看護師の「申し送りノート」書き方完全ガイド!コツと例文を詳しく紹介

「申し送りノート」は、担当看護師が変わる際に、患者さまの情報を正確かつスムーズに引き継ぐための大切なツールです。
しかし「どのように書けば正確にわかりやすくできるのか」「何を書くと患者さまの情報を漏れなく伝えられるのか」と、書き方に悩む看護師は少なくありません。
この記事では、申し送りノートを書く際の5つのコツと場面別の例文を紹介します。この書き方ガイドを参考にすると、短時間で必要な情報が伝わる、質の高い申し送りノートを作成できるようになるでしょう。
看護師の申し送りノートの書き方!5つのコツ
申し送りノートは、事実を羅列するのではなく、次の勤務者が何をすべきかを伝えるためのものです。
- 基本項目に沿って書く
- 主観ではなく客観的な事実を記述する
- 6W1Hを意識する
- 「誰が読んでも伝わる文」にする
- 各時間帯で重点を変える
これらのコツを押さえることで、情報がしっかりと伝わるため、看護ケアの質の向上が期待できます。
基本項目に沿って書く
まず、申し送りノートには、施設や病棟で決められた基本項目(テンプレート)に沿って記述することが情報を漏れなく伝えるためには必要です。次の勤務者が情報を探す手間も省けます。
たとえば、次のような重要な情報はテンプレートに組み込みましょう。
- バイタルサインの異常値
- 治療や検査の変更点
- 次勤務帯への依頼事項
この書き方の徹底が、患者さまの安全を守り、ケアの質を高めることにつながります。
主観ではなく客観的な事実を記述する
申し送りノートには、主観的な感想や予測を避け、事実のみを記述することが大切です。主観的な情報は、誤解や誤ったアセスメントの原因となるからです。
「機嫌が悪そうだった」ではなく「ナースコールあり。『早く帰りたい』と5回発言あり」と、患者さまの言動やバイタルサインの変化といった事実を記録します。
客観的な事実を伝えることで、次の勤務者が患者さまの状態をしっかりと理解できるようになるでしょう。
6W1Hを意識する
6W1Hを意識することも、申し送りノートを書くコツです。
とくに、インシデントになりそうな出来事や、患者さまの重要な変化を記述する際は、6W1Hで書かれていると、次の勤務者が当時の状況を具体的にイメージできます。看護師が点滴投与ミスした事例であれば、次のように情報をまとめてください。
- いつ:10月20日の15時10分
- どこで:ベッドサイド
- 誰が:看護師A
- 誰に:患者B
- 何を:500mlの5%ブドウ糖
- なぜ:医師からの指示を読み間違えた
- どのように:24時間で投与すべきところを12時間で投与した
6W1Hの意識は、情報伝達の正確性を高め、インシデントの再発防止にもなります。
関連記事:【事例別】看護師が起こしやすいインシデントと予防策!立ち直れないときの対処法
「誰が読んでも伝わる文」にする
申し送りノートは、新卒看護師や異動したばかりの看護師が読んでも内容が理解できるようにすることが大切です。略語やあいまいな表現を使うと、チームで情報を共有できず、安全なケア提供が難しくなります。
「ADLは全介助、OPE後にFoley留置中」ではなく「日常生活動作は全介助、手術後に膀胱留置カテーテル留置中」のように、略語を避け正式名称を使います。
「誰が読んでも伝わる文」を意識すると、チームで情報を正しく共有でき、ケアの質を均一に保てるでしょう。
なお、申し送りノートの記載形式や使用できる略語は、施設や部署ごとにルールが異なる場合があります。各施設の定型フォーマットや運用ルールを尊重しつつ、略語は最小限にとどめ、誰が読んでも理解できるような補足を心がけると、より円滑な情報共有につながります。
各時間帯で重点を変える
勤務帯によって、観察や対応のポイントは異なります。日勤・準夜勤・深夜勤で、申し送りの重点も変えましょう。優先度の低い情報が多いと、次の勤務者が必要な情報を見落としてしまうリスクがあるからです。
日勤から夜勤への申し送りでは、「昨日の夜間の様子」や「日中のバイタルサインの変化」に重点を置きます。各勤務帯のケアの特性を踏まえた情報を伝えることで、次の勤務者は患者さまの観察ポイントがわかり、適切にアセスメントできるでしょう。
【例文つき】看護師の申し送りノート書き方
ここでは、伝え漏れがあると患者さまへの影響が大きくなりやすい場面に焦点を当てます。具体的な例文を見ていきましょう。
- 入院時の申し送り例
- 手術後の申し送り例
- 夜勤から日勤への申し送り例
これらの事例を自分の担当患者さまの状況に合わせて活用してください。
入院時の申し送り例
| 糖尿病の既往がある70代女性。メトグルコとグリメピリドを服用して、血糖値をコントロールしていた。しかし、血糖値400mg/dlであり、インスリン注射と経過観察目的で本日14時に入院。インスリン注射後、バイタルサインと血糖値は安定。インスリン導入を医師から伝えられているが、自己注射に強い抵抗あり。初回オリエンテーション後、病室で涙ぐむ様子あり。次勤務帯は、自己注射への不安軽減のため、不安時はナースコールするよう声掛けをお願いします。 |
入院直後の不安や抵抗といった精神的な側面を具体的に伝え、次の勤務者に声掛けを依頼することで、継続的なケアにつなげられます。
手術後の申し送り例
| 胃切除術後、本日15時に帰室。硬膜外麻酔(アナペイン)を持続投与中。安静時はNRS3点、体動時6点。ドレーン排液は1時間あたり30mlで淡血性。17時30分、体動後に一過性の血圧低下(82/65mmHg)あり。体位変換で改善し、現在110/70mmHgで安定。医師に報告し、疼痛時NRSが5点以上の際は、バイタルサインを測定したうえで再度報告するよう指示あり。ドレーン排液の色調と量を30分ごとに観察継続。 |
数値(NRS、排液量、時間)を明らかにして、現在の状況を客観的に伝えます。次勤務帯への具体的な医師からの指示を提示することで、患者さまに安全にケアできるようになります。
夜勤から日勤への申し送り例
| 夜間は23時~5時まで熟眠。睡眠薬は未使用。5時10分、SpO2が89%に低下したため、酸素2L(鼻カニュラ)を開始。5時45分に95%まで回復し安定。医師報告済み。トイレ誘導は計2回。尿量合計850ml。次の勤務帯は、午前中にリハビリテーション予定であるため、運動時の呼吸状態に留意。リハビリテーション前にSpO2を再度確認し、92%未満であれば再度医師報告。 |
夜間のSpO2低下という重要な変化と、酸素を開始したことを時間とともに記述します。日中のリハビリテーションという今後の予定に合わせた注意点を加えることで、ケアがスムーズにつながります。
関連記事:看護師のワークシートのテンプレート集7選!申し送りや処置が円滑になる方法
看護師の申し送りノートの書き方でよくある失敗とNG例
時間をかけて書いた申し送りノートでも、内容の信頼性が低かったり、誤解を招いたりする書き方では、次の勤務者に混乱を生じさせてしまいます。次のポイントに注意しましょう。
- 主観的な表現が含まれている
- 略語や専門用語を使い過ぎている
- 感情的な記述がある
申し送りの質を落とし、次勤務者との連携に支障をきたしやすいNG例を確認し、自分の書き方を見直しましょう。
主観的な表現が含まれている
申し送りノートには「たぶん」「恐らく」「~と思う」といった主観的な推測や感想を記載してはいけません。主観的な情報は誤ったアセスメントや判断ミスを招く原因となり、次の勤務者との認識のズレを生じさせてしまうからです。
「朝は比較的元気そうだった」ではなく「朝食を全量摂取し、ADLは自立、バイタルサインは安定していた」のように、判断の根拠となる事実を記述しましょう。
主観的な表現を避けることは、申し送りの信頼性を高め、安全な看護ケアをおこなうために重要です。
略語や専門用語を使い過ぎている
申し送りノートで、略語や専門用語を多用することは避けましょう。
略語や専門用語の多用は、病棟の勤務に慣れていない看護師に情報がうまく伝わらず、チームの連携を妨げるからです。また、病棟から手術室、集中治療室から病棟など別の部署に申し送りをする際にも専門用語ばかりでは、情報を十分に伝えられないかもしれません。
使っても良い略語を限定して、わかりやすい表現にすることは、患者さまの情報をチームで把握し、病状に合ったケアをするために不可欠です。
感情的な記述がある
申し送りノートに「〇〇さんのわがままに疲れた」「◯◯さんからクレームがあって悲しかった」といった感情を吐露するような記述は不適切です。
感情的な記述は、次の看護師に患者さまへの先入観を与えてしまい、冷静にケアできない恐れがあるからです。
「ナースコールが頻回で対応に時間を要した」ではなく「10時30分から12時30分の間に、ナースコール計5回あり。主訴は疼痛、不安。対応内容を記載」のように、事実と対応を記述しましょう。
次の勤務者が患者さまに向き合い、適切なアセスメントをおこなうためには事実を記載した情報が前提になります。
看護師が申し送りを短縮しスムーズに実施する方法
申し送りは、ただ情報を伝達するだけでなく、次のケアを円滑にするために重要です。ただし、厚生労働省「看護職員需給推計関係資料」によると、看護師間の申し送りが看護業務時間の4.8%(4番目の多さ)を占めているため、スムーズに進める必要があります。次のポイントに注意してください。
- 優先順位を明らかにする:緊急性、重要度の高い情報(急変、検査結果、新規の指示)から先に伝える
- 「結論」から伝える:「Aさんの血圧低下の件を報告します」と結論から伝え、詳細を補足する
- 電子カルテの活用:電子カルテの画面を開き、データや画像を共有することでノートの内容を補い理解を深める
- チーム内での役割分担:リーダーや担当者がサマリーや要注意患者のみを口頭で伝える
これらの工夫で、申し送りの時間短縮とスムーズな実施を目指しましょう。
関連記事:申し送りがうまい看護師になるには?3つの例文と伝え方のコツを解説
看護師の申し送りノートについてのよくある質問
申し送りノートについての看護師のよくある疑問に回答します。
Q1:看護師の申し送りが廃止になることはありますか?
従来の口頭のみによる申し送りは廃止、または大幅に短縮される傾向にあります。
これは、電子カルテの普及と、看護師の働き方改革(残業時間の削減)の推進により、すべての情報を口頭で伝える必要性が薄れているからです。
多くの病院ではカルテでの確認がメインとなり、口頭では「要注意患者や緊急性の高い情報のみを共有する形に移行しています。申し送りの形や時間は変わってきており、今後も効率化が進むでしょう。
Q2:看護師は申し送りで怒られることはありますか?
申し送りで指導者から厳しいフィードバックを受けることはありますが、それはケアの安全性に問題があることが原因であることがほとんどです。怒られる原因には、次のようなケースが考えられます。
- 夜間のバイタルサインの急変を伝え忘れた
- あいまいな言葉で、次にすべきことが伝わらなかった
- 患者Aさんについて感情的な申し送りをした
患者さまの異常の早期発見に悪影響を及ぼす可能性があるミスに対して、強く注意されることがあります。客観的な事実のみを記述し、緊急性の高い情報を最優先で伝えるという基本を守れば、過度に恐れる必要はありません。
Q3:看護師の申し送りの順番は決まっていますか?
多くの病院で一般的な申し送りの順番はあります。緊急性の高い情報から先に伝えることが重要です。緊急性の高い情報を先に伝えることで、次の勤務者がすぐに患者さまの状態を把握し、必要な対応を迅速におこなえるからです。
一般的には、次の順番で申し送りをすると良いでしょう。
- 重要度の高い患者さま(急変、術後など)
- 病状が安定している患者さま
- 伝達事項
病棟のルールを確認しつつ「患者さまの命に関係する情報が優先」という原則に従って順番を工夫しましょう。
看護師の申し送りノートはコツを押さえてスムーズに進めよう!
申し送りノートは、正確な情報共有と適切なケアのために欠かせない記録です。
「客観的な事実」「6W1H」「次勤務者への明確な依頼事項」というコツを押さえると、申し送りノートは正確で、行動につながる質の高い記録になります。
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<参考サイト・文献>
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