産業看護師になるには?大手企業の求人を逃さない5つのコツも紹介
現在、働いている方のなかには、働き方や環境に対する不満をかかえている看護師の方もいらっしゃるでしょう。
今回は、企業や労働者を対象に「産業看護」という分野で活躍する「産業看護師」について解説します。
「周りに産業看護師がいないので情報がない」「自分も産業看護師になれるのか」などの不安解消に役立てるので、ぜひ最後までご覧ください。
産業看護師とは?
産業看護師とは、産業保健における看護専門分野であり、働く人々が健康と安全の保持促進を図れるように支援することを目的とし、これらを通して、働く人のQOL並びに組織の生産性の向上に寄与するものである。」と、日本産業看護学会が定義しています。
主に、健康管理や作業環境の管理などをおこないます。
参照:産業看護の定義 – 日本産業看護学会 (jaohn.com)
産業看護師は企業に配置する義務はありません。しかし、近年は労働者のメンタルヘルスや働き方への関心が高まっており、大企業であるほど産業看護師(または産業保健師)を配置する傾向があります。
「労働者健康安全機構(johas)」の調査によると、従業員1,000人以上の企業が産業看護師、もしくは産業保健師をなんらかのかたちで活用している割合は82.9%となっています。
働く方への関心が高まっている現代において、産業看護師は活躍を期待されている職業といえるでしょう。
産業看護師になるためには?
産業看護師になるためにはどのような方法があるのでしょうか。以下の3つのポイントにしぼって解説します。
- 看護師免許を取得する
- 求人サイトに登録して応募する
- 看護師の臨床経験を得る
それぞれみていきましょう。
看護師の資格を取得する
産業看護師になるためには「看護師免許」が必要です。
「メンタルヘルス」「健康指導」などを主な業務としているため「保健師」をイメージする方もいらっしゃるかもしれません。ただし、看護師免許があれば産業看護師として就業することができます。
「衛生管理者」の資格は、必須ではないものの、資格を持っていることで産業看護師の就職活動をすすめるために役立つでしょう。
求人サイトに登録して応募する
産業看護師は、求人サイトにも募集が掲載されています。
求人サイトとは、オンラインで求人掲載、転職ノウハウ情報を提供しているサイトです。看護師専用の求人サイトもあり、さまざまな業種の求人が紹介されています。
病院やクリニックなどに比べて、産業看護師の求人は少ない傾向です。なぜなら、産業看護師はひとつの企業当たり1~3人程度の配置と少ないからです。まずは、求人サイトに登録して希望の条件に合う求人がないか、こまめにチェックすることから始めてみましょう。
看護師としての臨床経験を得る
企業によっては「臨床経験◯年」といった臨床での経験を条件として求人を掲載しているケースもあります。以下は、実際の求人サイトにあった産業看護師を求める条件の一例です。
- 精神科病棟勤務経験がある方優遇
- 企業内保健師経験(1年以上)
- 看護師または保健師としての臨床経験が10年以上の経験者
なかには、産業看護師の経験があるという即戦力や臨床経験10年以上のベテラン、精神科領域をはじめとした特定分野に知見をもつ人材を求める企業もあります。
産業看護師は「従業員の健康増進」「病気・ケガの予防」などが主な業務です。従業員からの健康相談も考えられることから、生活習慣病や労働をきっかけとした病気やケガの知見が必要となるケースもあります。
就職活動を有利にすすめるためには、看護師としての臨床経験はポイントとなるのです。
産業看護師になるメリットやデメリット
産業看護師は、病院やクリニックの一般的な看護師とは働き方が異なります。働くうえでのメリットやデメリットも違いがあるため、就職してから後悔しないようにそれぞれみていきましょう。
産業看護師になるメリット
産業看護師になるメリットは以下のとおりです。
- ストレスが少ない
- 身体的な負担が少ない
- 看護師以外のスキルが身につく
産業看護師は企業の従業員を対象に、健康管理や健康相談などをおこないます。基本的に命にかかわる場面はないため、病院の看護師にくらべると「ストレスは少ない」と感じやすいでしょう。
また、産業看護師はデスクワークが中心です。病院や介護施設で働く場合と比べて、産業看護師は夜勤もないため身体的な負担は少ないといえます。
仕事内容から、PCスキルやビジネスマナーなど一般的な看護師では身につけにくいスキルを学びやすいことも特徴のひとつです。医療職以外の職業の方と接する場面もあり、知見をひろげるきっかけにもなるでしょう。
産業看護師になるデメリット
産業看護師になるデメリットは以下のとおりです。
- 看護師の同僚がすくない
- 仕事を相談しづらい可能性がある
「労働者健康安全機構(johas)」の調査によると、産業看護師として初めて就業したときに感じた課題として「企業での勤務がはじめてだったこと」「同じ職種の同僚がすくない」などがあげられています。
【初めて職域に就職したときに感じた課題(N=335)】(複数回答可)
感じた課題 | 人数 | 割合 |
企業での勤務がはじめてだったこと | 264人 | 78.8% |
労働衛生の三管理など産業保健についての知識がなかったこと | 226人 | 67.5% |
同じ職種の同僚がいなかったこと | 140人 | 41.8% |
具体的な業務の指示がなかったこと | 118人 | 35.2% |
とくにない | 10人 | 3.0% |
そのほか | 27人 | 8.1% |
参考:令和2年度事業場における保健師・看護師の活動実態に関する調査報告書|労働者健康安全機構(johas) P91
具体的な業務指示がないケースもあるため、自分で情報収集し、考えて行動するなど自発的に課題をみつけて改善する意識がある方が向いているといえるでしょう。
産業看護師の年収
産業看護師の年収は公的に開示されているデータはありませんが、求人サイトなどの求人情報に掲載されている情報から、一般的に500万円前後だと推定されます。
これは、あくまでも推定であり、暮らしている地域や勤務する企業によってかわります。
なお、厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、看護師の平均給与は以下とされています。
収入種別 | 金額 |
年収 | 508万1700円 |
月収 | 35万2100円 |
賞与 | 85万6500円 |
参考:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」(一般労働者 職種を参照)
これは、看護師全体の統計であり、さまざまな場所ではたらく看護師の給与がふくまれています。
産業看護師の給与については下記の記事でくわしく解説するため、そちらをご覧ください。
産業看護師で大手企業の求人を逃さない5つのコツ
「福利厚生」「給与」などの条件から、産業看護師を目指すうえで意識したいのが大企業への就業でしょう。ここからは、大企業の求人を逃さないために5つのポイントをご紹介します。
- 非公開求人をチェックする
- 求人が出たらすぐに応募する
- 産業看護師に有利な資格を取得する
- メンタルヘルス領域を学ぶ
- 履歴書や職務経歴書を書いて面接対策をする
それぞれ、みていきましょう。
非公開求人をチェックする
気になった求人を逃さないためには、非公開求人をこまめにチェックしましょう。
非公開求人とは、転職サイトや転職エージェントなどにおいて、一般には公開していない求人情報です。
求人を公開しない理由は「応募が殺到するのをふせぎたい」「ほかの会社に知られたくない」などさまざまです。
非公開求人は、大企業、給与や福利厚生などの待遇が良い求人も多く、求職者にとっては狙い目となります。
非公開求人をチェックするためには、転職サイトや転職エージェントに登録して、求人を取りよせるか、専用ページから確認しなければなりません。
求人が出たらすぐに応募する
転職活動を成功させるためには、気になった募集は早めに申し込みましょう。
人気の企業や、条件の良い仕事の募集は応募が殺到するからです。とくに、産業看護師は、大企業でも数名しか雇っておらず、募集人数も1人〜3人といった場合も考えられます。
求人情報が出たらすぐに応募できるよう、事前準備として給与や福利厚生など、自分のなかで「これなら応募したい」という、最低限の希望条件を決めておきましょう。
産業看護師に有利な資格を取得する
産業看護師の就職活動を有利にすすめるには資格取得もおすすめです。
以下は「労働者健康安全機構(johas)」の調査による産業保健にかかわる個人(看護師335人が対象)が所有している産業保健分野の資格の割合です。
【有している産業保健分野の資格】
- 第一種衛生管理者:59.1%
- 第二種衛生管理者:6.3%
- 公認心理師:3.9%
- その他:22.1%
参考:令和2年度事業場における保健師・看護師の活動実態に関する調査報告書|労働者健康安全機構(johas)
もっとも多いのが「第一種衛生管理者」となっています。衛生管理者は産業看護師とも関連があり、企業のニーズが高い国家資格のひとつです。
主な仕事は「労働者の健康管理」「作業環境の衛生管理」などで、常時50人以上の従業員を雇用する企業では1人以上配置することが義務づけられています。
受験するためには、学歴や衛生管理の実務経験が必要です。この実務経験には「看護師や准看護師の業務」もふくまれており、2年以上の経験がある看護師の方は受験対象となります。
メンタルヘルス領域を学ぶ
産業看護師になるためには、メンタルヘルス領域(心の健康状態)の知見も大切です。
産業看護師は「労働者のストレスチェック」「高ストレス者の面談」など、労働者の心の健康を維持する役割もあるからです。
また、一部の産業看護師は「公認心理士」の資格を所有している方もおり、メンタルヘルスに関する知見は重要であるとされています。
履歴書や職務経歴書を書いて面接対策をする
産業看護師として就職活動するためには、履歴書や面接対策も大切でしょう。
履歴書や職務経歴書で基本となるのは「スキルのたなおろし」です。スキルのたなおろしとは、自分のスキルをみつめなおして整理する作業のことです。自分の強みや弱みをあきらかにして、企業へアピールできるポイントを明確にします。
なお、企業が求める産業看護師の役割は「労働者の健康指導」「作業管理」のほかに「高ストレス者の面談」「健康経営の取り組みへの関わり」など多岐に渡ります。
企業がなにを求めているかを把握して、自分の経歴やスキルと合致している部分はないか、みつめなおしましょう。結果として、こうした取り組みが面接対策にもつながります。
産業看護師に関するQ&A
ここからは産業看護師に関するよくある疑問にお答えします。
Q1:産業看護師と産業保健師の違いはありますか?
産業看護師と産業保健師では、定義は異なるものの、実際の業務ではその差はほとんどありません。
保健師と看護師は、保健師助産師看護師法総則では以下のように定義されています。
保健師 | この法律において「保健師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、保健師の名称を用いて、保健指導に従事することを業とする者をいう。 |
看護師 | この法律において「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくは妊娠婦に対する療養上の世話又は診療の補助をおこなうことを業とする者をいう。 |
保健師は、健康に関する情報の提供や、予防や健康をうながすためのアドバイスをはじめとした「保健指導」が主な仕事内容です。一方で、看護師は「療養上の世話」や「診療の補助」などが役割とされているのです。
しかし、実際に看護師や保健師を雇用している企業にて、資格による業務内容の違いはほとんどかわりません。
「労働者健康安全機構(johas)」の調査では、企業からは産業保健師に「健康相談」「ストレスチェック」をはじめとした業務を期待している割合が高いという結果が出ています。
看護師を雇用していない職場では、こうした役割は保健師の印象が強いのかもしれません。
Q2:産業看護師は東京のほうが求人は多いですか?:
正確なデータはありませんが、産業看護師の求人数は東京が多い傾向にあると考えられます。
「中小企業庁」の都道府県・大都市別企業数によると、東京都の企業数は大小あわせて、42万3595となっています。2番目に多い大阪府の26万2619とくらべても、その差は圧倒的です。
前述したとおり、1,000人以上の企業において産業看護師を活用している割合は80%を超えています。産業看護師として就業するチャンスも、企業の数が多いほど高まるといえるでしょう。
まとめ
今回は、産業看護師について以下の内容を解説しました。
- 産業看護師になるには
- 産業看護師になるメリットやデメリット
- 産業看護師で大手企業の求人を逃さない5つのコツ
産業看護師は、企業で健康管理や作業環境を管理する職業です。就業にあたり臨床経験を求められることもありますが、企業によっては「看護師免許」があれば雇用されるケースもあるようです。
看護師は、病院やクリニック以外にもさまざまな働き方があります。柔軟な視点で自分にあった働き方を選択しましょう。
最後に、NsPace Career(ナースペースキャリア)では訪問看護師をはじめとしたさまざまな働き方を紹介しています。興味がある方はそちらもぜひご覧ください。
参考文献・サイト
令和2年度 事業場における保健師・看護師の活動実態に関する調査報告書|労働者健康安全機構(johas) P14
求人サイト・求人情報誌などを 運営する事業者の皆様へ|厚生労働省 P1.2
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