小児看護のコミュニケーション5つのポイント!発達段階別の声掛けと家族対応

「泣いている子を前に、どう声をかけたらいいか分からなかった」
「処置のたびに嫌がられて、心が折れそうになる」
小児看護の現場では、こうした悩みに直面する看護師が少なくありません。子ども一人ひとりに寄り添うためには、大人同士のような言葉のやりとりだけではなく、年齢や発達段階に応じた“伝え方”の工夫が求められます。
本記事では、小児看護におけるコミュニケーションの基本と、発達段階ごとの関わり方、さらに保護者との信頼関係の築き方までを丁寧に解説します。子どもの気持ちに寄り添いながら、治療やケアをスムーズに進めるためのヒントをお届けします。
小児看護でコミュニケーションが大切な理由
小児看護において、コミュニケーションは子どもの恐怖心を取り除き、信頼関係を築くための大切な手段です。
「初めて来る病院」「見たことのない器具」「知らない大人たち」といった慣れない環境は、子どもにとってストレスとなります。看護師が優しい言葉や態度で接し、信頼関係を築くことで、緊張をほぐし、治療やケアへの協力も得られやすくなります。
また、子どもは年齢によって言葉の理解力や感情の表現方法が異なるため、発達段階に合わせたかかわり方を意識しましょう。
「今から何をするのか」「どうして必要なのか」を子どもが理解できる形で説明することで、子どもは安心感を持てます。このような事前説明は「プレパレーション」と呼ばれ、安全でスムーズな治療をおこなうために大切です。
小児看護コミュニケーション5つのポイント
小児とのコミュニケーションでは、言葉による説明だけでなく、表情や態度、環境づくりなど、さまざまな要素を組み合わせることが効果的です。ここでは、コミュニケーションの際に意識したいポイントを紹介します。
- 子どもの目線に合わせた声掛けと言葉選びを意識する
- 遊びやイラストを活用して安心感を与える
- 共感の言葉で子どもの気持ちに寄り添う
これらを実践することで、子どもとの信頼関係を築きやすくなります。
子どもの目線に合わせた声掛けと言葉選びを意識する
子どもと話すときは、しゃがんだり椅子に座ったりして、目線の高さを合わせましょう。目線が合うことで、子どもは「自分と対等に接してくれている」と感じ、安心感を得られます。
また「今から体温を測るね」「お腹を見せてくれる?」など、短くわかりやすい言葉を選んで伝えることも大切です。たとえば「採血」ではなく「血の検査をするよ」といった表現を使うと、子どもが理解しやすくなります。
あくまで、年齢や理解度に応じた表現を選択しましょう。
遊びやイラストを活用して安心感を与える
言葉での説明が難しい場合は、遊びや道具を活用すると効果的です。処置の前に人形やぬいぐるみを使って「この子も同じことをするよ」と見せることで、子どもは視覚的に理解できます。
また、絵本やイラストで処置の流れを説明する方法も、小児医療の現場で取り入れられています。「まず服を脱いで、次にベッドに寝て、それから…」のように順番を示すことで、子どもは見通しを持てるようになるのです。
共感の言葉で子どもの気持ちに寄り添う
子どもが泣いたり嫌がったりしているときは「怖いよね、わかるよ」「痛いの嫌だよね」と、子どもの気持ちに寄り添うことを心がけてください。自分の感情を受け止めてもらえると、子どもは安心します。
また「痛くないよ」といった安易な言葉にも注意が必要です。実際に痛みを感じたとき、子どもが不信感を抱いてしまう可能性があります。「ちょっとチクッとするかもしれないけど、すぐ終わるよ」など、正直に伝えましょう。
言葉以外のサインを観察する
子どもは、言葉だけでは十分に気持ちを伝えられない可能性があります。表情や動き、泣き方など、非言語的なサインを読みとることで、子どもの状態を推察しましょう。
たとえば、いつもより元気がない、視線を合わせない、身体を丸めているといったサインは、体調不良や不安をあらわします。言葉にならない訴えを敏感にキャッチすることで、早期に異変に気づき、対応につなげられるのです。
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処置後は必ずねぎらいの言葉をかける
処置が終わったら「がんばったね」「えらかったね」「ありがとう」といったねぎらいの言葉をかけましょう。治療や処置の経験がポジティブな記憶として残ると、病院への恐怖感が和らぎます。
また、褒められることは子どもの自己肯定感を高めます。「自分は頑張れた」という成功体験を積み重ねることで、治療やケアに前向きに取り組む力が育つのです。
【発達段階別】小児看護のコミュニケーション方法
子どもは発達段階によって、言語の理解力や感情の表現方法、社会性が異なります。発達段階に応じたコミュニケーションをおこなうことで、子どもがスムーズに理解できるようになります。
- 乳児期(0~1歳):優しい声のトーンで安心させる
- 幼児期(1~6歳):遊びやおままごとを取り入れて楽しくかかわる
- 学童期(6~12歳):理解できる言葉で説明し協力を得る
- 思春期(12歳~):プライバシーを尊重し自立心を支える
各発達段階におけるかかわり方のポイントをみていきましょう。
乳児期(0~1歳):優しい声のトーンで安心させる
乳児期の子どもは、声のトーンや抱き方、表情といった非言語的なコミュニケーションに敏感に反応します。
穏やかで優しい声で話しかけ、ゆっくりとアイコンタクトを図りましょう。抱っこやタッチングといったスキンシップも、乳児に安心感を与えられます。
また、人見知りが始まった乳児は、保護者と離れると不安が強くなるため、できるだけ保護者のそばで処置をおこなう、抱っこしてもらいながらケアをするなど配慮が必要です。
幼児期(1~6歳):遊びやおままごとを取り入れて楽しくかかわる
幼児期は、遊びを通じて関係性を築く時期です。想像力が豊かで好奇心が旺盛な反面、感情のコントロールが難しく、不安や恐怖を感じやすい特徴があります。
ごっこ遊びを取り入れて「お人形さんも注射するよ」と視覚的に説明すると、理解しやすくなります。子どもが興味を持っているおもちゃや絵本を使って会話を広げることも効果的です。
言葉でのコミュニケーションが発達する時期ですが、まだ十分に伝えられないこともあります。表情やしぐさなどの反応もキャッチしましょう。幼児期の子どもにとってできたことを褒めて達成感を味わえるようにすることは、治療への協力と心理的な成長のために大切です。
学童期(6~12歳):理解できる言葉で説明し協力を得る
学童期になると理解力が大きく発達します。文部科学省「子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題」によると、学童期の子どもは言語能力や認識力が高まり、善悪の理解やルールを守る力が身につくとされています。
そのため「注射をすると病気の菌をやっつけられるよ」といった、理由を添えた説明が有効です。「なぜ検査が必要なのか」「どうやっておこなうのか」を、子どもが理解できる言葉で具体的に伝えましょう。
学童期の子どもは、周囲の目や評価を気にするようになるため、遠慮したり本心を語らなかったりすることもあります。話しやすい雰囲気を心がけ「手伝ってくれる?」「一緒にがんばろう」といった言葉で、子どもに協力してもらえるようにすることが効果的です。
思春期(12歳~):プライバシーを尊重し自立心を支える
思春期は、自立心が芽生え、自分らしさを模索する時期です。自分の価値観やアイデンティティを意識し、他者からの評価や承認に敏感になります。
この時期の子どもには、1人の人間として尊重する姿勢が大切です。本人の意思や考えを聞く時間を設け「あなたはどう思う?」「どうしたい?」と問いかけましょう。自己決定を支援し「自分で選択した」という実感を持てるようサポートします。
また、第二次性徴により身体が変化する時期であるため、同性のスタッフが対応する、カーテンをしっかり閉めるといったプライバシーへの配慮も大切です。
家族(保護者)とのコミュニケーションで看護師が意識すること
小児看護では、子どもだけでなく家族を支援の対象として捉えることが大切です。看護師が家族と信頼関係を築くことで、子どもも安心して治療に臨めます。
- 保護者の不安や疑問を丁寧に受け止める
- 治療や処置の説明をわかりやすく伝える
- 家族をケアする意識を持つ
ご家族とのかかわりでは、上記のポイントを意識するようにしましょう。
不安や疑問を丁寧に受け止める
患者さまご家族は、子どもの病気や治療に不安を感じています。「治るのだろうか」「もっと早く気づいてあげられれば良かったのに」といった心配や後悔を抱えていることも少なくありません。
また、看護師に遠慮して疑問を口に出せずにいるご家族もいます。看護師から「何か心配なことはありますか?」と声をかけ、質問しやすい雰囲気をつくりましょう。
治療や処置の説明をわかりやすく伝える
治療内容やケアについての説明は、できる限り医療用語を避け、具体的で簡潔な言葉を使ってわかりやすく伝えましょう。
「なぜ必要なのか」「子どもにどのような負担があるのか」といった点を、ご家族が理解できる形で説明することが重要です。図や資料を使った説明も効果的です。ご家族が納得したうえで治療や処置に臨めるよう心がけてください。
家族をケアする意識を持つ
小児看護では、母子だけでなくきょうだい児や父親など、家族全体を見てサポートする視点が大切です。
たとえば、きょうだい児が寂しい思いをしていないか、ご家族の仕事や生活リズムへの影響、入院している子どもに付き添う保護者の疲労やストレスにも配慮が必要です。「家族が健康であること」を意識しながらかかわりましょう。
小児看護のコミュニケーションにおけるやりがい
小児看護には大変な場面もありますが、子どもたちの成長や笑顔に触れることで、看護師は次のようなやりがいを感じています。
- 子どもの成長や回復を間近で支えられる
- 「ありがとう」の言葉や笑顔を直接もらえる
- 子どもとの信頼関係が深まっていくことを実感できる
それぞれみていきましょう。
子どもの成長や回復を間近で支えられる
「昨日できなかったことが今日はできた」という変化を目の当たりにできるのは、小児看護ならではの魅力です。子どもが日に日に元気になり、笑顔で退院していく姿は、看護師にとってのかけがえのない励みになります。
長期入院の子どもの場合は、かかわる期間が長くなるため、成長の過程をより深く見守れます。
関連記事:小児科看護師の仕事内容8選!1日の流れや向いている人の特徴を紹介
「ありがとう」の言葉や笑顔を直接もらえる
「痛くなかったよ!」「ありがとう!」といった処置後の満面の笑顔や、退院時に「元気になったよ!」と報告してくれる瞬間は、小児看護師として喜びを感じる場面です。
また、保護者からの感謝の言葉も励みになります。「看護師さんに支えられて乗り越えられました」といった言葉をもらったとき、コミュニケーションの大切さを改めて実感できます。
子どもとの信頼関係が深まっていくことを実感できる
「入院時は泣いていた子どもが、何度かかかわるうちに笑顔で名前を呼んでくれるようになった」このような変化を見られることは、小児看護ならではのやりがいです。コミュニケーションを重ねることで信頼関係が深まっていくことを実感できます。
小児看護で培ったコミュニケーションスキルは、さまざまな医療現場で活かせます。たとえば訪問看護では、子どもや家族と信頼関係を築きながら成長を長期的に支えられます。訪問看護での小児のニーズは高く、小児特化型の訪問看護ステーションもあります。
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小児看護のコミュニケーションに関するよくある質問
ここからは、小児看護のコミュニケーションについてよくある質問に回答します。
Q1.子どもが処置を怖がって泣いてしまうときの対応方法は?
子どもが泣いて処置を拒否する場合、無理に進めようとせず、子どものペースを尊重しましょう。
絵や人形を使って「今から何をするのか」を視覚的に見せることで、子どもは理解しやすくなります。また、保護者に手を握ってもらう、声をかけてもらうなど、協力をお願いすることも有効です。
Q2.医療処置に対する恐怖を和らげる方法はありますか?
「1、2、3で終わるよ」「このベルが鳴ったら終わりだよ」など、処置の流れを具体的に説明することで見通しを伝えましょう。処置後は「すごくがんばったね」「ありがとう」とねぎらうことで、達成感を与えられます。
好きなおもちゃを持たせたり、保護者にそばにいてもらったりすることも、安心できる環境づくりに役立ちます。
Q3.小児看護でコミュニケーションが難しいと感じたときは?
コミュニケーションに行き詰まったときは、1人で抱え込まずチームで情報を共有しましょう。同僚や先輩看護師に相談することで、新しい視点を得られます。子どもの心理面について専門的な助言が必要なときは、臨床心理士に相談すると対応策が見えてくることもあります。
また、自身の言葉がけや態度を振り返ることも大切です。たとえば「どのような言葉で子どもが笑顔を見せてくれたか」「どのタイミングで協力を得られたか」など、うまくいった場面を記録して分析することで、次回同じような状況で活かせます。
小児看護のコミュニケーションは「子ども・家族との信頼づくり」が大切
小児看護では、発達段階に応じたコミュニケーションが必要です。子どもの目線に立った声掛け、遊びの活用、ねぎらいの言葉など、ポイントを意識することで、子どもとの信頼関係を築けます。
また、ご家族の不安に寄り添い支える視点も大切です。家族を意識したコミュニケーションにすることで、子どもは不安を軽減でき、治療へ前向きになれます。
小児看護のコミュニケーションスキルは、経験を重ねることで磨かれていきます。日々の実践を大切にし、子どもと家族の笑顔を支える看護師を目指しましょう。
<参考サイト・文献>
NsPace Careerナビ 編集部 「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。
