がん看護専門看護師とは?仕事内容7つ・なるには・認定看護師との違いを解説

「がん患者さまへの看護を深く学びたい」「治療の選択や終末期の支援に、専門的に関わりたい」と考えていませんか。
がん看護専門看護師は、がん患者さまやご家族へのケアだけでなく、治療や療養に関する意思決定の支援、看護師への相談・教育、多職種との連携など、幅広い役割を担います。一方で、がん領域には認定看護師もあり、「仕事内容はどう違うのか」「どちらを目指すべきか」と迷う方も少なくありません。
この記事では、がん看護専門看護師の役割や仕事内容、資格取得の流れ、取得後の働き方などを解説します。がん看護専門看護師の専門性を知り、キャリアとして目指すべきか判断できるようになるでしょう。
がん看護専門看護師とは
がん看護専門看護師とは、専門看護師14分野のうち「がん看護」分野の認定を受けた看護師のことです。日本看護協会は、この分野を「がん患者の身体的・精神的な苦痛を理解し、患者やその家族に対して生活の質の視点に立った水準の高い看護を提供する」としています。ここでは人数と所属先、認定看護師との違いをご紹介します。
がん看護専門看護師の人数とおもな所属先
がん看護は、専門看護師14分野のなかで最も登録者数が多い分野です。2025年12月時点で1,172人と、全体3,644人の約3割を占めます。おもな所属先の割合は、以下のとおりです。
- 病院:78.2%
- 学校・大学:7.8%
- 訪問看護ステーション:5.0%
病院で働く人が大半を占める一方、教育機関や訪問看護ステーションなど、臨床以外の場でも専門性が活かされています。
がん看護専門看護師と認定看護師の違い
がん看護専門看護師と、がん領域の認定看護師は、どちらも日本看護協会の認定資格です。ただし、専門とする範囲や担う役割には違いがあります。
| 資格 | おもに対象とする範囲 |
| がん看護専門看護師 | がん看護分野を専門とし、患者・家族への高度な看護実践に加えて、相談・調整・倫理調整・教育・研究などを担う |
| 緩和ケア認定看護師 | 苦痛症状の緩和と、喪失・悲嘆のケア |
| がん薬物療法看護認定看護師 | 抗がん薬の投与管理、副作用の緩和とセルフケア支援 |
| 乳がん看護認定看護師 | 治療の自己決定支援、ボディイメージの変容への支援 |
| がん放射線療法看護認定看護師 | 放射線療法の副作用の予防・緩和、安全な治療環境の提供 |
認定看護師は特定の看護分野に特化して専門性を発揮するのに対し、がん看護専門看護師はがん看護全体を捉え、患者さまへのケアから多職種との調整、看護師への教育、研究まで幅広く担う点が特徴です。
また、教育課程にも違いがあります。専門看護師は看護系大学院の修士課程、認定看護師はA課程(600時間以上)、あるいはB課程(800時間程度)を修了します。A課程の認定教育は2026年度をもって終了、認定審査は、2029年度までとなっています。
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がん看護専門看護師が担う6つの役割
がん看護専門看護師には「実践・相談・調整・倫理調整・教育・研究」の6つの役割があります。がん看護の現場では、次のような活動をおこないます。
| 役割 | がん看護における活動例 |
| 実践 | がん治療に伴う疼痛や悪心などの症状緩和、治療選択や療養生活に関する意思決定を支える |
| 相談 | がん患者さまへの関わり方や症状マネジメント、意思決定について看護師からの相談に応じる |
| 調整 | 医師・薬剤師・MSWなどと連携し、患者さまの希望を踏まえて治療や療養の方向性を調整する |
| 倫理調整 | 治療を続けるか、どこで療養するかなど、患者さま・ご家族・医療者の考えが異なる場面を調整する |
| 教育 | がん疼痛のアセスメント、抗がん薬の副作用、意思決定支援などについて院内研修や事例検討をおこなう |
| 研究 | がん患者さまへの意思決定支援や症状緩和など、臨床で生じる課題を研究し、がん看護の質向上につなげる |
がん看護専門看護師はがん患者さまへのケアに加えて、患者さま・ご家族・医療者の間にある課題にも目を向け、より良い療養や治療につなげます。また、教育や研究を通じて、患者さまへの支援だけでなく、チームや組織全体のがん看護の質を高める役割も担います。
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がん看護専門看護師の仕事内容7つ
ここでは、がん看護専門看護師の代表的な7つの仕事内容を紹介します。
がんの治療に伴う症状や副作用の緩和に努める
がん治療による痛みや吐き気、倦怠感などの症状を評価し、患者さまが治療を続けながら生活できるよう支えます。たとえば、次のような対応があります。
- 痛み:痛みの強さや頻度を確認し、鎮痛薬の使用方法を医師と相談する
- 吐き気・嘔吐:食事の量やタイミングなどを確認し、症状を和らげる方法を考える
- 皮膚障害:症状に合わせたセルフケアを伝え、日常生活への影響を確認する
症状だけでなく、生活にどのような影響が出ているのかまで捉え、その人らしい生活を続けられるよう支援することが特徴です。
患者さまが納得して治療を選べるようにする
患者さまが治療内容や自分の希望を整理し、納得して治療を選べるようサポートします。
具体的には、医師から説明を受けた後に、患者さまの理解度を確認したり、ACP(今後の医療やケアについて本人・家族・医療者が繰り返し話し合う取り組み)で、本人の希望をチームに共有したりします。
治療方法を代わりに決めるのではなく、患者さまが納得して選択できるよう支えることが重要です。
がん患者さまとご家族の不安や生活上の悩みを支える
がん患者さまとご家族の不安や、仕事・お金・介護などの生活上の悩みを聞き、必要な支援につなげます。治療が長期化すると、休職や収入の減少といった課題も重なりがちです。
実際に、ご家族の不安や介護負担を確認したり、医療費や生活費について、がん相談支援センターや医療ソーシャルワーカーにつないだりします。がんとともに生活するうえで生じる課題にも目を向けます。
緩和ケアや終末期の過ごし方を一緒に考える
苦痛を和らげるとともに、患者さまがこれからどのように過ごしたいのかを検討します。
- 緩和ケアチームと連携して、痛みや呼吸困難などの症状への対応を考える
- 自宅・緩和ケア病棟・病院など療養場所の選択を支援する
- 患者さまやご家族がこれからの過ごし方について話し合える場をつくる
「どの治療を受けるか」だけでなく、「どのように過ごしたいか」にも目を向けることが大切です。
関連記事:緩和ケア認定看護師になるには?仕事内容や役割、教育機関、取得のメリットまで解説
退院後の療養生活を病院と地域につなぐ
退院後も安心して療養生活を送れるよう、病院と訪問看護などの在宅医療・介護スタッフをつなぎます。
退院前には、患者さまの希望や治療内容、自宅での痛みの管理方法などを共有し、体調が悪化した際の連絡先も確認します。また、ご家族が無理なくケアを続けられるよう、必要なサポートも調整し、支援が途切れないようにすることが役割です。
多職種と連携して支援を調整する
医師や薬剤師、医療ソーシャルワーカー、訪問看護師などと連携し、患者さまの希望を軸としたチームでの支援を担います。
- 多職種カンファレンスで、看護師の視点から捉えた生活面の課題を共有する
- 病状説明の内容や伝え方について、事前に医師・病棟スタッフと方針をすり合わせる
- 職種間で見解が分かれた際に、患者さまの希望を軸に論点を整理する
それぞれの専門性を活かしながら、患者さまを中心とした支援につなげることが、がん看護専門看護師の役割です。
看護師への相談・教育や研究を通じてがん看護の質を高める
看護師からの相談に応じたり、研修や研究をおこなったりして、病院のがん看護の質を高めます。たとえば、以下のような活動があります。
- 看護師から対応が難しい症例の相談を受け、一緒にケアの方法を考える
- がん疼痛や副作用、意思決定などについての院内研修をおこなう
- 事例検討会で、患者さまへの関わり方を看護師とともに振り返る
看護師の知識や実践力を高めることで、がん患者さまに質の高いケアを届けられるようにします。
がん看護専門看護師になるには
がん看護専門看護師の資格取得までの流れは、次の4段階です。
- 看護師として通算5年以上の実務経験を積む
- がん看護分野の大学院で専門看護師教育課程を修了する
- 日本看護協会の認定審査に合格する
- 専門看護師として認定、登録する
ここでは、それぞれの条件やポイントを解説します。なお、進学を検討する際は、日本看護協会のホームページで最新の情報を確認してください。
看護師として必要な実務経験を積む
看護師として通算5年以上の実務経験が必要です。そのうち3年以上は、がん看護分野での実務経験が求められます。
がん専門病院だけでなく、一般病院の外科病棟や外来化学療法室などでの経験も対象になる可能性があります。
ただし、実務経験として認められるかどうかは経歴によって異なるため、進学や受験を考える段階で日本看護協会の受験資格を確認しておきましょう。
がん看護分野の大学院で必要な教育を受ける
実務経験の要件を満たしたら、看護系大学院の修士課程で専門看護師教育課程を修了します。
受験資格には、看護系大学院修士課程の修了と、専門看護師教育課程基準の所定の単位(総計38単位)の取得が含まれます。
なお、単位数や受験資格は制度改正によって変更される可能性があるため注意が必要です。
関連記事:専門看護師になるには?資格取得までの流れや必要な臨床経験、認定看護師との違いも解説
日本看護協会の認定審査に合格する
大学院を修了して受験資格を満たしたら、日本看護協会の専門看護師認定審査を受けます。
2026年に実施される第36回専門看護師認定審査では、Web申請が5月12日~5月26日、筆記試験が10月7日に予定されています。
審査は、書類審査と筆記試験(客観式一般問題20問、客観式状況設定問題20問)です。審査に合格して登録の手続きを進めることで、がん看護専門看護師として活動できるようになります。
認定審査に合格し、5年ごとに更新する
がん看護専門看護師は、資格を取得したら終わりではなく、5年ごとに更新が必要です。
2025年度から制度が変更され、看護実践時間2,000時間以上の要件や実践報告書の提出は不要となりました。2028年度からは、筆頭者として学術集会等での発表または論文掲載を2回以上行うことなどが求められます。
なお、2025~2027年度に認定有効期間を迎える方には特例措置が適用される点に注意が必要です。
がん看護専門看護師が活躍できる場所
がん看護専門看護師は、どの職場でも「実践・相談・調整・倫理調整・教育・研究」の役割を担いますが、患者さまの特徴や勤務先の機能によって中心となる活動は異なります。
| 活躍の場 | 求められる役割の中心 |
| がん専門病院・大学病院 | 高度で複雑な症例への実践、緩和ケアチームへの参加 |
| 総合病院・一般病院 | 院内のがん看護の質向上、スタッフへの教育や相談対応 |
| 外来・がん相談支援 | 治療と生活の両立支援、社会資源への橋渡し |
| 訪問看護・地域 | 在宅療養と看取りの支援、病院と地域の連携 |
| 教育・研究機関 | 看護学生・看護師への教育、がん看護の研究 |
表に示したのは、それぞれの職場で中心となりやすい活動の一例です。実際には、勤務先の機能や患者さまのニーズに応じて、6つの役割を組み合わせながら専門性を発揮します。
がん看護専門看護師を目指すメリットと大変な点
がん看護の専門性を高め、患者さまへの関わりを広げられる一方、大学院進学にかかる時間・費用や、取得後に求められる役割への責任も伴います。
働き方が「担当患者中心」から「組織横断」へ変わる
がん看護専門看護師になると、担当患者さまへのケアだけでなく、看護師への相談、院内教育や研究など組織全体のがん看護に関われるようになります。
| 資格取得前 | 資格取得後 |
| 担当する患者さまを中心に看護する | 他部署の看護師から相談を受ける |
| 病棟内での連携が中心 | 部署・職種を越えた調整を担う |
| 個別のケアを積み重ねる | 院内のケアの質改善に関わる |
| 日々の実践で完結する | 実践を研究や教育につなげる |
つまり、自分が患者さまに質の高いケアを提供するだけでなく、「看護師や多職種と協力し、組織のがん看護をより良くする」ことに活動範囲を広げられる点がメリットです。
大学院進学には時間・費用・職場調整が必要
資格取得には大学院修士課程の修了が必要なため、働きながら進学する場合は勤務との両立が課題になることも少なくありません。学費だけでなく、実習中の勤務調整や課題に取り組む時間、家族との時間なども含めて、進学後の生活を考えておく必要があります。
実際に、「働きながら大学院に通えると思っていたが、実習や課題に想像以上に時間がかかった」というケースもあります。
志望校を決める際は、学費だけでなく、授業・実習の時間帯、勤務先の修学支援制度を確認しておくと、入学後に負担を感じにくいでしょう。
取得後に専門的な役割を担う責任がある
取得後は、難しい症例への対応だけでなく、看護師へのコンサルテーションや多職種との調整、院内のがん看護の質向上まで期待されます。
そのため、資格を取得するだけでなく、専門看護師として活動する時間が業務として確保されているかも確認しておきましょう。大学院への進学を決める前に、取得後の役割や配置について勤務先の上司に相談しておくと安心です。
がん看護専門看護師をキャリアに活かすには
がん看護専門看護師の資格をキャリアに活かすには、取得後に専門性を発揮できる環境があるかを確認することが重要です。
施設によっては、資格取得後も一般の看護師と同じ病棟業務が中心となり、専門看護師として活動する時間を十分に確保できない場合があります。進学や転職を考える際は、次の点を確認しておきましょう。
- 専門看護師として配置されるか
- 相談・調整・教育などの活動時間が確保されているか
- 緩和ケアチームや看護外来などで専門性を発揮できるか
資格を取ることをゴールにせず、「資格を活かしてどのような看護をしたいか」を考えたうえで職場を選ぶことが大切です。
がん看護専門看護師に向いている看護師
がん看護専門看護師は、患者さまへのケアだけでなく、周囲の看護師や多職種と協力しながら、がん看護の質を高めたい看護師に向いています。たとえば、次のような傾向がある方です。
- 多職種と意見を交わし、患者さまを中心に調整できる
- 難しい事例について、深く考えたり学んだりできる
- 看護師への相談や教育にも関わることができる
- 実践した看護を振り返り、研究や質改善につなげられる
「自分の知識や経験を周囲にも広げ、がん看護全体をより良くしたい」と考える方は、専門看護師の役割を発揮しやすいでしょう。
がん看護専門看護師に関するよくある質問
ここでは、がん看護専門看護師に関するよくある質問にQ&A形式で回答します。
Q1.がん看護専門看護師になるには何年かかりますか?
一律に「○年」とは言えません。
通算5年以上の実務経験に加えて、修士課程の在学期間が必要です。修士課程の標準修了年限は2年ですが、長期履修制度を利用して3年以上かけて学ぶ場合もあります。
実務経験の要件を満たしている場合でも、大学院への進学から資格取得までは2年以上を目安に考えておきましょう。
Q2.大学院に行かずにがん看護専門看護師になれますか?
なれません。
受験資格に、看護系大学院修士課程の修了と所定の単位の取得が含まれています。
Q3.がん看護専門看護師は何人いますか?
2025年12月時点で1,172人です。
個別の登録者は、日本看護協会の「分野別都道府県別登録者検索」から確認できます。
Q4.がん看護専門看護師の合格率は?
日本看護協会は、専門看護師認定審査の合格率を公表していません。
がん看護専門看護師になるには、通算5年以上の実務経験に加え、大学院修士課程の修了と認定審査への合格が必要です。取得までに必要な経験や教育課程を考えると、資格取得のハードルは高いと言えるでしょう。
Q5.資格を取ると給与は上がりますか?
一律に上がるわけではありません。
勤務先によって、資格手当や昇給・昇格・昇進への反映方法が異なります。日本看護協会の調査では、専門看護師757人のうち、資格取得によって「基本給が上がる・昇給する」と回答したのは7.7%、「昇格する」は4.9%、「昇進する」は4.0%でした。一方、87.3%は「特にない」と回答しています。
実際に基本給が上がった専門看護師では、平均1万4,471円の昇給でした。つまり、資格を取得すれば必ず給与が上がるわけではなく、勤務先の処遇制度によって差があると考えておきましょう。
関連記事:専門看護師の給料は約549万円?資格手当や認定看護師との給料の違いを解説
Q6.がん看護専門看護師は訪問看護でも活かせますか?
はい、活かせます。
2025年12月時点で、訪問看護ステーションに59人が所属しています(2025年12月時点)。退院直後の症状マネジメントや疼痛管理、看取りに向けた調整のほか、訪問看護師からの相談対応や病院との橋渡しを担う役割も期待されます。
がん看護専門看護師は患者さま・ご家族と医療チームを支えるがん看護のスペシャリスト
がん看護専門看護師は、症状や副作用への対応だけでなく、治療の意思決定や療養場所の選択、多職種との連携、看護師への教育など、がん患者さまとご家族を幅広く支える専門職です。
取得には通算5年以上の実務経験と看護系大学院修士課程の修了などが必要で、認定後は5年ごとの更新があります。資格取得を考える際は、取得後にどのようながん看護を実践したいのかを考えることが大切です。
また、病院で専門性を深めるだけでなく、訪問看護といった地域で経験を活かす道もあります。
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<参考サイト>
専門看護師認定者数推移[全国][都道府県別](各年12月末の登録者数)|公益社団法人日本看護協会
新たな認定看護師教育基準カリキュラム作成の概要(2019 年度)|公益社団法人日本看護協会
「2022年度専門看護師・認定看護師に対する評価・処遇に関する調査」報告書|公益社団法人日本看護協会
分野別・所属施設別登録者数(2025年12月)|公益社団法人日本看護協会
| 監修:飛鳥馬 沙耶(あすま さや)/訪問看護ステーション 管理者 HCU・高度急性期病棟にて約6年間、循環器・心臓外科・脳外科領域を中心とした急性期看護に従事。2023年より訪問看護ステーションの管理者として、在宅医療の現場に携わる。専門領域は、訪問看護・在宅医療、急性期看護。 |
ナスキャリナビ 編集部 「ナスキャリナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「ナスキャリ」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。
