PNS看護方式とは?2人1組で働くメリット5つとデメリットを解説

「PNSってどのような働き方なの?」「パートナーと2人で働くメリットって何?」
転職活動を始めると、「病院ごとに看護方式が違っていてよく分からない…」と感じる方は少なくありません。その中でも注目されているのが、2人1組で動く“PNS(パートナーシップ・ナーシング・システム)”です。
この記事では、PNSの仕組みやメリット・デメリット、職場を選ぶ際のチェックポイントをわかりやすくまとめました。働き方の特徴を知ることで、自分に合った職場選びに役立てられます。
看護におけるPNSの基本
まずは、PNSの概要や開発の背景、基本的な考え方について紹介します。
- 2人1組で、協働しながら患者ケアを行う看護方式
- 福井大学医学部附属病院が体系化し、現在は全国へ普及
- 互いの強みを活かし、対等な関係でケアにあたることが特徴
それぞれ見ていきましょう。
2人1組で、協働しながら患者ケアを行う看護方式
PNS(パートナーシップ・ナーシング・システム)は、2人の看護師が1組となり、協力しながら患者さまのケアを行う看護方式です。
従来のチームナーシングやプライマリーナーシングでは、1人の看護師が複数の患者さまを受け持つことが基本でした。
一方で、PNSでは必要な場面でペアとして行動しながら、協働でケアを進めます。「1人がバイタルサインを測定している間に、もう1人がカルテに記録する」「2人で担当患者さまの清潔ケアを行う」など、協力しながら業務を進めることで、安全で質の高い看護の提供を目指します。
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福井大学医学部附属病院が体系化し、現在は全国へ普及
PNSは、福井大学医学部附属病院で2009年に正式に名称が発表され、運用が体系化されました。看護師の業務負担の増加や人材不足に対応し、安全で質の高い看護を提供するために生まれた方式です。
現在では、大学病院や地域の中核病院を中心に全国で導入が進んでいます。病院全体で導入しているところもあれば、一部の部署のみで取り入れている病院もあり、導入の形はさまざまです。
互いの強みを活かし、対等な関係でケアにあたることが特徴
PNSでは多くの場合、年度初めの病棟会議やミーティングで、看護師同士がパートナーを選びます。
パートナー選びのキーワードは「違いを活かす」です。自分にはない強みを持つ人を選び、互いの特性を活かせるペアをつくることがポイントです。
パートナーが決まると、副看護師長を中心としたグループ編成がおこなわれます。看護師の力量や経験年数、委員会活動などを考慮し、バランスの取れたチームになるように考えます。
PNSの活動範囲は、日々の看護ケアだけでなく、委員会活動や病棟内の係の仕事まで幅広く及びます。基本は「協働・共同」ですが、病院によっては完全同行ではなく、状況に応じてペアで分担する運用を採用するケースもあります。協力しながら業務を進めることで、医療事故を防ぎ、ケアの質を高めます。
看護におけるPNSの5つのメリット
PNSを導入することで、患者さまと看護師の両方にさまざまなメリットがあります。ここでは、代表的な5つのメリットを紹介します。
- 患者さまに安心・安全な看護を提供できる
- インシデントを防ぎ看護の質が向上する
- コミュニケーションが活発になり働きやすい環境ができる
- 時間外勤務の削減や休憩取得につながる
- 実践を通じた教育効果で人材育成につながる
それぞれ解説します。
患者さまに安心・安全な看護を提供できる
PNSでは、2人の看護師が協力して患者さまのケアを行うため、タイムリーな対応が可能です。
たとえば、患者さまから「トイレに行きたい」と要望があった際、1人が付き添い、もう1人がほかの業務を続けられるため、スムーズに対応できます。
2人で協力することで対応の漏れや遅れを防ぎやすくなり、結果として「すぐに対応してもらえる」という安心感につながりやすくなります。
インシデントを防ぎ看護の質が向上する
PNSで患者さまを担当すると、2人で確認し合いながら業務を進めるため、自然とダブルチェック体制が整います。
実際に、与薬の際には1人が薬剤を準備し、もう1人が患者さまの情報と照合することで、リアルタイムでの確認が可能となるのです。
PNSには「補完の四重構造」と呼ばれるサポート体制があります。
まずパートナー同士で確認し合い、それでも難しいときはチーム、さらに病棟全体へとサポートが広がるため、インシデントが起こりにくい仕組みになっています。
コミュニケーションが活発になり働きやすい環境ができる
PNSではパートナーと行動するため、判断に迷ったときにすぐに相談できます。「この処置の手順で合っているかな」「患者さまの様子がいつもと違う気がする」といった疑問も、パートナーと共有することで不安が軽減できます。
とくに、新人看護師や中途採用者にとって、相談相手がそばにいる環境は心強いものです。1人で不安を抱え込まずにすむため、孤独感が減り、精神的な負担が軽減されます。
ベテラン看護師にとっても、パートナーの視点から新たな気づきを得られる機会が増えるでしょう。「こういう方法もあるんだ」「そういう見方もできるんだ」と、互いに刺激し合いながら成長できる環境が生まれます。
時間外勤務の削減や休憩取得につながる
パートナーと一緒に行動することで、業務の効率が向上します。
たとえば、1人が処置を行うタイミングで、もう1人が記録を進められるため、時間を効率的に使えます。体位変換や清潔ケアなどの業務も、2人で行う方が安全です。
また、1人で業務を行う場合、忙しいと昼休憩を削ってしまうこともありますが、2人1組ならパートナーがカバーしてくれるため、安心して休めます。
実際に、厚生労働省の「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」では、看護業務の負担軽減のために、PNSを導入した職場の事例が紹介されています。
実践を通じた教育効果で人材育成につながる
新人看護師がベテラン看護師とペアを組んだ場合、先輩のケアを間近で見ながら学べます。知識や技術だけでなく、患者さまへの声かけ、処置のコツなども、日々の業務を通じて学ぶ機会が増えます。
中堅看護師にとっても、後輩に教えることで自身の知識や技術を見直す機会になり、さらなるスキルアップにつながるでしょう。
看護におけるPNSのデメリット
PNSにはメリットがある一方で、課題もあります。
- ペアの相性によってストレスを感じることがある
- どちらが対応するか判断に迷う場面がある
- ペアによって業務スピードに差が出る
PNSを行ううえで理解しておきたい上記の内容を解説します。
ペアの相性によってストレスを感じることがある
PNSの課題のひとつが、パートナーとの相性です。
2人で一緒に行動するため、パートナーとの相性が合わない場合、業務上のストレスにつながることがあります。「先輩主導で進むため、自分の意見を言いづらい」「後輩のフォローに追われて、自分の仕事が進まない」というケースもあります。
とくに、入職1〜2年目の看護師は、コミュニケーションの取り方に気を遣い、精神的なストレスを感じることもあるでしょう。
パートナーとの相性問題には、定期的な面談や組み替えの検討など、柔軟な対応が求められます。職場によっては、ペアの関係性について相談できる窓口を設けているところもあります。
どちらが対応するか判断に迷う場面がある
2人で患者さまを担当するため「どちらがおもに患者さまに対応するか」が曖昧になりやすいのも、PNSの課題です。
責任の所在が不明確になると、お互いに「相手がやるだろう」と思い込んでしまい、結果的にナースコールや患者さまに必要な処置への対応が遅れる可能性があります。
業務開始時に「午前中は私がおもに処置を担当します」「あなたは記録を中心にお願いします」といった形で、大まかな役割を決めておくと、スムーズに業務を進められます。
ペアによって業務スピードに差が出る
経験年数や技術レベルの違いによって、業務の進行スピードに差が出ることもあります。
たとえば、ベテラン看護師と新人看護師がペアを組んだ場合、ベテラン看護師が新人看護師のペースに合わせる必要があり、通常よりも業務に時間がかかることがあるでしょう。反対に、新人看護師は「自分のせいでパートナーの業務が遅れている」と感じ、焦りや申し訳なさを抱えてしまうかもしれません。
ペアによって仕事の進め方やスピードが異なるため、病棟管理者やリーダー看護師が全体を見ながら、受け持ち患者数のバランスを調整する工夫が必要です。
看護師がPNSを導入している職場を選ぶときのポイント
PNSを導入している病院への転職を考えている場合、事前に確認しておきたいポイントがあります。
- ペア編成の方法と頻度を確認する
- 研修や教育体制が整っているか聞く
- 実際に働いている看護師の声を参考にする
自分に合った職場かどうかを見極めるために、上記をチェックしましょう。
ペア編成の方法と頻度を確認する
職場によって、ペアの組み方は異なります。年度初めに看護師同士で選び合う方式を採用している病院もあれば、看護師長や副看護師長がバランスを考慮して決定するところもあります。また「1年間ペアを固定する」「定期的に組み替えを行う」などのルールも、病院によってさまざまです。
面接や職場見学の際に「ペア編成はどのようにおこなわれますか?」と質問してみましょう。スタッフの意見が反映される仕組みがあるかも確認しておくと、不安要素を減らせます。
研修や教育体制が整っているか聞く
PNSについての教育体制は、施設によって異なります。面接や職場見学では、次のポイントを確認しましょう。
- PNSについての研修があるか
入職時にPNSの理念や実践方法について研修があるかを聞いてみてください。基本的な考え方を学ぶ機会があれば、スムーズに業務に入りやすくなります。 - 現場で実際に実践されているか
「実際の業務では、どのくらいペアで動いていますか?」と質問してみましょう。PNS制度はあっても、実際には個人で動くことになる職場もあります。 - 困ったときの相談体制があるか
ペアとの関係性に悩んだときの相談窓口や、定期的な面談の機会があるかも確認しておくと安心です。
実際に働いている看護師の声を参考にする
職場見学や面接の際に、現場の看護師に直接質問してみてください。「ペアで働く雰囲気はどうですか?」「相談しやすい環境ですか?」のように質問することで、職場の実態を感じ取れます。
口コミサイトや求人サイトの情報も参考にしましょう。実際に働いていた看護師の声からは、メリットだけでなくデメリットも見えてきます。
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PNS看護についてのよくある質問
ここからは、PNSについてのよくある質問に回答します。
Q1:PNSの「3つの心」とは何ですか?
PNSの「3つの心」とは、基盤となる3つの理念のことです。それぞれの意味を紹介します。
| 理念 | 意味 |
| 自立・自助の心 | お互いが自立した看護師として責任を持ち、助け合う姿勢を大切にすること |
| 与える心 | 自身の価値を提供し、パートナーに貢献すること |
| 複眼の心 | 相手の気持ちをよく考えさまざまな視点からものを見ること |
PNSでは、これらの「3つの心」で安全で質の高い看護を提供し、働きやすい職場環境を実現することを目指しています。
Q2:PNSのペアはどのように決まりますか?
ペアの決め方は病院によって異なります。
多くの病院では、年度初めの病棟会でスタッフ同士が「違いを活かせる相手」を選びます。自分で相手を選び、公の場で理由を発表して周囲の承認を得る方式です。経験年数の浅い看護師から優先的に選べる仕組みを整えている施設もあります。
一方で、看護師長や副看護師長が力量バランスを考慮して決定する病院もあります。
Q3:PNSの受け持ち人数は何人くらいですか?
2人の看護師で受け持つ患者数は、病棟の規模や患者さまの状態によって異なります。
急性期主体の多くの病棟では、2人で10〜15名程度を受け持つケースが多いようです。
例えば、1人で7〜8人を担当する病棟であれば、PNSでは2人でその2倍前後の人数を受け持つイメージです。ただし、受け持ち人数は、患者さまの重症度や病棟の状況により変わります。
PNSは看護師同士が支え合いながら働ける看護方式
PNSは、2人の看護師が協力して患者さまに安全で質の高い看護を提供する方式です。インシデントの防止や勤務の効率化などのメリットがある一方で、ペアの相性や業務スピードの差といった課題もあります。
施設によって運用方法や浸透度が異なるため、PNSを導入している職場に転職を考える際は、ペア編成の方法や研修体制を事前に確認しましょう。
なお、看護方式は病院だけでなく、働き方そのものにも大きく影響します。「もっと自分のペースで働きたい」「夜勤のない環境で働きたい」という方には、訪問看護という選択肢もあります。訪問看護に興味のある方は、訪問看護専門の求人サイト「NsPace Career」を覗いてみてください。
<参考文献・サイト>
NsPace Careerナビ 編集部 「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。
