終末期ケア専門士になるには?受験資格や合格率、看護師が取得するメリットを解説

「終末期ケア専門士は、終末期の患者さまやご家族へのケアを体系的に学べる民間資格です。
受験には対象資格の免許と2年以上の実務経験が必要です。一方で、「民間資格だから取得しても意味がないのでは」「転職や給与に役立つの?」と気になる方もいるでしょう。
この記事では、受験資格や試験日程、合格率、勉強方法に加え、看護師が取得するメリットや、取得しても加算・資格手当につながるのかまで解説します。2026年の試験日程まで分かるため、自分が受験できるのか、いつまでに何を準備すれば良いのかが見えてきます。
終末期ケア専門士とは?
まずは、終末期ケア専門士の資格の概要や学べる内容を確認しましょう。
終末期ケア専門士の概要
終末期ケア専門士とは、一般社団法人日本終末期ケア協会(JTCA)が2020年に創設した認定資格です。
看護師を含む医療・介護職などが対象で、エビデンスにもとづいたケアを実践できる人材の育成を目的としています。「臨床ケアにおけるスペシャリスト」と位置づけられています。
関連記事:終末期看護とは?大切なこと5つや終末期患者との関わり方を紹介
終末期ケア専門士で学べること
試験の出題範囲は、日本終末期ケア協会の公式テキストに準拠しています。テキストは以下の項目で構成されています。
- 概論
- 終末期におけるチームケア
- 日常生活を支えるケア
- 身体症状とケア
- 家族ケアとグリーフケア
- 終末期を支えるナラティブ・アプローチ
- 看取り期のケア
- 地域でみる終末期ケア
- 疾患別終末期ケア
日常生活を支えるケアから、痛み・呼吸困難・せん妄などの身体症状、ご家族への支援、地域の社会資源なども学べるのが特徴です。また、公式テキスト第3版では、成年後見制度といった法制度や、終末期に着目した褥瘡ケアについても解説されています。
なお、2026年の試験は公式テキスト第3版をもとに出題されます。受験する年度によって対象となるテキストが変更になる可能性があるため、購入前に最新情報を確認しましょう。
終末期ケア専門士は国家資格ではなく民間資格
終末期ケア専門士は国家資格ではなく、一般社団法人日本終末期ケア協会が認定する民間資格です。
終末期ケア専門士は、資格取得によって新たな医療行為などができるようになる資格ではありません。終末期ケアに関する知識を学び、その知識を日々のケアやチームでの検討に活かすことを目指す資格です。
終末期ケア専門士になるには?資格取得までの流れ
終末期ケア専門士になるには、受験資格を満たしたうえで認定試験に合格する必要があります。
受験資格
受験には、協会が定める対象資格の免許を保有し、免許登録日から実務経験申告日までの期間に2年以上の実務経験があることが必要です。おもな対象資格は以下のとおりです。
- 看護師
- 准看護師
- 保健師
- 医師
- 薬剤師
- 理学療法士
- 介護福祉士
実務経験を証明する施設や団体は、終末期ケア・ホスピスケアを専門としている必要はありません。また、看取りの経験も問われません。一般病院や施設、訪問看護などで実務経験を積んできた方も対象であり、勤務形態は常勤・非常勤を問いません。
申し込みから認定までの5ステップ
資格取得までは次の5ステップで進みます。
- 公式サイトから申し込む
- 「受験者専用ページ」アプリで実務経験を申告する
- 受験資格の審査を受ける
- CBT方式の認定試験を受ける
- 合格後に認定登録する
例年、試験は10月におこなわれ、11月中に合否結果が分かります。合否結果と認定登録手続きの案内については、郵送と受験者専用ページアプリで通知され、認定登録完了後、認定証と認定バッジが郵送される流れです。
試験内容と出題範囲
試験の概要は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
| 試験方式 | CBT方式(全国のテストセンターでパソコン受験) |
| 試験時間 | 90分 |
| 出題数 | 90問(択一または択多問題) |
| 出題範囲 | 協会認定テキストおよび時事問題(協会WebサイトのJTCAゼミなど) |
出題範囲は公式テキストが中心であり、時事問題も含まれます。また、受験料は1万1,000円(税込1万2,100円)、認定登録料も1万1,000円(税込1万2,100円)です。いずれも配送料や各種手数料が別途発生するため、その分も見込んでおきましょう。
終末期ケア専門士の合格率・難易度
過去の合格率は次のように推移しています。
| 開催年 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
| 第6回 | 5,284人 | 3,858人 | 73.0% |
| 第5回 | 5,353人 | 3,512人 | 65.6% |
| 第4回 | 4,451人 | 2,720人 | 61.1% |
| 第3回 | 4,013人 | 2,689人 | 67.0% |
| 第2回 | 3,775人 | 2,623人 | 69.5% |
合格率は60〜70%台で推移しており、2025年は73.0%でした。合格率だけを見ると高く感じますが、合格率だけで試験の難易度を判断することはできません。出題範囲は終末期ケアに関する幅広い内容になるため、公式テキストを中心に計画的に学習することが大切です。
関連記事:看護師がスキルアップできる資格一覧25選!プラスの資格を取るメリット
2026年の試験日程・会場
2026年に実施される第7回認定試験の日程は次のとおりです。
※2026年9月21日時点で、2026年第7回認定試験の受験申込期間は終了しています。以下は2026年度の試験日程です。次回以降の試験日程は、日本終末期ケア協会の公式情報をご確認ください。
| 項目 | 日程 |
| 受験申込期間 | 2026年3月27日(金)~9月20日(日) |
| 実務経験の審査申告期限 | 2026年9月30日(水) |
| 試験期間 | 2026年10月9日(金)~10月31日(土) |
| 結果通知 | 2026年11月下旬予定 |
試験会場は、全国のテストセンターです。試験期間内で日時と会場を予約する形式のため、勤務シフトに合わせて受験日を選べます。
注意したいのが、審査申告期限です。申込後に審査に必要な書類の準備を始めると間に合わない可能性があるため、受験を決めた段階で早めに動き始めましょう。なお、日程は年度ごとに変更されるため、申込前に公式情報を確認してください。
看護師が終末期ケア専門士を取得するメリット
厚生労働省の人口動態統計によると、2025年の死亡数は158万9489人でした。病院だけでなく、介護施設や訪問看護など、さまざまな場所で看取りを支える看護師の役割が求められています。終末期ケアに関する知識を学ぶことは、今後ますます重要になると言えます。
終末期の患者さまへの関わり方を学べる
終末期ケア専門士の資格取得を目指す学習を通して、終末期の患者さまへの関わり方を学べます。
たとえば、在宅看護では、ご家族から「あとどれくらいですか」「食べられなくなってきましたが、何かできることはありますか」など、終末期の変化について尋ねられることがあります。病院のように医師がすぐそばにいるとは限らず、看護師が最初に相談を受ける場面もあるでしょう。
公式テキストでは、痛みや呼吸困難、せん妄などの身体症状だけでなく、食事や排泄など日常生活を支えるケア、看取り期のケアまで学ぶことができます。経験だけに頼らず、自分のケアを振り返る視点を持てるようになります。
病院・施設・訪問看護の現場で対応を振り返る視点が身につく
終末期ケア専門士で学ぶ知識やスキルは、病院や施設、訪問看護など看護師が働く現場で活かせます。
病棟では、食事量や水分摂取量が徐々に低下するなかで、褥瘡や排泄の状態を見ながら日常生活を支えることもあります。また、訪問看護では、前回の訪問時より眠っている時間が長くなった利用者さまを前に、ご家族の不安を受け止めながら状態を観察する場面もあるでしょう。
このように、職場によって患者さまとの関わり方は異なります。終末期ケア専門士で学んだ知識をもとに、「今の状態にどのような変化があるのか」「どのようなケアが必要なのか」などを振り返りながらケアに活かせる点がメリットです。
終末期ケアの専門性を高めるきっかけになる
終末期ケア専門士の取得は、終末期ケアの専門性を深めるきっかけになるでしょう。
終末期の患者さまやご家族への関わりでは、苦痛の緩和や意思決定支援、看取り後の家族へのケアなど、さまざまな場面で判断が求められます。日々の経験だけでは対応に迷う場面も、資格取得に向けた学習を通して、終末期ケアの知識を体系的に身につけられます。
また、学んだ知識は、院内の終末期ケアチームの一員としてケアを検討するときや、終末期の患者さまへの関わりについてスタッフから相談を受けたときにも役立つ点がメリットです。資格を取得しただけで専門的な役割を任されるわけではありませんが、これまでの経験を知識と結びつけ、チームでケアを考えるために活かせます。
終末期ケア専門士の勉強方法
終末期ケア専門士を働きながら目指す場合は、学習範囲を把握したうえで計画的に進めることが重要です。
公式テキストを中心に学習する
試験対策では、協会が指定する公式テキストを中心に学習しましょう。
まず全体を読み、どのような分野が出題範囲になっているのかを把握します。普段の業務で触れる機会が少ない分野については、意識的に学習時間を確保することが大切です。
独学での学習が不安な方や、働きながらでうまく学習時間を確保できない方は、協会が実施する「試験対策WEB講習会」(受講費用:1万9,800円)を活用するのも1つの方法です。
現場経験と結びつけて覚える
看護師としての実務経験は、資格の勉強にも活かせます。
家族ケアについて学ぶ際には、これまで関わったご家族を思い出してみましょう。また、呼吸困難への対応を学ぶ場合は、患者さまの表情や体位調整による変化など、現場での経験と結びつけて考えます。
テキストの内容を自分の経験と結びつけることで、実際の看護場面をイメージできるようになり理解が深まります。
終末期ケア専門士と緩和ケア認定看護師の違い
終末期に関わる資格として、緩和ケア認定看護師と比較されることがあります。
| 項目 | 終末期ケア専門士 | 緩和ケア認定看護師 |
| おもな対象者 | 医療・介護職など | 看護師 |
| 資格の位置づけ | 民間資格 | 日本看護協会の認定資格 |
| 学ぶ内容 | 終末期ケアを幅広く学ぶ | 緩和ケアの専門的な看護実践 |
| 取得負担 | 2年以上の実務経験などの受験資格を満たせば受験可能 | 所定の教育・審査などが必要 |
| 向いている人 | 終末期ケアを学びたい人 | 緩和ケアの専門性を高めたい看護師 |
両者は優劣で比較する資格ではなく、目的や取得までのプロセスが異なります。
まず終末期ケアについて幅広く学びたい場合は終末期ケア専門士、緩和ケア分野で認定看護師としての専門性を高めたい場合は認定看護師というように、自分がどのようなキャリアを目指すのかで考えてみましょう。
関連記事:緩和ケア認定看護師になるには?仕事内容や役割、教育機関、取得のメリットまで解説
終末期ケア専門士に関するよくある質問
終末期ケア専門士について、よく聞かれる質問にお答えします。
Q1.終末期ケア専門士の更新は必要ですか?
5年ごとの更新が必要です。
日本終末期ケア協会の資格管理システム「ココシンク」で60単位を取得できていれば自動更新となり、更新料はかかりません。ココシンクで動画の視聴や対象イベントへの参加により単位を取得していくことになります。
単位を取得できていない場合は、別途手続きが必要になります。更新の詳細は協会の公式情報で確認しましょう。
Q2.終末期ケア専門士の過去問はありますか?
協会から公式の過去問題集は公開されていません。
市販の予想問題集を活用する方法もありますが、まずは公式テキストを繰り返し確認することが基本になります。
Q3.終末期ケア専門士を取得すると診療報酬の加算に関係しますか?
終末期ケア専門士の資格取得そのものが、診療報酬・介護報酬の加算要件として定められているわけではありません。
たとえば、訪問看護の看護体制強化加算では、ターミナルケア加算の算定者数などが要件として定められていますが、終末期ケア専門士の資格取得は要件に含まれていません。
そのため、終末期ケア専門士を取得すれば加算を算定できると考えるのではなく、終末期の患者さまやご家族へのケアに必要な知識やスキルを身につけるための学びとして活用すると考えましょう。
Q4.終末期ケア専門士は取得しても意味ないと言われるのはなぜですか?
終末期ケア専門士は民間資格であり、取得したことだけで国家資格のような業務独占が保証されるものではありません。また、終末期ケア専門士を取得したことだけを理由に、給与や資格手当が必ず増えるわけではありません。 資格取得者に対する手当の支給や給与への反映は、勤務先の就業規則や給与規程などによって異なります。転職先で資格手当の対象となるかどうかも、求人情報や採用担当者への確認が必要です。
一方で、終末期ケアについて学べる機会は、日常業務のなかでは多くありません。終末期の患者さまやご家族へのケアに関わる職場では、こうした知識を日々の看護に活かせるでしょう。 「資格そのもの」ではなく「学ぶ過程」に価値を見出せるかどうかが、判断の分かれ目になります。
終末期ケア専門士は終末期看護を体系的に学びたい看護師に向いている資格
終末期ケア専門士は、終末期にある患者さまやご家族への関わり方を学びたい看護師に向いている資格です。終末期におけるチームケアや日常生活を支えるケア、身体症状とケアなどを学ぶことで、経験則だけに頼らず、自分の看護を振り返る視点につながります。
とくに、病院だけでなく、介護施設や訪問看護などで終末期の患者さまと関わりたい看護師にとって、学んだ知識を活かす機会は少なくありません。
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<参考サイト・文献>
臨床ケアにおけるスペシャリスト|一般社団法人日本終末期ケア協会
終末期ケア専門士公式テキスト購入|一般社団法人日本終末期ケア協会
終末期ケア専門士受験資格・概要について|一般社団法人日本終末期ケア協会
令和7(2025)年人口動態統計月報年計(概数)の概要|厚生労働省
終末期ケア専門士試験対策WEB講習会|一般社団法人日本終末期ケア協会
令和3年度介護報酬改定に向けて(地域包括ケアシステムの推進)|厚生労働省
| 監修:飛鳥馬 沙耶(あすま さや)/訪問看護ステーション 管理者 HCU・高度急性期病棟にて約6年間、循環器・心臓外科・脳外科領域を中心とした急性期看護に従事。2023年より訪問看護ステーションの管理者として、在宅医療の現場に携わる。専門領域は、訪問看護・在宅医療、急性期看護。 |
ナスキャリナビ 編集部 「ナスキャリナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「ナスキャリ」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。
