看護師のメモ帳はどう工夫する?すぐマネできる7つの作り方やテンプレ

患者さまのケアや処置のほかに、入院書類の管理や退院前の手続きなど事務作業も担当する看護師にとって、必要な情報をすべて覚えておくことは難しいでしょう。
そこで活躍するのが、メモ帳(ポケットノート)です。メモ帳は、ユニフォームのポケットに入れておき、わからない業務があるときにすぐに見返せるため便利です。
しかし、就職や異動したばかりで、先輩からの指示や情報が多く、「メモが追いつかない」「どこに何を書いたかわからない」と悩んでいる看護師の方も少なくありません。
この記事では、指示漏れを防ぎ、効率的に業務をこなせるようになるメモ帳の工夫とテンプレートを解説します。今日から真似できるポイントも紹介していますので、ぜひ参考にしてお役立てください。
看護師のメモ帳の工夫|すぐ真似できる7つの作り方とまとめ方
ここでは、情報を整理し、必要な情報が一目でわかるようにする工夫を紹介します。
- メモ用と清書用の2冊でまとめて管理する
- 最初のページに「基本情報テンプレ」を作る
- わかりにくい内容は図解も使う
- 重要度別にマーカーを使いわける
- よく使う略語表を貼る
- 指示は箇条書き+チェックボックスを活用する
- 「なぜそうするのか」理由も書いておく
これらの工夫を取り入れると、指示漏れの不安を減らし、業務を効率的に進められるようになるでしょう。ただし、メモ帳に患者さんの氏名・病名・診療内容など、個人を特定できる情報を書く場合は、守秘義務・個人情報保護法に十分配慮してください。
不要になったメモはシュレッダーで破棄し、持ち歩く際も紛失防止策を講じましょう。
1.メモ用と清書用の2冊でまとめて管理する
就職や異動したばかりの時期は、覚えることが多く、どうしてもメモが散らかりがちです。加えて、看護師の業務は急な処置や検査追加など、想定外の対応が日常的に発生します。その場で忘れないように、とにかく書き留めることを優先する場面も多いでしょう。
そこでおすすめなのが、メモ帳を「役割別に2冊使い分ける」方法です。
- メモ用:業務中に走り書きで記録するため汚れてもOK
- 清書用:休憩時間や業務終了後に、メモ用を知識として体系化し、図や色を使って整理
これにより、業務中は記録漏れを防ぐことに集中でき、後でじっくりと知識を定着できます。
2.最初のページに「基本情報テンプレ」を作る
メモ帳を開いたとき、一番最初のページは最も見返す頻度が高い場所です。ここに「毎回確認する情報」をまとめておくことで、忙しい場面でも迷わず必要な情報にたどり着けます。
最初のページには、病棟のルールをはじめ、日常業務でよく使う基礎情報をテンプレート化して記載しておきましょう。
| 記載内容 | 目的 |
| 病棟のルール | 部署特有の手順や連絡系統をすぐに参照する |
| 病棟でよく使う薬剤 | 薬の作用や副作用、投与方法を確認する |
| バイタルサインや検査の基準値 | アセスメントするときの異常判断を迅速にする |
| よく使用する計算式 | 薬液の希釈計算のミスを防止 |
これらはあくまで一例ですが、自分が所属している部署で「よく確認する」「迷いやすい」情報を優先してまとめることがポイントです。
緊急時や業務が立て込んでいる時間帯でも、探す手間なく確認できるため、判断の遅れやヒヤリ・ハットの予防にも役立つでしょう。
3.わかりにくい内容は図解も使う
採血手順や体位変換など、言葉で説明すると理解しにくい内容は、簡単な図解やイラストを添えてメモしましょう。
- 体位変換:矢印や簡単な人体の図で姿勢の変化を記録
- 点滴ルート:薬液と接続先を線で結び、色を使いわける
- 解剖図:血管や臓器の位置を書き込み、理解を深める
視覚的に覚えると、手順の誤りを防ぎ、勉強した内容が記憶にも定着しやすくなります。解剖図や疾患を説明する場合は、教科書の写真を貼ってカスタマイズする方法もあります。
4.重要度別にマーカーを使いわける
メモ帳を読み返す際、何が重要か、行動する際のコツは何かを一瞬で判断できるように、マーカーやペンの色を使いわけることがポイントです。
たとえば、急変時の対応や起こりやすいインシデントの情報など、緊急で危険度が高い内容は「赤色」、処置の介助のコツやポイントは「黄色」など、自分でルールを決めておきましょう。
読み直す手間が省け、多忙な業務中に必要な情報をピックアップできるようになります。
5.よく使う略語表を貼る
先輩や医師は、専門的な略語を使って指示を出す機会が頻繁にあります。
メモ帳の裏表紙や最後のページなどに、病棟でよく使う略語と正式名称のリストを貼っておくと、略語の意味を調べる手間がなくなります。
ただし、略語だけを覚えるのは要注意です。正式名称や意味を理解していないと、他部署との連携や報告の場面で誤解を招く可能性があります。
あくまで「略語+正式名称+意味」をセットで覚えることを意識しましょう。医療職がよく使う略語については、下記の記事にまとめているため、ぜひチェックしてみてください。
関連記事:医療職が使う略語一覧|現場で使う用語を新人看護師向けに6つの場面別に解説
6.指示は箇条書き+チェックボックスを活用する
指示内容や確認事項、タスクなどは文章で書くのではなく、箇条書きにして、完了したらチェックできる□(チェックボックス)を横に作ると見やすくなります。
| □8:00 血糖測定(食前) □9:00 医師に〇〇検査の結果報告 □10:00 点滴交換(抗生剤) |
これにより、タスクの抜け漏れを防げるだけでなく、業務の進捗状況が一目で確認できます。
くれぐれも個人情報の記載には注意しましょう。
7.「なぜそうするのか」理由も書いておく
先輩からの指示や処置の手順について、「なぜその処置が必要なのか」「どういう根拠があるのか」という理由もメモに残しましょう。
- 指示:22時に〇〇の点滴を投与する。
- 理由も併記:22時に〇〇の点滴を投与(疼痛ピークが深夜に来るのを予防して患者さまが眠れるようにする)
理由から根拠を理解することで、患者さまの状態をイメージしながら対応できるため、アセスメント力が養われます。
関連記事:新人看護師のノートの作り方5ステップ!病気・業務別のポイントとおすすめを紹介
看護師が使いやすいメモ帳とは?選び方のポイント
メモ帳選びも業務の効率化の重要な要素です。ストレスなく使える、メモ帳の選び方のポイントを解説します。
- ポケットノートを活用する
- 水に強い素材・破れにくい紙のメモ帳を選ぶ
- リング式のメモ帳を活用する
看護師は動きが多く、予定外の検査や処置が入りやすいため、持ち運びのしやすさ、丈夫さなどがメモ帳を選ぶ際の基準となります。
ポケットノートを活用する
看護師は常に動き回るため、ユニフォームのポケットに収まるサイズ(A6やB7サイズなど)のノートを選びましょう。
必要な時にすぐにメモが取れたり、持ち運びが容易で、立っていてもメモが取りやすかったりします。あまりにも小さすぎるサイズは、メモを残しにくくなるため自分が使いやすいサイズを店頭で確認してから購入しましょう。
水に強い素材・破れにくい紙のメモ帳を選ぶ
看護師は処置のたびに手洗い・消毒をするため、メモ帳が濡れるリスクが高くなります。また、ポケットに入れている場合が多く、動き回ったり患者さまの移乗介助で姿勢を変えたりするタイミングでメモ帳が破れたり折れたりしやすいことが特徴です。
紙が濡れて文字が滲んだり、破れたりして情報が読めなくなると、必要な情報を把握できず、業務がスムーズに進まないという事態になる恐れがあります。
そのため、ポリプロピレン製の表紙や、耐水性のある紙のメモ帳を選ぶと、安心して使用できるでしょう。
リング式のメモ帳を活用する
リング式のメモ帳は、片手で持って書きやすく、メモしたページを裏側に折り返せるため、狭いスペースでも邪魔になりません。
また、不要になったページをすぐに切り離せるため、情報を整理しやすくおすすめです。
関連記事:看護師がよく使う持ち物とは?必須アイテムやあると便利な物まで
新人看護師が迷わない!メモ帳のテンプレ
メモ帳を見やすくうまく活用するためには、書く場所を事前に決めておくのが鉄則です。すぐに使える4つのテンプレートを紹介します。
- 申し送りのメモテンプレ
- 処置や指示のメモテンプレ
- アセスメントのメモテンプレ
- 夜勤のメモ帳テンプレ
これらのテンプレートを事前にメモ帳に準備しておけば、情報の抜け漏れを防ぎ、必要なタスクを迅速に実行できます。項目を固定して、迷う時間をなくしましょう。
申し送りのメモテンプレ
患者さまの情報が多岐にわたる申し送りは、項目を決めて上から順に埋めていく形式にしましょう。
| 項目 | 記載内容 |
| 診断名/術後 | 胃癌、OPE後3日目 |
| バイタル | BP、PR、RR、SpO₂、意識レベル、痛み |
| メイン点滴 | 種類、量、速度、残量 |
| 特記事項 | 鎮痛剤の使用状況、ドレーン量、家族の面会 |
| 当日指示 | □ 採血、□ 検査予約、□ 医師報告 |
左側の「項目」を先に決めておき、右側の「記載内容」を患者さまの状況に合わせて埋めていくイメージです。このテンプレートを活用することで、患者さまの情報を正確に次の勤務者に伝えられます。患者さまの名前や性別は個人の特定がしやすく、メモ帳を紛失したり置き忘れた際に個人情報漏洩のリスクが高まります。
必要最低限の情報を記載し、電子カルテと照らし合わせながら注意して活用しましょう。
処置や指示のメモテンプレ
処置や指示は、「誰が」「何を」「いつまでに」などの5W1Hを意識して記録します。
| 項目 | 記載内容 |
| 誰の | 患者名(記号やイニシャル) |
| 日時 | 何日の何時まで |
| 指示内容 | 処置、検査、薬剤の変更 |
| 根拠(Why) | なぜそうするのか? |
指示を受けた際は、聞き間違いや指示漏れを防ぐため、このテンプレートを使いながら復唱確認を徹底しましょう。また、完了後にチェックボックスをつけると、タスクの抜けを防げます。
アセスメントのメモテンプレ
患者さまをアセスメントする際は、情報が整理されていることが、正確な情報把握には欠かせません。次の表のように、救急の現場でよく使われるABCD評価ごとに枠をわけて記録する看護師もいます。
| 項目 | 記載内容 |
| 気道 | 気道は確保できているか |
| 呼吸 | 呼吸の有無、呼吸音、SpO2、痰の状態 |
| 循環 | 血圧、脈拍、皮膚色 |
| 意識 | 意識レベル、瞳孔、麻痺の有無 |
| その他の項目 | ドレーンの量や性状、消化器の症状 |
このテンプレートを活用すると、必要な観察項目をチェックでき、状況の変化を見落とさずに患者さまの対応ができるでしょう。病棟でよくケアする病気や処置に合わせて項目を変えると、報告や記録の質が向上します。
夜勤のメモ帳テンプレ
夜勤は日勤と違い、患者さまの睡眠や急変対応に集中するため、タスクと確認項目をシンプルにまとめます。
| □17:00 患者さまの情報収集、日勤者からの申し送り □17:30 A氏の血糖値測定、食前薬 □17:45 インスリンの指示の確認 □18:00 配膳 <申し送り事項> 〇〇〇〇 |
チェックボックスがあると、タスクの漏れを防げます。また、申し送り事項として欄を作っておくと、夜勤帯の注意事項や気をつけたいことなどを把握できるでしょう。
看護師がやりがちなメモ帳のNG例と改善策
効率的なメモ術を身につけるためにも、多くの看護師が陥りがちなNG例とその改善策を知っておきましょう。
- 情報を詰めすぎて読めない
- どこに情報があるのかわからない
- 後で振り返れないメモになっている
これらのNG例を避けることが、看護師の業務効率には欠かせません。自分のメモ帳を客観的に見直し、ここで紹介する改善策を取り入れてみましょう。
情報を詰めすぎて読めない
| 行間や余白がなく、文字がびっしり詰まっている |
<改善策>
新しい指示や情報は、新しい行や改行を使って書きましょう。情報が詰まっていると、重要な指示を見落とすリスクが高まります。
どこに情報があるのかわからない
| 申し送り、指示、学習内容、すべてが同じ場所に書かれている |
<改善策>
メモ帳のページ端に見出しをつけたり、付箋やインディックスを貼って「申し送り」「処置」「知識」などのカテゴリーごとにページをわけたりしましょう。
後で振り返れないメモになっている
| 「先生に報告」「Aさまに説明」「高血圧の患者さまには〇〇が大切」など、何について報告・説明したか、何が重要なのか書かれていない |
<改善策>
指示や行動だけでなく、「なぜそうするのか」や「報告した結果、指示がどう変わったか」というプロセスや理由を追記しましょう。
看護師のメモ帳についてのよくある質問
看護師のメモ帳について、よくある質問に回答します。ここで紹介する内容は、看護師が抱きやすい疑問や、業務効率化のヒントとなるものばかりです。疑問を解消し、自信を持ってメモ帳を活用しましょう。
Q1:新人看護師はメモ帳に何を書けば良いですか?
新人看護師が書くべき内容は、「患者さまの安全に関係する情報」と「医師や先輩からの指示」です。
具体的には、患者さまのスケジュールやアレルギー情報、点滴の速度、その日の医師からの指示です。業務後に、その日の学びを振り返り、清書用ノートにまとめると効率的です。
Q2:メモが追いつかないときはどうすれば良いですか?
すべての情報を完璧に書こうとしない心構えが大切です。重要事項だけを書き残して、後から何を振り返るべきかわかるようにしておきましょう。
Q3:メモ帳としてスマホやiPadは使っても良いですか?
病院の方針によりますが、電子機器の使用は許可されていない場合が多いです。とくに、スマホは個人情報保護の観点から厳しく制限されます。
情報セキュリティが保たれた院内支給の端末で電子カルテのメモ機能を使う機会はありますが、それ以外は紙のメモ帳が推奨されます。また、メモ帳の内容によっては院内でシュレッダーにかけて情報が外に漏洩しないように対処する必要があります。
自分に合ったメモ術を見つければ業務がラクになる!
メモ帳の工夫は、頭の中を整理し、ミスを防ぎ、着実に知識と経験を積み上げるために必要です。
「チェックボックスの活用」や「マーカーの色わけ」など、少しずつ真似してみてください。メモ帳を工夫すれば、忙しい病棟でもタスク漏れがなくなり、スムーズに業務を進められるようになるでしょう。
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<参考サイト・文献>
NsPace Careerナビ 編集部 「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。
