退院支援とは?看護師の3つの役割や流れ、退院調整との違いをわかりやすく解説

「退院支援での看護師の役割って何?」「退院支援で患者さまに何を伝えればいいのか分からない」
このような悩みを抱えている看護師は少なくありません。退院支援とは、患者さまやご家族が安心して退院後の生活を送れるよう、入院早期から多職種で関わる一連のプロセスです。看護師は、患者さまの希望を聞き取り、多職種につなぐ役割を担います。
この記事では、退院支援における看護師の役割や実際の流れ、退院調整との違いなどを解説します。退院支援において看護師が担うべき役割が分かることで、患者さまやご家族が安心して退院後の生活を送れるようサポートできるようになるでしょう。
なお、本記事では、入退院支援部門等で退院支援を担う看護師を『退院支援看護師』と表記します。
退院支援とは?
「退院支援」と聞くと、退院が近づいてから始まる支援だとイメージされがちです。しかし、実際には入院当日や、場合によっては外来を受診する段階から始まることもあります。看護師は、患者さまやご家族の意思決定を支える役割を担います。
退院支援の目的
退院支援の目的は、患者さまが納得・安心した状態で退院し、住み慣れた地域で療養生活を続けられるようにすることです。
高齢の患者さまは、病気そのものだけでなく、入院中の活動量低下や安静によって筋力や身体機能が低下しやすいとされています。海外の研究では、高齢入院患者の約30~60%に、入院中の新たなADL依存がみられたとの報告もあります。
こうした身体機能の低下は、退院後の生活にも影響する可能性があります。そのため、入院早期から患者さまの身体機能や生活状況を把握し、退院後の暮らしを見据えて支援することが重要です。
退院支援に関わる職種と役割
退院支援には、複数の職種が専門性を活かして関わります。
- 病棟看護師:患者さまの希望や生活課題を把握し、多職種につなぐ役割を担う
- 退院支援看護師:院内の退院支援をとりまとめ、多職種の調整役を担う
- 医療ソーシャルワーカー(MSW):医療費や介護保険の使い方など、お金や制度に関する相談にも対応する
- ケアマネジャー:退院後の訪問介護やデイサービスなどのサービスを調整する
- 訪問看護師:自宅での医療処置やケアを病院から引き継ぎ、退院後の支援を担う
- 在宅医:退院後の診察や薬の処方など、在宅療養中の医学的管理を担う
病棟から地域へ切れ目なく支援をつなげるためには、それぞれの専門性を理解し、早い段階から情報共有することが大切です。
退院支援と退院調整の違い
退院支援と退院調整は混同されがちですが、指しているものが異なります。
| 項目 | 退院支援 | 退院調整 |
| 位置づけ | 患者さまの意思決定を支えるプロセス全体 | 退院支援を実現するための実務的な作業 |
| 主な内容 | 希望の確認、生活課題のアセスメント、意思決定支援 | 訪問看護や介護サービスなど社会資源の手配・調整 |
| 関わる時期 | 入院した早期から退院後まで継続的に関わる | 退院前後の具体的な手配・調整のタイミング |
退院支援という大きな枠組みの中に、退院調整が含まれているイメージだと捉えると分かりやすいでしょう。
診療報酬でも、平成28年度改定で『退院調整加算』が『退院支援加算』へ見直され、退院困難な患者を早期に把握し、患者さまやご家族との話し合いや多職種連携を通じて退院を支援する体制がより重視されるようになりました。
患者さまの希望を尊重した支援を重視する方向に進んできたことがうかがえます。
退院支援における看護師の3つの役割
病棟看護師が担う退院支援の役割は主に3つあります。
患者さまやご家族の希望を確認する
患者さまやご家族が「どこで」「どのように」療養したいかという希望を丁寧に聞き取ることが看護師の役割です。
入院直後は、患者さまもご家族も退院後の生活をイメージしきれていないことが少なくありません。入院時のアナムネーゼ聴取の際に、退院後にどのような生活を送りたいのか確認するだけではなく、清拭や食事介助などケアの中でも「家に帰れるなら帰りたい」「帰って1人で生活するのは不安」といった本音を引き出していくことが大切です。
病棟看護師が患者さまの思いに気づき、適切な支援につなげられるかどうかが、その後の退院支援の質を左右します。
退院後の生活課題をアセスメントする
看護師は、患者さまの身体状況だけでなく、退院後の生活全体を見据えた課題を洗い出す必要があります。具体的には、以下のような視点でアセスメントしましょう。
- 服薬管理は自分でできるか
- 自宅に段差があり動きにくい場所はないか
- 介護してくれる支援者がいるか
実際に、退院前カンファレンスで「内服管理は本人ができても、薬局までの移動手段がない」という課題が明らかになるケースもあります。その場合は、ケアマネジャーやMSWと連携し、利用できるサービスや支援方法を検討します。
身体面の評価だけでは見えてこない課題が、生活面まで広げてアセスメントすることで明らかになることは少なくありません。
多職種との連携を進める
見えてきた退院後の課題を多職種につなぎ、チームとして支援を組み立てていくことも看護師の役割です。MSWやケアマネジャー、訪問看護師など、それぞれの専門職に必要な情報を共有し、連携の橋渡し役を担うことが求められます。
たとえば、退院後に医療処置が必要な患者さまであれば、訪問看護師へ処置内容や注意点を共有することで、退院後も切れ目のないケアにつなげられます。看護師が多職種との橋渡し役となって情報共有を進めることで、患者さまやご家族が安心して在宅生活を始めやすくなるでしょう。
退院支援の流れ
退院支援は、一般的に次の5つのステップで進みます。
- 入院時に退院支援の必要性をスクリーニングする
- 多職種で退院後の生活をアセスメントする
- 退院前カンファレンスを実施する
- 地域の医療や介護サービスにつなげる
- 退院後のフォローにつなげる
それぞれの場面で看護師がどのように関わるのかを見ていきましょう。とくに、1〜3は病棟看護師が中心となる場面が多く、業務に直結する部分です。
1.入院時に退院支援の必要性をスクリーニングする
入院後早期に、退院困難な要因がないかを評価します。
入退院支援加算では、入院後早期に退院困難な要因を確認し、対象となる患者さまについて患者さま・ご家族との話し合いや退院支援計画の作成を進めます。たとえば入退院支援加算1では、原則として入院後3日以内に患者さまの状況を把握して対象者を抽出し、一般病棟等では原則7日以内に患者さま・ご家族との話し合いを行うとともに、入院後7日以内に退院支援計画の作成に着手します。実務では、退院支援計画書の内容を患者さまやご家族に説明し、今後の支援方針を共有する病院もあります。
2.多職種で退院後の生活をアセスメントする
スクリーニングで退院困難な要因が見つかった患者さまについて、病棟看護師や退院支援看護師、MSWなどが生活状況を詳しく評価します。
身体機能だけでなく、住環境やご家族の介護力、経済的な状況まで含めて確認することで、退院後に起こりうる困りごとを想定できます。
3.退院前カンファレンスを実施する
病棟看護師や退院支援看護師、MSW、必要に応じて訪問看護師やケアマネジャーが集まり、退院前カンファレンスを開催します。
具体的には、退院後の生活で想定される課題や必要な支援内容、緊急時の連絡体制などを共有します。多職種がそれぞれの視点から意見を出し合うことで、退院後も切れ目のない支援につなげることが可能です。
患者さま・ご家族にも参加していただくことで、支援者側の計画と本人の希望をすり合わせることができ、退院後の生活イメージのズレを防げます。
4.地域の医療や介護サービスにつなげる
カンファレンスで決まった支援内容をもとに、訪問看護や訪問診療、介護サービスなど地域の資源につなぎます。この段階が、いわゆる退院調整にあたる実務作業です。
誰が・いつまでに・何を手配するかを明らかにしておき、訪問看護指示書や診療情報提供書などの書類の準備も進めておきましょう。
5.退院後のフォローにつなげる
退院後は、在宅医や訪問看護師など地域の支援者と連携し、必要に応じて情報共有することが重要です。
在宅医や訪問看護師との情報共有が、患者さまやご家族の「何かあったらどうしよう」という不安を和らげ、地域での療養生活を継続する支えになります。切れ目のないサポートを意識しましょう。
退院支援で看護師が大切にしたいポイント
退院支援の流れや制度を理解するだけでなく、日々の関わりの中で意識しておきたい視点もあります。ここでは、退院支援を進めるうえで看護師として大切にしたいポイントを、現場での場面を交えて紹介します。
入院早期から退院後の生活をイメージする
退院間際になって慌てて動き出すのではなく、入院した時点から「この方はどこで、どのように生活していくのか」を意識する視点が大切です。
たとえば、独居の高齢患者さまが緊急入院した場合、入院当日から病院の退院支援室と連携しておくことで、退院時の選択肢を増やせます。
早期から退院後の生活をイメージしてケアすることで、必要な情報収集や多職種への相談も早いタイミングでおこなえるようになり、患者さまの選択肢を狭めずに済むでしょう。日々の気づきの積み重ねが、スムーズな退院支援につながります。
患者さま本人の意思決定を尊重する
退院先は、ご家族や医療者が決めるものではなく、患者さまが納得して選ぶものです。看護師はあくまで、情報提供をし、意思決定を支えるという立場を意識する必要があります。
たとえば、ご家族は施設入所を希望する一方で、患者さまご本人は自宅への退院を強く望むケースも珍しくありません。こうした場面では、双方の思いを整理したうえで、在宅サービスを組み合わせて自宅退院が可能かどうかなどを多職種で検討することもあります。
ご本人の意向と、安全面での懸念が食い違うときこそ、時間をかけた丁寧な対話が求められます。
地域包括ケアシステムを理解して活用する
病棟看護師は、地域包括ケアシステムを理解し、自分の地域にどんな社会資源があるかを把握しておくことが大切です。
たとえば、退院後に介護保険サービスの利用が必要になりそうな患者さまには、MSWやケアマネジャーと連携しながら、利用できる制度や地域資源を早めに検討しておくことが大切です。地域の社会資源を理解しているかどうかで、患者さまに提案できる選択肢の幅も変わってきます。
退院支援における現場の事例
制度や流れを理解していても、実際の退院支援の現場をイメージするのは難しいものです。ここでは、退院支援の取り組みが実際の在宅生活にどうつながったのか、訪問看護の現場での事例を詳しく紹介します。
在宅生活の変化に早く気づくことの大切さを学んだ事例
循環器病棟では、心不全などで入退院を繰り返す患者さまも少なくありません。ある看護師は、何度も入院を繰り返していた患者さまが受診しなくなり、しばらくして認知症が進行した状態で再び来院された経験をしたそうです。
この経験を通して、「受診したくても、自分で判断できなくなっていたのかもしれない」と気づき、退院後の生活まで視野に入れた支援の重要性を実感したと言います。
病院では見えにくい生活背景を理解するためにも、退院前から訪問看護など地域の支援者と連携し、患者さまを継続して支える視点が大切だと分かる事例です。
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退院支援に関するよくある質問
退院支援について現場でよく聞かれる質問にお答えします。
Q1.病棟看護師も退院支援をおこないますか?
はい、病棟看護師も退院支援に重要な役割を担っています。
退院支援看護師やMSWが中心になって進める場面が多いものの、患者さまの状態や希望をいち早くキャッチするのは、ケアを担う病棟看護師であることが多いでしょう。
病棟看護師の気づきがきっかけで、退院支援の方向性が変わることも少なくありません。
Q2.退院支援看護師になるには資格が必要ですか?
看護師免許以外に、必須となる資格はありません。
ただし、入退院支援加算の施設基準では、入退院支援や地域連携業務の経験がある専従の看護師、または社会福祉士1名以上が求められており、病棟経験を積んだ看護師が配置されるケースが多く見られます。
また、在宅看護や慢性疾患看護、緩和ケアなどに関する知識や経験を深めることで、退院後の生活を見据えた支援の専門性を高められるでしょう。
Q3.退院支援においてスキルアップする方法はありますか?
退院支援カンファレンスに参加し、MSWやケアマネジャーなど他職種の視点を学ぶことがスキルアップには欠かせません。
また、訪問看護の現場を知ることで、退院後の生活が実際にどのような状態であるかイメージできるようになり、病棟での関わり方が変わってきます。訪問看護への転職や同行訪問の機会を通じて、地域医療の視点を得る看護師も増えています。
退院支援を理解して患者さまの安心できる退院につなげよう
退院支援とは、入院した瞬間から始まる、患者さまの意思決定を支えるプロセスです。希望の確認や生活課題のアセスメント、多職種連携の役割を意識しながら関わることで、患者さまが納得して退院を迎えられるようになります。
また、退院支援を経験する中で、在宅医療や訪問看護に興味を持つ看護師も少なくありません。地域での暮らしを支えながら、退院後も継続して患者さまに関わることができるのは、訪問看護ならではの魅力です。訪問看護専門の求人サイトナスキャリ(NsPace Career)では、経験や希望条件に合った訪問看護ステーションの求人を探せます。地域で患者さまの暮らしに寄り添う働き方に興味がある方は、ぜひチェックしてみてください。
<参考サイト>
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