医師国保とは?看護師が加入する方法や社会保険との違い、3つのデメリットを解説

「医師国保には看護師も加入できるの?」「医師国保と社会保険は違うの?」
クリニックへの転職を考える際に、医師国保という聞き慣れない言葉に戸惑う方も多いのではないでしょうか。
医師国保は、加入条件や保険料の仕組みなどが一般的な社会保険と異なるため、年収や家族構成によっては、手取り額が想定より少なくなる場合があります。
この記事では、医師国保には看護師も加入できるのか、社会保険との違いやメリット、デメリットも解説します。制度を理解すれば、転職後の手取り額や生活費を予測できるため、クリニックに転職後の生活設計にも役立つでしょう。
*本記事では、医師国保は東京都医師国民健康保険組合を例に解説します。
医師国保とは?看護師も加入できるのか解説
医師国保は、正式には医師国民健康保険と呼ばれ、医師とその家族、ならびに医師国保組合員が経営する医療機関に雇用されている従業員とその家族が加入できる保険です。看護師も後から解説する条件を満たせば、医師国保に加入できます。
各組合は47都道府県すべてに設置されており(※組合の運営形態や加入条件は地域によって異なります)、それぞれの保健事業は人間ドックの補助や各種検診、保養施設との提携など多様です。まずは、転職先が医師国保を採用しているか確認しましょう。
医師国保と社会保険の違い【看護師向け比較】
| 項目 | 医師国保 | 社会保険 |
| 加入条件 | ・第1種組合員、第3種組合員に雇用されている従業員である ・常勤または常勤に準ずる ・規約に記載の住所地に住民票がある | ・週の勤務時間が20時間以上 ・給与が月8万8,000円以上 ・2ヶ月を超えて働く予定 ・学生ではない |
| 保険料 | 組合ごとに異なる | 給与額に応じて変動する |
| 自家診療 | 請求および給付はできない | 請求できる場合がある |
| 年金 | 国民年金 | 厚生年金 |
医師国保と社会保険には、仕組みに違いがあります。ただし、加入条件や加入手続きは、それぞれの保険組合により異なるため、事前にホームページで確認するか、クリニックの担当者に尋ねてみてください。
加入条件の違い
医師国保と社会保険の加入条件は、職場がどちらを適用しているかにより変わります。
医師国保には、第1種組合員(75歳未満の開業医・勤務医)や第3種組合員(75歳以上の開業医や勤務医)に雇用されている常勤または常勤に準ずる看護師が加入できます。たとえば、個人経営のクリニックが医師会に所属している場合です。
社会保険に加入する条件は、「週の勤務時間が20時間以上」「給与が月8万8,000円以上」「2ヶ月を超えて働く予定」「学生ではない」の4つを満たすことです。
大学病院や総合病院から小規模のクリニックへ移る際は、保険の種類が変わる可能性があるため、転職先がどちらに該当するか事前に求人票をチェックしましょう。
保険料の違い
保険料の計算方法は、医師国保と社会保険で異なります。
医師国保は組合員の種別や年齢によって保険料が定められており、看護師の収入によって保険料が変動することはありません。具体例として、東京都医師国民健康保険組合の場合、看護師の保険料は1ヶ月あたり1万8,500円で、40~64歳の方は介護保険料6,000円が上乗せされます。
一方で、社会保険は看護師の収入で保険料が変わるため、年収や家族構成によっては、医師国保の方が有利になるケースがあります。
自家診療への対応の違い
「自家診療」とは被保険者が所属する医療機関で、被保険者本人またはその家族が治療やケアを受けることです。実際に、体調不良で勤務している病院で診てもらうこともあるでしょう。
医師国保の場合、自家診療に対する請求、および給付ができないことになっているため、勤務先で受診する際には気をつけましょう。一方で、社会保険でも、医療機関や運用ルールによっては制限される場合があります。
年金の違い
健康保険と同時に確認しておきたいのが年金の違いです。
看護師が医師国保に加入した場合は、国民年金に加入することになります。このとき、自分で国民年金の手続きをしなければなりません。
対して、社会保険に加入している場合は、厚生年金を納付することとなります。厚生年金は将来もらえる金額が手厚くなる反面、国民年金は受け取れる額が少なくなる点に注意が必要です。
関連記事:看護師は保険に入るべき?検討すべき5つの理由と看護師賠償責任保険制度を解説
看護師が医師国保に加入する方法
看護師が医師国保に加入するには、職場が医師国保を採用しているかどうかをまず確認してください。採用している場合は、「加入申込書」をホームページからダウンロードして記載し、職場の担当者もしくは組合に提出することで加入できます。
ただし、都道府県によって加入の手続きが異なったり、前職で社会保険に入っていた場合は、資格喪失の証明書が必要になったりします。スムーズに手続きを済ませるために、書類は早めに揃えましょう。
看護師が医師国保に入るメリット
医師国保には、社会保険にはない次のような魅力があります。
- 保険料が一定でわかりやすい
- 助成金制度を受けられる場合もある
- クリニックの金銭的な負担がない
給与が増えても保険料が変わらないため、夜勤や残業でしっかり稼ぎたい看護師に向いています。3つのメリットをそれぞれ見ていきましょう。
保険料が一定でわかりやすい
医師国保は毎月の保険料が定額であるため、給与が増えても保険料は上がりません。
管理職になったときや認定看護師・専門看護師の資格を取得したとき、繁忙期で残業が多くなり給与が上がっても保険料が据え置かれる点は、長く働くうえで嬉しい要素です。
また、社会保険のように給与の増減によって保険料が変動しないため、家計管理がしやすいこともメリットといえます。
助成金制度を受けられる場合もある
医師国保組合によっては、独自の助成金や給付金制度を設けています。たとえば、東京都医師国民健康保険組合は、次のような保健事業をおこない、加入者の健康維持をサポートしています。
- 特定健康診査・特定保健指導
- 人間ドック
- 乳がん検診
自分が加入する組合がどのようなサービスを提供しているか、ホームページで調べてみましょう。制度をうまく活用すれば、生活の質を高められます。
クリニックの金銭的な負担がない
医師国保は、保険料をすべて被保険者が負担するため、社会保険に比べて事業主であるクリニックのコストを抑えられます。
看護師本人にとって直接的なメリットとはいえないかもしれませんが、クリニックが支払う保険料の負担が減る分、給与や賞与に反映させているところもあります。実際に、経営状態が良いクリニックでは、スタッフへの還元として基本給を高めに設定しているケースが見られるようです。
看護師が注意すべき医師国保のデメリット
医師国保に加入することは、看護師にとってメリットがある一方で、気をつけるべき点もあります。
- 給与が少ないと負担が大きい
- 世帯人数によって保険料が変わる
- 勤務している医療機関に受診した場合、保険給付の対象外となることが多い
デメリットを正しく理解していないと、転職後に後悔するかもしれません。現在の状況と照らし合わせて、納得してから転職活動を進めることをおすすめします。
給与が少ないと負担が大きい
医師国保は一律の保険料設定であるため、給与が低い人には負担が重くなる恐れがあります。
たとえば、パート勤務や時短勤務で給与が抑えられている場合、医師国保の定額制が不利に働くかもしれません。自分の月の手取り額からいくら引かれるのか、事前に計算することが不可欠です。
世帯人数によって保険料が変わる
医師国保には扶養制度がないため、家族が多いほど保険料の総額が増えます。子どもや働いていない配偶者がいる場合、一人ひとりに保険料が発生するのです。
被保険者本人の保険料は、社会保険より安く抑えられる場合でも、扶養する家族が多くなると、家計の出費としては高くなる可能性があります。
医師国保を採用しているクリニックへの転職を考えている看護師は、世帯人数を踏まえて、ほかの保険と比べてどのくらい差があるのかシミュレーションしておきましょう。
勤務している医療機関に受診した場合、保険給付の対象外となることが多い
医師国保の注意点のひとつに、自分が勤務している医療機関を受診した場合、診療費が保険診療として扱われないことが多くあります。
医師国保では、自院のスタッフに対する診療(いわゆる自家診療)への給付を認めていない組合が多いためです。そのため、勤務先で受診した場合は、原則として診療費を自己負担する形になります。
ただし、診療や治療そのものを受けられないわけではありません。また、医師国保組合や医療機関の方針によっては、福利厚生として診察費を減免するケースもあります。
体調不良の際は、他の医療機関を受診することで通常の保険診療を受けられるため、あらかじめかかりつけ医を決めておくと安心です。
看護師が医師国保のクリニックに転職する前に確認すべきポイント
医師国保を導入しているクリニックへ転職する際は、次の点を確認してください。
- 保険料の自己負担はいくらか
- 家族を含めると自己負担はどのくらいになるか
- どのような助成制度があるか
前述のとおり、医師国保には組合独自の保健事業や助成金制度を設けている場合があります。ライフイベントと照らし合わせて、どの保険制度に加入するとメリットがあるのか、また安心して働ける環境か見極めてください。
医師国保について看護師によくある質問
医師国保への加入を検討する際、将来の生活や制度の変更について疑問を持つ看護師は多くいます。よくある質問を確認し、納得して転職先を決めるための判断材料にしてください。
Q1:医師国保と社会保険、どちらが得かはどう判断すべきですか?
医師国保と社会保険、どちらがお得かは、自分の年収や家族構成などで判断しましょう。
独身で年収が高い看護師は、保険料が固定である医師国保の方がお得になる場合があります。一方で、養う家族が多い人や、年収がそれほど高くない人は社会保険の方が手元にお金を残しやすいです。
具体的な金額を比べるために、転職先の想定給与や保険料を並べてみましょう。
Q2:看護師は途中で医師国保から社会保険に切り替えられますか?
看護師は、勤務先の保険制度が変わらない限り、個人の希望で切り替えることはできません。
クリニックが医師国保を採用しているなら、その職場で働く間は医師国保に加入することになります。もし社会保険に入りたいなら、社会保険を完備している別の職場へ転職する必要があります。
ただし、クリニックの規模が拡大して法人化された場合は、途中で社会保険へ移行するケースもあります。自分の意志だけで変更できるものではないため、入職時の保険制度をしっかり確認しましょう。
Q3:医師国保だと将来、転職する際に不利になりますか?
医師国保への加入が原因で、将来の転職に不利になることはありません。
採用担当者は資格や経験を重視するため、以前の健康保険の種類を気にする人はいないからです。ただし、厚生年金ではなく国民年金だった期間が長いと、将来の年金額に影響します。転職の面接では、これまで培った看護スキルや経験を伝えてください。
保険制度はあくまで福利厚生の一部であり、あなたの看護師としての価値を左右するものではありません。自分のキャリアプランに合った職場を選びましょう。
医師国保を正しく理解すれば、看護師の転職判断は失敗しにくくなる
医師国保の仕組みを正しく知ると、クリニックへの転職がスムーズに進みます。
保険料が一定であるメリットや、扶養制度がないデメリットを今の自分と照らし合わせてください。手取り額や将来の備えに直結するため、事前の確認が欠かせません。条件に納得したうえで、給与だけでなく保険制度も含めて職場を選び ましょう。
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<参考サイト・文献>
NsPace Careerナビ 編集部 「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。
