【完全版】訪問看護の管理者の役割とは?管理者になるための4つの条件解説

公開日:2024/02/28 更新日:2024/02/28
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「訪問看護の管理者の役割って何?」「訪問看護の管理者になるための条件を知りたい」

訪問看護の管理職への転職に興味があるものの経験したことがなく、悩みや不安を感じている看護師の方は多いはず。

というのも、訪問看護ステーションに勤務する看護師の割合は全体の5.1%であり、ほとんどの看護師は訪問看護での経験がないためです。訪問看護の管理者の経験者はさらに少ないといえるでしょう。

そこで訪問看護の管理者の条件や業務内容などについて解説します。この記事が、訪問看護の管理者についての悩みを抱えるあなたの助けになれると幸いです。

訪問看護ステーションの管理者とは?

訪問看護ステーションの管理者とは「疾病または負傷により自宅での療養を受ける利用者さまに対して、療養上の世話や診療の補助をおこなう看護師をマネジメントする者」のことです。訪問看護の管理者は以下の3つのタイプに分けられます。

  • 管理者かつ経営者
  • スタッフと経営者の中間の立場にある管理者
  • 訪問スタッフかつ管理者

「管理者=経営者」をイメージする方が多いでしょう。

ただし、管理者と一言でいっても、訪問看護ステーションによって少しずつ立場が違い、求められる役割が異なります。

そのため、訪問看護の管理者を理解するためには、まずは管理者がどの位置にあるのかを把握することが大切です。

訪問看護の管理者の役割

訪問看護の管理者の役割は主に4つです。

  • 事業経営
  • 提供するケアやサービスの質の管理
  • スタッフの管理
  • 多職種との連携

それぞれについて詳しく解説します。

事業経営

「事業経営したことないからどうやって進めていけばいいのか分からない」「倒産するかもしれないから怖い」など訪問看護の管理者を勤める際に、事業経営に不安を感じる方は多いでしょう。多くの看護師は病院勤務であり、事業経営にかかわる機会があまりありません。

訪問看護ステーションの事業経営は、訪問看護の管理者の役割です。安定した事業経営には以下の5つが必要です。

  • 利用者さまの数を増やす
  • 訪問看護師を確保する
  • 事業計画書を作成する
  • 資金を確保する
  • 設備や備品を手配する

訪問看護の管理者としてこういった役割が求められるため、利用者さまとスタッフ、双方に向けた支援が必要といえます。

提供するケアやサービスの質の管理

訪問看護の管理者には、提供するケアやサービスの質の管理が欠かせません。

というのも、訪問看護ステーションの主なサービスは看護ケアの提供であるためです。看護ケアの良し悪しで利用者さまと家族は事業所を自由に選べます。利用者さまに選ばれないと、安定した事業の運営はできないでしょう。

ですが、訪問看護師は利用者さまの居宅で看護サービスを提供するため、どのようなケアをおこっているのか、過不足なくケアをおこなっているのか評価が難しいのが現状です。

そのため、管理者はスタッフの記録や報告書を見て、利用者さまに最適なケアがおこなわれているのか確認してください。ときには、スタッフに指導をしてケアやサービスの質を高めましょう。

スタッフの管理

訪問看護の管理者にはシフト作成や勤怠管理などスタッフの管理が大切です。

スタッフの希望や能力、利用者さまの状態に合わせて勤務表を作成できると、効率的に働くことができ、利用者さまにとって適切なサービスを提供できます。また、スタッフの急な休みや緊急の訪問への調整が求められます。

さらに、スタッフの育成も重要な役割です。利用者さまに継続して利用してもらうためにはサービスの質の向上が欠かせません。スタッフの育成については後述しているので、ぜひ参考にしてください。

多職種との連携

訪問看護では多職種との連携が不可欠です。

管理者は、医師やリハビリスタッフ、ケアマネジャーなどと連携しなければなりません。多職種とスムーズに連携できると、利用者さまへのより良いケアの提供につながります。

利用者さまや家族の思いに沿ったケアの提供が大切です。その理由は、利用者さまや家族の思いに沿わなければ訪問看護師の一方的なケアとなり、満足度の低下につながるためです。

結果として、訪問看護の利用の継続とはならず、収益の悪化をきたす恐れがあります。

ただし、病院や施設で「患者さまに寄り添ったケア」を実践してきた看護師の経験を活かせば「利用者さまへのより良いケアの提供」に繋がるでしょう。

訪問看護の管理者になるための4つの条件

訪問看護の管理者は、以下の4つの条件を満たすことが欠かせません。

  • 看護師・保健師・助産師の資格保有者
  • 専従かつ常勤
  • 医療機関での勤務経験
  • 訪問看護にかかわる研修への参加

それぞれを詳しく解説します。「管理者になるためにはどのような条件があるのか」「私は管理者の基準を満たしているのか」という疑問を感じている方はぜひ参考にしてください。

訪問看護の管理者になれるのは看護師・保健師・助産師の資格保有者

訪問看護の管理者は看護師や保健師、助産師の資格保有者のみです。

訪問看護ステーションで働くための資格要件はありませんが、管理者となるためには資格が必要です。准看護師や介護福祉士は管理者にはなれません。

やむを得ない理由がある場合は資格を保有していなくても良いとされています。

具体的には「管理者の長期間の傷病や出張などの理由」や「利用者の療養生活の質向上に関して相当の知識や経験を有している」などのケースであれば資格の保有は問わないとされています。

ただし、この理由に当てはまるケースは非常にまれであるため、訪問看護の管理者は資格保有者のみと考えておきましょう。

専従かつ常勤

訪問看護の管理者は専従、かつ常勤が条件のひとつです。それぞれの用語について以下で解説しました。

専従管理者の業務に専ら従事すること
常勤訪問看護ステーションにおける所定労働時間を通じて勤務する労働形態のこと

同じ訪問看護ステーション内で管理書の業務をおこないながら、利用者さまのご自宅への訪問を担当したり、オンコール業務をおこなったりするケースもあります。

医療機関での勤務経験

訪問看護の管理者には医療機関での勤務経験が求められます。

というのも、要件として定められているためです。

訪問看護は要介護度の高い方や医療処置を必要とする方が利用しており、その割合が年々増加しています。近年、在宅医療のニーズの高まりにともない、ターミナルケアや複数の疾患をもった利用者さまに対応しなければなりません。

そのため、ある程度の医療機関での経験が必要です。

転職を希望する訪問看護ステーションにより、利用者さまの疾患や対応する医療処置は異なるため、一度ホームページで確認しましょう。

訪問看護にかかわる研修への参加

訪問看護の管理者になる条件のひとつに、訪問看護にかかわる研修への受講が定められており、看護師としての知識やスキルが必要です。

看護師の就業期間や実績などは明らかにされていませんが、事業を申請する際の審査の対象の項目となるため、十分な経験やスキルを要していることが望ましいといえます。

訪問看護の管理者の業務内容

主に以下の4つが訪問看護の管理者の業務内容です。

  • スタッフの育成とマネジメント
  • 訪問スケジュールの調整
  • 営業活動の管理
  • 看護記録の内容確認と修正

それぞれを詳しく解説するため「訪問看護の管理者は具体的に何をするの?」と疑問に感じる方はぜひ参考にしてください。

スタッフの育成とマネジメント

スタッフの育成とマネジメントは、訪問看護の管理者の重要な業務です。

というのも、スタッフのケアが利用者さまの満足度を左右するためです。

具体的には、外部から講師を招いて研修をしたり、管理者自身で勉強会を開催したりしてスキルアップできる機会を提供しましょう。訪問看護の経験が少ないスタッフに対しては、訪問に慣れるまで同行訪問をおこないスタッフを育成していきましょう。

スタッフの能力開発の支援だけではなく、マネジメントも重要です。

働く理由や看護師の経歴が異なるスタッフに対して、強みや弱みを把握することが大切です。訪問看護の管理者は、定期的な個別面談の実施や、普段からスタッフとコミュニケーションを図ることで、スタッフの不安を取り除きスキルアップの機会をつくりましょう。

スタッフの育成やマネジメントについては以下の記事も参考にしてみてください。

関連記事:訪問看護管理者が真にやるべきこと~スタッフ支援としくみづくりに注力する~

訪問スケジュールの調整

訪問スケジュールを調整することも、訪問看護の管理者の欠かせない業務です。

訪問看護では、あらかじめ訪問日時が決定しているケースだけではなく、以下のような変則的なケースにも対応しなければなりません。

  • 急に退院が決まる
  • 利用者さまの状態が悪くなる
  • 施設から出て状態を確認する

厚生労働省の調査によると、令和4年の訪問看護の利用者数は約69万人であり年々増加しています。一方で、事業所に所属するスタッフ数は10人未満のところが多く、少ない人数で通常の訪問と緊急の訪問、さらには夜間や休日の訪問にも対応します。

利用者さまに適切に対応しつつ、スタッフの負担をできるだけ減らすために、管理者のスケジュール調整が重要になります。

営業活動の管理

訪問看護の管理者の業務として、営業活動の管理が欠かせません。

訪問看護の営業の目的は、新規の利用者を獲得することです。特に、開設したばかりの事業所は、営業をおこなわなければ新規の利用者さまを獲得できません。

具体的には、利用者さまを仲介するケアマネジャーや、施設や病院に出向いて訪問看護ステーションの特徴をしっかり伝えましょう。

丁寧な営業活動を続けることで、訪問看護ステーションの印象を持ってもらえて、利用者さまへの紹介につながるでしょう。

看護記録の内容確認と修正

 訪問看護の管理者は、記録の内容を確認して必要であれば修正を依頼します。

管理者はスタッフが作成した記録に必要な項目がすべて記載されているか、正しい内容や表現であるかなどを確認することが重要です。

その理由は、適切な記録でなければ、利用者さまとのトラブルの際に証拠として使えなかったり、診療報酬に影響したりする恐れがあるためです。裁判に発展した際に、記録の提示が求められるケースもあるため、日ごろから適切な記録の記載を心がけてください。

実施したケアや、利用者さまの発言、反応などを書いているか確認してください。記録のマニュアルを作成してスタッフに周知できると、統一した記録を書けるでしょう。

訪問看護ステーション管理者向けの研修

訪問看護の管理者は、自身のスキルアップのために研修受講の機会を設けることが大切です。

  • 新任の管理者向け:訪問看護新任管理者研修会
  • スキルアップ向け:訪問看護管理者養成研修会

具体的な研修の内容は、各都道府県の看護協会や全国訪問看護事業協会などのホームページに記載されています。

訪問看護の管理者と一言でいっても、訪問看護の経験豊富な管理者や、未経験の管理者がいるため、それぞれの状況に合わせた研修を受けましょう。

訪問看護の管理者に関するQ&A

ここでは、訪問看護の管理者に関するよくある質問を紹介します。

  • 訪問看護の管理者の年収はどれくらい?
  • 訪問看護の管理者は准看護師の資格でもなれるの?
  • 訪問看護ステーションの所長と管理者の違いは?
  • 訪問看護の管理者は大変?やめたいときはいつ?
  • 訪問看護の管理者は兼務できるの?

訪問看護の管理者の年収はどれくらい?

訪問看護の管理者の年収は600万円前後とされています。

ただし、訪問看護の管理者の年収は正式に公表されておらず、所属する事業所やキャリアにより異なります。

そのため、訪問看護の管理者の年収が気になる方は、それぞれのホームページを見たり、転職の面接の際に聞いたりして確認してください。

訪問看護の管理者の年収については以下の記事も参考にしてみてください。

関連記事:訪問看護の管理者の年収は600万円!大変さとやめたいと感じる現状を紹介

訪問看護の管理者は准看護師の資格でもなれるの?

准看護師の資格で訪問看護の管理者にはなれません。

なぜなら、訪問看護の管理者は看護師や保健師、助産師でなければならないと定められているためです。

しかし、厚生労働省の調査によると、2020年の看護職員の有効求人倍率は2.2倍とされています。全産業の有効求人倍率は1.19倍であるため、看護業界は人手が不足している現状です。

そのため、事業所によっては、准看護師に管理者相当の役割を求めているところもあるかもしれません。

訪問看護ステーションの所長と管理者の違いは?

訪問看護ステーションの所長と管理者には「法律により設置が決められているか」の違いがあります。

管理者は法律で設置を定められていますが、所長は必ずしも設置する必要はありません。ただし、管理者は事務所の長であるため所長と呼んだり、管理者と所長を兼ねていたりするケースがあります。

訪問看護の管理者は大変?やめたいときはいつ?

高収入を期待できる訪問看護の管理者。

ただし、その分、業務がハードでさまざまな悩みを抱えて「管理者をやめたい」と考える方もいます。具体的には以下の悩みがあります。

  • スタッフの教育・育成ができない
  • スタッフの処遇・評価
  • レセプト以外の書類作成

事業所で管理者は一人であるケースが多く、孤独になりがちです。「相談できる相手がいない」「ほかの管理者がどうやってスタッフを教育しているのか知らない」などの声はよく聞かれます。

そのため、ほかの訪問看護ステーションの管理者が集まる場に参加して相談したり、多職種のスタッフと交流を持ったりして、悩みを解決できる機会をつくりましょう。

そうして得た解決方法を事業所に反映させることで、スタッフの成長や利用者さまへのケアの質向上に繋がり、管理者としてのやりがいを感じるでしょう。

訪問看護の管理者は兼務できるの?

訪問看護の管理者は、兼務できる場合と兼務できない場合があります。

管理業務に支障をきたさなければ、同じ事業所内や敷地内、隣接している事業所であれば、管理者またはスタッフとして働くことができます。

心身の負担や、勤務時間などに注意して行いましょう

まとめ

看護師や保健師の資格を持っていなければ、原則、訪問看護の管理者にはなれません。

訪問看護の管理者は、事業所の運営だけではなく、スタッフの育成やスケジュール調整、利用者さまへの対応などさまざまなスキルが必要です。

しかし管理者として働くことで、自分自身のスキルアップはもちろんのこと、地域に愛される訪問看護ステーションへと発展していくことが、なによりのやりがいとなるでしょう。

在宅医療へのニーズが高まっている昨今、訪問看護師としてキャリアを積み重ねて訪問看護の管理者を目指してはいかがでしょうか。

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参考サイト・文献

令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況|厚生労働省

訪問看護|厚生労働省

第69条、第70条6、第74条、第74条|e-GOV法令検索

指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準|厚生労働省

指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準|e-GOV法令検索

「指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準について」の一部改正について|厚生労働省訪問看護管理者が真にやるべきこと~スタッフ支援としくみづくりに注力する~

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記事投稿者プロフィール画像 NsPace Careerナビ 編集部

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