電子カルテの使い方を看護師向けに解説!よくある書き方のミスと防止策

電子カルテは、今や看護業務に欠かせないツールです。総務省の調査では、一般病院の65.6%、クリニックの55.0%で電子カルテが導入されています。
一方で、
「転職先が電子カルテを使っているけど、使いこなせるかな?」
「紙カルテしか経験がなくて不安…」
と感じている看護師の方も少なくありません。
電子カルテを正しく扱えるようになると、看護記録の質が向上し、業務効率も大きく改善します。
この記事では、電子カルテの基本的な使い方や記録する際の注意点、正確に書くコツを解説します。現場で起こりやすい記録ミスとその防止策も合わせて紹介しているため、電子カルテの使い方を覚えて、安心して業務に取り組みましょう。
看護師の電子カルテの基本的な使い方
看護師が電子カルテを使う目的は、情報共有と記録です。電子カルテが導入されている職場でも困らないよう、基本的な操作手順をマスターしましょう。電子カルテは、操作していくうちに自然と慣れるため、まずは触れてみることが大切です。
電子カルテを使う場面は多岐にわたります。なかでも看護師が日常的に行う主な操作は以下のとおりです。
- 患者さまの情報収集をする
- バイタルサインや処置を記録する
- 看護記録を入力する
- 看護計画を立案し評価する
- 医師からの指示を確認する
- 多職種で状況共有する
これらの基本操作をスムーズにおこなうことは、看護ケアの質を担保し、効率的なチーム医療を実現するために欠かせません。
患者さまの情報収集をする
電子カルテは、患者さまの病歴、アレルギー、検査結果など、ケアに必要な情報を集めるために欠かせないツールです。
入院時や申し送り前など、患者さまの状況を把握するために、SOAP記録・サマリー画面・既往歴を確認し、必要な情報を素早く引き出しましょう。
バイタルサインや処置を記録する
電子カルテには、紙カルテと同じようにバイタルサインの測定値や実施した注射、創処置などの実施記録を入力します。
多くの場合、これらの記録は「経過表」や「実施記録」といった専用の画面を使用します。実施後、できるだけ早く入力をすることが、記録の正確性と信頼性を保つうえで重要です。
看護記録を入力する
患者さまの状態変化や訴え、看護師の観察・アセスメントなどを、病院で決められた記録形式(SOAPや経時記録など)で電子カルテに入力します。
これらの記録は、看護ケアが適切だったことを示す法的な証拠にもなるため、あいまいな表現を避け、客観的に記述することが求められます。
看護計画を立案し評価する
電子カルテには、看護診断に基づく看護計画を作成・管理する機能が備わっています。
この計画をチームで共有することで、勤務帯や担当看護師が変わっても、患者さまの変化を把握でき、統一したケアを提供できるのです。
計画を実行した後は、介入の結果を評価し、必要に応じて看護計画を修正・更新することで、より良いケアにつながります。
医師からの指示を確認する
医師が電子カルテに入力した新しい投薬指示や検査指示、処置指示などを確認し、実行します。
医師が病棟に不在のことも多いため、電子カルテを通して即時に指示を受け取れるため、患者さまへ必要なケアを迅速に提供できます。
指示を実行する前に、内容の確認(薬剤名・量・時間など)を行い、インシデントを防ぎましょう。
多職種で状況共有する
看護師が電子カルテに残した記録は、医師、薬剤師、リハビリテーションスタッフ、管理栄養士など、多職種が患者さまの状況を把握するために利用します。
電子カルテの「共有ノート」や「経過記録」といった機能を活用し、患者さまの最新の状態や注意すべき事項をタイムリーに共有することで、円滑なチーム医療を支えます。
電子カルテの看護師が記録を書く際の注意点
電子カルテの記録は削除できず、修正時は履歴として残る仕組みです。そのため、記録は診療内容を裏づける公的なエビデンスとなり、法的証拠能力を持つ重要な文書になります。
- 正確な情報入力を心がける
- 第3者が見てもわかりやすいように入力する
- 倫理的な配慮を怠らない
記録は患者さまの安全と看護師の身を守る盾となるため、客観的な事実にもとづき、あいまいな表現を避けることが大切です。
正確な情報入力を心がける
看護記録は、「いつ」「誰が」「何を」「どのように」おこなったかを正確に記述しましょう。特に、時間や薬剤の量、実施した部位などはダブルチェックをおこない入力することが基本です。
【入力例】
あいまいな例:「夕食後にインスリンを投与した」
正確な例:「18:15、医師Aと看護師Bで指示を確認後、腹部にノボラピッド(インスリンアスパルト)6単位を皮下注射した」
この記録により、患者さまの血糖値変動の原因究明や、インシデント発生時の検証ができるようになります。あいまいな表現や時刻のズレは、医療ミスにつながるリスクがあるため注意が必要です。
第3者が見てもわかりやすいように入力する
看護記録は、看護師だけでなく多職種・非専門職、さらには患者自身やご家族が読む可能性があります。日本看護協会「看護記録に関する指針」でも、立場の異なる者でも理解できる用語・表現で記載することが求められています。
そのため、自分の略語や独自の言い回しではなく、院内で決められた専門用語を使用し、誤解のない表現にすることが重要です。
また、S(主観的情報)とO(客観的情報)を区別して記録することで、ほかの看護師や医師などが状況を判断しやすくなります。
【入力例】
あいまいな例:「Cさんの状態は悪くないが、夜間にあまり眠れないようで あった」
正確な例:「S:『お腹が張って苦しい』と訴えあり。 O:腹部は軽度膨満。排ガスなし。VAS4。体動時に顔をしかめる様子あり」
統一された表現を使い、具体的に記載することで、申し送りや多職種連携、他施設への情報伝達がスムーズになり、ケアの質向上につながります。
倫理的な配慮を怠らない
患者さまのプライバシーについて情報を記録する際は、事実のみを記述し、不適切な表現や看護師の主観的な憶測を記録しないようにしてください。
個人情報保護の観点や倫理観を忘れずに入力するように心がけましょう。
【入力例】
不適切な例:「Dさんは性格的に自己中心的で、ナースコールが多い」
適切な例:「1時間で3回ナースコールあり。内容はいずれも体位交換の依頼。傾聴と安楽な体位の調整を実施した」
看護記録に看護師の感情や人格評価を書き残すと、患者さまの信頼を損なうだけでなく、訴訟の際に不利な証拠となる可能性があります。
看護師が電子カルテで記録を早く正確に書くコツ
電子カルテを使いこなすことで、記録時間を短縮できます。早く正確に書くためのコツを押さえましょう。
- 電子カルテの操作マニュアルを確認する
- テンプレートや定型文を活用して手間を省く
- ショートカットキーや入力補助を使う
- メーカーのサポートを受ける
これらのコツを取り入れることで、正確に記録でき、効率的に業務に取り組めます。
電子カルテの操作マニュアルを確認する
電子カルテには、意外と知られていない便利な機能が搭載されていることが少なくありません。
電子カルテを使い始める前に、操作マニュアルを確認し、検索方法や入力方法、カスタマイズ機能などを活用することで操作スピードが向上します。
電子カルテは、長く使っている人でもマニュアルを読み返すことで「こんな機能あったのか」と新しい発見があることも少なくありません。
テンプレートや定型文を活用して手間を省く
夜間の巡視記録、清潔ケアの実施、標準的な術後経過などよく記録する内容は、テンプレートや定型文をあらかじめ作成しておきましょう。
これにより、入力の手間と時間を削減でき、記録の標準化にもつながります。ただし、テンプレートはあくまで補助であり、必ず患者さま個別に内容を修正することが前提です。
関連記事:看護師のワークシートのテンプレート集7選!申し送りや処置が円滑になる方法
ショートカットキーや入力補助を使う
多くの電子カルテには、ショートカットキーや予測変換、辞書登録の機能が搭載されています。
入力補助機能を積極的に使いこなすことで、操作回数を減らし、タイピング速度を上げられるでしょう。
病院が導入している電子カルテのメーカーによって機能は異なるため、先輩看護師に質問したり、マニュアルを見たりして確認してみてください。
メーカーのサポートを受ける
電子カルテ導入時だけでなく、運用中もメーカーのサポートを積極的に活用しましょう。
「この操作は非効率的だ」「この記録をスムーズに入力できないか」といった疑問をメーカーに伝えることで、より良い操作方法を教えてもらえたり、システム改善のヒントを得られたりします。
また、メーカーのサポートに加え、院内の情報管理担当者とも連携しながら最適な運用方法を検討しましょう。
電子カルテに慣れていないからこそ、ベテランの看護師では気づかないような非効率な操作や改善点を発見できることが多いものです。疑問をため込まずメーカーに相談することで、自身の効率アップだけでなく、病院の業務の効率化にも貢献できます。
関連記事:看護師が効率よく動く7つのコツ!難しいときの対処法も解説
電子カルテの看護記録で起こりやすい書き方のミスと防止策
電子カルテならではの利便性が、記録ミスにつながることもあります。とくに注意すべきミスと、その防止策を確認しましょう。
- 患者誤認による記録ミス
- 実施時間と入力時間のズレ
- コピペによる記録内容の間違い
- 記録を削除してしまう
- 電子カルテをアップデートする際に準備していない
これらのミスは、電子カルテに慣れていない看護師に限らず、経験者にも起こる可能性があります。防止策を実践し、医療安全を徹底することが求められます。
患者誤認による記録ミス
| 名前が似ている患者さまや、部屋番号が近い患者さまのカルテを開いたまま操作していたため、別の患者さまの記録を誤って入力してしまった |
<防止策>
間違った患者さまの状態を入力することで、不要な薬剤投与や処置などの重大なインシデントにつながる恐れがあります。入力開始時と入力終了時に、画面上部の患者名とIDを確認する習慣をつけましょう。また、バーコード認証やICカードでの認証をしている病院もあります。
実施時間と入力時間のズレ
| 処置を先に実施し、しばらく時間が経ってからまとめて入力したため、処置をした時間が曖昧になってしまった |
<防止策>
処置やケアが立て込んでいると記録は後回しになりがちですが、実施時刻で記録する必要があります。患者さまの状態変化や急変時の対応時間、薬剤の効果発現時間などが不明確になり、適切な医療判断を妨げる恐れがあります。
日本看護協会の「看護記録に関する指針」でも、看護記録は“遅滞なく記載すること”が原則とされるため、可能な範囲でリアルタイム入力を心がけましょう。
コピペによる記録内容の間違い
| 前日の記録や他の患者さまの記録をコピーして使った際、内容の修正を忘れてしまい、実際には状態が変化していたにもかかわらず「昨日と変化なし」と誤って記録してしまった |
<防止策>
コピペは入力作業を効率化できますが、前日の情報がそのまま残ってしまうリスクがあります。そのため、コピペ後は必ず内容を見直し、日付、時間、体温、症状の有無など、変化しやすい項目を重点的に確認しましょう。
コピペを使う場合は、「貼り付けた後に確認する」ことを一連の手順として習慣化することが大切です。
記録を削除してしまう
| 入力ミスに気づいて記録を削除したが、削除した事実がシステム上に残っておらず、記録の透明性が損なわれた |
<防止策>
多くの電子カルテでは、記録を削除しても、修正履歴としてシステム内にデータが残るよう設計されています。ごく一部の旧型システムでは削除履歴が十分でないこともありますが、現在主流の電子カルテでは修正履歴が必ず残るよう設計されています。
記録は、削除や上書きせずに追記で訂正し、修正履歴を残すことが法的にも望ましいです。
電子カルテをアップデートする際に準備していない
| システムのバージョンアップや入れ替えにより操作方法が変わった際、変更点に対応できず、記録が一時的に滞り、誤操作が増えた |
<防止策>
アップデート前に、新しいバージョンの操作研修を受講し、新しい機能や変わった点を把握しておきましょう。また、アップデートの際には、数時間電子カルテを使えない時間が発生する場合もあります。そのため、数時間のみ紙カルテを使用するといった対策を話し合っておくことでスムーズに業務を進められます。
看護師の電子カルテの使い方や書き方についてのよくある質問
ここでは、看護師の電子カルテの使い方や書き方についての疑問に回答します。
Q1:電子カルテは職場ごとに違いますか?
電子カルテは、病院や施設ごと、またメーカーによってシステムや操作画面が異なります。
同じメーカーの電子カルテであっても、病院の規模や診療科の特性に合わせてカスタマイズされているため、病院によって使い方が異なる場合もあります。
そのため、これまで電子カルテの操作に慣れていた看護師でも、転職直後は新しい操作に慣れるまで時間がかかることを知っておきましょう。
Q2:電子カルテが苦手な看護師でもすぐに慣れますか?
電子カルテが苦手な看護師でも、基本的な操作には比較的早く慣れることがほとんどです。ただし、テンプレート活用やショートカットキーなどの“効率化テクニック”まで身につけるには、少し時間がかかる場合があります。
苦手意識がある場合は、マニュアルを参照したり、電子カルテの入力が得意な先輩看護師に聞いたりすることで、負担を減らしながら徐々にスムーズに入力できるようになります。
Q3:看護師が電子カルテで早く記録する方法はありますか?
看護師が電子カルテで早く記録する方法は、次の3つです。
- テンプレート・定型文の活用
- ショートカットキーや予測変換のマスター
- 後でまとめて書く時間をなくしリアルタイムで入力
これらのテクニックを組み合わせることで、記録にかける時間を削減し、看護師が患者さまへのケアや休憩に充てる時間を増やせるでしょう。
Q4:電子カルテで看護師はどこまで詳細に書くべきですか?
電子カルテの記録は、「誰が読んでも、観察・判断・行動を正確に再現できるレベル」で書く必要があります。
これは日本看護協会『看護記録に関する指針』でも、立場の違う人でも理解できることと、状況が具体的に伝わることが求められているためです。
主観的な感想ではなく、時間、バイタルサインの数値、具体的な言動といった情報を詳しく記述します。
「なんとなく元気がない」ではなく、「食事摂取量が3割のみ。うつむいていることが多く、問いかけへの応答が遅くなっている」と、具体的に書きましょう。
Q5:電子カルテで看護記録のテンプレートは作れますか?
多くの電子カルテで看護記録のテンプレートは作成できます。
日々の記録でよく使う文章や、ルーティンケアの記録内容をあらかじめ登録することで、入力の手間を大幅に減らせます。
電子カルテの使い方を理解すれば、看護業務は大幅にラクになる!
電子カルテは、情報収集や多職種連携、医療安全などにつながる重要なシステムです。
基本的な使い方に加え、テンプレートの活用やショートカットキーの習得といったコツを実践することで、記録の正確性が向上し、残業時間の削減にもつながります。
電子カルテのスキルは、病院だけでなく訪問看護でも大きく役立ちます。
多くの訪問看護ステーションではタブレットやスマートフォンを活用し、記録の共有や情報確認を行っています。
最初は誰もが初心者ですが、お互いにサポートし合う文化が整っている職場も多いため、安心して働けます。
「ITが不安…」「電子カルテに苦手意識がある」という方も、環境しだいでぐっと仕事がしやすくなります。
訪問看護に興味がある方や、電子カルテに無理なく慣れられる職場を探したい方は、ぜひNsPaceCareerを覗いてみてください。
あなたのスキルや希望に合った働き方を一緒に見つけていきましょう。
<参考サイト・文献>
NsPace Careerナビ 編集部 「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。
