の管理者は、自身のスキルアップのために研修を受講することが望ましいとされています。
- 新任の管理者向け:訪問看護新任管理者研修会
- スキルアップ向け:訪問看護管理者養成研修会
実際に、「訪問看護師基礎研修会」「訪問看護における医療安全に関する研修会」「訪問看護運営に必要なリスクマネジメント」などが開催されており、各都道府県の看護協会や全国訪問看護事業協会などで確認できます。
訪問看護の管理者と一言でいっても、訪問看護の経験豊富な管理者や、未経験の管理者がいるため、それぞれの状況に合わせた研修を受けましょう。
訪問看護の管理者に関するよくある質問
ここでは、訪問看護の管理者に関するよくある質問を紹介します。
Q1:看護師資格を持っていないと訪問看護ステーションの管理者になれないの?
指定訪問看護ステーションでは、原則として保健師、看護師または助産師の資格を持つ者を管理者として配置する必要があります。したがって、准看護師や介護福祉士などは、原則として管理者になれません。
ただし、管理者の長期療養や出張などのやむを得ない事情があり、かつ、利用者の療養生活の質の向上に関して相当の知識や経験を有する者である場合は、例外的に資格要件が問われないケースがあります。
Q2:訪問看護ステーションの管理者は兼務できるの?
訪問看護ステーションの管理者は、原則として専従・常勤である必要があります。
しかし、一定の条件を満たせばほかの職務を兼務できる場合があります。
Q3:訪問看護ステーションの管理者に向いている人の特徴はありますか?
訪問看護ステーションの管理者には、スタッフや利用者さま、多職種と協力しながら、より良いケアを追求できる人が向いています。
実際に、薬剤師として訪問看護事業の立ち上げに関わった後、看護師資格を取得した管理者もいます。多職種連携を深めるために新たな知識や資格の習得に挑戦した経験は、管理者としての強みになるでしょう。
また、スタッフの専門性を活かしながら、学び合える環境をつくる姿勢も重要です。
関連記事:「楽しい」を原動力に~薬剤師×訪問看護師が拓く多職種連携の未来~コスモ訪問看護リハビリステーション蓮田 橋本さんにインタビュー
訪問看護ステーションの管理者の役割と仕事内容を理解してキャリアアップにつなげよう
保健師、助産師または看護師の資格を持っていなければ、原則として訪問看護の管理者にはなれません。
訪問看護の管理者は、事業所の運営だけではなく、スタッフの育成やスケジュール調整、利用者さまへの対応などさまざまなスキルが必要です。
しかし管理者として働くことで、自分自身のスキルアップはもちろんのこと、地域に愛される訪問看護ステーションへと発展していくことが、なによりのやりがいとなるでしょう。
在宅医療へのニーズが高まっている昨今、訪問看護師としてキャリアを積み重ねて訪問看護の管理者を目指してはいかがでしょうか。
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参考サイト・文献
指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準|e-GOV法令検索
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