看護師の転職先として注目される周産期医療|現場で求められる3つの力

「赤ちゃんのケアに携わりたい」「命の誕生という瞬間に、もっと深くかかわりたい」
このような思いから、周産期医療への転職を考える看護師もいるでしょう。
助産師資格がないと働けないと誤解されがちな周産期医療ですが、看護師が担える役割も多く、実際に周産期医療の現場で看護師が活躍しているケースも少なくありません。
この記事では、周産期医療が看護師の転職先として選ばれる理由、現場で求められるスキル、転職を成功させる方法を詳しく解説します。母子の命を守る最前線で、やりがいと成長を実感できるキャリアを築きましょう。
看護師の転職先で周産期医療が選ばれる理由
周産期医療は命の誕生を支える特別な場面にかかわれることに加え、専門性を磨きやすい分野でもあり、看護師の転職先として選ばれやすい傾向があります。
- 命の誕生を支える看護ができる
- キャリアの幅が広がる
- 女性の社会進出・高齢出産の増加で需要が高まっている
周産期医療がなぜ看護師の注目を集めているのか、その理由を解説します。
命の誕生を支える看護ができる
周産期医療とは、妊娠22週から出生後7日未満までの期間を中心に、母体と新生児を支える分野です。
命の誕生に立ち会い、赤ちゃんの産声や母親が抱きしめる姿に寄り添うケアができます。患者さまの体調管理や出産後のサポート、新生児の成長を見守るケアなど、ご家族全体を支える看護が求められます。
こうした命の誕生にまつわる看護ができるのは、周産期医療ならではのやりがいです。
キャリアの幅が広がる
周産期医療には、次のようなさまざまな現場があります。
- 産科病棟
- MFICU(母体・胎児集中治療室)
- NICU(新生児集中治療室)
女性医療や小児看護、在宅支援などの分野とのつながりも深く、キャリアの幅を広げたい看護師に向いています。経験を積んだあとは、管理職のほかに新生児集中ケア認定看護師や母性看護専門看護師などの専門資格を目指すことも可能です。
「自分の看護を深めたい」「長く続けられる専門性を身につけたい」という方にとって、周産期医療は理想的な分野です。
女性の社会進出・高齢出産の増加で需要が高まっている
晩婚化・高齢出産の増加により、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの合併症リスクが高まっています。そのため、周産期医療の現場では専門知識を持つ看護師需要が年々高まっています。
また、周産期医療では、産後うつや育児不安への対応、在宅での母子サポートなどの課題もあり、病院だけでなく地域での支援体制も広がっています。社会のニーズに応える重要な分野として、周産期医療は注目される転職先です。
周産期医療で看護師に求められる3つの力
周産期医療では、母体と新生児の安全を守るため、次のようなスキルが求められます。
- 観察力と迅速な判断力
- 多職種で連携する協調力
- ご家族を支える共感力
現場で活躍するための3つの力を、詳しく見ていきましょう。
1.観察力と迅速な判断力
妊婦や新生児は体調の変化が急激で、わずかな異変が命にかかわることもあります。妊婦の場合、わずかな血圧の変化やむくみの増加が、重大な合併症の前兆の可能性があります。
新生児のケアでは、呼吸パターンの変化、哺乳力の低下、皮膚色の変化など、細かいサインを見逃さない観察力が必要です。緊急時には瞬時に優先順位を判断し、チームに的確に情報を伝える判断力も不可欠です。
2.多職種で連携する協調力
周産期医療は、看護師のほかに次のような職種が力を合わせて支えています。
- 医師(新生児科・産科・小児科など)
- 助産師
- 臨床心理士
- ソーシャルワーカー
それぞれが異なる専門性を持つため、情報を共有しながら役割を調整する協調力が欠かせません。
子宮口の開き、赤ちゃんの下がり具合などを確認するために内診をおこなう助産行為は助産師の専門業務ですが、看護師も母体の観察、新生児のケア、授乳支援、ご家族への説明などの役割を担っています。
多職種が連携することで、母体と赤ちゃんの安全を守るだけでなく、ご家族にも安心感と信頼が生まれます。
3.ご家族を支える共感力
妊娠・出産は喜びにあふれた出来事ですが、一方で不安や戸惑いを抱えるご家族も少なくありません。
思い描いていた出産ができなかった方、新生児に医療的ケアが必要になったご家族、心身の負担が大きい経験をされたご家族に対しては、特に丁寧な寄り添いが求められます。
そのため、看護師には「今どのような思いで過ごしているのか」を想像しながらかかわる、共感力が求められます。ご家族の心の拠りどころとして寄り添うことが、周産期における看護師の大切な役割です。
看護師が活躍する周産期医療の職場と仕事内容
一口に周産期医療といっても、看護師が活躍できる職場にはさまざまな選択肢があります。
- 訪問看護ステーション
- 産科・婦人科クリニック
- 一般病院の産科病棟
- 総合周産期母子医療センター
それぞれの特徴を理解し、自分に合った働き方をイメージしてみましょう。
訪問看護ステーション
妊娠中から産後まで、母親や新生児を対象に在宅での健康管理や授乳支援などをおこないます。
妊娠中は切迫流産・早産、つわりなどで自宅安静が必要な妊婦さんの健康管理、産後は母子の健康チェックや授乳支援、育児相談などを担当します。
また、産後うつや育児不安など、心のケアも欠かせません。近年は産後ケアの重要性が認識され、自治体が産後ケア事業を推進していることもあり、この分野での看護師需要は増しています。
訪問看護は日勤のみの勤務が多いため、夜勤が難しい方や、子育て・家庭と両立したい方にも働きやすい職場です。病院での経験を積んだあとに、地域に根ざした母子支援に携わるというキャリアパスも注目されています。
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産科・婦人科クリニック
入院病床のない産科・婦人科クリニックでは、外来での妊婦健診や母親教室、出産後の経過観察などに携わります。患者さまとのかかわりが近く、長期的に信頼関係を築けるのが魅力です。
同じ妊婦さんと妊娠初期から産後までかかわることができ「ずっと見守ってきた赤ちゃんの誕生」に立ち会える喜びがあります。
夜勤がない職場も多く、ワークライフバランスを重視したい看護師にも人気です。
一般病院の産科病棟
一般病院の産科病棟は、正常分娩から軽度のリスク妊娠まで、幅広い症例に対応できます。次の業務が中心で、周産期医療の全体像を学べる環境といえます。
- 妊婦健診
- 分娩前後のケア
- 新生児の健康管理
- 母親への授乳指導や退院指導
助産師と看護師が協力しながら業務をおこなうため「助産師資格はないけれど周産期医療にかかわりたい」という方にとって、一歩を踏み出しやすい職場のひとつです。教育体制が整っている病院を選べば、未経験からでも段階的にスキルを身につけられるため、ほかの診療科からのキャリアチェンジでも安心です。
関連記事:産婦人科看護師とは?仕事内容や助産師との違い、求人の探し方を解説
総合周産期母子医療センター・地域周産期母子医療センター
周産期母子医療センターは、ハイリスク妊娠や早産、新生児の重症疾患など、高度医療が必要なケースに対応する専門性の高い施設です。
総合周産期母子医療センターは、地域周産期母子医療センターより重症度の高い患者さまの対応が多く、MFICUとNICUが必須の病院です。MFICUでは切迫早産や妊娠高血圧症候群など重症妊婦の管理を、NICUでは超低出生体重児や呼吸障害等のある新生児の集中治療をおこないます。
高度な観察力・技術が求められ緊急対応の多い現場ですが、その分、さまざまな症例を経験でき、スキルアップできる職場です。
チーム医療を通じて専門知識を深められるため「しっかり学びたい」「専門性を高めたい」という看護師に適しています。
看護師が周産期医療への転職を成功させる方法
周産期医療への転職を成功させるには、教育体制が整った職場を選び、自分がかかわりたい領域の現場を見学することが重要です。転職後のキャリアビジョンを描くことで、長く活躍できる道筋が見えてくるはずです。
- 自分のかかわりたい領域を明らかにする
- 教育体制が整った職場を選ぶ
- 職場見学で人間関係や教育体制を確認する
- 転職後のキャリアビジョンを描く
詳しく解説します。
自分のかかわりたい領域を明らかにする
妊娠期・出産期・新生児期など、どの瞬間にかかわりたいのかを明らかにできると、希望の転職先を絞れて効率的に転職活動を進められます。
たとえば「新生児のケアを学びたい」ならNICUやGCU、「退院後も地域で支えたい」なら訪問看護ステーションというように、関心のある分野を整理すると自分に合う職場が見つかりやすくなります。
これまで経験した病棟での知識を、どう活かしたいか考えるのもヒントになるでしょう。妊娠期の母体管理に経験を発揮したいのか、新生児ケアという新しい分野に挑戦したいのか、方向性が明確になるほど、転職後のミスマッチを防げます。
教育体制が整った職場を選ぶ
周産期医療は専門性が高いため、学びながら成長できる環境が重要です。
OJT(実務を通じた研修)やプリセプター制度、段階的な研修が整っている職場なら、未経験でも安心してスタートできます。とくに、中途採用者向けの研修プログラムがあるか、新生児ケアの基礎から学べる体制があるかは重要なポイントです。
大規模な周産期医療センターや教育病院は、教育プログラムが充実していることが多いため、「しっかり学びたい」という看護師はチェックしてみてください。
職場見学で人間関係や教育体制を確認する
転職で失敗しないために欠かせないのが「実際の現場を知ること」です。
求人票やホームページだけでは見えてこない、職場の雰囲気やチームの人間関係、実際の業務の流れ、教育体制の実際などを自分の目で確かめることが大切です。病院見学の際は、次のポイントを意識して確認してみましょう。
- スタッフ同士のコミュニケーションはスムーズか
- 助産師と看護師の役割分担がなされているか
- 中途採用者への研修やフォロー体制が整っているか
「助産師資格がなくても成長できる環境ですか?」「教育プログラムは未経験者にも対応していますか?」「ほかの診療科の経験を活かせる場面はありますか?」など、自分の不安や疑問を率直に伝え、その職場が本当に自分に合っているかを見極めるヒントを得ましょう。
転職後のキャリアビジョンを描く
周産期医療での経験は、母子支援や教育、地域連携など幅広いキャリアにつながります。
「新生児集中ケア認定看護師を目指す」「訪問看護ステーションで地域の母子支援に従事する」「母子保健にかかわる公的機関で働く」など、将来像をイメージして転職することで、成長の方向性がしっかり定まります。病院での急性期ケアから訪問看護への転身というキャリアパスも少なくありません。
将来的に夜勤が難しくなっても、周産期医療の経験を活かして地域で活躍し続けられることも、地域看護分野の魅力です。
看護師が転職で周産期医療を目指すときによくある質問
周産期医療への転職を検討するとき、看護師が抱きやすい疑問にお答えします。不安や疑問を解消し、転職後の働き方を具体的にイメージするのにご活用ください。
Q1:助産師の資格がないと周産期医療で働けませんか?
助産行為(分娩介助など)は、法的に助産師のみに認められた業務です(保健師助産師看護師法)。そのため、正常分娩の直接介助などは助産師に限定されています。
しかし、周産期医療には医師管理下での母体管理、新生児ケア、ご家族の支援など看護師が担えるケアも数多くあります。特にNICU(新生児集中治療室)やMFICU(母体・胎児集中治療室)では、医療依存度の高いケースが多く、看護師の観察力や判断力が重要とされています。
教育体制が整った職場を選ぶことで、未経験からでも段階的にスキルを身につけることが可能です。「助産師資格がなくても母子を支える一員になれる」という点は、周産期医療の大きな魅力です。
Q2:周産期医療は夜勤やオンコールが多いですか?
夜勤やオンコールの頻度は、勤務する施設によって大きく異なります。
NICUや分娩室のような24時間体制の部署では夜勤がありますが、クリニックや外来などは基本的に日勤のみです。
また、訪問看護ステーションは、オンコールがあるものの日勤中心で働けるため、夜勤が難しい方やワークライフバランスを重視したい方に選ばれやすい職場です。
周産期と一口にいっても働き方はさまざまなため、転職活動の段階で勤務形態を確認し、自分の生活リズムで無理なく働けるかを判断しましょう。
Q3:周産期医療に向いている看護師の特徴はありますか?
観察力と共感力、そして学び続ける姿勢がある方が、周産期医療の看護師に向いています。
周産期医療では母体や新生児のわずかな変化に気づく力、ご家族の思いを受け止める姿勢が求められ、命の重みに真摯に向き合える方ほど、この分野で成長できるでしょう。
周産期医療は進歩が速い分野でもあるため、新しい知識を学び続ける意欲も大切です。
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看護師の転職で周産期医療を選び自分らしいキャリアを築こう
周産期医療は、命の誕生に立ち会える感動、専門性を高められる成長機会、社会的ニーズの高まりという魅力を持つ分野です。
助産師資格がなくても、看護師として母体管理や新生児ケア、ご家族の支援など、多くの役割を担えます。
訪問看護ステーションや産科クリニック、一般病院の産科病棟、周産期母子医療センターなど、働く場所の選択肢も豊富です。周産期医療での経験は、新生児集中ケア認定看護師や母性看護専門看護師といった専門資格取得にもつながり、地域の母子支援という形で生涯活かせる強みとなります。
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<参考サイト・文献>
NsPace Careerナビ 編集部 「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。
