訪問看護の退院時共同指導加算とは?算定要件や退院時共同指導料との違いを解説

「退院時共同指導加算ってどんな加算?」「自分のステーションでも算定できるの?」
退院前のカンファレンスに参加した経験はあっても、それがどの加算につながるのか分からない訪問看護師は少なくありません。退院時共同指導加算とは、利用者さまやご家族に対して退院前に病院スタッフと共同で指導を行い、退院後に訪問看護を実施した場合に算定できる加算です。
この記事では、訪問看護における退院時共同指導加算の概要や算定要件、退院時共同指導料や退院支援指導加算との違いなどを解説します。この記事を読むことで、算定漏れや返戻のリスクを避けながら、病院との連携をスムーズに進められるようになるでしょう。
訪問看護の退院時共同指導加算とは
ここでは、退院時共同指導料との違いや、この加算が設けられた背景などを確認しましょう。
病院等と共同で在宅療養上の指導を実施することへの加算
退院時共同指導加算は、病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院などに入院・入所している利用者さまが、退院・退所するにあたり、訪問看護師と入院・入所先のスタッフが、在宅療養に必要な説明や指導をおこなった場合に算定できる加算です。
退院後すぐに医療処置・ケア・服薬管理が必要な場合、病院側の情報を事前に把握しておくことで、利用者さまの在宅生活への円滑な移行を支援できます。
退院時共同指導料との違い
退院時共同指導料との違いを以下の表にまとめました。
| 項目 | 退院時共同指導加算 | 退院時共同指導料 |
| 算定する側 | 訪問看護ステーション側 | 病院・診療所側 |
| 保険の種類 | 医療保険・介護保険 | 医療保険のみ |
退院時共同指導料は、病院側が算定する診療報酬であり、訪問看護ステーション側は算定できません。なお、病院側が算定する退院時共同指導料には「1」と「2」があり、算定できる医療機関や算定要件が異なります。下記の記事でも詳しく解説しています。
関連記事:退院時共同指導料とは?1・2の違いや算定要件を訪問看護師向けにわかりやすく解説
退院時共同指導加算が設けられるようになった背景
退院・退所後に在宅での支援を必要とする利用者さまは少なくありません。厚生労働省の調査によると、退院当日に訪問が必要であった利用者の介護状況は「介護できる人はいない」23.4%、世帯の状況は「独居」が26.4%です。
退院・退所直後は環境や状態の変化が起こりやすく、利用者さまにとって不安が大きくなる時期です。
病院側と事前に医療処置や生活環境について情報共有しておくことで、退院・退所当日からサポートしやすくなるでしょう。
医療保険と介護保険で共通する退院時共同指導加算の算定要件
退院時共同指導加算は医療保険・介護保険のどちらにも存在しますが、共同指導の進め方には共通する要件があります。両保険に共通する要件を押さえておきましょう。
共同指導を実施できる施設
対象となるのは、病院・診療所に入院中、または介護老人保健施設・介護医療院に入所中の方です。これらの施設から退院・退所し、在宅療養に移る利用者さまが算定の対象になります。
共同指導に参加する職種
訪問看護ステーション側の職種は、看護師・保健師・助産師が対象です。准看護師は算定対象にならないため注意しましょう。入院・入所先からは主治医や看護師、関係職種が参加します。
算定要件を満たすために必要な条件
退院時共同指導加算を算定するには、次の条件をすべて満たす必要があります。
- 利用者さま・ご家族の同意を得たうえで実施すること
- 病院や施設と共同して退院・退所前に指導すること
- 指導内容を文書で提供する、または電子メール、ビデオ通話で提供すること
- 退院・退所後に訪問看護を実施すること
- 指導内容を記録として残すこと
退院前のカンファレンスに参加する訪問看護師が戸惑いやすいのが「指導内容を文書で残す」という工程です。口頭でのやり取りだけで終えてしまい、算定根拠が不十分になる可能性があります。
誰が、いつ、どういった内容を説明したのかを記録として残すことで、退院後のトラブル予防にもつながります。
訪問看護の退院時共同指導加算【医療保険】の算定要件
医療保険における退院時共同指導加算は、算定額や対象者の範囲が介護保険とは異なります。
算定対象となる利用者
病院や診療所、介護老人保健施設・介護医療院に入院・入所中の方が対象です。
算定できる単位・回数
1回につき8,000円が基本の算定額です。
別表7・8(厚生労働大臣が定める疾病等に該当する利用者さまや、特別な管理を必要とする)の利用者さまの場合は、2回まで算定できます。その場合は、特別管理指導加算として2,000円が加算されます。ただし、別々の日に指導した場合にのみ算定可能です。
別表7・8の対象疾患や医療処置については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:【看護師向け】訪問看護における医療保険の適用条件とは?実務内容や必要スキルもご紹介
算定するタイミング
退院・退所後、最初の訪問看護を実施した際に加算します。
訪問看護の退院時共同指導加算【介護保険】の算定要件
介護保険における退院時共同指導加算は、単位数や算定タイミングが医療保険とは異なります。
算定対象となる利用者
要介護認定または要支援認定を受けた、病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院から退院・退所する利用者さまが対象です。
算定できる単位・回数
1回あたり600単位です。原則として、退院・退所につき1回のみの算定となりますが、特別な管理を必要とする利用者さまは2回まで算定できます。
また、介護保険では初回加算と併算定できません。
算定するタイミング
退院・退所後の初回の訪問看護を実施した日に算定します。
退院時共同指導加算と退院支援指導加算との違い
実施するタイミングや内容、算定回数などが異なります。混同して算定漏れや請求ミスにつながらないよう、比較表で整理しておきましょう。
| 比較項目 | 退院時共同指導加算 | 退院支援指導加算 |
| 実施するタイミング | 退院前(入院・入所中) | 退院当日 |
| 実施するスタッフ | 病院のスタッフ+訪問看護師 | 訪問看護師 |
| 実施する場所 | 病院・介護老人保健施設など | 利用者さまの自宅 |
| 指導する内容 | 病院側との情報共有や、在宅で必要な医療処置・ケアの引き継ぎ | 生活環境での指導、医療機器の設置確認 |
| 算定回数 | 原則、1回(特別な場合は2回) | 退院日当日に1回のみ |
退院時共同指導加算と退院支援指導加算は、実施する目的やタイミングが変わるため、要件を満たせば同時に算定が可能です。
訪問看護で退院時共同指導加算を算定するメリット
退院時共同指導加算を算定することは、収益面のメリットだけではありません。利用者さまの在宅生活を安定させる効果があります。3つの観点から確認しましょう。
退院直後から切れ目のない支援を提供できる
病院側の情報を事前に把握できているため、退院当日から必要な医療処置や観察項目を理解した状態で訪問できます。
たとえば、点滴管理や褥瘡ケア、服薬管理などについて情報共有できていれば、退院後すぐに必要なケアを開始しやすくなり、利用者さまが安心して在宅生活を始められます。
利用者さまとご家族の不安軽減につながる
退院前に「在宅でどう過ごせばいいか」が明確になることで、利用者さまとご家族の不安が和らぎます。『退院後も相談できる相手がいる』という安心感にもつながります。
退院直後は、医療処置や生活上の注意点に不安を感じやすい時期です。入院・入所先のスタッフと訪問看護師が一緒に説明することで、退院後も継続して支援してもらえるという安心感につながります。
多職種との情報共有がスムーズになる
病院の医師・看護師・訪問看護師・薬剤師・介護支援専門員などが情報を共有することで、退院後の生活を見据えた役割分担が明確になります。
連携体制を整えておくことで、退院後の情報伝達ミスや対応の遅れを防ぎ、利用者さまを中心とした切れ目のない支援を実現しやすくなるでしょう。
訪問看護で退院時共同指導加算を算定するときの注意点
要件を満たしていても、記録の残し方やほかの制度との関係を間違えてしまうと、算定できなかったり返戻の対象になったりします。実務で見落としやすい注意点を確認しましょう。
利用者さま・ご家族の同意を得る必要がある
共同指導を行う前提として、利用者さま・ご家族の同意を得ることが不可欠です。
オンラインで実施する場合も、事前に同意を得る必要があります。
後からトラブルにならないよう、同意を得た事実や日時を記録に残しておくことも大切です。
指導内容を記録に残さなければならない
口頭での共有だけでは算定根拠として不十分になるため、「誰が、いつ、どのような内容を説明したのか」を詳しく記録しておくことが重要です。
初回訪問を実施しなければ算定できない
共同指導を実施しただけでは加算は成立しません。退院・退所後に訪問看護を実施することが算定の条件です。
現場では、退院前のカンファレンスに参加したものの、利用者さまの意向が変わり別の訪問看護ステーションが担当するケースもあります。訪問看護を実施しなければ算定できないため、退院後の支援体制まで確認しておくことが重要です。
ビデオ通話による共同指導はガイドラインに準拠する
退院時共同指導は、ビデオ通話ができる機器で実施しても差し支えありません。
ただし、オンラインで実施する場合は、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に準拠した環境を整える必要があります。個人情報の漏えいを防ぐためにも、利用するシステムの安全性を確認しておきましょう。
訪問看護の退院時共同指導加算に関するよくある質問
算定要件を理解していても、現場では疑問が出てくるものです。よくある4つの質問にお答えします。
Q1. 退院時共同指導はどのような流れで進めるのですか?
一般的には、以下の流れで進めます。
- 利用者さま・ご家族の同意を得る
- 病院や施設から退院支援に関する連絡を受ける
- 退院前カンファレンスや共同指導に参加する
- 利用者さま・ご家族へ在宅療養に関する説明を行う
- 指導内容を記録し、必要な文書を交付する
- 退院後、初回の訪問看護を実施する
退院前の段階から病院スタッフと情報共有し、利用者さまやご家族と顔を合わせておくことで、退院後の支援を円滑に開始できるでしょう。
Q2. 退院前カンファレンスでは、どのようなことを確認しておくとよいですか?
実際に、医療処置の内容に加え、自宅環境、ご家族の介護状況、利用者さまの不安などを確認する事業所もあります。
退院後に必要な情報が共有されていなかったという事態を防ぐため、生活面も含めて情報共有しておくことが大切です。
Q3. 退院後すぐに再入院した場合でも退院時共同指導加算は算定できますか?
退院後の初回訪問看護を実施する前に再入院した場合は算定できません。
退院・退所前の共同指導をおこなったうえで、退院後に実際に初回の訪問看護を提供することが算定要件となっているためです。一方、初回訪問看護を実施した後に再入院した場合は、要件を満たしていれば算定できます。
算定漏れや返戻を防ぐためにも、初回訪問の実施日や再入院日を記録で確認しておきましょう。
Q4.退院時共同指導加算の書式は決まっていますか?
国が定める統一様式はありませんが、指導内容の要点を記載した文書を作成し、訪問看護記録書とあわせて保管しておく必要があります。
各都道府県の訪問看護ステーション協議会などが参考様式を公開している場合もあるため、自施設で活用しやすい様式を整備しておくと、記録漏れや算定ミスの防止につながるでしょう。
訪問看護の退院時共同指導加算は算定要件を確認して適切に活用しよう
退院時共同指導加算は、退院・退所する利用者さまの在宅生活を支えるための加算です。算定するには、利用者さま・ご家族の同意を得ることや、退院後に初回訪問を実施することなどが必要です。
医療保険と介護保険における要件の違いや、退院支援指導加算との違いを正しく理解しておくことで、算定漏れや返戻のリスクを減らせます。
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<参考サイト>
訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について|厚生労働省
訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部を改正する件|厚生労働省
○ 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成十二年厚生省告示第十九号)(抄)【平成二十七年四月一日施行】|厚生労働省
ナスキャリナビ 編集部 「ナスキャリナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「ナスキャリ」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。
