看護師が大学院に進む7つのメリット!デメリットと卒業後の働き方を解説

「患者さまをサポートできるように知識やスキルを高めたい」「教育や研究の道に進んで、看護の発展に貢献したい」
看護師として経験を重ねていくなかで、このように感じることはありませんか。
大学院への進学は、意欲がある看護師にとって、自己成長とキャリアアップを実現するための重要な選択肢です。
この記事では、看護師が大学院に進むことによるメリットやデメリット、卒業後の働き方を解説します。看護師の大学院進学の実情を理解することで、あなたのキャリアプランが広がるでしょう。
看護師が大学院に進む7つのメリット
看護師として質の高いケアを提供したい、キャリアアップを実現したいと考える場合、大学院への進学は有効な手段となります。
- 専門的な知識とスキルが身につく
- 新たな資格を取得できる
- キャリアアップの道が広がる
- 給料アップが期待できる
- 研究能力を身につけられる
- 多職種との連携がスムーズになる
- リーダーシップを発揮できるようになる
それぞれのメリットを具体的に見ていきましょう。
専門的な知識とスキルが身につく
看護師が大学院に進学するメリットは、特定の専門分野について掘り下げた知識と、高度なスキルを習得できる点です。
たとえば、あなたのこれまでの臨床経験や関心から、次のような専門分野を選び、集中的に学べます。
- 急性・重症患者看護
- 在宅看護
- 母性看護
大学院の専門科目は、大学や専門学校では触れられなかった、より高度な内容を扱います。
これらの深い学びを通して、看護師は患者さま一人ひとりの複雑な病態や背景にある要因をより深く理解できるようになるため、やりがいを感じられるでしょう。
新たな資格を取得できる
スペシャリストを育成する教育課程で学び、修了後の試験に合格すると新たな資格を取得できることが、看護師が大学院に進学するメリットです。
試験の種類 | 資格 |
認定試験 | 専門看護師 |
診療看護師 | |
国家試験 | 保健師 |
助産師 |
患者さまの複雑な病態を理解し、エビデンスにもとづいてケアを実施すると、患者さまやご家族、スタッフから信頼してもらえるようになります。
その結果、チーム医療におけるあなたの意見や提案の影響力が増し、責任のある役割を任されるため、リーダーシップを発揮する機会が増えます。また、専門資格は、好待遇での転職や、給与面の交渉でも有利に働くでしょう。
関連記事:診療看護師とは?できること4つや給料、難易度を詳しく解説
キャリアアップの道が広がる
大学院で修士号や博士号を取得した看護師は、キャリアアップの道が広がります。おもに、次のようなところで活躍できます。
活躍の場 | キャリアアップのポイント |
臨床現場 | ・専門知識と卓越したスキルを活かした質の高いケア ・医療チームの中心的な役割 |
看護教育機関 | ・次世代の看護師を育成する教育者 ・看護学の発展に貢献する研究者 |
行政機関 | ・看護政策の立案や推進 ・国際的な医療支援団体での人々の健康に貢献する活動 |
大学院での学びは、充実した看護キャリアを築くための土台になるでしょう。
給料アップが期待できる
一般的に、大学院修士課程や博士課程を修了した看護師は、ほかの看護師と比較して、給料水準は高い傾向です。
日本看護協会の調査によると、専門看護師として働く場合は1万1,279円(毎月支払われる場合)の手当が支給されます。日本NP教育大学院協議会の調査によると、診療看護師の66%が「資格手当がある」と回答しています。
また、資格を取得していない場合でも、大学院での学びの専門性が認められ、給料アップするケースがあるようです。
関連記事:診療看護師の年収はいくら?働きながら大学院に通う方法を紹介
研究能力を身につけられる
大学院では、講義や演習に加えて、修士論文や博士論文を作成するため、看護研究に必要な知識やスキルを習得できます。
次のような看護研究の一連のプロセスを経験することで、研究能力が培われます。
- 研究テーマの設定
- 文献調査
- 研究方法の選択
- データの収集と分析
- 結果の解釈と考察
- 論文の作成
臨床現場の疑問についてエビデンスをもとに検証したり、チームで意思決定したり、安全なケアの方法を開発したりするうえで、研究で得られた知識や視点は重要です。
多職種との連携がスムーズになる
看護師が大学院に進学することで、多職種との連携がスムーズになるメリットがあります。
大学院では、医学や薬学、栄養学など多様な専門分野の学生や先生と意見を交わす機会が豊富です。
たとえば、看護師や薬剤師、栄養士の学生がチームを組み、特定のケースに対するケアプランを共同で作成するといった講義もあります。このようなグループワークを通じて、多職種の視点や専門性を理解し、コミュニケーション能力を養えます。
リーダーシップを発揮できるようになる
大学院での学びを通じて、幅広い知識や深い洞察力、批判的思考力を身につけ、リーダーシップを発揮できるようになります。
たとえば、研究活動や学会発表を通じて、自分の意見に自信を持ち、わかりやすく伝える力を習得できます。また、ほかの研究者との議論をおこなうと、多角的な視点から物事を考える力が培われるでしょう。
これらの経験は、臨床現場においてチームをまとめ、的確に判断し、より良いケアを提供するためのリーダーシップを発揮するうえで不可欠です。
看護師が大学院に進むデメリット
看護師が大学院に進むことにメリットがある一方で、デメリットもいくつかあります。
- 大学院に通う学費がかかる
- 働きながら大学院に通うと負担が大きい
- 臨床の現場から離れる不安がある
- 周囲の理解が得られない場合がある
- 大学院を卒業した看護師の進路や働き方
ここでは、大学院進学のデメリットを詳しく知り、後悔しないようにしましょう。
大学院に通う学費がかかる
大学院への進学には、入学金や授業料などがかかり、進学を考えるときの課題になります。大学院の初年度の学費は次のとおりです。
コース・課程 | 学費の総額 |
専門看護師課程 | 100万718円 |
診療看護師課程 | 108万1,834円 |
保健師コース | 100万1,484円 |
助産師コース | 110万1,805円 |
研究コース | 98万6,663円 |
博士後期課程 | 99万6,741円 |
いずれのコース・課程も1年間で100万円前後かかる想定となっています。また、看護師を休職して大学院に通う場合は、収入が減少する可能性も考えていく必要があります。
そのため、奨学金制度や教育ローン、病院独自の支援制度などを活用して無理のない資金計画を立てなければなりません。
働きながら大学院に通うと負担が大きい
仕事を続けながら大学院に通うことは、時間的にも精神的にも大きな負担となりがちです。
勤務に加えて、講義や臨床現場での実習、研究活動など多くの時間を学業に費やす必要があり、休息を十分に取れなくなる恐れがあるからです。
通信制の大学院や夜間開講のコースなど、働きながら学べる大学院を選ぶことも有効な選択肢となります。日本看護系大学協議会・日本私立看護系大学協会の調査によると「平日昼夜間および土日に開講している」大学院の割合76.7%(132校)です。
ただし、通信制の大学院を修了しても、専門看護師や診療看護師などの資格を取れない可能性があります。
職場の同僚や上司に状況を説明して勤務の調整を依頼したり、家族に家事や育児の分担をお願いしたりなど、周囲に協力してもらって通学できるようにサポート体制を整えましょう。
臨床の現場から離れる不安がある
大学院に在籍する間は休職したり、実習の期間中のみ休んだりする場合、臨床の第一線から離れることになります。
「臨床スキルが低下してしまうのではないか」「最新の医療技術についていけなくなるのではないか」といった不安を感じる方も少なくありません。
学会や研究会などに積極的に参加し、最新の医療情報や看護技術に触れる機会を持つことが大切です。また、大学院修了後、臨床現場にスムーズに復帰できるよう、日頃から情報収集を怠らないようにしましょう。
周囲の理解が得られない場合がある
大学院進学というキャリアアップへの意欲が、必ずしも周囲に理解されるとは限りません。
職場の上司や同僚、家族などから「なぜ大学院に行くのか」「本当に仕事と両立できるのか」といった疑問や反対の声が上がる可能性も考えられます。
そのような場合は、自身の考えや目標を説明し、大学院で何を勉強して、将来どのように活かしたいのかを具体的に伝え、応援してもらえるように努めましょう。
大学院を修了した看護師の進路や働き方
ここでは、大学院を修了した看護師の進路や働き方を紹介します。
- 博士課程に進学する
- 勤務先の病院に戻る
- 大学教員になる
- 一般企業に就職する
- 研究機関に就職する
自身の興味や適性に合わせて進路や働き方を選べると、さまざまな分野で活躍できるでしょう。
博士課程に進学する
修士課程を修了した看護師のなかには、さらに専門性を深め、研究者としての道を志すために博士課程に進学する方がいます。
博士号の取得は、大学教員や研究機関の研究者の道に進むための重要なステップです。
また、臨床現場においても、エビデンスにもとづいた看護実践を進めるうえで役立ちます。
勤務先の病院に戻る
大学院で修士号を取得した後、ほとんどの看護師が元の勤務先の病院に戻り、大学院で得た専門知識やスキルをもとに活躍しています。
- 専門外来を担当する
- チーム医療の中心的な役割を担う
- 後輩の育成や指導にかかわる
大学院での学びを臨床現場で活かすことは、質の高いケアにプラスになるでしょう。
大学教員になる
大学院で修士号または博士号を取得した看護師のなかには、大学の看護学科で教員として働く道を選ぶ方がいます。
大学教員として、講義や臨地実習の指導、卒業論文の指導などを担当することで、次世代の看護師の育成に寄与できます。
また、研究活動に積極的に取り組み、看護学の発展に貢献することも重要な役割です。
一般企業に就職する
近年、大学院で学んだ看護師が、一般企業で活躍するケースもあります。
製薬会社や医療機器メーカーでは、臨床開発モニター(CRA)や治験コーディネーター(CRC)として、大学院での学びと臨床経験を活かせます。
関連記事:看護師転職におすすめの転職先や看護師以外の職業を解説!コツを知って成功させよう
研究機関に就職する
大学院で研究能力を身につけた看護師は、次のような場所で研究者として活躍できます。
- 大学の研究所
- 国立の研究機関
- 民間の研究機関
特定の病気やケアの研究プロジェクトに参画したり、自身の研究テーマで研究活動をおこなったりします。これらの研究成果は、看護学の発展や医療の質の向上に貢献できるでしょう。
看護師が大学院に進むメリットに関連するQ&A
ここでは、よく寄せられる質問にお答えすることで、大学院進学に対する疑問を解消し、より具体的にイメージできるように解説します。
Q1:看護師の大学院の難易度は高いですか?
看護師の大学院の難易度は高くないといわれています。
ただし、大学院に進む目的が明らかでなければ、書類選考や面接試験で不合格になる恐れがあります。
面接試験では、志望理由や研究計画の内容、看護師としての経験などが総合的に評価されます。難易度が高いと感じる人もいるかもしれませんが、早期から情報収集をおこない、計画的に学習を進めることで、合格を狙えるでしょう。
Q2:大学院の通信で専門看護師の資格を取得できますか?
専門看護師の資格を取得するためには、臨床現場での実習が必要であるため、通信制での資格取得は難しいといえます。
関連記事:専門看護師になるには?資格取得までの流れや必要な臨床経験、認定看護師との違いも解説
まとめ:看護師が大学院に進むメリットを知ってスキルアップに役立てよう
大学院への進学は、看護師としてのあなたの可能性を大きく広げるチャンスです。
学費や時間的な負担といったデメリットもありますが、それらを考慮したうえでのメリットはあなたの看護師人生をより豊かで充実したものにするでしょう。
「患者さまの回復にもっと貢献したい」「専門性を高めてキャリアアップしたい」という強い思いがあるあなたにとって、大学院進学は未来を切り拓くための有力な選択肢となります。
<参考サイト・文献>
「2022年度 専門看護師・認定看護師に対する評価・処遇に関する調査」報告書|日本看護協会

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