看護実習とは?期間・スケジュールと5つの悩みを乗り越える方法を解説

「もうすぐ看護実習が始まるけれど、どのように準備すれば良いかわからない」「看護実習でうまくやっていけるか不安」
看護実習は、講義で学んだ知識を医療現場で実践する機会です。慣れない環境での緊張や、患者さまとのコミュニケーションに対して不安を感じている看護学生も多いでしょう。
この記事では、看護実習の概要やよくある悩みへの対処法について、看護学生が知っておきたい情報を解説します。事前にしっかりと準備することで、看護実習を充実した学びの時間にできます。
看護実習の目的と位置づけ
看護実習は、看護師を目指す学生にとって欠かせない学習過程です。ここでは、実習の目的や時期、学ぶ領域について解説します。
- 看護実習とは何か
- 看護実習が始まる時期と期間
- 看護実習で学ぶおもな領域
それぞれ見ていきましょう。
看護実習とは何か
看護実習は、講義で学んだ知識を臨床現場で実践する機会です。文部科学省の「看護学教育モデル・コア・カリキュラム」では、看護実習は「臨地の指導者による指導の下、医療チームの一 員として、一定の役割と責任を担いながら知識、スキル、態度・価値観を学び、更に思考力・判断力・表現力を用いて可視化されるパフォーマンスとして示す」としています。
たとえば看護実習では、バイタルサイン測定や清潔ケアなど基本的な技術に加え、患者さまとのコミュニケーション、多職種との連携、看護師の立ち振る舞いなども学びます。
看護実習が始まる時期と期間
多くの学校では、2〜3年次から本格的な臨床現場での実習がスタートします。ただし、4年制大学と3年制専門学校でスケジュールが異なるため、あくまで一般的・例です。
【4年制大学の実習スケジュール例】
| 学年 | 実習内容 | 実施時期 | 実習期間 |
| 1年生 | 基礎Ⅰ実習 | 9月ごろ | 1週間 |
| 2年生 | 基礎Ⅱ実習 | 5月〜7月ごろ | 2週間 |
| 3年生 | 領域実習 | 9月ごろ | 2〜3週間×6領域 |
| 4年生 | 統合実習 | 7月、9月ごろ | 2週間 |
【3年制専門学校の実習スケジュール例】
| 学年 | 実習内容 | 実施時期 | 実習期間 |
| 1年生 | 基礎Ⅰ・Ⅱ実習 | 9月、2月ごろ | 1週間、2週間 |
| 2年生 | 領域実習 | 9月〜2月ごろ | 8週間 |
| 3年生 | 領域実習・統合実習 | 5月〜11月ごろ | 10週間、2週間 |
4年制大学・3年制専門学校では、実習期間・回数にそれぞれ特徴があります。4年制大学は段階的に実習を進め、3年制専門学校はより集中して実践経験を積む構成になっていることがあります。詳細は学校によって異なるため、各学校のカリキュラムを確認しておきましょう。
関連記事:看護学生とは?年間スケジュールやつらいといわれる7つの理由と乗り越えるコツ
看護実習で学ぶおもな領域
看護実習では、次の領域で知識と技術を学びます。
| 領域 | おもな内容 |
| 基礎看護学実習 | ・看護の基本姿勢や患者さまとのコミュニケーション能力を習得 ・最初の実習として実施されることが多く、病棟看護師から指導を受けながら日常生活援助や環境整備を見学や実践 |
| 成人看護学実習 | ・15歳〜64歳までの成人期の患者さまが対象 ・急性期・慢性期・回復期の病棟で、外科系・内科系疾患の看護を学習 |
| 老年看護学実習 | ・高齢者特有の看護ケアを学習 ・特別養護老人ホームや介護老人保健施設での実習も含む |
| 小児看護学実習 | ・小児科病棟で子どもの成長発達に応じた看護を学習 ・幼稚園や保育園での実習を通して、健康な子どもの発達を理解 |
| 母性看護学実習 | ・妊娠から産褥期までの母親と新生児が対象 ・外来や分娩に立ち会い、産前産後の看護を実践的に学習 |
| 精神看護学実習 | ・精神疾患を持つ患者さまへの理解を深め、精神科について学習 ・閉鎖病棟や地域活動支援センターでの実習が含まれることもある |
| 在宅・地域看護学実習 | ・訪問看護ステーションを利用する利用者が対象 ・実習指導者と一緒に訪問し、在宅看護の実際を見学や体験 |
| 統合実習 | ・これまでの実習で学んだ知識・技術を統合 ・複数患者の受け持ちや時間管理、多職種との連携、看護管理など、より実践的な看護を学習 |
各領域で1〜3週間の実習をおこない、対象者のニーズに応じた看護を学んでいきます。
実習先は、各教育機関によって異なります。
例えば大学病院付属の場合は、付属する大学病院で実施することが多いです。
そのほか、連携していたり、看護実習を受け入れてくれたりする病院で実施しています。
看護実習で求められる姿勢とマナー
看護実習では、技術を学ぶだけでなく、医療チームの一員としての姿勢や態度も重要です。文部科学省の「看護学実習ガイドライン」では、実習施設と大学が連携・協働して学生を育てることや、学生が主体的に学ぶ姿勢を持つことが重視されています。
看護実習に臨む際は、次の3つのポイントを意識しましょう。
- 挨拶・報告・連絡・相談を大切にする
- 清潔感と身だしなみを整える
- メモや記録の習慣をつける
それぞれ解説します。
挨拶・報告・連絡・相談を大切にする
チーム医療の一員として、丁寧な言葉づかいと積極的な報告が信頼関係の基礎となります。朝の挨拶、患者さまへの声かけ、実習指導者への報告など、すべての場面でコミュニケーションを意識しましょう。
わからないことがあれば、素直に質問する姿勢が大切です。たとえば「担当患者さまの血圧が148/96mmHgでした。実習記録に記載してもよろしいでしょうか?」のように、自分が観察した事実を明確に伝え、次に取るべき行動について相談することで、適切な指導を受けやすくなります。
看護学生は医療行為の判断を行う立場ではないため、少しでも不明な点があるときは、必ず実習指導者に報告・確認してから行動するようにしましょう。患者さまの安全を守るためにも、「自己判断しないこと」が重要です。
清潔感と身だしなみを整える
実習では、次の身だしなみを心がけましょう。
- 制服:シワや汚れがないように清潔に保つ
- 髪:短くまとめる(肩につく長さの場合はまとめる)
- 爪:短く切る、マニキュアは使用しない
- アクセサリー・香水:使用しない
第一印象は、患者さまとの信頼構築に影響します。清潔感のある身だしなみを心がけることで、患者さまに安心感を与えられます。
メモや記録の習慣をつける
実習中の気づきや指導内容は、その場でメモする習慣をつけましょう。記憶が新しいうちに書き留めると、振り返りの質が高まります。
メモ帳を常に携帯し、実習指導者からの助言、患者さまの様子、自分の考えなどを書き留めておけば、実習記録の作成やカンファレンスの準備もスムーズになります。
看護実習を乗り越えるための事前準備
看護実習を充実したものにするためには、事前準備が欠かせません。ここでは、実習前にしておきたい準備を紹介します。
- 患者さまの疾患や看護について事前学習する
- ミニノートを準備して情報を整理する
- 生活リズムを整え体調管理の習慣をつける
それぞれ見ていきましょう。
患者さまの疾患や看護について事前学習する
患者さまの疾患の病態生理や治療内容について、事前に学習しておきましょう。
特に、実習先の診療科に関連する疾患を中心に調べると時間を効率的に使えます。たとえば、実習先が整形外科病棟であれば大腿骨頸部骨折や腰部脊柱管狭窄症、圧迫骨折などです。また、既往歴として一般的に多い心不全や脳梗塞、高血圧症についても予習しておくと良いでしょう。
さらに、教科書や参考書を実習先に持参し、休憩時間やスキマ時間に確認できるようにしておけば、自信を持って実習に臨めます。
ミニノートを準備して情報を整理する
バイタルサインの基準値や観察ポイント、よく使う略語や医療用語をまとめたミニノートを作成しておくと、報告や記録作成の際に役立ちます。疾患別の看護のポイントや、実習先で使用される薬剤についてもまとめておくと便利です。
ノートの内容を見やすく整理することで頭の整理にもなり、実習中の不安を軽減できます。
ただし、ノートにはあくまで実習に役立つ情報のみにとどめ、患者さまの個人情報を書くことは避けましょう。ノートを紛失した際に、個人情報が漏洩する場合もあるからです。
市販の書籍として、看護実習向けのポケットガイドも販売されていますので、自分にあった方法で用意するのがおすすめです。
生活リズムを整え体調管理の習慣をつける
看護実習は朝早くから始まり、実習指導者への報告や記録作成などで夜遅くまで作業することもあります。実習前から早寝早起きの習慣をつくり、十分な睡眠時間を確保しましょう。
また、栄養バランスの取れた食事と規則正しい生活を心がけることで、実習期間中も集中力を保てます。
看護実習でよくある5つの悩みと対処法
看護実習には、次のような特有の大変さがあります。
- 記録やレポートが進まない
- 看護技術がうまくできず不安
- 実習指導者とのかかわり方に悩む
- 患者さまとのコミュニケーションが難しい
- 看護実習に行くこと自体がつらい
ここでは、実習でよくある悩みとその対処法を紹介します。
記録やレポートが進まない
実習記録の作成には時間がかかり、睡眠不足になる学生も少なくありません。スキマ時間を有効活用することが、記録を効率よく進めるポイントです。
実習中の休憩時間や移動時間を利用し、感じたことや考えたことをメモに残しましょう。記憶が新しいうちに書き留めておくことで、帰宅後の記録作成がスムーズになります。
また「患者情報・観察・アセスメント・計画」といった、記録の基本構成を理解しておくことも効率的です。先輩の記録を参考にしたり、看護計画や関連図のテンプレートを活用したりすることで、作業時間を短縮できます。
看護技術がうまくできず不安
看護技術に不安を感じる学生は多くいます。実習前に学内で練習を重ね、実習指導者に相談し、見守ってもらいながら実施しましょう。わからないことはそのままにせず、実習指導者に確認してから行動してください。
また、患者さまの表情や反応をよく観察する意識も大切です。観察力を鍛えることで看護技術も向上し、患者さまの小さな変化にも気づけるようになります。
関連記事:看護師に必要な3つの観察力とは?求められる理由と鍛える方法を解説
実習指導者とのかかわり方に悩む
実習指導者が忙しそうで声をかけにくい、厳しい指導に落ち込んでしまう、といった悩みを持つ学生もいます。
実習指導者は、自身の勤務の一つとして学生を担当しています。忙しさは、患者さまの状況によって異なりますが、できるだけ報告や相談は、内容を事前にまとめてから伝えましょう。簡潔に要点を伝えることで、スムーズなコミュニケーションが取れます。わからないことは素直に「教えていただけますか」と伝える姿勢も大切です。
指導を「学びのチャンス」と捉えることで、看護学生は成長できます。
患者さまとのコミュニケーションが難しい
初対面の患者さまと何を話せば良いかわからず、緊張してしまう看護学生は多くいます。
いきなり多くを話そうとせず、笑顔と挨拶から始めましょう。患者さまのペースに合わせて「聞く姿勢」を大切にし、ゆっくりと関係を築いていくことが大切です。
実習指導者や先輩看護師のコミュニケーション方法を観察し、声のトーンや距離感、タイミングなどを学ぶことも、自身のスキルアップに効果的です。
看護実習に行くこと自体がつらい
記録や人間関係のストレスから、実習に行くこと自体がつらいと感じることもあります。
気持ちがつらいと感じたら、まずは学校の担当教員・実習施設の相談窓口・保健師・臨床心理士など専門の相談先に早めに相談しましょう。同級生・先輩に話すことも支えになりますが、必要に応じて専門家の助けを得ることが非常に重要です。
また、「今日はひとつ成長できた」と達成感を大切にすることもポイントです。できたことに目を向けることで、前向きな気持ちを保てます。
看護実習で得られる学び
看護実習は大変な面もありますが、かけがえのない学びを得られる機会です。
- 看護のやりがいを実感できる
- チーム医療の大切さを理解できる
- 自己理解が深まり、自信がつく
実習を通して得られる学びを紹介します。
看護のやりがいを実感できる
実践の場で誰かの役に立てる喜びを体験できるのは、看護実習ならではの経験です。実習では、臨床の現場以上に時間をかけて患者さまと向き合うことができます。
患者さまの笑顔や「ありがとう」の言葉に触れることで、看護のやりがいを実感できます。
看護師には病院以外にも、患者さまの生活に寄り添う働き方があります。訪問看護では、利用者さまとじっくり向き合いながらケアを提供できるでしょう。訪問看護に興味がある方は、訪問看護専門の求人サイト「NsPace Career」で情報収集してみてください。
新卒や未経験者の採用を行っている訪問看護ステーションもあります。
チーム医療の大切さを理解できる
看護実習は、看護師の働き方を間近で見るほか、医師・薬剤師・理学療法士・栄養士など、多職種との連携を学ぶ機会です。
看護師は24時間患者さまのそばにいる立場として、多職種をつなぐ役割を担います。実習でチーム医療を体験することで、将来の看護師としての視野が広がります。
自己理解が深まり、自信がつく
看護実習を通して、自分の苦手分野や強みを理解できます。たとえば「急性期のスピード感が合っている」「高齢者の話を聞くのが好き」など、対象者や場面によって自分の適性が見えてきます。
場合によっては、自分では考えもしなかった苦手分野や強みにも出会えます。こうした発見が、将来の進路選択にも役立つことでしょう。
看護実習についてのよくある質問
ここでは、看護実習についてよくある質問に回答します。
Q1:看護実習の持ち物で、必需品やあると便利なものはありますか?
学校から指定される持ち物に加えて、次のものがあると便利です。
【必需品】
- ポケットサイズのメモ帳
- ナースウォッチ
- 多色ボールペン
- ハサミ
- 油性マジック
【あると便利なもの】
- 検査値一覧表やバイタルサインの基準値をまとめたもの
- 領域別の参考書
- ハンドクリーム(無香料)
- アルコール消毒液
ただし、これらは実習先によって持ち込み禁止のばあいもあるため、事前に必ず確認してください。実習先や実習領域に応じて、必要なものを準備しましょう。
Q2:看護実習でとくに大変なことは?
看護実習では、記録作成や患者さまとのコミュニケーション、実習指導者への報告のタイミングなどに悩む学生が多くいます。慣れない環境での緊張も加わり、精神的・身体的な負担を感じやすい時期です。
仲間と支え合い、工夫しながら取り組むことで乗り越えられるため、少しずつクリアしていきましょう。
Q3:患者さまに不適切な声かけをしてしまいました。どう対応すべきですか?
不適切な対応をしたと感じたら、直ちに実習指導者・施設の指導責任者に報告し、実習施設の手続き(例:インシデント報告、振り返り会議)に含まれる支援を受けましょう。
患者さまには、実習指導者や施設の指導責任者と共に謝罪を丁寧に行い、原因・改善策を実習指導者とともに整理し、再発防止に向けた学びを共有することが看護学生としての責任です。
Q4:実習のレポートや記録を書くコツはありますか?
記録を効率よく進めるコツは、次の3つです。
- スキマ時間を活用する
実習中の休憩時間や移動時間を利用して、記録を進めましょう。記憶が新しいうちに書き留めることで、質の高い記録になります。 - 参考資料を活用する
看護計画や関連図は、参考資料を活用すると作成時間を短縮できます。受け持ち患者さまの疾患に近いものを探し、自分なりにアレンジしましょう。 - 優先順位をつける
すべてを完璧にしようとせず、重要な部分から取り組みます。まずは提出期限内に形を作ることを目指し、細かい部分はあとから整えていきます。
看護実習での経験が未来の看護師としての自信になる
看護実習は、記録や時間に追われてつらい時期もありますが、それぞれの経験が将来の看護師人生の基盤となるでしょう。
不安や悩みを抱えながらも、前向きに取り組む姿勢が成長には大切です。同級生と支え合い、先輩や実習指導者に相談しながら、看護実習を乗り越えていきましょう。応援しています。
<参考文献・サイト>
NsPace Careerナビ 編集部 「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。
