アンガーマネジメントとは?看護師が怒りの感情をコントロールする5つの方法

「患者さまにイライラしてしまう」「後輩の看護師に厳しく当たりすぎてしまう」
医療現場の強いプレッシャーの中で働く看護師は、こうした悩みを抱えがちです。命を預かる責任の重さや慢性的な疲労などが、心の余裕を奪っています。
こうした怒りの感情を無理に抑え込むのではなく、アンガーマネジメントでコントロールする方法を学ぶことが、長く働き続けるために大切です。
この記事では、看護師が感情的になりやすい理由と、今から実践できる怒りのコントロール術を解説します。感情が揺れやすくなる背景を理解することで、自分を責めず、心穏やかに仕事と向き合えるようになるでしょう。
看護師に必要なアンガーマネジメントとは
アンガーマネジメントとは、アメリカで生まれたとされる怒り(アンガー)の感情と上手につきあうための心理トレーニングです。
「怒る必要のないことには怒らず、怒るべきことには上手に怒れる」ようになることを目指します。とくに、看護師はプレッシャーや人間関係のストレスが大きいため、怒りの感情を無理に抑えつけすぎてしまうと、心身の健康を損ないかねません。
感情をコントロールできると、冷静に判断しやすくなります。その結果、インシデントのリスクが減り、スタッフや同僚との連携も円滑になります。
「あんなに怒らなければよかった」という仕事終わりの自己嫌悪もなくなり、プライベートの時間も穏やかな気持ちで過ごせるでしょう。
看護師が「感情をコントロールできない」と感じやすい理由
看護師の仕事は、常に緊張感や責任が伴い、感情のコントロールが難しくなりやすい環境にあります。その背景を見ていきましょう。
- 常に気を張る仕事で心の余裕がない
- 命や安全への責任が重い
- 理不尽な対応を受けやすい立場
- 感情を出してはいけないという思い込み
これらの要因が重なることで、看護師は精神的な負荷が高い状態になりがちです。その結果、ある日ふと限界を迎え、感情をコントロールできなくなることがあります。
常に気を張る仕事で心の余裕がない
医療現場は緊張感があり、気の緩みが許されません。
業務で神経をすり減らす状態が続くと、普段なら流せるようなちょっとした出来事でも感情が溢れ出してしまい、コントロールが効かなくなります。
たとえば「ナースコールが鳴り止まない」「物品があるべき場所にない」といった些細なことです。余裕がないと、これらが鋭いノイズとなり、怒りが爆発してしまうのです。
命や安全への責任が重い
看護師は、患者さまの命と安全を預かるという責任を負っています。
この重圧があるため、自分のミスや他者の不手際に対して、「絶対に許されない」という怒りや焦りが生まれやすくなるのです。指導の意図とは異なり、怒りとして伝わってしまうことがあります。
理不尽な対応を受けやすい立場
看護師は、患者さまやご家族からのクレームを受けることもあれば、医師や先輩からの高圧的な指示を受けることもあります。このように、理不尽な感情をぶつけられやすい立場にあります。ときには、パワハラと感じるような状況を経験することも少なくありません。
実際に、「日本医療労働組合連合会」の調査によると、パワハラを受けたことがある看護師は34.5%(よくある:6.1%、ときどきある:28.4%)と回答しています。
こうした怒りや不満を溜め込むことで、許容量を超えたときに、感情をコントロールできないことがあります。
感情を出してはいけないという思い込み
看護師は「冷静で優しくあるべき」「感情的になるのはプロ失格」といった固定観念も、怒りの感情を無理に押し込む原因です。
感情に蓋をすることで、かえって処理できずに溜まり、コントロールが効かなくなる可能性があります。
関連記事:新人看護師が直面するストレス7選!つらい気持ちを乗り越える方法
看護師が感情をコントロールできなくなる場面
感情が揺れやすい「きっかけ」を知っておくことは、事前の対策につながります。
- 患者さまやご家族からの強い言葉
- 医師・先輩からの高圧的な態度
- 業務が重なり余裕がなくなったとき
- ミスを指摘された直後
これらの場面で感情が動くのは、ごく自然なことです。
ただ、衝動的に反応すると、ケアの質や人間関係に悪影響を及ぼす可能性があります。感情が湧き上がったら、次に紹介する対処法を実践し、冷静になる時間を取りましょう。
関連記事:看護師はなぜ「気が強い」と言われる?5つの理由と穏やかに働くための対処法
看護師が感情をコントロールできないことによる悪影響
感情がコントロールできない状態で仕事を続けると、職場の人間関係だけでなく、看護の質にも影響します。
- ミスにつながる
- 患者さまに優しく対応できなくなる
- ほかの看護師に厳しくなる
こうした悪影響を理解することは、自分を責めるためではなく、アンガーマネジメントを身につける動機に変えていきましょう。
ミスにつながる
怒りの感情は、集中力や判断力を低下させます。
冷静さを欠いたまま業務をおこなうと、確認不足や指示の行き違いが起こりやすくなり、インシデント(ヒヤリハット)や医療事故のリスクが高まります。
さらに、ミスを恐れる気持ちから緊張が強まり、感情のコントロールがより難しくなるという、悪循環に陥ることもあるため注意が必要です。
患者さまに優しく対応できなくなる
心に余裕がない状態では、患者さまへの共感的な態度が難しくなります。
看護師が無表情になったり、口調が厳しくなったりすることで、患者さまは看護師を信頼しなくなり、不安になるかもしれません。
患者さまやご家族からの治療への協力や信頼を得られにくくなり、結果としてケアの質が低下します。看護師自身が大切にしている価値観や、看護のあり方に影響を及ぼすこともあります。
ほかの看護師に厳しくなる
自分の怒りを処理できず、後輩に対して過度な叱責や冷たい態度を取れば、職場の雰囲気を悪化させ、チームで連携できなくなります。
必要な情報共有や助け合いができなくなる結果、チームの業務効率が落ち、自身の負担も増加することになりかねません。
感情のコントロールができない=看護師に向いていないわけではない
感情が揺れ動く自分を見て「看護師に向いていない」と責める必要はありません。感情のコントロールに悩むのは、仕事に真剣な証拠です。
感情が動くのは共感力が高い証拠
感情が動くのは、患者さまの苦痛やチームメンバーの状況に深く共感できるからです。
共感力は、質の高い看護を提供するために必須であり、長所といえます。感情的になる自分を否定せず、その扱い方を学ぶことが大切です。
我慢し続ける方が心身に負担
怒りや不満を出さないことだけを目標にして我慢すると、適応障害やうつ病などの心身の不調を招きかねません。
実際に、「日本医療労働組合連合会」の調査によると、メンタル不調者が職場にいると回答した看護師は40.6%にのぼります。一方、厚生労働省「労働安全衛生調査(実態調査)」によると、メンタルヘルス不調により1カ月以上休業した労働者がいた事業所は12.8%でした。
調査機関や年度が違うため、単純比較はできませんが、看護師は心身に不調をきたしやすいと考えられます。感情を抑えつけることではなく、適切に発散・処理する方法を身につけ、自分を守ることが大切です。
看護師が感情的になりそうなときに実践したい5つのアンガーマネジメント
感情が爆発しそうになったときに役立つ、その場でできる対処から、環境を見直すための考え方まで、アンガーマネジメントの方法を紹介します。
- 深呼吸で一度「間」をつくる
- 心の中で状況を言語化する
- 物理的に距離を取る
- 限界を感じたときは専門医を受診する
- 状況を改善できないときは転職も視野に入れる
まずはその場の衝動を抑える技術を使い、それでも解決しない根深い悩みには環境調整や専門医の受診などで対策を立てましょう。自分に合った方法を組み合わせることで、心の平穏を保ちやすくなります。
深呼吸で一度「間」をつくる
一般的に、怒りのピークは数秒〜十数秒程度とされることが多く、その間に反応を止めることが有効だといわれています。
カッとなっても、すぐに反応せず、ゆっくりと深呼吸をしましょう。「心の中で0から10秒まで数える」「時計やナースウォッチをじっと見る」などにより、自分を見つめ直す時間を作れるため、うまく対処できるようになります。
心の中で状況を言語化する
「なぜ自分は怒っているのか?」「この怒りは10点満点で何点か?」と客観的に分析します。
怒りを数値化することで、感情を自分から切り離し、冷静さを取り戻しやすくなります。
物理的に距離を取る
可能であれば、「少し水を飲んできます」「トイレに行ってきます」などと伝えて、その場を離れましょう。
怒りの対象から物理的に離れることで、感情の興奮を落ち着かせられます。
限界を感じたときは専門医を受診する
怒りのコントロールが効かず、私生活にも支障が出ている場合は、精神科や心療内科を受診しましょう。
過度な怒りは、背景に身体的・精神的な不調が隠れている場合もあります。性格の問題と放置せず、診察を受け、脳と心の休息を図る必要があります。
状況を改善できないときは転職も視野に入れる
感情を乱す原因が、職場環境や特定のハラスメントにある場合、自分で解決するのは困難です。
心身の健康を優先し、環境を変えるために転職も検討しましょう。
看護師が感情を溜め込まないための習慣づくり
日頃から感情を溜め込まないためのセルフケアの習慣を作りましょう。
- 感情を否定せず振り返る
- 睡眠・休息を最優先にする
- オンとオフを意識的に切り替える
これらの習慣は、いわば心のメンテナンスです。ケアをすることで、ストレスへの耐性が高まり、トラブルが起きても動じない心を育むことができます。
感情を否定せず振り返る
その日に感じたイライラについて、「今日はAさんに怒りを感じた」「その原因は〇〇だった」と書き出してみましょう。
これにより、自分の怒りのパターンやトリガーを把握できます。
「どうすればよかったか」まで考えることで、次に同じ状況になったときに冷静に対応できるでしょう。
睡眠・休息を最優先にする
感情のコントロールは、心身の体力と密接に関係しています。疲れがたまっているときや、寝不足のときは、イライラしやすくなります。
とくに、夜勤明けや残業が続いているときなどは、予定を詰め込みすぎず、意識的に身体を休める時間として、心身の回復に努めましょう。
オンとオフを意識的に切り替える
勤務時間外は、仕事の連絡をシャットアウトし、趣味やリラックスできる活動に集中するなど、意識的に仕事と切り離す時間を作りましょう。
週末は仕事とは関係のない活動(旅行やスポーツなど)を取り入れると効果的です。仕事のストレスを別のエネルギーに変え、気持ちをリセットしましょう。
看護師の感情コントロールについてのよくある質問
感情のコントロールに悩む看護師から寄せられる、お悩みや疑問をQ&A形式でまとめました。現場ですぐに活かせる考え方のヒントを、わかりやすくお答えします。
Q1:感情を出さない看護師との差は何ですか?
感情を出さない看護師は、もともと感情の振れ幅が比較的小さい場合や、自分なりの対処法を身につけている場合が多いです。
冷静に見える人も、裏では距離を置いたり感情を流したりするテクニックを駆使しています。つまり、あなたも練習次第でそのようになれるということです。
Q2:怒りを表に出すのはプロ失格ですか?
怒りの感情を持つことは、プロ失格ではありません。
問題なのは、相手を傷つける形で感情を出すことです。看護師には、患者さまやチームのために、冷静な方法で意思や意見を伝えることが求められます。
Q3:感情が不安定なとき、どう相談すればいい?
「最近イライラして仕事に集中できない」と伝え、産業医や管理者(看護師長や看護主任)に相談しましょう。
友人や家族には「話を聞いてほしい」と共感を求めて相談するなど、相談相手を使いわけることが効果的です。
感情を抑えるより「整える」ことで看護師は続けられる!
「感情をコントロールできない」と悩むのは、真面目に仕事と向き合い、患者さまを大切に思っている証拠です。自分を責めたり、感情を無理に押さえつけたりする必要はありません。
アンガーマネジメントのテクニックや対処法を通じて、感情を抑えるのではなく、整えながら働く力を身につけていきましょう。
それは、看護師として長く、健やかに働き続けるための大切なスキルです。
もし、セルフケアや工夫を重ねても、職場環境そのものが原因で感情のコントロールが難しいと感じる場合は、働き方を見直すことも、自分を守るための選択肢の一つです。
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<参考サイト・文献>
NsPace Careerナビ 編集部 「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。
