【事例別】看護師が起こしやすいインシデントと予防策!立ち直れないときの対処法

公開日:2025/10/28 更新日:2025/10/28
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「あのとき、なぜ確認を怠ったのか」「インシデントを起こしてしまって、患者さまに申し訳ない」

注意深く仕事をしている看護師でも、すべてのインシデントを避けるのは難しいものです。インシデントを起こした後は、自己嫌悪や再発への恐怖で落ち込んでしまうことも少なくありません。

この記事では、看護師が起こしやすいインシデントの事例と予防策を解説します。前向きに乗り越えるための方法を紹介するため、インシデントを単なる失敗で終わらせず、安全管理の意識が高い、頼られる看護師に変わることができます。

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看護師が起こしやすいインシデント事例と予防策

インシデントには点滴の投与ミスや処方の間違い、転倒などさまざまな種類があります。事例を知ることは、再発防止には欠かせません。ここでは、重大な事故につながりやすい事例をピックアップし、その背景と予防策を具体的に解説します。

  • 薬剤関連のインシデント
  • 医療機器関連のインシデント
  • 転倒転落のインシデント
  • ドレーン・チューブ関連のインシデント
  • 患者さまを取り違えた事例

それぞれ5つの事例を実際の業務に役立ててください。

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薬剤関連のインシデント

看護師は患者Xの「リスプロBS注ソロスターHUサノフィ」と食事を持ち、患者Yのもとを訪室した。患者Xの名前を呼んだ際、患者Yから「はい」と返事があり配膳。患者Yにインスリンの説明をしてリスプロBS注10単位を投与した。その後、患者Yより食事の名前が違うと申し出があり、配膳間違いとインスリン誤投与が判明した。当直医師と内分泌内科医師で対応し、食事摂取に追加してブドウ糖含有の輸液を開始。患者Yの血糖値は46mg/dLに低下したが、低血糖症状はなかった。夕食の全量摂取後に血糖値を測定し、100mg/dL程度まで上昇していることを確認した。インスリン誤投与の6時間後まで30分毎に血糖測定を行い、100mg/dL台で推移した。

<事例の背景・要因>

  • 患者Yが「はい」と返事したことで、看護師が思い込みで患者確認を完了し、氏名・IDの照合という基本ルールを怠った
  • 近くの病室に同姓・類似名の患者がいた、あるいは急ぎの業務で焦りがあったなど、ヒューマンエラーが起こりやすい状況だった

<対策>

  • 「フルネームで確認」と「リストバンドの照合」で投与前に確認する
  • 類似薬剤や同姓患者の薬剤の保管場所を離して管理する
  • 業務内容やスケジュールを見直して業務負荷に偏りがないようにする
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医療機器関連のインシデント

ブドウ糖注射液5%250ml+サンドスタチン300μgの合計253ml輸液ポンプで24時間投与していた。12:45に看護師は薬剤を交換した際、10.5ml/hで設定しようと思っていたが、誤って105ml/hに設定した。ダブルチェックをした確認者も誤りに気づかなかった。15:30に患者からナースコールがあり訪室すると、輸液ポンプのアラームが鳴っており流量設定の間違いに気づいた。

<事例の背景・要因>

  • ダブルチェック者が声出し確認や計算チェックを怠ったため、エラーを見逃した
  • 院内に小数点以下が入るものと入らないもの(例:TE-161SとTE-171)の輸液ポンプが混在しており操作を誤りやすい環境だった

<対策>

  • 輸液ポンプの開始時は2人の看護師がベッドサイドで確認する
  • 15分後、もしくは30分後にもチェックする
  • 院内には、輸液ポンプが2種類あることを周知する
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転倒転落のインシデント

患者(3歳)のいるベッドのベッド柵を、付き添っていた父親が一番下にした。反対側のベッド柵は上段になっていた。父親が布団を畳んでいた際、患者はベッド柵が下がっている側に転落した。患者に外傷はなかった。

<事例の背景・要因>

  • ご家族は「大人が付き添っていれば大丈夫」と思い込み、ベッド柵を下げるリスクをイメージできていなかった。
  • ご家族が子どもから目を離す瞬間にリスクがあること、柵を下げたままにすることの危険性を十分に伝えられていなかった。

<対策>

  • ご家族への入院オリエンテーション時に事例を紹介してイメージできるようにする
  • 付き添い者が交替したときには、転倒転落の予防策を再度説明する
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ドレーン・チューブ関連のインシデント

胃瘻造設がおこなわれ、造設から14日目に抜糸。胃瘻造設後20日目、胃瘻カテーテルのバルーン内の滅菌蒸留水を交換するため、看護師Aは胃瘻カテーテルを押さえ、看護師Bが滅菌蒸留水を抜いた。患者から腹痛の訴えがあり滅菌蒸留水を戻した。症状が持続するため、医師へ報告。CT検査で胃瘻カテーテルが逸脱していることがわかった。開腹洗浄ドレナージ、胃瘻造設術が施行された。

<事例の背景・要因>

  • バルーン内の水を抜く際に、カテーテルが胃壁から動かないようにする固定が不十分だった
  • 院内のガイドラインが遵守されておらず、看護師AもしくはBの手順が間違っていた

<対策>

  • 「2人体制の際の役割分担」を明確にし、カテーテルを固定する手順を徹底する
  • 院内の胃瘻ガイドラインを見直し、注意すべき点について周知する
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患者さまを取り違えた事例

医師が電話で、入院中の患者Xの内診の指示を看護師に伝えたところ、看護師が患者Yであると誤認して準備し、医師が患者間違いに気づかず診察した。

<事例の背景・要因>

  • 電話指示において、患者確認の情報(氏名・ID・生年月日)が不足していた
  • 看護師が思い込みで準備を進め、診察直前にも最終確認を怠った

<対策>

  • 呼び出した側が何を伝え、電話を受けた側がどのように受け取ったかを復唱する
  • 呼び出しの連絡を当日の日勤リーダー看護師の業務用電話にするなど、病棟内のスケジュールを把握している人に電話する
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看護師がインシデントレポートを書くコツ

インシデントレポートは、再発防止のための分析ツールです。同じ間違いが起こらないように、客観的な事実を正確に記述することが重要です。

  • 原因を分析できるように6W1Hで整理する
  • 感情ではなく状況を客観的に記入する
  • 事例を共有できるように事実を書く

これらのコツを実践することで、レポートが事実にもとづいた、事故防止の取り組みに活用できる貴重な資料になります。個人の責任追及ではなく、チームで課題を解決するための第一歩としましょう。

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原因を分析できるように6W1Hで整理する

インシデントの発生状況をしっかりと伝えるために、次の6W1Hの視点で情報を整理しましょう。

  • When(いつ)
  • Where(どこで)
  • Who(誰が)
  • What(何を)
  • Why(なぜ)
  • How(どのように)

インシデントには複数人がかかわっていることがあります。看護師や患者さま、医師、それぞれの行動をまとめ、インシデントが起こるきっかけはどこにあるのか、原因をもとに対策を考える必要があります。

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感情ではなく状況を客観的に記入する

レポートには「焦ってしまった」「確認を怠ってしまった」といった感情論や主観的な反省は控えましょう。

「カルテに記載するという手順を省略した」「点滴のアラーム音が聞こえなかった」といった、行動と環境の事実を客観的に記述する方が、インシデントの原因の分析に役立つからです。

焦りは個人の問題ですが、焦りによって省略された手順は組織が改善すべきシステムの欠陥の可能性があります。ミスの背景にある事故につながる業務手順や環境要因を特定できるようになるため、改善策を考えられるでしょう。

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事例を共有できるように事実を正確に書く

インシデントレポートは、誰が読んでも当時の状況がイメージできるように、事実のみを書きましょう。レポートを書く目的は、ほかの看護師も事例を振り返ることで、同じインシデントや重大な事故を防ぐことです。時系列で追えるように、具体的に記述してください。

  • 患者さまの状態:発生時のバイタルサイン、意識レベル、事後の変化
  • 使用した物品:輸液ポンプの機種名、薬剤のロット番号
  • 時系列:「〇時〇分に点滴を実施し、〇時〇分に異常を発見した」と状況の経過

これらの情報が、病院のガイドライン改訂や使用機器の見直しのきっかけになります。

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看護師のインシデントの再発を防ぐ視点

インシデントを繰り返さないためには、看護師の努力だけでなく、組織でエラーを防ぐ仕組みを作ることが重要です。

  • 「指差し呼称」と「6R」を徹底する
  • 「なぜミスが起きたか」を振り返る
  • ヒヤリハット事例から対応策を検討する
  • チームや看護師長とミスを共有し仕組みを作り直す

チームで協力し、インシデントが起きにくい環境を作りましょう。

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「指差し呼称」と「6R」を徹底する

インシデント防止の基本は「指差し呼称」と「6R」の徹底です。

  • 正しい患者(Right Patient)
  • 正しい薬剤(Right Drug)
  • 正しい目的(Right Purpose)
  • 正しい用量(Right Dose)
  • 正しい用法(Right Route)
  • 正しい時間(Right Time)

厚生労働省「職場のあんぜんサイト」によると、指差し呼称は、実験的に誤操作を約1/6に低減させたというデータがある一方で、すべての現場で同様の効果が得られるわけではないという報告があります。忙しいときほど、基本動作を徹底しましょう。

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「なぜミスが起きたか」を掘り下げるように振り返る

インシデントが発生した際、「注意力が足りなかった」と個人の問題で終わらせてはいけません。「なぜ、そのとき、看護師がミスをしたのか」という視点で掘り下げましょう。

この「なぜ」を繰り返すことで、マニュアルの不備や業務体制の不十分さなど原因にたどり着きやすくなります。

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ヒヤリハット事例から対応策を検討する

ヒヤリハットの活用は、再発防止に有効です。

ヒヤリハット事例をチームで定期的に共有し「ケアを続けていたら、患者さまはどうなっていたか?」「ミスに早く気づくためにはどうすれば良かったのか?」などを議論しましょう。インシデントにつながるリスクを現場で把握できるため、安全に業務を進められます。

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チームや看護師長とミスを共有し仕組みを作り直す

ミスを隠したり、1人で抱え込んだりすることは危険な行為です。ミスを素直に報告し、看護師長やチームに共有しましょう。

チーム全体で対策を立てることで、ミスの再発を防ぐだけでなく、精神的に孤立するのを防ぐことができます。

関連記事:看護師の業務内容とは?9つの業務内容と1日の仕事の流れを紹介

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看護師がインシデントを起こして立ち直れないときの対処法

インシデントを起こすと「自分は看護師失格ではないか」という思いになり、時には立ち直れなくなることがあります。しかし、落ち込んだままでいると、同じインシデントを繰り返してしまうかもしれません。

  • 同僚に相談して気持ちを整理する
  • インシデントを責めるのではなく学びに変える
  • 再発防止の取り組みを前向きに考える

ショックから立ち直り、建設的に行動することが安全なケアには不可欠です。これらの対処法を実施して、つらい気持ちを乗り越え、前向きに取り組みましょう。

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同僚に相談して気持ちを整理する

インシデントの経験を1人で抱え込まず、信頼できる同僚や先輩に相談し、正直な気持ちを話しましょう。孤独感が深まると、自己嫌悪から業務への集中力が低下し、新たなミスを起こすリスクが高まるからです。

気持ちが整理されるだけでなく、体験談を聞くことで「自分だけではない」と理解し、孤独感が解消されます。どうしても気持ちが前向きになれないときは、職場のメンタルヘルス相談窓口や産業医を利用するのも有効です。

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インシデントを責めるのではなく学びに変える

インシデントを起こした際、自分を責めるのは自然な感情ですが、過度に責め続けることはやめましょう。自分を責めるのではなく、具体的な改善策を考えることが大切です。

「なぜ、ミスが起こったか」「どのように行動していればミスを防げたのか」を客観的に分析しましょう。再発防止のためのレポート作成は、感情の整理ではなく原因究明に集中し、安全な行動のための方法を学ぶためのプロセスです。

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再発防止の取り組みを前向きに考える

立ち直るためには、再発防止という建設的な行動に集中することが不可欠です。自分が起こしたミスが、ほかの看護師や患者さまを守るための仕組みにつながると考え、具体的な行動を起こしましょう。

たとえば「点滴投与のダブルチェック手順をマニュアル化する」「経験する機会が少ない処置の勉強会を開く」といった取り組みを自ら提案・実施することで、プロフェッショナルとしての成長を実感し、失った自信を取り戻すことにつながるでしょう。

関連記事:看護師がミスで落ち込むときのNG行動5つ!対処法を知って乗り越えよう

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看護師のインシデントについてのよくある質問

インシデントは発生後、「次、起こさないようにするためにはどうすれば良い?」「評価はどうなるの?」など不安や疑問がつきものです。ここでは、多くの看護師が抱えるインシデントについての疑問に回答します。

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Q1:看護師がインシデントを隠したらどうなりますか?

インシデントを隠すことは、避けるべきです。たとえ軽微なインシデントでも、隠すことで重大な事故につながるかもしれません。

また、インシデントを隠したことが発覚した場合、病院からの懲戒処分を受けたり、信用してもらえなくなったりして、看護師としてのキャリアに影響する可能性があります。そのため、インシデントが発生した際には、医師や看護師長にすぐに報告して、患者さまへの悪影響を最小限にするために行動しましょう。

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Q2:看護師がインシデントを起こしたら評価や昇進に影響しますか?

基本的には、インシデントを起こしただけで評価が下がることはありません。多くの病院では、インシデントを「個人の責任」ではなく「組織的な課題」として捉えているからです。

評価において重要視されるのは、「ミスを犯したかどうか」よりも「ミスに対してどのように向き合い、再発防止に貢献したか」という姿勢です。

ただし、手順を守っていなかったり、インシデントを隠したりした場合は、信頼を損なうため評価や昇進に悪影響を及ぼす恐れがあります。

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Q3:看護師がインシデントを起こさないようにする研修はありますか?

多くの医療機関では、インシデントを防ぐための「医療安全研修」が定期的に実施されています。

  • リスクマネジメントの基礎
  • KYT(危険予知訓練)
  • 過去のインシデント事例の分析

これらの研修を積極的に受講し、日々の業務に活かすことが、インシデント予防には重要です。

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看護師はインシデント事例から学び安全なケアにつなげよう!

インシデントの事例を知ることは、「この状況が自分の職場で起きたらどうなるか?」と想像し、リスクを予測・防止する力を高めるきっかけになります。インシデントは単なる失敗ではなく、安全なケアを提供するための大切な学びの機会です。

なかでも訪問看護の現場では、看護師が一人で判断・対応する場面が多く、リスクマネジメントの重要性がより一層高まります。だからこそ、インシデントの知識と対策を深め、安心して働ける環境を選ぶことが大切です。

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<参考サイト・文献>

医療事故情報収集等事業第82回報告書(2025年4月~6月)|日本医療機能評価機構

医療事故情報収集等事業第61回報告書(2020年4月~6月)|日本医療機能評価機構

医療事故情報収集等事業第81回報告書(2025年1月~3月)|日本医療機能評価機構

職場のあんぜんサイト|厚生労働省

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記事投稿者プロフィール画像 NsPace Careerナビ 編集部

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